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俺は椎名の母親である上品なその女性に、椎名との出会いから今までの経緯を説明した。椎名とは俺が困っていた時に助けてもらったことがきっかけで出会ったこと、それなりに仲のいい関係を保っていたこと、今は椎名にこの部屋に閉じ込められていること。流石に包み隠さず何もかも赤裸々に、とはいかなかったけれど、大筋は理解できた筈だ。
ただ、子供のことは話さなかった。一応まだ確実にできているかは分からなかったし、一度にそこまで話してしまうと女性にとってあまりにもショックが大きすぎると思ったからだ。女性は時々慰める様に俺の背中を摩りながら真摯に話を聞いてくれ、話終わる頃には眦に涙さえ浮べていた。
「ああ、なんてことでしょう。無理矢理部屋に閉じ込めるなんて、うちの子が他所様にとんでもないことを。本当になんとお詫びすればいいのか分からないわ」
「いえ、いいんです。あなたは何も悪くありません」
「いいえ、この度の息子の起こした不始末、母親として責任の一端は私にもあります。頼比古には私が責任を持って、一族の力を使ってでも罰を受けさせます」
罰、罰か。こんなことになってしまってから言うのも変な話だが、別に俺は椎名に何らかの罰を与えて欲しい訳ではない。俺の意思を無視してどんどんことを進める椎名に怒りはあれど、不思議と恨む気持ちにはなれないのだ。
それは、元々こんなことになった切っ掛けが俺に堪え性がなかったせいで避妊に失敗したからかもしれないし、俺が椎名をまだ愛しているからかもしれない。けれど、そんなこと女性は知る由もない事だ。会ったばかりの俺のために涙まで見せてくれる優しいこの女性なら、俺が温情を申し出ても、必ず椎名に今回の事の責任を取らせようとするだろう。椎名の奴、こんないいお母さん泣かせるようなまねするなよな。女性を悲しませてしまったことで、こっちまで苦しくなってくる。
「織部さん。一先ず私と一緒にここを出ませんか? 今はとにかくあなたの身の安全を確保することが先決だと思うの。頼比古が帰ってきたら、あなたはまたこの部屋に閉じ込められてしまうわ」
「え」
「大丈夫。頼比古はまだ子供で、一族の中でもあまり権力を持っていないから、私を出し抜くことはできないわ。私なら頼比古から必ずあなたを守って差し上げられる。もし頼比古の母である私が信用できないのなら、別の人間に任せても構いません。でも、どうかあなたをどこか安全なところに逃がす手助けだけでもさせてくださらない? せめてでもの償いをしたいの」
願ってもない申し出だ。俺は元々ここから出たかったのだし、椎名が母親に罰せられる前に事態を察して俺を連れて逃走してしまえば、元の木阿弥。またいつまで続くともしれない監禁生活が始まってしまう。何より今は、椎名と離れて色々と考える時間が欲しかった。今という好機を逃せば、次のチャンスは永遠に巡ってこないかもしれない。一瞬も迷わず、覚悟は決まった。
「分かりました。俺をここから連れ出してください」
「よかった。ここに残ると言われたら無理矢理にでも連れ出さなくてはいけなかったところよ。直ぐに避難先を手配するわ。でも、先ずは私の車に乗りましょう。ここに居てはいつ頼比古が帰ってくるか分かりませんから」
女性に連れられ、部屋を出る。あれ程苦労しても叶わなかったのに、随分あっさりと出られた。その事になんだか拍子抜けする。この1ヶ月で随分馴染んだ場所だが、未練はない。女性とボディーガードらしい2人の男性に守られるようにして俺は椎名の家を後にした。駐車場に降りて、連絡を受けていたのか予め車止めに停まっていた黒い高級車に乗せられる。
「松阪記念病院に向かってちょうだい」
女性が支持を出すと畏まりました、とだけ運転手は答えて車は静かに走り出す。女性の告げた行先に疑問を持って、俺はなんとはなしにその疑問を声に出した。
「病院に行くんですか?」
「ええ、あなたはずっとあの部屋に閉じ込められていたんでしょう? 自覚はなくても、どこか体に不調をきたしているかもしれないから、検査を受けた方がいいと思って。お節介だったかしら」
なる程、確かにその通りだ。それに、妊娠疑惑のこともあるし、病院にはどのみち行く必要がある。よく気が利く人だ。お節介なんてとんでもない。
「いえ、何から何までお気遣いいただき助かります」
