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第三章 イナズマ組
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しおりを挟むそれから、二時間後――ピアノ教室から帰ってきた真誠と、飛華流はゲームの通信を始めた。そんな二人を、ワンダは無言のまま、じっと観察していた。
そして、少し経つと、ワンダは集中して新聞を読み始める。その内容はワンダには難しく、ほとんど理解してはいないだろう。これが、日本語を学ぼうとする彼女の姿勢だった。
何度もゲームの対戦で勝利し、飛華流はいい気になっていた。最初は悔しそうな顔をしていた真誠だったが、急に冷静になり、彼はストレートな正論を言う。
「ゲームなんか出来ても、何の役にも立たないぞ」
飛華流の心は、真誠によって傷つけられた。ゲームでは弟に勝てる飛華流だったが、口では簡単に負けてしまった。
ドンドンドンッ……ドンドンドンッ!
真誠と熱い戦いをしている最中、ベランダ側の窓を何者かに激しくノックされた。
おい、嘘だろ。ここは、二階だぞ。飛華流は恐る恐る、ベンダへ目を向ける。
そこにはなんと、片目を隠した少年永戸と、センター分けの金髪な少年優の姿があった。なんて、迷惑な人達なのだろう。家にも来てほしくないのに、まさかこんな場所から現れるなんて。飛華流は、とても彼らにうんざりした。
「飛華流―、遊びに来たぜーー!」
優は大声を上げ、飛華流に大きく手を振った。飛華流が仕方なく窓を開けると、二人は遠慮せず、ズカズカと部屋に上がり込んでくる。しかも、土足で。
それに、優は煙草を吸っているから、部屋中が煙草臭くなっていく。その上、永戸は何故か、手にいくつかの可愛らしい動物のぬいぐるみを抱えている。
極悪ヤンキー集団の一員である彼が、ぬいぐるみ集めをしているとは……笑ってしまう程、意外な趣味を持っているみたいだ。飛華流はそれが、気になって仕方が無かった。
永戸は、飛華流の視線に気がついた。それで、飛華流が何を見て何を感じているのかを、彼は何となく理解すると、微かに頬を赤らめる。
「な、何だよ……これは、違う。見るな。……俺のじゃねー」
飛華流には、永戸が自分がぬいぐるみ好きだという事を隠そうと、誤魔化している様にしか思えなかった。気まずくなった飛華流は、彼から目を逸らした。
今日は一日中、飛華流は家に引きこもっているつもりだった。人に会う予定が無かった彼は、パジャマ姿だ。だらしない格好を二人に見られてしまった飛華流は、なんだか恥ずかしくなってしまう。
「す、すみません……こんな格好で」
「そんなん、いちいち気にする事無いぞ飛華流―。UFOのパジャマ、かっけーじゃん」
もじもじしている飛華流に、優はそんな優しい返事をする。そのおかげで、飛華流は少しホッとした。
「すっげー。めっちゃ、贅沢してるなー」
優は、楽しそうに散らかった部屋を見渡す。フィギュアやポスター等の、アニメグッズに囲まれた生活をしている飛華流だが、贅沢をしているつもりは全く無かった。
「うっわ……こいつら、インターフォンも鳴らせねーのかよ」
そう吐き捨てると、軽蔑した目を二人に向け、真誠は足早に部屋を去ってしまった。そんな不愉快そうな真誠の態度に、優は申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「あー、なんかごめんな。驚かせちまったみたいで……最初は、玄関から入るつもりだったけど、この部屋から飛華流が見えたからさ」
「ちっ、誰だあのガキ」
真誠に対して腹を立ててしまった永戸に、飛華流は慌てて謝る。
「……えっと、すみません。あいつは、僕の弟です」
「それじゃあ、この可愛い女の子は誰? もしかして、飛華流の彼女かー? ヒューヒュー」
優は、ニヤニヤしながら口を鳴らした。「口よりインターフォンを鳴らせ」と、飛華流は優に言ってやりたかった。
「いえいえ、そんなんじゃないですよ。……こいつは、僕の……妹です」
飛華流は咄嗟に、またそんな嘘をつく。
「……そんな事は、どうでもいい。アジト行くぞ。お前は黙って、そのゲーム持って俺達について来い」
そう言って、永戸はベランダへ歩いていく。どうして、僕が再びイナズマ組に会わないといけないんだよ。
それに、ゲームを持っていけば、彼らに盗まれそうで怖い。不満だらけの飛華流は、優に背中を押されて無理矢理動き出す。
「俺達さー、飛華流と遊びたくて会いに来たんだぜ。そのゲーム、俺達も持ってるから、アジトで通信するかー。ほらほら、早く行こうぜ」
「待て。俺、ヒルと行く」
ワンダに手首を掴まれ、飛華流は断り切れなかった。なので、二人の許可を得て、ワンダも連れていく事にした。
二人はベランダから地面へ着地するが、飛華流にそれが出来るはずが無かった。私服に着替え、暖かいコートを羽織り、飛華流はワンダと共に玄関から外へ出ていく。
綺麗な青空を見上げ、飛華流は太陽に顔をしかめた。そんな憂鬱そうな飛華流に、優は言った。
「ゼロは、そこの電柱の隣に居るからな」
そこに、停められた骸骨馬のバイクは、飛華流とワンダには見えていない。普段、自分にはその姿を目にする事が出来ないと、飛華流は知っているが――ワンダは首を捻っていた。
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