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第3章
セディの誓い
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とても困っています。
なぜだか皆さんが跪いているのです。
それもどうやら私に向かって跪いているのです。
何とか止めていただきたいと静まり返った広間で狼狽える私の耳に、柔らかくよく通る声が小さく優しく呼びかけました。
「シルヴィ」
柔らかな淡い緑の瞳が、優しく私を見つめています。
そして迎えるように両手を広げてくれたのです。
気が付けば足を踏み出していた私は、力強く抱き込まれました。
服を通しても伝わる鍛えられた体の温もりを感じた途端、涙が溢れてきます。
自分でもなぜ涙が止まらないのか分かりません。
殿下の暗殺が未遂に終わった安堵でしょうか。セディが無事だった安堵でしょうか。
苦しい程強く抱きしめてくれるセディの腕に、学園を卒業してから初めて、セディの下に確かに帰ってきたことを感じられます。
もうこの場所から、この温もりから離れたくはありませんでした。
セディの温かな手は、私の頭を優しく撫でてくれます。
会えない日には、セディの顔を遠くからでも見られなかった日には、話したいことが数えきれないほどありました。
ですが、今は、ただ、セディを抱きしめるだけで胸が一杯で、何も浮かびません。
「セディ」
セディの名前だけが口から何度も零れていきます。
セディは、私の髪に、額に、頬に口づけながら、何度も私の名を囁き返してくれます。
私の頬を両手で包み込み、淡い緑の瞳が私を捕らえました。
優しい瞳は、強さと切なさを湛え、私の鼓動は高まりました。
「シルヴィ、僕の誕生日は少し先だけど」
セディは長いまつ毛で瞳を隠し、私の額に額を合わせました。そして、息を吸い込んだ後、囁きました。
『僕の願いを叶えて欲しい』
セディの心の声です。
学園に行く前は、セディに近づくといつも聞くことのできた、セディの心の声でした。
身体に光が駆け抜けた気がしました。私は再び涙を溢れさせながら、頷きました。
「何なりと」
輝くような笑顔をセディは浮かべます。私はあらゆることを全て忘れて見惚れていました。
やがて笑顔は穏やかに収まり、強く熱い眼差しが向けられました。
『私、セドリック・アンドリュー・フォンドは、私の魔力、私の全てをかけて、生涯の愛を誓います』
セディは目を閉じ、ゆっくりと顔を近づけました。顎に柔らかな茶色の髪が触れ、首元に熱く柔らかな唇を感じ、私は自分の脈を感じました。
熱い唇が更に押し当てられたとき、脈に沿ってセディの魔力が私に入り込み、体を駆け巡ったのです。
身体は沸き立つような歓喜をもって、待ちわびていたように魔力を受け入れます。
魔力は隅々に沁み渡り、爪の先までセディの魔力に満たされた感覚がしました。
そして、時間をかけてセディの唇はゆっくりと離れていきました。
離れてしまった熱を私の肌は恋しがっていましたが、見ることはできなくとも、しっかりと刻みつけられた印から、脈打つたびに、セディの魔力を感じ取れます。
私が付けた印も同じようにセディの脈を感じ、魔力が流れていきます。
確かな繋がりがセディと私にできていました。
『シルヴィ、愛してる』
「私も…、…愛し…」
気持ちを確かに言葉にしたいのに、涙で言葉がつかえてしまいます。
セディは目を細めクスリと笑って、私の涙に口づけてくれます。
涙をたどって口づけが頬を滑り、私は触れられた肌が熱く脈を打つ気がしました。
顎まで滑り下りた口づけはそこで止まり、涙を吸われたとき、灼かれたような熱を帯び、私は息を呑みました。
その瞬間、セディは私の口を唇で塞ぎました。
