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第3章
私の誓い
頭の中に浮かぶことは、セディの名前だけでした。
――セディ!
目の前に、驚きに目を見開いたセディの顔が現れました。
私は転移していたのです。
宙に浮いたまま、私はセディにしがみつきました。
セディの身体が強張り、一瞬、離れようとするのを感じましたが、私はひたすらセディにしがみつきました。
セディを感じていたかったのです。
しばらくセディは固まったままでしたが、やがて耳に微かな吐息が聞こえ、次の瞬間、空間が歪みました。
ほんの短い時間で、空間は定まりました。セディがお城で泊まるときの部屋に転移していました。
「ごめん、僕の力では二人でシルヴィの屋敷に転移することはできないんだ」
私は再びセディにしがみつく腕に力を込めました。
セディがいてくれればどこでも良かったのです。
微かに流れ続ける殿下の魔力に、意識が向きそうになります。
魔力を忘れたくて、少しでもセディを感じ取りたかったのです。
「一体、どうしたの」
セディは尋ねながら、慎重な手つきで髪を撫でてくれます。
私は嗚咽を必死に抑えつけようと、何度も大きく息を吸ってみたものの、涙は止めどもなく溢れ続けます。
突然、ノックの音が響きました。
「セドリック殿、ご在室ですか?殿下がお呼びです」
殿下という言葉に、私は息を呑み胸元を握りしめました。
セディは「すぐ伺います、とお伝えください」とドア越しに返事を投げかけ、私に向き直った途端、俯いた私でも分かるほどにセディは硬直しました。
喘ぐような声が降ってきました。
「誓いの印?…殿下の魔力?」
セディの腕輪から私の魔力が発動するのを感じました。
顔を上げると、セディの顔は白いまでに血の気が引いています。
「違うの!違うのっ!これは殿下が、ふざけて…!」
私は叫んでいました。気持ちが昂り、魔力が溢れだし封印石は強く光を放っています。
呆然とした様子で、セディは呟きます。
「誓いの印は、誓いに真摯な想いを込めなければそもそも術が発動しないと、ハリーが…」
分かっています。殿下の想いがふざけたものではないことは分かっています。
ですが、今の私には、殿下を思いやる気持ちはありませんでした。
私はセディの腕にしがみつきます。セディの身体は固いままです。
「私は、セディから印をもらいたかったの!」
そうです。印のことを知ったときから、いつかセディからもらいたいと夢見ていました。
「誰かに印をもらうなら、セディが良かったの…!」
封印石の光は目を開けていられない程です。私は石をかなぐり捨てました。
「シルヴィ…」
「こんなこと、嫌!」
体を壊せば印も何もかもが消えるのではないかと、私は自分に魔力の攻撃をかけようとしました。
「シルヴィ、落ち着いて…!」
セディは私を抱きしめてくれました。腕輪の治癒は発動したままなのに、それでも「落ち着いて…」と何度も声をかけてくれます。
セディと私の息遣いが聞こえるほどには落ち着いたころ、
これを否定されたら私は息絶えるだろうと、緊張のあまり体が冷えていくのを感じながら、私は一番恐れていることを口にしました。
「セディ、こんな私でもセディの隣に場所はある?」
私の声は震えていました。
セディは私の頭を撫でながら、間髪入れずに答えを返してくれました。
「君がだれを選ぼうと、僕の隣は君の場所だよ。それは変わらない」
その答えは思わず涙が零れるほどうれしいものなのに、私の口から出た言葉は違っていました。
「隣では嫌」
口に出したことで、私は自分の望みをはっきり悟りました。
私はセディの淡い緑の瞳をしっかりと見つめました。
「隣では嫌なの。セディの中に場所が欲しいの」
セディは明らかな戸惑いを浮かべます。
「僕の中…?」
私は頷きました。望みというよりも祈りに似た思いでした。
「お願い…、セディの中にいさせて」
私の声はかすれていました。
セディは戸惑いを隠せないまま、私を見つめ返します。
「お願いよ、セディ」
セディの服を握りしめます。涙が溢れましたが、セディから目を逸らしませんでした。
セディは指で涙を拭いながら、困ったように眉を下げて、囁きました。
「僕にできることなら」