「私は当然のことをしているまでよ。今から行く病院は昔から私が個人的に懇意にしている先生がいらっしゃるから、ある程度融通もききますし、頼比古も手出しできない筈です。安心して診察を受けてくださいね」
そうやって少しずつ話をしているうちに、車は病院に到着した。気を利かせて人のこない緊急搬送用の裏口に連れてきてくれたらしい。俺と女性、2人の男性を下ろして、車はどこかへ走り去った。
車内で女性と話している時、前の助手席に座っていた男性がどこかへ電話していたのは、予めこの病院に連絡を入れていたのだろう。中では医者らしい白衣を着た中年の男性が1人、俺達を待っていた。その男性に案内されるまま、病院の中を進んでいく。人に見られない様、人通りの少ない道を選んでくれているらしい。誰1人すれ違うことなく、個室へと通された。女性に促されそこにあったベッドに座り、そこで漸くホッと息をつく。
「織部さん、お疲れでしょう。少しお休みになられるといいわ。中條先生、こちらの方によく眠れるお薬を処方してくださらない?」
「いえ、別に薬を貰う程では」
「いいえ、色々あって精神が昂っている筈よ。無理をなさらないでお飲みになってください」
参ったな、睡眠薬は胎児に悪影響があるんじゃなかったっけ? それでなくてもお腹に子供がいるかもしれない今、不用意に薬を飲みたくない。いや、産む予定はないんだけど、一応ね? そういえば椎名は食料と一緒に葉酸サプリを買ってきてくれてたっけ。椎名はいつも口にしていた酒も煙草も呑まなくなっていた。あの優しさがもう少し上手い具合に作用して、俺の気持ちと噛み合ってくれていたらな。
て、いやいや、今は椎名のことはどうでもいいんだってば。余計なことを考えている間に、睡眠薬らしき錠剤のシートとコップに入った水を持って医者らしき男性が戻ってきてしまった。仕方ない、お腹に子供がいるかもしれないと今更言う訳にもいかないし、飲んだフリして後で吐き出そう。
「さ、織部さん。早くお飲みになって」
「あ、はい」
女性に言われるがまま錠剤をシートから取りだし、口に放り込んで舌の裏側にしまって水だけ飲み込む。女性は俺のその一連の動作を何故か食い入る様に見ていた。
「さあ、織部さんはもうお休みになられるでしょうから、お邪魔にならない様に私たちは外に出ておきましょう。織部さん、目が覚めたらナースコールを押してください。すぐ駆けつけますから。診察は起きてからでも遅くないわ」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて休ませていただきますね」
女性達が部屋を出ていくのを笑顔で見送る。パタン、と扉が閉められた後、口の中の半分熔けてふやけた錠剤を取りだし、備え付けのゴミ箱に捨てた。薬を吐き出せたはいいが、薬の残りカスのせいで舌の裏が変な感じがする。口を漱ぐ水はさっき持ってきてもらった余りがあるとして、漱いだ後に水を吐き捨てる水場がない。仕方ない、トイレにでも行って漱ぐか。コップを持って個室を出ようと扉を開ける。が、予想外なことに先程のボディーガードらしき男性の1人が扉の前に立っていてぶつかりそうになってしまった。慌てて出しかけた足を引っこめる。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、眠くなるまでの間暇なので、トイレに行くついでに水を捨てようと思いまして」
「そんな事なさらなくてもいいんですよ。ゆっくりお休みになってください」
「でも」
男性は出入口からガンとして動かず、俺を通そうとしない。俺がなんとなく重心をずらすと、それに合わせて立ち塞がる様に男性も体をずらす。まるで俺をこの個室からどうしても出したくないかの様だ。俺の心に、ふと疑念の芽が出た。どうしてそんなに俺をこの部屋に留めておきたがるんだ? いや、不用意に出歩かれて何かあったら困るだけかもしれないけど、でも、それにしたってちょっと態度がおかしい気がする。俺の第六感が危険信号を発した。なにより折角椎名の家から出たのに、ここでも閉じ込められるのはいただけない。
「どうしても我慢できませんか?」
「トイレは我慢できそうなんですが、水だけは捨てさせてくださいませんか?」
「どうしてです?」
