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第2章
アリスと先輩と瞬間移動
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これはアリスたちが最上級学年に移る前のことです。
学年が違ってしまい、ゆっくりお話ができるのは食堂での時間だけになってしまいました。
とある日のお昼の時間。
アリスが頬を上気させて私の手を握ってきました。
すかさずジェニーがさっと結界を張ります。
いつも、この阿吽の呼吸に感嘆します。
「先輩が、次の休みに一緒に街へ行こう、って言ってくれたの!」
「まぁ!」
気が付くと私はうれしくて大きな声を上げていました。ジェニーの結界に感謝です。
デートですね、なんて素敵なんでしょう。アリスもクリス先輩もお互いに好意を抱いているのは魔力の溢れ方で分かっていましたが、はっきりと恋人としてお付き合いはしていませんでした。いよいよ、お付き合いが始まるのでしょうか!
「だから、二人も次の休みは空けておいてね!」
え…?
私は早とちりしたのでしょうか?盛り上がった気持ちが急にしぼんでいくのを感じながら、ジェニーの方を見ました。ジェニーも微かに目が丸くなっています。ジェニーの驚くところを見たのは初めてです。
恐る恐る訊いてみました。
「あの、クリス先輩はお友だちを連れていらっしゃるの?」
もしかすると、まずはグループで遊びに行こうと計画されていたのでしょうか。
「ううん?先輩は、二人で一緒に街へ行こう、って言ってたから、連れてこないと思う」
え…?
「先輩と二人きりなんて、心臓が持たない!絶対無理!」
え…?
私はアリスにがくがくと揺すぶられていたのですが、アリスの思考についていけていないようです。
そして、先ほどから、アリスの思考よりも気になる状況が起きています。
隣からピリピリとした魔力が微かに溢れています。
私は断固としてそちらは見ませんでしたが、くっきりとした発音で言葉が発せられました。
「分かったわ。行きましょう。」
行くのですか!?
私は振り向きそうになりましたが、アリスの息を呑みコクコク頷く様を見て、慌てて顔を戻しました。絶対、見ません。
「でも、クリスを驚かせたいから、内緒にしましょう」
穏やかな声でしたが、ピリピリとした魔力は最早はっきりと溢れています。アリスは目を見開いてカクっと一度だけ頷きました。私は、絶対、見ません。
二人と別れて教室に向かいながら、ふと気が付きました。
理由はともあれ、街へ遊びに行くのです。まだ幼いこともあり、お友だちとだけで遊びに行ったことはありません。セディと行ったこともありません。セディといつか行けるでしょうか。上気した頬を手で隠しながら、とても次のお休みを待ち遠しく思っていました。
すっかり忘れていましたが、叔父様のブレスレットにようやく出番がくるようです。
そして、とうとう街へ遊びに行く日です!
いえ、違います、アリスの初デートの日です。
待ち合わせの門で、私たち「3人」に気が付いたクリス先輩は、一瞬目を瞠り、そして小さく息を吐いた後、笑顔で出迎えてくださいました。先輩の優しさが申し訳ないです。
町に着くと、人でいっぱいです。
今日は月に一度の市が開かれる日なのだそうです。
たくさんのお店に、たくさんの人です。私は初めての光景に気持ちが湧きたちました。ジェニーに連れられて、お店巡りです。ジェニーは上手にアリスとクリス先輩から遠ざかって私と二人になったのです。ジェニーは始めからこうする予定で付いてきたのでしょう。さすがです。
噴水の近くでは、芸人の方が、火を噴き出したり、玉の上で逆立ちしたりしています。魔力は感じません。魔法を使わずにどうしてこんなことができるのでしょうか。
目を奪われました。
お菓子を売っている屋台では、生れて初めてお買い物をしたのです。
お店のご主人は、「お嬢ちゃんたち、可愛いからおまけだよ!」とお菓子を余分に盛ってくださいました。褒めて下さる上に、おまけまでして下さるなんて、なんていい人なのでしょう!
うれしくて、楽しくて、とうとう封印石が光を放ってしまいました。
「うふふ、興奮してしまいました」
照れながらジェニーをみると、ジェニーは目を細めて私の頭を撫でました。
「これは、アリスに感謝ね」
「はい、大感謝です!」
「そうでしょう?」
え…?
