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「俺とカーティスが婚約とか、ないないない! 結婚とかもぉーっとない! カーティスが気にしてるあれは、そういうあれじゃないから! 責任とる必要がない系のあれだから!」
辺りに響き渡るような大声で、大袈裟な身振り手振りも交えつつ、俺はカーティスとのそういう関係を完全否定した。だって、本当に俺とカーティスの間にある関係なんて、復讐する為に手助けした奴とされた奴、それ以上でも以下でもない。……いや、正確に言えば、まだあるか。俺がよくない気を起こして、カーティスの初体験をパクッと食べちまった。そういう関係が。
でも……俺あの時言ったよな? 『男同士でやるならノーカン』。『お前も俺も男だし、犬にでも噛まれたと思って経験に数えこまなけりゃいいんだよ』って。……うん、確かに言った。絶対言った。あの後カーティスも特にその事を気にした様子はなかったし、てっきり全部分かって納得した上で事に及んだとばかり思っていたんだが……。なんにせよかなり気軽な感じで寝たので、責任取って婚約や結婚云々が絡んでくるような話でなかったのは確実である。
「え、でも……。オリバーさん、僕言いましたよね? 『僕の初体験は本当に好きな人に捧げるんだ』って」
「言ってたけど……それがどうかしたのか?」
「それをあなたが前情報として知った上で、僕はあなたと関係する事を選択したんですよ? それはつまり、『僕はオリバーさんの事が好きだからこそ、初体験をあなたと済ませたい』という、ある意味告白的な僕の行為をあなたが受けいれてくれたって事なんじゃないですか?」
「いやいやいやいや! 知らんわ! 直接口で言え! 分かるかそんなもん!」
伝わるわけが! ない! いくらなんでも無理があり過ぎる! パズルのピースとピースがあってないのに無理矢理捩じ込んで、繋がった気分になってるだけで実は繋がってないやつだぞそれ!? 動かしたらバラける! 絵柄があってない! 前後関係がチグハグ!
「待て! そもそもお前俺の事好きだったの!? 初耳なんだが!?」
「そりゃあ、告白とかしてませんし……」
「先にしろよ! 告白を!」
だんだん頭痛くなってきた。この子こんなに話通じない系だったっけ? 最近の子怖いよ。思考がぶっ飛び過ぎ。何考えてるかわかんない。2歳しか変わらないのに、ジェネレーションギャップがキツイ。誰か俺を助けてくれ。せめて通訳をつけろ。いや、おふざけとかじゃなく、割と真剣に。
「何で? 小さい頃チョロっと遊んだげて、最近になって再会してまた少しサポートしただけじゃん。惚れる要素ゼロじゃん」
「むしろ小さい頃優しくしてくれた憧れのお兄さんと、成長して窮地に陥っている時に再会して、助けてもらえたんですよ? 普通に惚れません?」
「そこだけ切り取ると、惚れてもおかしくないように聞こえるなぁ、不思議だなぁ……」
でも、マジで大した事してないじゃん。俺はコーエン家に遊びに行ったら大量に出てくる三時のおやつが目当てで、腹一杯食った上にお持ち帰りしても怒られないよう末っ子のカーティスの面倒見ていい子ちゃんアピールしてただけだし。ほら、あの子おやつ目当てか……って思われても、まあお兄ちゃん達に置いてかれがちな末っ子の面倒見てくれるなら……ってなるじゃんか。なんか許されそうじゃんね? マジでそんなくっだらない理由でカーティスの相手してた不埒者なんだけど。
窮地に陥ってたの助けたっていうのも、長年のリリアナ王女一派からの虐待行為でボロボロになってたカーティスを、ヨチヨチして飯食わせて手入れしてただけだ。ティモシーが持ってきたコーエン家の金を使って。マジでなんも特別な事してない。謙遜とか冗談抜きに一切してない。誰でもできる事を、たまたま頼まれた俺がやった。それだけだ。それで惚れちゃうのはどうなのよ。チョロ過ぎない……?