「風水の先生に、眠る時近くに水気のあるものを置いておくと運気が悪くなると言われているんです。私そういうのがどうしても心底気になるタチでして。水が近くにあると思ったら、それだけで気になって眠れません」
「……」
この言い訳はちょっと苦しかったかな? でも、他に上手い言い訳が思いつかなかったんだ。今は口を漱ぐことを諦めてでも、外に出たい。うわ、そんなあからさまに疑ってる目で見ないで。怪しいのは自分でも十分分かってるから。あきらめろ、と言いたげな目で睨まれるが、鈍感にも気が付かないフリで応戦する。暫し時が流れ、根負けしたのは男の方だった。
「分かりました。水は私が捨ててまいりますから、織部様はこの部屋から絶対にお出にならないでください」
「本当ですか? ありがとうございます! いやぁ、実は薬のおかげか、もう随分眠くて。一刻も早く水を捨てて眠りたかったんです」
「では、コップもこちらで回収致しますので、気にせずどうぞお休みになられてください」
「分かりました。お願いしますね」
お店で鍛えた人好きのする笑みでニッコリ笑って、軽く頭を下げてから扉を閉める。そのまま少しキュッ、キュッ、とリノリウムの床の上で足音を立ててベッドまで戻り、途中で今度は足音を立てずに引き返す。扉に付いている磨りガラスの飾り窓から、男性の影を伺った。影もこちらの様子を伺う様に暫く扉の前から動かなかったが、音を立てずに待っていればやがて廊下をどこかへ向かって歩き去っていく。足音が聞こえなくなったのを確かめてから、ソーッと扉を開けた。
廊下には誰もいない。俺のいる個室は余程奥まったところにあるのか、病院が賑わう時間だというのに喧騒も聞こえず辺りはシンと静まり返っている。左は突き当りで非常階段へ続く扉があるし、さっき女性達は部屋を出る時右に曲がっていたな、と思い出して何となく廊下を右に進む。
音を立てないよう慎重に、誰か来てもすぐ対処できるように耳をすませて廊下を進むと、やがてボソボソと人の話し声が聞こえてくる扉に出会った。中から聞こえる声は女性と先程の医師らしき男性の声に思える。なんの話しをしているのだろうか? 俺のことかな? ……気になる。
気づかれないよう細くスライド式の扉を開けると、都合よく扉を開けても目隠し様に天井にレールが埋め込まれたカーテンが吊り下げられていたので、素早く中に滑り込みカーテンの後ろに隠れられた。少し緊張したが、扉はよく手入れされているようでゆっくりと開け閉めすれば軋み1つたてなかったのと、余程会話に集中しているのか気付かれない。ドキドキしている胸を押えながら耳をすませる。
「ですから、私は無理なことを承知の上で先生にお願いしているんです」
「椎名様、こればかりはいくらお願いされてもいたしかねます。そんなことをしたら、流石にあの男性に後で何か言い出されたら分が悪い」
「それなら心配いりません。あれくらいの一般人が何を言っても、私達の一族の権力でどうとでもなりますから。先生、お金ならいくらでも出しますから、お願いします」
なんだろう。何かもめているようだ。話の中で出てくるあの男性って、俺のことだろうか? 不穏な空気を孕んだ会話に、耳を攲てる。
「しかしですねぇ、椎名様」
「中條先生。普段私や私の一族があなたとこの病院に多額の献金しているのは、何かあった時に無理を通してもらう為なんですよ。そして、今がその何かあった時なんです」
「それは、その通りですが」
ここまでの会話を聞くに、女性は俺に対して医師に何かしてもらうつもりで、医師はそれを渋っている様だ。事前に言われていた様なただの俺に対する診察なら、ああも渋ることはないだろう。いったい女性は医師に何をさせるつもりなんだ? 不信感を増幅させた俺は、次に女性が口にした言葉に、耳を疑うことになる。
「何を躊躇っているんです。たかだか1回不妊手術をするだけじゃありませんか! それだけでこの病院は莫大な利益を得て、あなたの将来も確約されるんですよ!」
女性の荒らげた声に、雷に撃たれた様な激しいショックを受けた。何? 不妊手術だって? 話の流れからすると、俺がその手術を受けるんだよな? どうしてそんなことに? 俺の疑問に答えるように、女性は言葉を続ける。
