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Chapter 3 僕の場合
3.11 Group isomorphism
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広大な1部屋からなる階層で僕たちだけが、滑らかな地面を歩いている。
遠方を直線的に囲う壁面は、霞むほど高い天井に真っすぐに伸びている。それ以外に何もない、ただの広大な空間だ。
「やっぱり、わくわくしないどころか、あまりにも構造が簡単すぎる。どうやってできたんだろう」
「同じのができるまで作ってみれば分かるのだ。ルーちゃん、ダンジョンってどうやって作るの?」
僕は立ち止まった。
ダンジョンを意図的に生成するためには。
「必要なことが2つあるな。まず、ダンジョンが発生する場所を予め知っておくこと。次に、その場所に急激に、劇的な切っ掛けを与える方法を確立すること」
僕が知る限りにおいて、ダンジョンの発生場所をピンポイントで予見する方法は見つかっていない。大教会の予知でも、大体このあたり、という所までだと認識している。
もちろん、僕の知らない方法があることも十分に考えられる。
「場所については、予見する方法があるとしよう。げーむの攻略情報、とかいって独特の解釈で未来を予知する転生者もいたし」
「良いお日柄なら、知らなくても当たるしな」
次に、どのように、どのような劇的な切っ掛けを与えるか。
僕たちは、このダンジョンを構成する魔力を反映した模様のパターンが、壁紙群pmmであることを確認した。
ダンジョンが生成する地点に劇的な切っ掛けを与えた方法が、壁紙群pmmの性質に関係があると考えると、非常に見通しが良くなる。
ダンジョンを生成する切っ掛けが具体的にどういうものか分からないけれども、次のように表現してみよう。
切っ掛けが有る状態
⇅
切っ掛けが無い状態
ダンジョンが生成する時、切っ掛けが有る状態にする操作が行われる。逆に、例えばダンジョンが踏破された時などは、切っ掛けが無い状態になって、ダンジョンも無くなると考えておく。
そして、僕がダンジョンを生成することを、次のように考える。
まず、僕はダンジョンではないので、ダンジョンの切っ掛けが有る状態でもダンジョンにはならない。けれども、何か似たような切っ掛けがあると考えておく。
切っ掛けが無い状態の僕から、切っ掛けがある状態の僕になる操作があるということだ。
次に、切っ掛けそのものについて、ダンジョンと僕の間で入れ替える操作を考える。
つまり、僕が持っている何かの切っ掛け自体を、ダンジョン生成の切っ掛けと入れ替える。
ダンジョンの切っ掛け
⇅
僕の切っ掛け
そしてさらに、切っ掛けの有無と、切っ掛けそのものの、両方を入れ替える操作を考える。例えば以下のような感じだ。
僕の切っ掛けが有る状態
⇅
ダンジョンの切っ掛けが無い状態
この操作は、切っ掛けの有無を入れ替える操作の後に続けて、切っ掛けそのものを入れ替える操作を行うことに相当する。
これらの入れ替え操作に、何もしないとい操作を加えると、次のように整理できる。
E:何もしない
𝜑:ダンジョン(僕)の切っ掛けの有無を入れ替える
𝜒:ダンジョンと僕の切っ掛けそのものを入れ替える
𝜓:切っ掛けの有無と、切っ掛けそのものの両方を入れ替える
全ての組み合わせを整理すると、次の表が作れる。これは、壁紙群pmmと同じ色分けができる、群の指標表である。
つまり、今回考えたような、僕とダンジョンの間で何かの切っ掛けを入れ替える操作全体は、壁紙群pmmと群同型、同じ構造の群をなしている。
ダンジョンの階段の模様と、何かの切っ掛けを与えたり与えられたりすること、同じとは思えないような2つの概念が、実は同じ構造を持っていると言える。
ここで言う“切っ掛け”というものが具体的になんなのか分からなくても、変換魔法の魔力応答がどういうものかは、群の構造から大まかに予想できる。
これが、さまざまな現象に見られる対称性を扱う、群論という術理の便利な点だ。
「pmmと同じ構造の変換魔法が作用すれば、このダンジョンが生成するはずだ」
「良くわからんけど、何かを入れ替えるっていうルーちゃんの説明は、ロザリィが星を盗られたときと似てるのだ」
「それに気付いたのはとてもすごいことだよ。ラトちゃんに、はなまるをあげよう」
「わ~、ありがとう」
ちょうど、満点のテストに書かれるような花丸が浮かんだので、ラトちゃんに渡した。原理は分からない。
星の場合は、冒険者同士で星を区別する必要がなかった。ギルドカードの他の項目を隠してしまえば、入れ替えても誰の星なのかを区別することはできないのだ。
しかし、このような入れ替え操作を、区別できる2つの間、例えば僕とダンジョンの間で考えると、このダンジョンを構成するpmmと同型な群が出てくる。
これは、もし泥棒騒ぎがダンジョン生成に関与しているなら、ギルドカードに載らないような状態さえも、入れ替えが起こることを意味する。
「要諦は、ニゴの言ってた押し取りに目星が付いたことなのだ」
「ロザリィさんの星を奪った、ユウマさんだったっけ。断定するには弱すぎるけど、他に手がかりもないからなあ」
僕達はダンジョンを出てから、ニゴさんに連絡を取ることにした。
クエストも、そろそろ終わりが近づいてきたようだ。残された時間は限られる。しっかり準備をしておく必要があるな。
僕たちの冒険者等級は銅星で、ギルドカードに載る範囲の状態を入れ替えられてもそこまでの支障はない。
ただ、ギルドカードに記載されない状態、冒険規定の外にある状態を、入れ替えられる可能性は大いに考えらえる。
