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九章 名医か錬金術師
53、しおらしくさせるだけ
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そんなノノバラの想いも、ミキキをしおらしくさせるだけであった。叱られたと思い込んだがために著しく気落ちし、肩を落として店を出て行った。それでも、ノノバラは、あえて何も言わずにいた。赤獣の女王に思い入れこそあれど、身を挺してまで力になろうとは思わなかった。かねてより赤獣の女王の在り方に疑念を抱いていたからこそ、彼は執拗に辞めたがっていたのであり、今になって危機に瀕したからといって肩入れするつもりは、毛頭なかった。なにより、IDと決着をつけるためには立ち位置など問題にしなかった。
ミキキが去った後になってもノノバラが一向に動こうとしなかったので、リストは見かねて声を掛けた。
「もっと彼女の気持ちを汲んでやれよ。いきなり元帥になったんだぜ。そりゃ心細くもなる」
「僕がいつもそばにいてやれるわけじゃない。一人でも頑張れるようになってもらいたいんだ」
「やっぱり辞めるのか?赤獣の女王を」
「辞めたっていい。けど、IDとけりを付けるまでは、僕の気が済むまでは残ると思う。それに…」
「それに?」
「何でもない。それよりも、火傷の具合を診てもらわないと。ちょっと出かけてくる。あと、ついでにミキキを探してくる」
ノノバラは、店先を出ると、病院での検査を後回しにし、ミキキを探してロオマを歩き回った。そうしたのはリストに諭されたからではなく、無事でいられるうちに親孝行をしようと思い立ったからであった。右腕を聖碑石に取って代わられた時から、時折として不吉が頭をよぎっていて、それは必ずやこの右腕を求めてルージュが襲撃してくると確信を抱いていた事による。七つの聖碑石の一つが、肉体と同化してしまったのだから、さながら伴侶のように末永く付き合っていかなければならず、従って、ルージュには、地獄を実現させるに必要不可欠な“物”としてみなされ、一生涯に渡って延々と付け狙われるのである。そう考えると、とても長生きできるとは思えず、気も休まらなかった。IDだけならいざ知らず、ルージュという組織ごと相手取る事は、個人では到底務まらない。そう分かってはいても、尚以てノノバラは、IDとの決着を望んだ。二つも聖碑石を持って敵地に乗り込んでおきながら、単身でIDと対峙する事を望んでおきながら、何をいまさら弱気になる必要があるのだ。向こうからやってくるのなら、むしろ好都合だ。そう自らを奮い立たせて、不安を心の隅に追いやった。
ミキキが去った後になってもノノバラが一向に動こうとしなかったので、リストは見かねて声を掛けた。
「もっと彼女の気持ちを汲んでやれよ。いきなり元帥になったんだぜ。そりゃ心細くもなる」
「僕がいつもそばにいてやれるわけじゃない。一人でも頑張れるようになってもらいたいんだ」
「やっぱり辞めるのか?赤獣の女王を」
「辞めたっていい。けど、IDとけりを付けるまでは、僕の気が済むまでは残ると思う。それに…」
「それに?」
「何でもない。それよりも、火傷の具合を診てもらわないと。ちょっと出かけてくる。あと、ついでにミキキを探してくる」
ノノバラは、店先を出ると、病院での検査を後回しにし、ミキキを探してロオマを歩き回った。そうしたのはリストに諭されたからではなく、無事でいられるうちに親孝行をしようと思い立ったからであった。右腕を聖碑石に取って代わられた時から、時折として不吉が頭をよぎっていて、それは必ずやこの右腕を求めてルージュが襲撃してくると確信を抱いていた事による。七つの聖碑石の一つが、肉体と同化してしまったのだから、さながら伴侶のように末永く付き合っていかなければならず、従って、ルージュには、地獄を実現させるに必要不可欠な“物”としてみなされ、一生涯に渡って延々と付け狙われるのである。そう考えると、とても長生きできるとは思えず、気も休まらなかった。IDだけならいざ知らず、ルージュという組織ごと相手取る事は、個人では到底務まらない。そう分かってはいても、尚以てノノバラは、IDとの決着を望んだ。二つも聖碑石を持って敵地に乗り込んでおきながら、単身でIDと対峙する事を望んでおきながら、何をいまさら弱気になる必要があるのだ。向こうからやってくるのなら、むしろ好都合だ。そう自らを奮い立たせて、不安を心の隅に追いやった。
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