「いいですか、あの男には不妊手術を受けてもらわなければ困るんです。今、私の息子があの男とどうしても結婚すると言い出していて、もめにもめてとうとう『半年以内にあの男が妊娠したら結婚を許す』と約束させられてしまったんです。あんな男、愛人にするのでも耐えられないのに、結婚なんて! 先生も医者ならαとΩの性交渉した時の妊娠し易さをご存知でしょう? 発情期でもきたらすぐに子供ができてしまう。αの世界で約束は絶対です。このままでは息子はあの薄汚い野良犬みたいな男と結婚してしまう。そんなこと、絶対に許せません! 絶対にです! あの男は自分には結婚する気がないなんて嘘をついていましたが、そんなことでは私の目は誤魔化されません。そう言ってこちらを油断させる気なんです! あの子にはもっと一族の為になる良家のお子さんと、良い御縁を結んでもらわなければ困るんですよ。椎名の家の金と権力目当ての猥雑なΩと結婚だなんて、とんでもない! 絶対に子供ができないようにして、息子の目を覚まさせなくては!」
今、俺は信じられない話を聞いた。あんなにも優しくしてくれて信頼を置いた女性に裏切られたのもショックだが、話の内容もなかなか衝撃的だ。椎名、本気で俺と結婚する気だったんだな。いや、元々分かってはいたんだが、それと他人の口から椎名が俺の知らないところで結婚に向けて努力していたのを聞かされるのとでは訳が違う。最近忙しそうにしてたのは、実家で交渉をしていたからなのかも。それにしても、可能性としては俺はもう殆ど妊娠している様なものだし、椎名は俺が妊娠していると決め込んでいるから、俺との結婚は許されたも同然と思っているに違いない。まさか、自分の母親がこんな強硬な手段に打って出ているなんて、思ってもいない筈だ。
「中條先生。先生がどうしても不妊手術をして下さらないのなら、それでも結構です。また別の先生に頼みます。ですが、その時は先生はもう今の立場にはいられないとお思いになってください。役に立っていただけないのなら、別の方に専属を変わってもらうのは当然のことですもの。幸いなことに椎名家の専属になりたいと仰る先生は沢山いらっしゃいますから、安心ですわ」
「そんな、待ってください!」
「困りますよね? 先生は今お母様がいい施設に入所するための多額の費用が必要ですし、2人のお子さんもにもできうる限り教育の機会を与えてあげたいんですものね。お金はいくらあっても足りませんし、椎名家に睨まれればこの地域に居ずらくなりますし、病院にもいられるかどうか。そんなことになったら困りますものね?」
「……はい、その通りです」
「私、中條先生には感謝しているんです。義伯母が元気になったのも、先生が執刀して手術をしてくださったお陰だとおもっていますわ。だからこそ、院長先生や会長にも中條先生をお願いしますと頼んでいるんです。これからも、中條先生に色んなことをお任せしたいと思っていますのよ。幸い息子は実家に結婚の許しを得る為滞在しているので、あと数日足止めできます。その隙にあの男を不妊手術するしかありません。先生はあの男が眠っている間に手術をしてくださるだけで結構なんです。後のことは椎名家にお任せ下さい。あれくらいの人間には椎名家に逆らうことはできませんし、不妊手術さえしていただければ後はどうとでもなります。先生には決してご迷惑をおかけしませんから、何卒お願いします」
「……分かりました。不妊手術をします」
「まあ、ありがとうございます、先生! 手術の成功のおりには、しっかりとお礼をさせていただきますわ!」
これ、もしかしなくても、俺結構ピンチなんじゃなかろうか。あそこで睡眠薬を飲まなくて正解だったかもしれない。お腹の子供のことがなかったら、女性を信用しきっていた俺は確実に薬を飲んでいただろう。そしたら俺は眠っている間に不妊手術をされて、当然お腹にいる可能性の高い子供は……。寒気にブルリと体を震わせる。なにはともあれ、ここに居ては危険だ。さっきここに侵入して来た時の要領で逃げ出して……。
「奥様、申し訳ありません! あの男に逃げられました!」
ソローッと後ろに下がろうとした俺の背後で、無常にも勢いよく扉が開けられ、俺を見張っていたあの男が大声と共に駆け込んできた。驚いた俺は思わず扉の方を向いてガタン、と後退り、カーテンを引っ掛けてしまう。振り返るとめくれ上がったカーテンの隙間から女性とバッチリ目が合った。どうしようもなくなってヘラッと笑いかけた俺を睨みつけ、指さし女性は大声で叫んだ。
「その男を捕まえなさい!」
