赤獣の女王

しろくじちゅう

文字の大きさ
83 / 108
十二章 万物の女王

83、久しく日光を浴びた

しおりを挟む
 ノノバラとミキキは、最大地下墓地から脱出し、久しく日光を浴びた。そのおかげか、あれほど取り乱していたミキキも落ち着きを徐々に取り戻し、やがては、まともに口が利けるようになった。
「またお日様が見れて、本当によかったです。あの骸骨、ううん、水精霊たちは、わたしが墓泥棒したのを怒っていたんですね」
「なんだってあいつらは棺桶に化けていたんだ。ルージュの手先じゃなさそうだけどな。ああいう自由奔放な水精霊は、稀に見かけるし」
「わたし、反省します。これからは、お墓を荒らさないよう気を付けます」
 それから、ノノバラとミキキが、ロオマ県に帰るべく渡船場に向かう道中、一筋の運河に架かる橋の上にてアナウンシアを見かけた。ゴンドラが盛んに行き交う様をチマリと仲睦まじく眺めながら談笑していて、周囲をかえりみないほどに夢中であったから、その背後をノノバラとミキキは、こっそりと通り過ぎて行こうとした。ところが、ゴンドラに目を奪われていたはずのチマリが、突然に振り返って、二人を指差し、「ママ、いるよ!」と教えてしまったせいで、あえなくアナウンシアに気付かれてしまった。
 アナウンシアは、赤獣の女王からノノバラを引き抜こうと、この場でミキキと話をするつもりでいる。だから、ノノバラは、また勧誘されるのを面倒に思って、逃げ帰ろうとさえしたが、ミキキが積極的になってアナウンシアへ近寄って行ってしまったので、ままならなくなった。
「アナウンシアさん、こんな所で何してるんですか?」
アナウンシアは、かねてより疎んじていた元帥を目の前にしても、存外愛想よく振る舞って、「ノノバラ君を待っていたのよ。絶対無事に帰ってくるって、チマリちゃんが言い張るから、あえて手出ししないでいたんだけど」
「それよりも、早く赤獣の女王に戻ってきてください!」ミキキは、必死になって訴えかけた。「わたしやキミシロミ様を嫌うのは構いませんが、だからといって離れちゃうなんて、あんまりです!」
「いいえ、戻らないわ」アナウンシアは、凛然として言い張った。「むしろ戻りたくないわ。だって、赤獣の女王に身を置いていたら、いつまで経っても現状を変えられない。水精霊の勝手を許すだけ」
「そんな事ありません!わたし、正式に元帥になりましたから、頑張って変えてみます!赤獣の女王とルージュの戦いを、どうにかして終わらせます!」
「どうにかって、どうする気?」
ミキキは、途端にしおらしくなって、口をつぐんだ。
「もういい。自分で変えてみせるから。ところで、ノノバラ君を赤獣の女王から自由にしてあげてくれない?彼、辞めたがってるし」
「そんなの嫌です。だって…」
 そこで言葉を濁したまま黙してしまったので、ノノバラは、助け舟を出してやって、
「その話は、僕がいない所でやってくれ。それよりも、お前だ、アナウンシア。お前に話がある。しでな」
ノノバラに指を差されたアナウンシアは、首を傾げた。「話って何?」
「来いよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...