「やりたい盛りで鬱憤溜まってて、男同士ならノーカン! を信じて手ぇ出したんじゃないのかよ……」
「そんなわけないでしょう! 僕は真剣に、生涯愛するのはオリバーさんだけだという強い意志の元、関係を持ちました!」
「マジかー。うん、その目を見る限りマジだなー。目ん玉ひん剥いてこっち見んの止めろー? シンプルに怖いぞー?」
やべえよカーティス。思った以上にやべえ。貞操観念が500年くらい前で止まってる。嘘だろおい。手ぇ出しちまったじゃねぇか。え、て事は何? 俺ってばこのままカーティスとゴールイン? 年貢の納め時? 家庭を持つの? この俺が? いやいやいやいや! 無理無理無理無理! そんなの絶対駄目だって! カーティスの結婚相手は最低限度、可愛くて家柄もよくて性格もいい子じゃなきゃ駄目だから! 俺はその全部に当て嵌らないから駄目だって! カーティスはこれまで苦労した分もっといい相手を見つけて、幸せになんなきゃなの!
よし、フろう。誠心誠意謝って、土下座してでも許してもらってフろう。最終的には俺お得意のなんかいい感じに言い包める技術で何とかなる。……筈。多分。きっと。少なくとも、俺はそう信じてる!
「カーティス。よーく聞いてくれ。俺はお前の事は好きだが、それは付き合ったりとかそういう意味の好きじゃない。なので婚約はしないし、結婚もできない。……分かってくれるな?」
「え……でも、オリバーさん僕の初体験を貰ってくれたんじゃ……」
「いいか? 初めての相手に拘ってたら視野が狭くなって、本当の運命の相手を見つけられなくなってしまう。今のトレンドは最初から決め打ちするんじゃなくて、数をこなしてその中から最適解を選ぶ方法だ。お前には沢山の可能性がある。素晴らしい未来もある。どうか俺みたいなつまらない1人に囚われず、広い世界に飛び立ってその手で本当の幸せと愛する相手を掴み取るんだ」
うん、我ながらなかなかいい弁舌だ。今の俺のこの話を聞いたら、きっとカーティスも納得の上で結婚を諦めてくれるに違いない。感無量の面持ちのカーティスが『有難う、オリバーさん。僕目が覚めたよ!』とでも言うのを期待してニッコリ笑いかけようとして、そこで俺はギョッとして笑顔を引っこめる。それも無理もない。だって、さっきまで俺と結婚、結婚と言っていた時はホンワカ笑っていたカーティスが、一目見て面食らってしまう程に絶望の表情を浮かべていたからだ。
「カ、カーティス? どうしたんだ……?」
「どうした? どうしたですって……? よくもまあそんな事言えますね。僕の事弄んでおいて……」
「もっ、弄っ……!? そ、そんな事」
「ないとでも? 僕、散々言いましたよね? 『初体験は好きな人とがいい。初体験をしたからには、その相手と結婚したい』って。その事を知っておきながら、結婚できない? 結婚できないですって……?」
「いやな、カーティス。俺なんかよりお前には」
「オリバーさんと結婚すると思ったから、釣り合う人間になれるよう前にも増して自分磨きのトレーニング頑張ったのに。今日こうしてカッコつけた格好してリリアナ王女殿下に引導を渡したのも、色々精算して最高にカッコいい状態で堂々と、あなたとの結婚を周囲に発表する為だったのに。それなのに……」
「え、待ってなにそれ聞いてない。……って、いやいや。カーティス、あのな」
「オリバーさんは僕を騙したんだ。初物食いだけして、ポイッと捨てるなんて……。僕はオリバーさん相手だから初めてを捧げてもいいと思ったのに……! うわーん、この裏切り者ー! 僕の純潔を奪った責任を取れー! オリバーさんと結婚できないなら、いっそもう死んでやるー!」
「うわー、ちょっ! カーティス!?」
カーティスが大声で泣き出して、しかもとんでもない事を口走るもんだから大変だ。怖々様子を伺っていた周囲の人達の視線が一気に変わる。カーティスにはお可哀想にと同情の目を、俺にはなんて酷い……と軽蔑の目が向けられる。ハッキリ言って、針の筵だ。いや、自業自得ではあるんだけどさ。何にせよ今や注目の的で好感度天元突破のカーティスをワンワン泣かせてしまっているこの状態はよろしくない。というか、それ以前にカーティスを泣かせてる事自体が、なんだかんだ彼をかわいがっている自負のある俺の精神によろしくない。何とか泣き止ませないと。