ただ、子供のことは話さなかった。一応まだ確実にできているかは分からなかったし、一度にそこまで話してしまうと女性にとってあまりにもショックが大きすぎると思ったからだ。女性は時々慰める様に俺の背中を摩りながら真摯に話を聞いてくれ、話終わる頃には眦に涙さえ浮べていた。
「ああ、なんてことでしょう。無理矢理部屋に閉じ込めるなんて、うちの子が他所様にとんでもないことを。本当になんとお詫びすればいいのか分からないわ」
「いえ、いいんです。あなたは何も悪くありません」
「いいえ、この度の息子の起こした不始末、母親として責任の一端は私にもあります。頼比古には私が責任を持って、一族の力を使ってでも罰を受けさせます」
罰、罰か。こんなことになってしまってから言うのも変な話だが、別に俺は椎名に何らかの罰を与えて欲しい訳ではない。俺の意思を無視してどんどんことを進める椎名に怒りはあれど、不思議と恨む気持ちにはなれないのだ。
それは、元々こんなことになった切っ掛けが俺に堪え性がなかったせいで避妊に失敗したからかもしれないし、俺が椎名をまだ愛しているからかもしれない。けれど、そんなこと女性は知る由もない事だ。会ったばかりの俺のために涙まで見せてくれる優しいこの女性なら、俺が温情を申し出ても、必ず椎名に今回の事の責任を取らせようとするだろう。椎名の奴、こんないいお母さん泣かせるようなまねするなよな。女性を悲しませてしまったことで、こっちまで苦しくなってくる。
「織部さん。一先ず私と一緒にここを出ませんか? 今はとにかくあなたの身の安全を確保することが先決だと思うの。頼比古が帰ってきたら、あなたはまたこの部屋に閉じ込められてしまうわ」
「え」
「大丈夫。頼比古はまだ子供で、一族の中でもあまり権力を持っていないから、私を出し抜くことはできないわ。私なら頼比古から必ずあなたを守って差し上げられる。もし頼比古の母である私が信用できないのなら、別の人間に任せても構いません。でも、どうかあなたをどこか安全なところに逃がす手助けだけでもさせてくださらない? せめてでもの償いをしたいの」
願ってもない申し出だ。俺は元々ここから出たかったのだし、椎名が母親に罰せられる前に事態を察して俺を連れて逃走してしまえば、元の木阿弥。またいつまで続くともしれない監禁生活が始まってしまう。何より今は、椎名と離れて色々と考える時間が欲しかった。今という好機を逃せば、次のチャンスは永遠に巡ってこないかもしれない。一瞬も迷わず、覚悟は決まった。
「分かりました。俺をここから連れ出してください」
「よかった。ここに残ると言われたら無理矢理にでも連れ出さなくてはいけなかったところよ。直ぐに避難先を手配するわ。でも、先ずは私の車に乗りましょう。ここに居てはいつ頼比古が帰ってくるか分かりませんから」
女性に連れられ、部屋を出る。あれ程苦労しても叶わなかったのに、随分あっさりと出られた。その事になんだか拍子抜けする。この1ヶ月で随分馴染んだ場所だが、未練はない。女性とボディーガードらしい2人の男性に守られるようにして俺は椎名の家を後にした。駐車場に降りて、連絡を受けていたのか予め車止めに停まっていた黒い高級車に乗せられる。
「松阪記念病院に向かってちょうだい」
女性が支持を出すと畏まりました、とだけ運転手は答えて車は静かに走り出す。女性の告げた行先に疑問を持って、俺はなんとはなしにその疑問を声に出した。
「病院に行くんですか?」
「ええ、あなたはずっとあの部屋に閉じ込められていたんでしょう? 自覚はなくても、どこか体に不調をきたしているかもしれないから、検査を受けた方がいいと思って。お節介だったかしら」
なる程、確かにその通りだ。それに、妊娠疑惑のこともあるし、病院にはどのみち行く必要がある。よく気が利く人だ。お節介なんてとんでもない。
「いえ、何から何までお気遣いいただき助かります」
「私は当然のことをしているまでよ。今から行く病院は昔から私が個人的に懇意にしている先生がいらっしゃるから、ある程度融通もききますし、頼比古も手出しできない筈です。安心して診察を受けてくださいね」
そうやって少しずつ話をしているうちに、車は病院に到着した。気を利かせて人のこない緊急搬送用の裏口に連れてきてくれたらしい。俺と女性、2人の男性を下ろして、車はどこかへ走り去った。