私は感謝の想いを込めて、頷きました。
私は卑怯です。
お願い、と言いながら、セディは私の望みを叶えてくれるとどこかで確信していました。
――それでも
私は自分の願いを取りました。
セディのシャツに手を伸ばします。
手では嫌です。手では足りません。
ボタンを襟から順に外していきます。
セディは息を呑みましたが、私を止めることはありませんでした。
やがて、鼓動が最も大きく聞こえる場所までシャツを開けると、私は淡い緑の瞳をもう一度見つめました。
その瞳は緊張に見開かれながらも、私の全てを受け入れてくれるものでした。
私は目を閉じ、想いを言葉に載せました。
「私は、私の魔力の全てをかけて、生涯の愛を貴方に誓います」
セディの胸に口づけました。
その瞬間、私の魔力は強さを増し、セディの身体へ流れ込みます。
魔力はあらゆるところへ行き渡り、私は魔力を通してセディの指先、心臓、髪の先まで感じ取ることが出来ました。
そして、私の魔力が収まると、セディの胸にはっきりと印が刻まれていたのです。
胸から唇を離しても、私は、セディの鼓動を、魔力を通して感じ取ることができました。セディの魔力に包まれる心地がします。
私は心地よさとうれしさから涙がまた零れてしまいました。
セディが私を抱きしめます。
息が苦しくなるほど、力の限り抱きしめてくれます。
「僕の中に、シルヴィ、君を感じる」
髪に口づけが落とされ、耳元に囁かれます。
「シルヴィ、君が僕の中にいてくれるんだね。ずっと」
セディは、髪を撫でながら、耳に、額に口づけを落とします。
私の頬を包み込み、顔を上げさせました。
迎えたセディの顔は、私の大好きな、あの見惚れずにはいられない綺麗な笑顔でした。
強い歓喜が私の体を貫くのを覚えました。
やがてセディは眼差しをゆっくりと強いものに変えると、目を伏せ私の顔に近づいてきます。
セディの息が私にかかったとき、再びノックが響きました。
「セドリック、殿下が気落ちしている。傍についてやれ」
叔父様の身体に沁みこむ声でした。
私とセディは思わず見合って、笑いをこぼしました。
それでも、セディはドアを開ける前にもう一度額に口づけ、私は頬を熱くして叔父様に向き合うことになったのでした。
――セディ!
目の前に、驚きに目を見開いたセディの顔が現れました。
私は転移していたのです。
宙に浮いたまま、私はセディにしがみつきました。
セディの身体が強張り、一瞬、離れようとするのを感じましたが、私はひたすらセディにしがみつきました。
セディを感じていたかったのです。
しばらくセディは固まったままでしたが、やがて耳に微かな吐息が聞こえ、次の瞬間、空間が歪みました。
ほんの短い時間で、空間は定まりました。セディがお城で泊まるときの部屋に転移していました。
「ごめん、僕の力では二人でシルヴィの屋敷に転移することはできないんだ」
私は再びセディにしがみつく腕に力を込めました。
セディがいてくれればどこでも良かったのです。
微かに流れ続ける殿下の魔力に、意識が向きそうになります。
魔力を忘れたくて、少しでもセディを感じ取りたかったのです。
「一体、どうしたの」
セディは尋ねながら、慎重な手つきで髪を撫でてくれます。
私は嗚咽を必死に抑えつけようと、何度も大きく息を吸ってみたものの、涙は止めどもなく溢れ続けます。
突然、ノックの音が響きました。
「セドリック殿、ご在室ですか?殿下がお呼びです」
殿下という言葉に、私は息を呑み胸元を握りしめました。
セディは「すぐ伺います、とお伝えください」とドア越しに返事を投げかけ、私に向き直った途端、俯いた私でも分かるほどにセディは硬直しました。
喘ぐような声が降ってきました。
「誓いの印?…殿下の魔力?」
セディの腕輪から私の魔力が発動するのを感じました。
顔を上げると、セディの顔は白いまでに血の気が引いています。
「違うの!違うのっ!これは殿下が、ふざけて…!」
私は叫んでいました。気持ちが昂り、魔力が溢れだし封印石は強く光を放っています。
呆然とした様子で、セディは呟きます。
「誓いの印は、誓いに真摯な想いを込めなければそもそも術が発動しないと、ハリーが…」
分かっています。殿下の想いがふざけたものではないことは分かっています。