「カーティス、一先ず落ち着こう? こんなところで話はなんだし、取り敢えず場所を移さないか?」
「ゔぅ……嫌だ……オリバーさんなんて、もう知らない……」
「カーティス……どうしたら許してくれる?」
「グスッ……責任取って、結婚してくれなきゃ……許さない……」
「いやー、お前にはこれから先もっといい相手が」
「僕の人生に! あなた以上の相手が! いるわけないでしょう!」
笑って誤魔化そうとしたら目にも止まらぬ早さで胸ぐらを掴まれ、そのまま予想以上の勢いで反駁を食らう。驚いた……美人は身も蓋もなく泣いても美人なんだな……。涙で目元の輝きが増してるし、潤んだ瞳で凄く可愛い。……っていやいや、そんな事考えてる場合じゃなかった! いくら見蕩れる程に美しくとも、カーティスは怒っているんだから集中しないと。と、慌てた俺の耳に横合いからかけられた言葉が聞こえてくる。
「オリバー、お前……弟に手ぇ出した挙句に捨てる気なのか……?」
「ティ、ティモシー!」
声の方を見ると、そこには呆然とした様子ながらもそこはかとない怒りを背負った親友且つカーティスの兄、ティモシーの姿が。向こうとしては俺を信頼して弟を預けたのに、こんな事になってしまって寝耳に水だろう。メッチャ居た堪れない。カーティスとは別の意味で怖い。何とか和ませようと引き攣った笑みを浮かべると、恐ろしい真顔のまま口パクで責任を取れ、と強烈なメッセージを受け取ってしまう。こ、怖い……!
そして、今気がついた。その隣に居るのは王弟殿下じゃないか! いつも冷静沈着でどんな危機的状況も切り抜ける賢しさがあるあの人なら、きっとこの場を収めて俺を助けてくれる! だって、ほら! この場で唯一俺に笑顔を向けてくれ……あ、違うわこれ。俺に対して全てを諦め受け入れろ、と訴えてる笑みだわこれは。味方が居ねぇ。いや、味方なんて居なくなるような事をした俺が悪いんだけどさ……。もう、観念するしかないか……。
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします……」
引き攣る声でカーティスとの結婚を承諾する言葉を紡ぎながら、考える。セックスする前にカーティスに対して偉そうに、責任取らなくていいって言ったけど……。責任取るの、俺の方だった……。
辺りに響き渡るような大声で、大袈裟な身振り手振りも交えつつ、俺はカーティスとのそういう関係を完全否定した。だって、本当に俺とカーティスの間にある関係なんて、復讐する為に手助けした奴とされた奴、それ以上でも以下でもない。……いや、正確に言えば、まだあるか。俺がよくない気を起こして、カーティスの初体験をパクッと食べちまった。そういう関係が。
でも……俺あの時言ったよな? 『男同士でやるならノーカン』。『お前も俺も男だし、犬にでも噛まれたと思って経験に数えこまなけりゃいいんだよ』って。……うん、確かに言った。絶対言った。あの後カーティスも特にその事を気にした様子はなかったし、てっきり全部分かって納得した上で事に及んだとばかり思っていたんだが……。なんにせよかなり気軽な感じで寝たので、責任取って婚約や結婚云々が絡んでくるような話でなかったのは確実である。
「え、でも……。オリバーさん、僕言いましたよね? 『僕の初体験は本当に好きな人に捧げるんだ』って」
「言ってたけど……それがどうかしたのか?」
「それをあなたが前情報として知った上で、僕はあなたと関係する事を選択したんですよ? それはつまり、『僕はオリバーさんの事が好きだからこそ、初体験をあなたと済ませたい』という、ある意味告白的な僕の行為をあなたが受けいれてくれたって事なんじゃないですか?」
「いやいやいやいや! 知らんわ! 直接口で言え! 分かるかそんなもん!」
伝わるわけが! ない! いくらなんでも無理があり過ぎる! パズルのピースとピースがあってないのに無理矢理捩じ込んで、繋がった気分になってるだけで実は繋がってないやつだぞそれ!? 動かしたらバラける! 絵柄があってない! 前後関係がチグハグ!