車内で女性と話している時、前の助手席に座っていた男性がどこかへ電話していたのは、予めこの病院に連絡を入れていたのだろう。中では医者らしい白衣を着た中年の男性が1人、俺達を待っていた。その男性に案内されるまま、病院の中を進んでいく。人に見られない様、人通りの少ない道を選んでくれているらしい。誰1人すれ違うことなく、個室へと通された。女性に促されそこにあったベッドに座り、そこで漸くホッと息をつく。
「織部さん、お疲れでしょう。少しお休みになられるといいわ。中條先生、こちらの方によく眠れるお薬を処方してくださらない?」
「いえ、別に薬を貰う程では」
「いいえ、色々あって精神が昂っている筈よ。無理をなさらないでお飲みになってください」
参ったな、睡眠薬は胎児に悪影響があるんじゃなかったっけ? それでなくてもお腹に子供がいるかもしれない今、不用意に薬を飲みたくない。いや、産む予定はないんだけど、一応ね? そういえば椎名は食料と一緒に葉酸サプリを買ってきてくれてたっけ。椎名はいつも口にしていた酒も煙草も呑まなくなっていた。あの優しさがもう少し上手い具合に作用して、俺の気持ちと噛み合ってくれていたらな。
て、いやいや、今は椎名のことはどうでもいいんだってば。余計なことを考えている間に、睡眠薬らしき錠剤のシートとコップに入った水を持って医者らしき男性が戻ってきてしまった。仕方ない、お腹に子供がいるかもしれないと今更言う訳にもいかないし、飲んだフリして後で吐き出そう。
「さ、織部さん。早くお飲みになって」
「あ、はい」
女性に言われるがまま錠剤をシートから取りだし、口に放り込んで舌の裏側にしまって水だけ飲み込む。女性は俺のその一連の動作を何故か食い入る様に見ていた。
「さあ、織部さんはもうお休みになられるでしょうから、お邪魔にならない様に私たちは外に出ておきましょう。織部さん、目が覚めたらナースコールを押してください。すぐ駆けつけますから。診察は起きてからでも遅くないわ」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて休ませていただきますね」
女性達が部屋を出ていくのを笑顔で見送る。パタン、と扉が閉められた後、口の中の半分熔けてふやけた錠剤を取りだし、備え付けのゴミ箱に捨てた。薬を吐き出せたはいいが、薬の残りカスのせいで舌の裏が変な感じがする。口を漱ぐ水はさっき持ってきてもらった余りがあるとして、漱いだ後に水を吐き捨てる水場がない。仕方ない、トイレにでも行って漱ぐか。コップを持って個室を出ようと扉を開ける。が、予想外なことに先程のボディーガードらしき男性の1人が扉の前に立っていてぶつかりそうになってしまった。慌てて出しかけた足を引っこめる。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、眠くなるまでの間暇なので、トイレに行くついでに水を捨てようと思いまして」
「そんな事なさらなくてもいいんですよ。ゆっくりお休みになってください」
「でも」
男性は出入口からガンとして動かず、俺を通そうとしない。俺がなんとなく重心をずらすと、それに合わせて立ち塞がる様に男性も体をずらす。まるで俺をこの個室からどうしても出したくないかの様だ。俺の心に、ふと疑念の芽が出た。どうしてそんなに俺をこの部屋に留めておきたがるんだ? いや、不用意に出歩かれて何かあったら困るだけかもしれないけど、でも、それにしたってちょっと態度がおかしい気がする。俺の第六感が危険信号を発した。なにより折角椎名の家から出たのに、ここでも閉じ込められるのはいただけない。
「どうしても我慢できませんか?」
「トイレは我慢できそうなんですが、水だけは捨てさせてくださいませんか?」
「どうしてです?」
「風水の先生に、眠る時近くに水気のあるものを置いておくと運気が悪くなると言われているんです。私そういうのがどうしても心底気になるタチでして。水が近くにあると思ったら、それだけで気になって眠れません」
「……」
この言い訳はちょっと苦しかったかな? でも、他に上手い言い訳が思いつかなかったんだ。今は口を漱ぐことを諦めてでも、外に出たい。うわ、そんなあからさまに疑ってる目で見ないで。怪しいのは自分でも十分分かってるから。あきらめろ、と言いたげな目で睨まれるが、鈍感にも気が付かないフリで応戦する。暫し時が流れ、根負けしたのは男の方だった。
「分かりました。水は私が捨ててまいりますから、織部様はこの部屋から絶対にお出にならないでください」