ですが、今の私には、殿下を思いやる気持ちはありませんでした。
私はセディの腕にしがみつきます。セディの身体は固いままです。
「私は、セディから印をもらいたかったの!」
そうです。印のことを知ったときから、いつかセディからもらいたいと夢見ていました。
「誰かに印をもらうなら、セディが良かったの…!」
封印石の光は目を開けていられない程です。私は石をかなぐり捨てました。
「シルヴィ…」
「こんなこと、嫌!」
体を壊せば印も何もかもが消えるのではないかと、私は自分に魔力の攻撃をかけようとしました。
「シルヴィ、落ち着いて…!」
セディは私を抱きしめてくれました。腕輪の治癒は発動したままなのに、それでも「落ち着いて…」と何度も声をかけてくれます。
セディと私の息遣いが聞こえるほどには落ち着いたころ、
これを否定されたら私は息絶えるだろうと、緊張のあまり体が冷えていくのを感じながら、私は一番恐れていることを口にしました。
「セディ、こんな私でもセディの隣に場所はある?」
私の声は震えていました。
セディは私の頭を撫でながら、間髪入れずに答えを返してくれました。
「君がだれを選ぼうと、僕の隣は君の場所だよ。それは変わらない」
その答えは思わず涙が零れるほどうれしいものなのに、私の口から出た言葉は違っていました。
「隣では嫌」
口に出したことで、私は自分の望みをはっきり悟りました。
私はセディの淡い緑の瞳をしっかりと見つめました。
「隣では嫌なの。セディの中に場所が欲しいの」
セディは明らかな戸惑いを浮かべます。
「僕の中…?」
私は頷きました。望みというよりも祈りに似た思いでした。
「お願い…、セディの中にいさせて」
私の声はかすれていました。
セディは戸惑いを隠せないまま、私を見つめ返します。
「お願いよ、セディ」
セディの服を握りしめます。涙が溢れましたが、セディから目を逸らしませんでした。
セディは指で涙を拭いながら、困ったように眉を下げて、囁きました。
「僕にできることなら」
私は感謝の想いを込めて、頷きました。
私は卑怯です。
お願い、と言いながら、セディは私の望みを叶えてくれるとどこかで確信していました。
――それでも
私は自分の願いを取りました。
セディのシャツに手を伸ばします。
手では嫌です。手では足りません。
ボタンを襟から順に外していきます。
セディは息を呑みましたが、私を止めることはありませんでした。
やがて、鼓動が最も大きく聞こえる場所までシャツを開けると、私は淡い緑の瞳をもう一度見つめました。
その瞳は緊張に見開かれながらも、私の全てを受け入れてくれるものでした。
私は目を閉じ、想いを言葉に載せました。
「私は、私の魔力の全てをかけて、生涯の愛を貴方に誓います」
セディの胸に口づけました。
その瞬間、私の魔力は強さを増し、セディの身体へ流れ込みます。
魔力はあらゆるところへ行き渡り、私は魔力を通してセディの指先、心臓、髪の先まで感じ取ることが出来ました。
そして、私の魔力が収まると、セディの胸にはっきりと印が刻まれていたのです。
胸から唇を離しても、私は、セディの鼓動を、魔力を通して感じ取ることができました。セディの魔力に包まれる心地がします。
私は心地よさとうれしさから涙がまた零れてしまいました。
セディが私を抱きしめます。
息が苦しくなるほど、力の限り抱きしめてくれます。
「僕の中に、シルヴィ、君を感じる」
髪に口づけが落とされ、耳元に囁かれます。
「シルヴィ、君が僕の中にいてくれるんだね。ずっと」
セディは、髪を撫でながら、耳に、額に口づけを落とします。
私の頬を包み込み、顔を上げさせました。
迎えたセディの顔は、私の大好きな、あの見惚れずにはいられない綺麗な笑顔でした。
強い歓喜が私の体を貫くのを覚えました。
やがてセディは眼差しをゆっくりと強いものに変えると、目を伏せ私の顔に近づいてきます。
セディの息が私にかかったとき、再びノックが響きました。
「セドリック、殿下が気落ちしている。傍についてやれ」
叔父様の身体に沁みこむ声でした。
私とセディは思わず見合って、笑いをこぼしました。
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