「待て! そもそもお前俺の事好きだったの!? 初耳なんだが!?」
「そりゃあ、告白とかしてませんし……」
「先にしろよ! 告白を!」
だんだん頭痛くなってきた。この子こんなに話通じない系だったっけ? 最近の子怖いよ。思考がぶっ飛び過ぎ。何考えてるかわかんない。2歳しか変わらないのに、ジェネレーションギャップがキツイ。誰か俺を助けてくれ。せめて通訳をつけろ。いや、おふざけとかじゃなく、割と真剣に。
「何で? 小さい頃チョロっと遊んだげて、最近になって再会してまた少しサポートしただけじゃん。惚れる要素ゼロじゃん」
「むしろ小さい頃優しくしてくれた憧れのお兄さんと、成長して窮地に陥っている時に再会して、助けてもらえたんですよ? 普通に惚れません?」
「そこだけ切り取ると、惚れてもおかしくないように聞こえるなぁ、不思議だなぁ……」
でも、マジで大した事してないじゃん。俺はコーエン家に遊びに行ったら大量に出てくる三時のおやつが目当てで、腹一杯食った上にお持ち帰りしても怒られないよう末っ子のカーティスの面倒見ていい子ちゃんアピールしてただけだし。ほら、あの子おやつ目当てか……って思われても、まあお兄ちゃん達に置いてかれがちな末っ子の面倒見てくれるなら……ってなるじゃんか。なんか許されそうじゃんね? マジでそんなくっだらない理由でカーティスの相手してた不埒者なんだけど。
窮地に陥ってたの助けたっていうのも、長年のリリアナ王女一派からの虐待行為でボロボロになってたカーティスを、ヨチヨチして飯食わせて手入れしてただけだ。ティモシーが持ってきたコーエン家の金を使って。マジでなんも特別な事してない。謙遜とか冗談抜きに一切してない。誰でもできる事を、たまたま頼まれた俺がやった。それだけだ。それで惚れちゃうのはどうなのよ。チョロ過ぎない……?
「やりたい盛りで鬱憤溜まってて、男同士ならノーカン! を信じて手ぇ出したんじゃないのかよ……」
「そんなわけないでしょう! 僕は真剣に、生涯愛するのはオリバーさんだけだという強い意志の元、関係を持ちました!」
「マジかー。うん、その目を見る限りマジだなー。目ん玉ひん剥いてこっち見んの止めろー? シンプルに怖いぞー?」
やべえよカーティス。思った以上にやべえ。貞操観念が500年くらい前で止まってる。嘘だろおい。手ぇ出しちまったじゃねぇか。え、て事は何? 俺ってばこのままカーティスとゴールイン? 年貢の納め時? 家庭を持つの? この俺が? いやいやいやいや! 無理無理無理無理! そんなの絶対駄目だって! カーティスの結婚相手は最低限度、可愛くて家柄もよくて性格もいい子じゃなきゃ駄目だから! 俺はその全部に当て嵌らないから駄目だって! カーティスはこれまで苦労した分もっといい相手を見つけて、幸せになんなきゃなの!
よし、フろう。誠心誠意謝って、土下座してでも許してもらってフろう。最終的には俺お得意のなんかいい感じに言い包める技術で何とかなる。……筈。多分。きっと。少なくとも、俺はそう信じてる!
「カーティス。よーく聞いてくれ。俺はお前の事は好きだが、それは付き合ったりとかそういう意味の好きじゃない。なので婚約はしないし、結婚もできない。……分かってくれるな?」
「え……でも、オリバーさん僕の初体験を貰ってくれたんじゃ……」
「いいか? 初めての相手に拘ってたら視野が狭くなって、本当の運命の相手を見つけられなくなってしまう。今のトレンドは最初から決め打ちするんじゃなくて、数をこなしてその中から最適解を選ぶ方法だ。お前には沢山の可能性がある。素晴らしい未来もある。どうか俺みたいなつまらない1人に囚われず、広い世界に飛び立ってその手で本当の幸せと愛する相手を掴み取るんだ」
うん、我ながらなかなかいい弁舌だ。今の俺のこの話を聞いたら、きっとカーティスも納得の上で結婚を諦めてくれるに違いない。感無量の面持ちのカーティスが『有難う、オリバーさん。僕目が覚めたよ!』とでも言うのを期待してニッコリ笑いかけようとして、そこで俺はギョッとして笑顔を引っこめる。それも無理もない。だって、さっきまで俺と結婚、結婚と言っていた時はホンワカ笑っていたカーティスが、一目見て面食らってしまう程に絶望の表情を浮かべていたからだ。
「カ、カーティス? どうしたんだ……?」