「本当ですか? ありがとうございます! いやぁ、実は薬のおかげか、もう随分眠くて。一刻も早く水を捨てて眠りたかったんです」
「では、コップもこちらで回収致しますので、気にせずどうぞお休みになられてください」
「分かりました。お願いしますね」
お店で鍛えた人好きのする笑みでニッコリ笑って、軽く頭を下げてから扉を閉める。そのまま少しキュッ、キュッ、とリノリウムの床の上で足音を立ててベッドまで戻り、途中で今度は足音を立てずに引き返す。扉に付いている磨りガラスの飾り窓から、男性の影を伺った。影もこちらの様子を伺う様に暫く扉の前から動かなかったが、音を立てずに待っていればやがて廊下をどこかへ向かって歩き去っていく。足音が聞こえなくなったのを確かめてから、ソーッと扉を開けた。
廊下には誰もいない。俺のいる個室は余程奥まったところにあるのか、病院が賑わう時間だというのに喧騒も聞こえず辺りはシンと静まり返っている。左は突き当りで非常階段へ続く扉があるし、さっき女性達は部屋を出る時右に曲がっていたな、と思い出して何となく廊下を右に進む。
音を立てないよう慎重に、誰か来てもすぐ対処できるように耳をすませて廊下を進むと、やがてボソボソと人の話し声が聞こえてくる扉に出会った。中から聞こえる声は女性と先程の医師らしき男性の声に思える。なんの話しをしているのだろうか? 俺のことかな? ……気になる。
気づかれないよう細くスライド式の扉を開けると、都合よく扉を開けても目隠し様に天井にレールが埋め込まれたカーテンが吊り下げられていたので、素早く中に滑り込みカーテンの後ろに隠れられた。少し緊張したが、扉はよく手入れされているようでゆっくりと開け閉めすれば軋み1つたてなかったのと、余程会話に集中しているのか気付かれない。ドキドキしている胸を押えながら耳をすませる。
「ですから、私は無理なことを承知の上で先生にお願いしているんです」
「椎名様、こればかりはいくらお願いされてもいたしかねます。そんなことをしたら、流石にあの男性に後で何か言い出されたら分が悪い」
「それなら心配いりません。あれくらいの一般人が何を言っても、私達の一族の権力でどうとでもなりますから。先生、お金ならいくらでも出しますから、お願いします」
なんだろう。何かもめているようだ。話の中で出てくるあの男性って、俺のことだろうか? 不穏な空気を孕んだ会話に、耳を攲てる。
「しかしですねぇ、椎名様」
「中條先生。普段私や私の一族があなたとこの病院に多額の献金しているのは、何かあった時に無理を通してもらう為なんですよ。そして、今がその何かあった時なんです」
「それは、その通りですが」
ここまでの会話を聞くに、女性は俺に対して医師に何かしてもらうつもりで、医師はそれを渋っている様だ。事前に言われていた様なただの俺に対する診察なら、ああも渋ることはないだろう。いったい女性は医師に何をさせるつもりなんだ? 不信感を増幅させた俺は、次に女性が口にした言葉に、耳を疑うことになる。
「何を躊躇っているんです。たかだか1回不妊手術をするだけじゃありませんか! それだけでこの病院は莫大な利益を得て、あなたの将来も確約されるんですよ!」
女性の荒らげた声に、雷に撃たれた様な激しいショックを受けた。何? 不妊手術だって? 話の流れからすると、俺がその手術を受けるんだよな? どうしてそんなことに? 俺の疑問に答えるように、女性は言葉を続ける。
「いいですか、あの男には不妊手術を受けてもらわなければ困るんです。今、私の息子があの男とどうしても結婚すると言い出していて、もめにもめてとうとう『半年以内にあの男が妊娠したら結婚を許す』と約束させられてしまったんです。あんな男、愛人にするのでも耐えられないのに、結婚なんて! 先生も医者ならαとΩの性交渉した時の妊娠し易さをご存知でしょう? 発情期でもきたらすぐに子供ができてしまう。αの世界で約束は絶対です。このままでは息子はあの薄汚い野良犬みたいな男と結婚してしまう。そんなこと、絶対に許せません! 絶対にです! あの男は自分には結婚する気がないなんて嘘をついていましたが、そんなことでは私の目は誤魔化されません。そう言ってこちらを油断させる気なんです! あの子にはもっと一族の為になる良家のお子さんと、良い御縁を結んでもらわなければ困るんですよ。椎名の家の金と権力目当ての猥雑なΩと結婚だなんて、とんでもない! 絶対に子供ができないようにして、息子の目を覚まさせなくては!」
