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五章 薔薇と人形
32、いつまでも足踏みするばかり
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ノノバラは、いつまでも足踏みをするばかりで一向にシチューリア島へ出発できない事を、人知れず嘆いていた。なので、手早く騒ぎを収めようと、ミキキから預かった聖碑石をユウカリに差し出して言った。
「お前の借りたがっている物は、ここにある」
ユウカリは、思いがけず聖碑石を見せつけられるや否や、アマクサから視線を転じた。聖碑石を凝視しながら「この石ころがそうですの?こんなちっぽけな物を父が欲しているとは思いもしませんでしたわ」
その発言は、聖碑石を貶めるものであるからして、アマクサの怒りを買った。不遜を叱咤しようとした矢先、ノノバラは先んじてユウカリに尋ねた。
「お前の父親は、これで何をする気だ?」
「父の許可がなければ言えませんわ」
「その父親は、聖碑石が赤獣の女王にとってどれほど重要なものなのかを知らないのか?」
「余計なおしゃべりはするなと父に言いつけられていますわ」
「そんなに偉いのかよ、お前の父親は」
「ええ」
何一つ答えようとしないユウカリに、ノノバラは閉口してしまった。そこへメロウが歩み寄ってきて、こう声を掛けた。
「ねぇ、早くシチューリア島に行きたいんだけど。いつになったら船に乗れるの?」
「今日中には乗れるんじゃないのか」そう言ってノノバラは、アマクサに目をやった。
「そのためには急がなければ。今すぐにでも出航できるよう、ここの大騎士に話をつけてこよう」
それを聞いたメロウは、ユウカリに「そういう事だから。あたしたち、先を急いでるのよ」
アマクサは、関心を失くしたのか、陽光剣を収めてユウカリと用心棒に背を向けた。それから、大騎士に船の手配を頼むべく、大聖堂の奥へと進んだ。メロウは、ユウカリを気に掛けるノノバラの手を無理に引いて行き、アマクサに追従していった。捨て置かれたユウカリは、尚以て無表情のままで、用心棒と共にノノバラに纏わりついて歩いた。いくら邪険に扱われようとも、聖碑石を貸してもらうまでは執拗に付きまとうつもりでいた。
「お前の借りたがっている物は、ここにある」
ユウカリは、思いがけず聖碑石を見せつけられるや否や、アマクサから視線を転じた。聖碑石を凝視しながら「この石ころがそうですの?こんなちっぽけな物を父が欲しているとは思いもしませんでしたわ」
その発言は、聖碑石を貶めるものであるからして、アマクサの怒りを買った。不遜を叱咤しようとした矢先、ノノバラは先んじてユウカリに尋ねた。
「お前の父親は、これで何をする気だ?」
「父の許可がなければ言えませんわ」
「その父親は、聖碑石が赤獣の女王にとってどれほど重要なものなのかを知らないのか?」
「余計なおしゃべりはするなと父に言いつけられていますわ」
「そんなに偉いのかよ、お前の父親は」
「ええ」
何一つ答えようとしないユウカリに、ノノバラは閉口してしまった。そこへメロウが歩み寄ってきて、こう声を掛けた。
「ねぇ、早くシチューリア島に行きたいんだけど。いつになったら船に乗れるの?」
「今日中には乗れるんじゃないのか」そう言ってノノバラは、アマクサに目をやった。
「そのためには急がなければ。今すぐにでも出航できるよう、ここの大騎士に話をつけてこよう」
それを聞いたメロウは、ユウカリに「そういう事だから。あたしたち、先を急いでるのよ」
アマクサは、関心を失くしたのか、陽光剣を収めてユウカリと用心棒に背を向けた。それから、大騎士に船の手配を頼むべく、大聖堂の奥へと進んだ。メロウは、ユウカリを気に掛けるノノバラの手を無理に引いて行き、アマクサに追従していった。捨て置かれたユウカリは、尚以て無表情のままで、用心棒と共にノノバラに纏わりついて歩いた。いくら邪険に扱われようとも、聖碑石を貸してもらうまでは執拗に付きまとうつもりでいた。
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