セディの熱い唇は、私の唇まで熱くします。重なった口からお互いの高まった魔力が流れ込み、体を駆け巡ります。
駆け巡る魔力と歓喜の熱で、溶けそうな気がします。私の息は乱れました。
セディも熱い吐息を零しながら、何度も私の唇を啄みます。
セディが私の頭を抱え込み、一際強く唇を押し当てた時、凍りつくような強い魔力と沁み通る声が漂いました。
「いつまで続けるつもりだ」
叔父様です。
我に返り、離れようとしましたが、セディは私を抱え込み、口づけたままです。
私の耳は、広間のいたるところで起きている咳払いを捉えました。
たくさんの人の前で、私は何ていうことを…
今は恥ずかしさで体中から火が出そうな思いです。
気もそぞろになった私を感じ取り、セディがようやく口を解放してくれました。
それでもしっかりと私を抱え込み、髪に口づけています。
叔父様の呆れたような溜息が聞こえた気がしました。
そして、広間に清らかな魔力を満たしながら、美しい歌のように言葉を紡ぎました。
「守護師ハリーは、ここに二人が婚姻の儀を成したことを宣誓する」
先輩から息を呑む音がした後、声が上がりました。
「魔法使いダニエルも宣誓する」
それが合図だったかのように、次々と声が上がります。
「魔法使いトレントも宣誓する」
「魔法使いエレンも宣誓する」
「魔法使いフィリップも宣誓する」
広間にいる皆さんが続々と宣誓し、全員が宣誓し終わると、一瞬の静寂が広間に訪れました。
隣に佇む殿下が、ゆっくりと手を上げました。
「王太子、リチャード・アレクサンダー・ウィンドは、二人の婚姻を認め、祝福を贈る」
広間に声が響き渡った後、一斉に拍手が沸き起こりました。
魔法使いの皆さんは、即席の魔法石を浮かべ広間は色とりどりの光が溢れました。
皆さんがお祝いに駆け寄ってくれます。
そんな中、殿下がひそやかに耳元で囁きました。
「おめでとう、シルヴィ。君の見事な勝利だ」
見上げた殿下の顔は、ふわりと柔らかな、そして晴れやかな笑顔でした。
なぜだか皆さんが跪いているのです。
それもどうやら私に向かって跪いているのです。
何とか止めていただきたいと静まり返った広間で狼狽える私の耳に、柔らかくよく通る声が小さく優しく呼びかけました。
「シルヴィ」
柔らかな淡い緑の瞳が、優しく私を見つめています。
そして迎えるように両手を広げてくれたのです。
気が付けば足を踏み出していた私は、力強く抱き込まれました。
服を通しても伝わる鍛えられた体の温もりを感じた途端、涙が溢れてきます。
自分でもなぜ涙が止まらないのか分かりません。
殿下の暗殺が未遂に終わった安堵でしょうか。セディが無事だった安堵でしょうか。
苦しい程強く抱きしめてくれるセディの腕に、学園を卒業してから初めて、セディの下に確かに帰ってきたことを感じられます。
もうこの場所から、この温もりから離れたくはありませんでした。
セディの温かな手は、私の頭を優しく撫でてくれます。
会えない日には、セディの顔を遠くからでも見られなかった日には、話したいことが数えきれないほどありました。
ですが、今は、ただ、セディを抱きしめるだけで胸が一杯で、何も浮かびません。
「セディ」
セディの名前だけが口から何度も零れていきます。
セディは、私の髪に、額に、頬に口づけながら、何度も私の名を囁き返してくれます。
私の頬を両手で包み込み、淡い緑の瞳が私を捕らえました。
優しい瞳は、強さと切なさを湛え、私の鼓動は高まりました。
「シルヴィ、僕の誕生日は少し先だけど」
セディは長いまつ毛で瞳を隠し、私の額に額を合わせました。そして、息を吸い込んだ後、囁きました。
『僕の願いを叶えて欲しい』
セディの心の声です。
学園に行く前は、セディに近づくといつも聞くことのできた、セディの心の声でした。