そう、大いに考えられるのだ。
嬉しそうに準備を進めるラトちゃんの、その能力が、敵対する可能性は。
遠方を直線的に囲う壁面は、霞むほど高い天井に真っすぐに伸びている。それ以外に何もない、ただの広大な空間だ。
「やっぱり、わくわくしないどころか、あまりにも構造が簡単すぎる。どうやってできたんだろう」
「同じのができるまで作ってみれば分かるのだ。ルーちゃん、ダンジョンってどうやって作るの?」
僕は立ち止まった。
ダンジョンを意図的に生成するためには。
「必要なことが2つあるな。まず、ダンジョンが発生する場所を予め知っておくこと。次に、その場所に急激に、劇的な切っ掛けを与える方法を確立すること」
僕が知る限りにおいて、ダンジョンの発生場所をピンポイントで予見する方法は見つかっていない。大教会の予知でも、大体このあたり、という所までだと認識している。
もちろん、僕の知らない方法があることも十分に考えられる。
「場所については、予見する方法があるとしよう。げーむの攻略情報、とかいって独特の解釈で未来を予知する転生者もいたし」
「良いお日柄なら、知らなくても当たるしな」
次に、どのように、どのような劇的な切っ掛けを与えるか。
僕たちは、このダンジョンを構成する魔力を反映した模様のパターンが、壁紙群pmmであることを確認した。
ダンジョンが生成する地点に劇的な切っ掛けを与えた方法が、壁紙群pmmの性質に関係があると考えると、非常に見通しが良くなる。
ダンジョンを生成する切っ掛けが具体的にどういうものか分からないけれども、次のように表現してみよう。
切っ掛けが有る状態
⇅
切っ掛けが無い状態
ダンジョンが生成する時、切っ掛けが有る状態にする操作が行われる。逆に、例えばダンジョンが踏破された時などは、切っ掛けが無い状態になって、ダンジョンも無くなると考えておく。
そして、僕がダンジョンを生成することを、次のように考える。
まず、僕はダンジョンではないので、ダンジョンの切っ掛けが有る状態でもダンジョンにはならない。けれども、何か似たような切っ掛けがあると考えておく。
切っ掛けが無い状態の僕から、切っ掛けがある状態の僕になる操作があるということだ。
次に、切っ掛けそのものについて、ダンジョンと僕の間で入れ替える操作を考える。
つまり、僕が持っている何かの切っ掛け自体を、ダンジョン生成の切っ掛けと入れ替える。
ダンジョンの切っ掛け
⇅
僕の切っ掛け
そしてさらに、切っ掛けの有無と、切っ掛けそのものの、両方を入れ替える操作を考える。例えば以下のような感じだ。
僕の切っ掛けが有る状態
⇅
ダンジョンの切っ掛けが無い状態
この操作は、切っ掛けの有無を入れ替える操作の後に続けて、切っ掛けそのものを入れ替える操作を行うことに相当する。
これらの入れ替え操作に、何もしないとい操作を加えると、次のように整理できる。
E:何もしない
𝜑:ダンジョン(僕)の切っ掛けの有無を入れ替える
𝜒:ダンジョンと僕の切っ掛けそのものを入れ替える
𝜓:切っ掛けの有無と、切っ掛けそのものの両方を入れ替える
全ての組み合わせを整理すると、次の表が作れる。これは、壁紙群pmmと同じ色分けができる、群の指標表である。
つまり、今回考えたような、僕とダンジョンの間で何かの切っ掛けを入れ替える操作全体は、壁紙群pmmと群同型、同じ構造の群をなしている。
ダンジョンの階段の模様と、何かの切っ掛けを与えたり与えられたりすること、同じとは思えないような2つの概念が、実は同じ構造を持っていると言える。
ここで言う“切っ掛け”というものが具体的になんなのか分からなくても、変換魔法の魔力応答がどういうものかは、群の構造から大まかに予想できる。
これが、さまざまな現象に見られる対称性を扱う、群論という術理の便利な点だ。
「pmmと同じ構造の変換魔法が作用すれば、このダンジョンが生成するはずだ」
「良くわからんけど、何かを入れ替えるっていうルーちゃんの説明は、ロザリィが星を盗られたときと似てるのだ」
「それに気付いたのはとてもすごいことだよ。ラトちゃんに、はなまるをあげよう」
「わ~、ありがとう」
ちょうど、満点のテストに書かれるような花丸が浮かんだので、ラトちゃんに渡した。原理は分からない。
星の場合は、冒険者同士で星を区別する必要がなかった。ギルドカードの他の項目を隠してしまえば、入れ替えても誰の星なのかを区別することはできないのだ。
しかし、このような入れ替え操作を、区別できる2つの間、例えば僕とダンジョンの間で考えると、このダンジョンを構成するpmmと同型な群が出てくる。
これは、もし泥棒騒ぎがダンジョン生成に関与しているなら、ギルドカードに載らないような状態さえも、入れ替えが起こることを意味する。
「要諦は、ニゴの言ってた押し取りに目星が付いたことなのだ」
「ロザリィさんの星を奪った、ユウマさんだったっけ。断定するには弱すぎるけど、他に手がかりもないからなあ」
僕達はダンジョンを出てから、ニゴさんに連絡を取ることにした。
クエストも、そろそろ終わりが近づいてきたようだ。残された時間は限られる。しっかり準備をしておく必要があるな。
僕たちの冒険者等級は銅星で、ギルドカードに載る範囲の状態を入れ替えられてもそこまでの支障はない。
ただ、ギルドカードに記載されない状態、冒険規定の外にある状態を、入れ替えられる可能性は大いに考えらえる。
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嬉しそうに準備を進めるラトちゃんの、その能力が、敵対する可能性は。
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