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十二章 万物の女王
83、久しく日光を浴びた
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ノノバラとミキキは、最大地下墓地から脱出し、久しく日光を浴びた。そのおかげか、あれほど取り乱していたミキキも落ち着きを徐々に取り戻し、やがては、まともに口が利けるようになった。
「またお日様が見れて、本当によかったです。あの骸骨、ううん、水精霊たちは、わたしが墓泥棒したのを怒っていたんですね」
「なんだってあいつらは棺桶に化けていたんだ。ルージュの手先じゃなさそうだけどな。ああいう自由奔放な水精霊は、稀に見かけるし」
「わたし、反省します。これからは、お墓を荒らさないよう気を付けます」
それから、ノノバラとミキキが、ロオマ県に帰るべく渡船場に向かう道中、一筋の運河に架かる橋の上にてアナウンシアを見かけた。ゴンドラが盛んに行き交う様をチマリと仲睦まじく眺めながら談笑していて、周囲を顧みないほどに夢中であったから、その背後をノノバラとミキキは、こっそりと通り過ぎて行こうとした。ところが、ゴンドラに目を奪われていたはずのチマリが、突然に振り返って、二人を指差し、「ママ、いるよ!」と教えてしまったせいで、あえなくアナウンシアに気付かれてしまった。
アナウンシアは、赤獣の女王からノノバラを引き抜こうと、この場でミキキと話をするつもりでいる。だから、ノノバラは、また勧誘されるのを面倒に思って、逃げ帰ろうとさえしたが、ミキキが積極的になってアナウンシアへ近寄って行ってしまったので、ままならなくなった。
「アナウンシアさん、こんな所で何してるんですか?」
アナウンシアは、かねてより疎んじていた元帥を目の前にしても、存外愛想よく振る舞って、「ノノバラ君を待っていたのよ。絶対無事に帰ってくるって、チマリちゃんが言い張るから、あえて手出ししないでいたんだけど」
「それよりも、早く赤獣の女王に戻ってきてください!」ミキキは、必死になって訴えかけた。「わたしやキミシロミ様を嫌うのは構いませんが、だからといって離れちゃうなんて、あんまりです!」
「いいえ、戻らないわ」アナウンシアは、凛然として言い張った。「むしろ戻りたくないわ。だって、赤獣の女王に身を置いていたら、いつまで経っても現状を変えられない。水精霊の勝手を許すだけ」
「そんな事ありません!わたし、正式に元帥になりましたから、頑張って変えてみます!赤獣の女王とルージュの戦いを、どうにかして終わらせます!」
「どうにかって、どうする気?」
ミキキは、途端にしおらしくなって、口をつぐんだ。
「もういい。自分で変えてみせるから。ところで、ノノバラ君を赤獣の女王から自由にしてあげてくれない?彼、辞めたがってるし」
「そんなの嫌です。だって…」
そこで言葉を濁したまま黙してしまったので、ノノバラは、助け舟を出してやって、
「その話は、僕がいない所でやってくれ。それよりも、お前だ、アナウンシア。お前に話がある。差しでな」
ノノバラに指を差されたアナウンシアは、首を傾げた。「話って何?」
「来いよ」
「またお日様が見れて、本当によかったです。あの骸骨、ううん、水精霊たちは、わたしが墓泥棒したのを怒っていたんですね」
「なんだってあいつらは棺桶に化けていたんだ。ルージュの手先じゃなさそうだけどな。ああいう自由奔放な水精霊は、稀に見かけるし」
「わたし、反省します。これからは、お墓を荒らさないよう気を付けます」
それから、ノノバラとミキキが、ロオマ県に帰るべく渡船場に向かう道中、一筋の運河に架かる橋の上にてアナウンシアを見かけた。ゴンドラが盛んに行き交う様をチマリと仲睦まじく眺めながら談笑していて、周囲を顧みないほどに夢中であったから、その背後をノノバラとミキキは、こっそりと通り過ぎて行こうとした。ところが、ゴンドラに目を奪われていたはずのチマリが、突然に振り返って、二人を指差し、「ママ、いるよ!」と教えてしまったせいで、あえなくアナウンシアに気付かれてしまった。
アナウンシアは、赤獣の女王からノノバラを引き抜こうと、この場でミキキと話をするつもりでいる。だから、ノノバラは、また勧誘されるのを面倒に思って、逃げ帰ろうとさえしたが、ミキキが積極的になってアナウンシアへ近寄って行ってしまったので、ままならなくなった。
「アナウンシアさん、こんな所で何してるんですか?」
アナウンシアは、かねてより疎んじていた元帥を目の前にしても、存外愛想よく振る舞って、「ノノバラ君を待っていたのよ。絶対無事に帰ってくるって、チマリちゃんが言い張るから、あえて手出ししないでいたんだけど」
「それよりも、早く赤獣の女王に戻ってきてください!」ミキキは、必死になって訴えかけた。「わたしやキミシロミ様を嫌うのは構いませんが、だからといって離れちゃうなんて、あんまりです!」
「いいえ、戻らないわ」アナウンシアは、凛然として言い張った。「むしろ戻りたくないわ。だって、赤獣の女王に身を置いていたら、いつまで経っても現状を変えられない。水精霊の勝手を許すだけ」
「そんな事ありません!わたし、正式に元帥になりましたから、頑張って変えてみます!赤獣の女王とルージュの戦いを、どうにかして終わらせます!」
「どうにかって、どうする気?」
ミキキは、途端にしおらしくなって、口をつぐんだ。
「もういい。自分で変えてみせるから。ところで、ノノバラ君を赤獣の女王から自由にしてあげてくれない?彼、辞めたがってるし」
「そんなの嫌です。だって…」
そこで言葉を濁したまま黙してしまったので、ノノバラは、助け舟を出してやって、
「その話は、僕がいない所でやってくれ。それよりも、お前だ、アナウンシア。お前に話がある。差しでな」
ノノバラに指を差されたアナウンシアは、首を傾げた。「話って何?」
「来いよ」
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