「どうした? どうしたですって……? よくもまあそんな事言えますね。僕の事弄んでおいて……」
「もっ、弄っ……!? そ、そんな事」
「ないとでも? 僕、散々言いましたよね? 『初体験は好きな人とがいい。初体験をしたからには、その相手と結婚したい』って。その事を知っておきながら、結婚できない? 結婚できないですって……?」
「いやな、カーティス。俺なんかよりお前には」
「オリバーさんと結婚すると思ったから、釣り合う人間になれるよう前にも増して自分磨きのトレーニング頑張ったのに。今日こうしてカッコつけた格好してリリアナ王女殿下に引導を渡したのも、色々精算して最高にカッコいい状態で堂々と、あなたとの結婚を周囲に発表する為だったのに。それなのに……」
「え、待ってなにそれ聞いてない。……って、いやいや。カーティス、あのな」
「オリバーさんは僕を騙したんだ。初物食いだけして、ポイッと捨てるなんて……。僕はオリバーさん相手だから初めてを捧げてもいいと思ったのに……! うわーん、この裏切り者ー! 僕の純潔を奪った責任を取れー! オリバーさんと結婚できないなら、いっそもう死んでやるー!」
「うわー、ちょっ! カーティス!?」
カーティスが大声で泣き出して、しかもとんでもない事を口走るもんだから大変だ。怖々様子を伺っていた周囲の人達の視線が一気に変わる。カーティスにはお可哀想にと同情の目を、俺にはなんて酷い……と軽蔑の目が向けられる。ハッキリ言って、針の筵だ。いや、自業自得ではあるんだけどさ。何にせよ今や注目の的で好感度天元突破のカーティスをワンワン泣かせてしまっているこの状態はよろしくない。というか、それ以前にカーティスを泣かせてる事自体が、なんだかんだ彼をかわいがっている自負のある俺の精神によろしくない。何とか泣き止ませないと。
「カーティス、一先ず落ち着こう? こんなところで話はなんだし、取り敢えず場所を移さないか?」
「ゔぅ……嫌だ……オリバーさんなんて、もう知らない……」
「カーティス……どうしたら許してくれる?」
「グスッ……責任取って、結婚してくれなきゃ……許さない……」
「いやー、お前にはこれから先もっといい相手が」
「僕の人生に! あなた以上の相手が! いるわけないでしょう!」
笑って誤魔化そうとしたら目にも止まらぬ早さで胸ぐらを掴まれ、そのまま予想以上の勢いで反駁を食らう。驚いた……美人は身も蓋もなく泣いても美人なんだな……。涙で目元の輝きが増してるし、潤んだ瞳で凄く可愛い。……っていやいや、そんな事考えてる場合じゃなかった! いくら見蕩れる程に美しくとも、カーティスは怒っているんだから集中しないと。と、慌てた俺の耳に横合いからかけられた言葉が聞こえてくる。
「オリバー、お前……弟に手ぇ出した挙句に捨てる気なのか……?」
「ティ、ティモシー!」
声の方を見ると、そこには呆然とした様子ながらもそこはかとない怒りを背負った親友且つカーティスの兄、ティモシーの姿が。向こうとしては俺を信頼して弟を預けたのに、こんな事になってしまって寝耳に水だろう。メッチャ居た堪れない。カーティスとは別の意味で怖い。何とか和ませようと引き攣った笑みを浮かべると、恐ろしい真顔のまま口パクで責任を取れ、と強烈なメッセージを受け取ってしまう。こ、怖い……!
そして、今気がついた。その隣に居るのは王弟殿下じゃないか! いつも冷静沈着でどんな危機的状況も切り抜ける賢しさがあるあの人なら、きっとこの場を収めて俺を助けてくれる! だって、ほら! この場で唯一俺に笑顔を向けてくれ……あ、違うわこれ。俺に対して全てを諦め受け入れろ、と訴えてる笑みだわこれは。味方が居ねぇ。いや、味方なんて居なくなるような事をした俺が悪いんだけどさ……。もう、観念するしかないか……。
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします……」
引き攣る声でカーティスとの結婚を承諾する言葉を紡ぎながら、考える。セックスする前にカーティスに対して偉そうに、責任取らなくていいって言ったけど……。責任取るの、俺の方だった……。
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