恐る恐る振り返ると、やはりアリスがいます。クリス先輩は見当たりません。アリスから魔力を感じますので、得意の瞬間移動で来たようです。
「あの、先輩は…」
「二人を探していたら、はぐれちゃった」
私の隣から隠す気配もなくピリピリとした魔力が立ち上っています。ですが、次の瞬間、魔力が和らぎました。
「アリス、探したよ」
クリス先輩も瞬間移動で現れたのです。アリスを見て、心底、安堵して顔を緩めています。これにはアリスも俯いて「ごめんなさい」と呟いています。
先輩はクスっと笑うとアリスの手を取りました。アリスは俯いたまま一瞬震えました。
それでもいつものように二人から淡い魔力が立ち上っています。
「アリス、僕は急ぎすぎたみたいだね」
アリスはますます俯いてしまいました。
そんなアリスをいつもの優しい眼差しで見つめた先輩の魔力が、一瞬、濃くなりました。
「アリス、ゆっくりでいいから、僕のことを考えてくれないかい?」
低く柔らかな声がアリスを包み込みます。先輩の右手がアリスの頤に触れ、アリスと目を合わせられるようにしました。アリスは耳どころか首まで赤く染まっています。
先輩の魔力が一層濃くなり、呼応するようにアリスの魔力も濃くなり始めました。
ここから先は聞いてはいけない気がします。
私はジェニーをぎゅっと抱きしめ、封印石に結界を張り、目を閉じて学園に漂う叔父様の魔力の残りに集中しました。ブレスレットの守護石が輝きます。
そして、めまいのような感覚の後、学園の叔父様の部屋にいたのです。
ジェニーが驚いて辺りを見回しながら
「シルヴィ、あなたが手紙以外で瞬間移動をできるなんて、知らなかったわ」
と囁きました。
「私もできるとは思わなかったです」
セディの手紙の転移の仕方を真似てみたのです。成功はしましたが、初めての魔力の使い方に疲れで重くなった体に逆らえず、床に座り込みながら答えて、私は失言に気が付きました。
「まさか、初めて、とか?」
ゆっくりと、くっきりとした発音で言葉が発せられたのです。
ピリピリとした魔力は肌を突き刺すようです。
あぁ、アリス、私もとうとうジェニーの顔を見る番が来てしまったようです…。
どうか後でジェニーのことを語り合うことに付き合ってください。
ひとまず、私は俯いていた顔を上げる勇気をかき集めていました。
学年が違ってしまい、ゆっくりお話ができるのは食堂での時間だけになってしまいました。
とある日のお昼の時間。
アリスが頬を上気させて私の手を握ってきました。
すかさずジェニーがさっと結界を張ります。
いつも、この阿吽の呼吸に感嘆します。
「先輩が、次の休みに一緒に街へ行こう、って言ってくれたの!」
「まぁ!」
気が付くと私はうれしくて大きな声を上げていました。ジェニーの結界に感謝です。
デートですね、なんて素敵なんでしょう。アリスもクリス先輩もお互いに好意を抱いているのは魔力の溢れ方で分かっていましたが、はっきりと恋人としてお付き合いはしていませんでした。いよいよ、お付き合いが始まるのでしょうか!
「だから、二人も次の休みは空けておいてね!」
え…?
私は早とちりしたのでしょうか?盛り上がった気持ちが急にしぼんでいくのを感じながら、ジェニーの方を見ました。ジェニーも微かに目が丸くなっています。ジェニーの驚くところを見たのは初めてです。
恐る恐る訊いてみました。
「あの、クリス先輩はお友だちを連れていらっしゃるの?」
もしかすると、まずはグループで遊びに行こうと計画されていたのでしょうか。
「ううん?先輩は、二人で一緒に街へ行こう、って言ってたから、連れてこないと思う」
え…?
「先輩と二人きりなんて、心臓が持たない!絶対無理!」
え…?
私はアリスにがくがくと揺すぶられていたのですが、アリスの思考についていけていないようです。
そして、先ほどから、アリスの思考よりも気になる状況が起きています。
隣からピリピリとした魔力が微かに溢れています。
私は断固としてそちらは見ませんでしたが、くっきりとした発音で言葉が発せられました。
「分かったわ。行きましょう。」
行くのですか!?