今、俺は信じられない話を聞いた。あんなにも優しくしてくれて信頼を置いた女性に裏切られたのもショックだが、話の内容もなかなか衝撃的だ。椎名、本気で俺と結婚する気だったんだな。いや、元々分かってはいたんだが、それと他人の口から椎名が俺の知らないところで結婚に向けて努力していたのを聞かされるのとでは訳が違う。最近忙しそうにしてたのは、実家で交渉をしていたからなのかも。それにしても、可能性としては俺はもう殆ど妊娠している様なものだし、椎名は俺が妊娠していると決め込んでいるから、俺との結婚は許されたも同然と思っているに違いない。まさか、自分の母親がこんな強硬な手段に打って出ているなんて、思ってもいない筈だ。
「中條先生。先生がどうしても不妊手術をして下さらないのなら、それでも結構です。また別の先生に頼みます。ですが、その時は先生はもう今の立場にはいられないとお思いになってください。役に立っていただけないのなら、別の方に専属を変わってもらうのは当然のことですもの。幸いなことに椎名家の専属になりたいと仰る先生は沢山いらっしゃいますから、安心ですわ」
「そんな、待ってください!」
「困りますよね? 先生は今お母様がいい施設に入所するための多額の費用が必要ですし、2人のお子さんもにもできうる限り教育の機会を与えてあげたいんですものね。お金はいくらあっても足りませんし、椎名家に睨まれればこの地域に居ずらくなりますし、病院にもいられるかどうか。そんなことになったら困りますものね?」
「……はい、その通りです」
「私、中條先生には感謝しているんです。義伯母が元気になったのも、先生が執刀して手術をしてくださったお陰だとおもっていますわ。だからこそ、院長先生や会長にも中條先生をお願いしますと頼んでいるんです。これからも、中條先生に色んなことをお任せしたいと思っていますのよ。幸い息子は実家に結婚の許しを得る為滞在しているので、あと数日足止めできます。その隙にあの男を不妊手術するしかありません。先生はあの男が眠っている間に手術をしてくださるだけで結構なんです。後のことは椎名家にお任せ下さい。あれくらいの人間には椎名家に逆らうことはできませんし、不妊手術さえしていただければ後はどうとでもなります。先生には決してご迷惑をおかけしませんから、何卒お願いします」
「……分かりました。不妊手術をします」
「まあ、ありがとうございます、先生! 手術の成功のおりには、しっかりとお礼をさせていただきますわ!」
これ、もしかしなくても、俺結構ピンチなんじゃなかろうか。あそこで睡眠薬を飲まなくて正解だったかもしれない。お腹の子供のことがなかったら、女性を信用しきっていた俺は確実に薬を飲んでいただろう。そしたら俺は眠っている間に不妊手術をされて、当然お腹にいる可能性の高い子供は……。寒気にブルリと体を震わせる。なにはともあれ、ここに居ては危険だ。さっきここに侵入して来た時の要領で逃げ出して……。
「奥様、申し訳ありません! あの男に逃げられました!」
ソローッと後ろに下がろうとした俺の背後で、無常にも勢いよく扉が開けられ、俺を見張っていたあの男が大声と共に駆け込んできた。驚いた俺は思わず扉の方を向いてガタン、と後退り、カーテンを引っ掛けてしまう。振り返るとめくれ上がったカーテンの隙間から女性とバッチリ目が合った。どうしようもなくなってヘラッと笑いかけた俺を睨みつけ、指さし女性は大声で叫んだ。
「その男を捕まえなさい!」
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一目惚れだって言ったじゃない。
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ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
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いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
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