身体に光が駆け抜けた気がしました。私は再び涙を溢れさせながら、頷きました。
「何なりと」
輝くような笑顔をセディは浮かべます。私はあらゆることを全て忘れて見惚れていました。
やがて笑顔は穏やかに収まり、強く熱い眼差しが向けられました。
『私、セドリック・アンドリュー・フォンドは、私の魔力、私の全てをかけて、生涯の愛を誓います』
セディは目を閉じ、ゆっくりと顔を近づけました。顎に柔らかな茶色の髪が触れ、首元に熱く柔らかな唇を感じ、私は自分の脈を感じました。
熱い唇が更に押し当てられたとき、脈に沿ってセディの魔力が私に入り込み、体を駆け巡ったのです。
身体は沸き立つような歓喜をもって、待ちわびていたように魔力を受け入れます。
魔力は隅々に沁み渡り、爪の先までセディの魔力に満たされた感覚がしました。
そして、時間をかけてセディの唇はゆっくりと離れていきました。
離れてしまった熱を私の肌は恋しがっていましたが、見ることはできなくとも、しっかりと刻みつけられた印から、脈打つたびに、セディの魔力を感じ取れます。
私が付けた印も同じようにセディの脈を感じ、魔力が流れていきます。
確かな繋がりがセディと私にできていました。
『シルヴィ、愛してる』
「私も…、…愛し…」
気持ちを確かに言葉にしたいのに、涙で言葉がつかえてしまいます。
セディは目を細めクスリと笑って、私の涙に口づけてくれます。
涙をたどって口づけが頬を滑り、私は触れられた肌が熱く脈を打つ気がしました。
顎まで滑り下りた口づけはそこで止まり、涙を吸われたとき、灼かれたような熱を帯び、私は息を呑みました。
その瞬間、セディは私の口を唇で塞ぎました。
セディの熱い唇は、私の唇まで熱くします。重なった口からお互いの高まった魔力が流れ込み、体を駆け巡ります。
駆け巡る魔力と歓喜の熱で、溶けそうな気がします。私の息は乱れました。
セディも熱い吐息を零しながら、何度も私の唇を啄みます。
セディが私の頭を抱え込み、一際強く唇を押し当てた時、凍りつくような強い魔力と沁み通る声が漂いました。
「いつまで続けるつもりだ」
叔父様です。
我に返り、離れようとしましたが、セディは私を抱え込み、口づけたままです。
私の耳は、広間のいたるところで起きている咳払いを捉えました。
たくさんの人の前で、私は何ていうことを…
今は恥ずかしさで体中から火が出そうな思いです。
気もそぞろになった私を感じ取り、セディがようやく口を解放してくれました。
それでもしっかりと私を抱え込み、髪に口づけています。
叔父様の呆れたような溜息が聞こえた気がしました。
そして、広間に清らかな魔力を満たしながら、美しい歌のように言葉を紡ぎました。
「守護師ハリーは、ここに二人が婚姻の儀を成したことを宣誓する」
先輩から息を呑む音がした後、声が上がりました。
「魔法使いダニエルも宣誓する」
それが合図だったかのように、次々と声が上がります。
「魔法使いトレントも宣誓する」
「魔法使いエレンも宣誓する」
「魔法使いフィリップも宣誓する」
広間にいる皆さんが続々と宣誓し、全員が宣誓し終わると、一瞬の静寂が広間に訪れました。
隣に佇む殿下が、ゆっくりと手を上げました。
「王太子、リチャード・アレクサンダー・ウィンドは、二人の婚姻を認め、祝福を贈る」
広間に声が響き渡った後、一斉に拍手が沸き起こりました。
魔法使いの皆さんは、即席の魔法石を浮かべ広間は色とりどりの光が溢れました。
皆さんがお祝いに駆け寄ってくれます。
そんな中、殿下がひそやかに耳元で囁きました。
「おめでとう、シルヴィ。君の見事な勝利だ」
見上げた殿下の顔は、ふわりと柔らかな、そして晴れやかな笑顔でした。
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