私は振り向きそうになりましたが、アリスの息を呑みコクコク頷く様を見て、慌てて顔を戻しました。絶対、見ません。
「でも、クリスを驚かせたいから、内緒にしましょう」
穏やかな声でしたが、ピリピリとした魔力は最早はっきりと溢れています。アリスは目を見開いてカクっと一度だけ頷きました。私は、絶対、見ません。
二人と別れて教室に向かいながら、ふと気が付きました。
理由はともあれ、街へ遊びに行くのです。まだ幼いこともあり、お友だちとだけで遊びに行ったことはありません。セディと行ったこともありません。セディといつか行けるでしょうか。上気した頬を手で隠しながら、とても次のお休みを待ち遠しく思っていました。
すっかり忘れていましたが、叔父様のブレスレットにようやく出番がくるようです。
そして、とうとう街へ遊びに行く日です!
いえ、違います、アリスの初デートの日です。
待ち合わせの門で、私たち「3人」に気が付いたクリス先輩は、一瞬目を瞠り、そして小さく息を吐いた後、笑顔で出迎えてくださいました。先輩の優しさが申し訳ないです。
町に着くと、人でいっぱいです。
今日は月に一度の市が開かれる日なのだそうです。
たくさんのお店に、たくさんの人です。私は初めての光景に気持ちが湧きたちました。ジェニーに連れられて、お店巡りです。ジェニーは上手にアリスとクリス先輩から遠ざかって私と二人になったのです。ジェニーは始めからこうする予定で付いてきたのでしょう。さすがです。
噴水の近くでは、芸人の方が、火を噴き出したり、玉の上で逆立ちしたりしています。魔力は感じません。魔法を使わずにどうしてこんなことができるのでしょうか。
目を奪われました。
お菓子を売っている屋台では、生れて初めてお買い物をしたのです。
お店のご主人は、「お嬢ちゃんたち、可愛いからおまけだよ!」とお菓子を余分に盛ってくださいました。褒めて下さる上に、おまけまでして下さるなんて、なんていい人なのでしょう!
うれしくて、楽しくて、とうとう封印石が光を放ってしまいました。
「うふふ、興奮してしまいました」
照れながらジェニーをみると、ジェニーは目を細めて私の頭を撫でました。
「これは、アリスに感謝ね」
「はい、大感謝です!」
「そうでしょう?」
え…?
恐る恐る振り返ると、やはりアリスがいます。クリス先輩は見当たりません。アリスから魔力を感じますので、得意の瞬間移動で来たようです。
「あの、先輩は…」
「二人を探していたら、はぐれちゃった」
私の隣から隠す気配もなくピリピリとした魔力が立ち上っています。ですが、次の瞬間、魔力が和らぎました。
「アリス、探したよ」
クリス先輩も瞬間移動で現れたのです。アリスを見て、心底、安堵して顔を緩めています。これにはアリスも俯いて「ごめんなさい」と呟いています。
先輩はクスっと笑うとアリスの手を取りました。アリスは俯いたまま一瞬震えました。
それでもいつものように二人から淡い魔力が立ち上っています。
「アリス、僕は急ぎすぎたみたいだね」
アリスはますます俯いてしまいました。
そんなアリスをいつもの優しい眼差しで見つめた先輩の魔力が、一瞬、濃くなりました。
「アリス、ゆっくりでいいから、僕のことを考えてくれないかい?」
低く柔らかな声がアリスを包み込みます。先輩の右手がアリスの頤に触れ、アリスと目を合わせられるようにしました。アリスは耳どころか首まで赤く染まっています。
先輩の魔力が一層濃くなり、呼応するようにアリスの魔力も濃くなり始めました。
ここから先は聞いてはいけない気がします。
私はジェニーをぎゅっと抱きしめ、封印石に結界を張り、目を閉じて学園に漂う叔父様の魔力の残りに集中しました。ブレスレットの守護石が輝きます。
そして、めまいのような感覚の後、学園の叔父様の部屋にいたのです。
ジェニーが驚いて辺りを見回しながら
「シルヴィ、あなたが手紙以外で瞬間移動をできるなんて、知らなかったわ」
と囁きました。
「私もできるとは思わなかったです」
セディの手紙の転移の仕方を真似てみたのです。成功はしましたが、初めての魔力の使い方に疲れで重くなった体に逆らえず、床に座り込みながら答えて、私は失言に気が付きました。
「まさか、初めて、とか?」
ゆっくりと、くっきりとした発音で言葉が発せられたのです。
ピリピリとした魔力は肌を突き刺すようです。
あぁ、アリス、私もとうとうジェニーの顔を見る番が来てしまったようです…。
どうか後でジェニーのことを語り合うことに付き合ってください。
ひとまず、私は俯いていた顔を上げる勇気をかき集めていました。
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