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断罪の幕開け
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グレース様とその一部の侍女を除いて、お茶会にいた人々は大広間に集められた。フィンリーは悠然と玉座に座った。即位式の夜と同じように、私の椅子も用意されていた。
グレース様のことを思うと気が気でなかった。たしかに彼女のことを好きにはなれなかったが、だからといって死を願ったことなどあるはずもない。
何とか助かってくれたらいいのだけれど、と小さくため息をついた。
「誠に遺憾ではあるが、余が管理する宮でこのような事件が起こった以上犯人を追及しないわけにはいくまい」
ざわめいていた大広間は水を打ったように静かになった。
人々がフィンリーに釘付けになっているのがわかる。若き皇帝はそうさせるだけの威厳をまとっていた。
「自首したいと言うのであれば許すが、誰かいるか」
誰も身動き一つできない。呼吸すらためらわれるような緊張感が、空間のすみずみにまで行きわたっていた。
フィンリーの指示でうつむいた顔色の悪い女性が出てくる。侍女服に身を包んでいるが、見覚えはない。令嬢方の中の誰かの侍女なのだろう。
ふと視界に入ったマリアベル様は、遠目からでもわかるほどに顔を青くしていた。
「実は、犯人は既にわかっている」
フィンリーは泰然として告げた。この場にいる人々に、隠し切れない動揺が走った。たった今から犯人捜しが始まると思っていたのだろう。
一体誰がこんなことをしたのだろう。
答えは半分わかっている。それでも祈るような気持ちでマリアベル様を見つめる。
何度も嫌な感じを受けたことはある。でも、あの優しさを信じたかった。全て嘘だなんて思いたくもなかった。
「彼女はレディ・グレースの侍女であるのだが……実はとある者に、皇女に献上する菓子に毒を混ぜるようにと脅迫されたそうだ」
フィンリーの話をまとめると、家族を人質にとられ、グレースの手土産を準備する時に指定された毒を混ぜこむように命じられた。
彼女はその場ではうなずいたが、すぐに主人に報告する。自分の家族を守るためだとしても、貴人の命を危険にさらすような真似はできない、と。
事態を重く見たグレース様は、父であるカナリッチ侯爵に相談を持ちかけた。そしてそれがフィンリーの耳に入った、という流れらしい。
『こちらの味方も送り込んでいます。名前は伏せますが』
夜会の後のフィンリーの言葉を思い出す。まさか、協力者というのは。
思わぬ真実に息をのんだ。ありえない。そう思う一方で、つじつまが合うのは事実だ。
いくら何でも、あのタイミングでグレース様が菓子を口にしたのは不自然だった。でも、もし彼女が毒のことを前もって知っていたのなら? 私を守ろうとしたのなら?
「そうだろう? マリアベル・オブ・アズライト」
その場の視線がマリアベル様に突き刺さった。脂汗を流しながら、マリアベル様はこわばった笑みを浮かべた。
フィンリーの口から名前を聞いた瞬間、やはりそうだったのか、と納得する一方で、どうしてあなたが、と泣き叫びたくなる私がいた。
マリアベル様の顔色は悪い。自分が使った侍女が名乗り出たことは想定外だったのかもしれない。しかし、身に覚えのない罪の驚いているようには見えなかった。
「そんなのその侍女がデタラメを申しているに決まっていますわ。グレース様が皇女殿下に嫌がらせをしていたのは有名でしてよ?」
「ふむ。たしかに侍女の証言だけでは証拠にはならないだろうな」
あっさり引き下がったフィンリーに、マリアベル様は口の端をつりあげた。
人目のある場所であれほど断言したのだ。フィンリーに手抜かりがあるとは思えないが、手に汗がにじむ。
フィンリーは、ふ、と笑い声をもらすと口角を上げた。
「あくまでシラを切るというのなら、徹底的にやらせてもらおうか」
グレース様のことを思うと気が気でなかった。たしかに彼女のことを好きにはなれなかったが、だからといって死を願ったことなどあるはずもない。
何とか助かってくれたらいいのだけれど、と小さくため息をついた。
「誠に遺憾ではあるが、余が管理する宮でこのような事件が起こった以上犯人を追及しないわけにはいくまい」
ざわめいていた大広間は水を打ったように静かになった。
人々がフィンリーに釘付けになっているのがわかる。若き皇帝はそうさせるだけの威厳をまとっていた。
「自首したいと言うのであれば許すが、誰かいるか」
誰も身動き一つできない。呼吸すらためらわれるような緊張感が、空間のすみずみにまで行きわたっていた。
フィンリーの指示でうつむいた顔色の悪い女性が出てくる。侍女服に身を包んでいるが、見覚えはない。令嬢方の中の誰かの侍女なのだろう。
ふと視界に入ったマリアベル様は、遠目からでもわかるほどに顔を青くしていた。
「実は、犯人は既にわかっている」
フィンリーは泰然として告げた。この場にいる人々に、隠し切れない動揺が走った。たった今から犯人捜しが始まると思っていたのだろう。
一体誰がこんなことをしたのだろう。
答えは半分わかっている。それでも祈るような気持ちでマリアベル様を見つめる。
何度も嫌な感じを受けたことはある。でも、あの優しさを信じたかった。全て嘘だなんて思いたくもなかった。
「彼女はレディ・グレースの侍女であるのだが……実はとある者に、皇女に献上する菓子に毒を混ぜるようにと脅迫されたそうだ」
フィンリーの話をまとめると、家族を人質にとられ、グレースの手土産を準備する時に指定された毒を混ぜこむように命じられた。
彼女はその場ではうなずいたが、すぐに主人に報告する。自分の家族を守るためだとしても、貴人の命を危険にさらすような真似はできない、と。
事態を重く見たグレース様は、父であるカナリッチ侯爵に相談を持ちかけた。そしてそれがフィンリーの耳に入った、という流れらしい。
『こちらの味方も送り込んでいます。名前は伏せますが』
夜会の後のフィンリーの言葉を思い出す。まさか、協力者というのは。
思わぬ真実に息をのんだ。ありえない。そう思う一方で、つじつまが合うのは事実だ。
いくら何でも、あのタイミングでグレース様が菓子を口にしたのは不自然だった。でも、もし彼女が毒のことを前もって知っていたのなら? 私を守ろうとしたのなら?
「そうだろう? マリアベル・オブ・アズライト」
その場の視線がマリアベル様に突き刺さった。脂汗を流しながら、マリアベル様はこわばった笑みを浮かべた。
フィンリーの口から名前を聞いた瞬間、やはりそうだったのか、と納得する一方で、どうしてあなたが、と泣き叫びたくなる私がいた。
マリアベル様の顔色は悪い。自分が使った侍女が名乗り出たことは想定外だったのかもしれない。しかし、身に覚えのない罪の驚いているようには見えなかった。
「そんなのその侍女がデタラメを申しているに決まっていますわ。グレース様が皇女殿下に嫌がらせをしていたのは有名でしてよ?」
「ふむ。たしかに侍女の証言だけでは証拠にはならないだろうな」
あっさり引き下がったフィンリーに、マリアベル様は口の端をつりあげた。
人目のある場所であれほど断言したのだ。フィンリーに手抜かりがあるとは思えないが、手に汗がにじむ。
フィンリーは、ふ、と笑い声をもらすと口角を上げた。
「あくまでシラを切るというのなら、徹底的にやらせてもらおうか」
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