残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな

文字の大きさ
234 / 302
第六章 試練編

第233話 成果のまとめ

しおりを挟む
 紅い狂気との決戦への備えは万全に整った。
 ここはひとつ、おさらいをしようではないか。

 俺とエアは神の使いであるネアから三つの試練を与えられ、それらをすべてクリアした。

 第一の試練では神器・藍玉を獲得したことで、機工巨人を使役できるようになった。
 これは俺とエアのうち藍玉を持っているほうが使うことができる。

 第二の試練では魔法の概念化を修得した。
 概念化は空気を概念種の魔法として使うことができるが、その使い方は端的に言えば空気にまつわる慣用句を現実化する能力といえる。
 概念種としての空気魔法はエアの記憶再現魔術でも使うことができるので、実質的に二人ともが空気魔法の概念化を修得したことになる。

 第三の試練では空気の操作型魔法の絶対化を得た。
 これは全種類の魔法を使えるようになるか、空気の操作型魔法を絶対化するかの二択で後者を選んだのだ。
 長期的に見れば当然ながら全種類の魔法を使えたほうが強いのだが、紅い狂気との決戦を目前に控えた現状では、熟練度の高い空気操作の魔法を極限まで強化したほうが有効だと判断した。
 この絶対化は俺の魔法のみで、エアの再現した空気魔法は絶対化されない。

 第三の試練の報酬だけは、俺とエアで別々に与えられた。
 エアにもすべての魔術が使用可能になることと、記憶再現魔術の拡張の二つの選択肢が与えられたが、エアは後者を選んだ。
 これも全魔術が使えたほうが当然強いのだが、残念なことに紅い狂気に魔術が効かないので、後者を選ばざるを得なかった。
 試練は紅い狂気に対する勝率を上げるために受けたものであり、どれだけほかの人間に無双できても意味がないのだ。

 それから、ネアに闇道具を引き渡すことによって、報酬として神器を授かった。

 神器・ムニキスは日本刀形状の武器で、闇道具・細剣ムニキスに代わるものだ。
 ムニキスで魔法を斬れば、その魔法と魔導師のリンクを切断することができる。発生型の魔法に対してはあまり有効ではないが、操作型や概念種の魔法に対しては魔法の力を失わせることができるため非常に強力だ。
 闇道具としてのムニキスには、リンクを切った魔法の力をすべて蓄積して、どこかのタイミングですべて所持者に対し解放するというが呪いがあったが、神器には呪いなんかないため存分に振るうことができる。

 神器・封魂の箱は銀色のラメが入った白木の箱で、立方体形状をしている。
 闇道具としての封魂の箱は白木の表面で黄色と緑色の渦巻きが絡み合った模様をしていたが、能力に変化はなく、箱の所有者が意識を失わせた者に蓋を開けて箱をかざすと、その魂を箱の中に封じ込めることができる。
 元に戻す場合は、「返還」と言って魂の所有者の名前を呼べば魂が肉体へと帰っていく。

 神器・天使のミトンは白地に緑色のチェック模様をしたミトンで、闇道具・ミコスリハンを破壊した報酬である。
 ミコスリハンは見た目は髑髏どくろ形状を模したただのタワシなので、三つの神器の中では唯一見た目がまったく異なっている。
 ミコスリハンが体をこすると地獄のような苦痛を与えて三こすり半以内に絶命するのに対し、天使のミトンは体をさすると傷を癒やす効果がある。
 五さすりすれば全快するが、効果が出るのは一人に対しては一日あたり五さすり分までという制限があり、最後にさすってから二十四時間経てば五さすり分のストックが回復する。
 制限があるのは同一人物に対してであり、何人に対しても平等に五さすり分のストックが与えられる。

 これら三つの神器は悪用されないよう俺しか使えないようになっている。

 紅い狂気との決戦に備えて俺とエアはかなり強化されたが、それでも俺とエアだけでは紅い狂気にはとうてい及ばない。
 だから一緒に戦う仲間の強化も必要だった。

 魔導学院は従来のカリキュラムを変更して魔法の修練を重点的に指導し、生徒たちを魔導師として強化することに専念した。
 特にキーラとリーズは新四天魔に選ばれるまでに強くなった。
 もちろん、旧四天魔のルーレ・リッヒもかなり強いし、彼女も修練を積んでいて俺と戦ったころよりもさらに強くなっているようだ。
 生徒会長のレイジー・デントはいわずもがな、生徒会メンバーを筆頭に学院には優秀な魔導師がたくさんいる。
 特にサンディア・グレイン、ハーティ・スタック、イル・マリルには期待できそうだ。

 リオン帝国には護五臣という強力な魔導師、魔術師のリーダーたちがいた。
 だが残念なことに、かつて俺たちが乗り込んだ際に護五臣のうちの三枠が空いてしまった。現在はその三枠に魔導師でも魔術師でもない通常の人間で、リーダー・シップを取れる人材を起用しているらしい。
 よってリオン帝国の戦力は、近衛騎士団、軍事区域の護五臣であるロイン・リオン大将および彼が率いる帝国軍、それから工業区域の護五臣であるスモッグ・モック工場長ということになる。

 ジーヌ共和国にはかつては守護四師という強力な戦力があったが、それはマジックイーターの頭目であるエース大統領の私兵と成り下がっていたため、いまは残っていない。
 それ以降に新設された共和国軍と大統領親衛部隊が共和国の戦力であるが、守護四師の代わりの戦力としては心許無こころもとない。
 自国だけでも守ってくれれば御の字というところだろう。

 シミアン王国は女王のミューイ・シミアンと、その契約精霊だったキューカが心強い戦力だ。
 特にキューカの感覚共鳴の魔術は決戦で間違いなくカギとなるだろう。
 それからリオン帝国にも引けを取らない軍隊もある。魔法は使えないが数が多い王国騎士、魔導師からなる上級王国騎士、少数精鋭の王立魔導騎士団、その頂点にいるのが王立魔導騎士団長のメルブラン・エンテルトだ。
 彼の魔法は付与の概念種という強力なもので、もし俺が使えば空気の操作型魔法よりも早く世界制覇できたかもしれない。
 軍隊の人数だけでいえばシミアン王国のほうが多いが、それでいてリオン帝国が一強の軍事大国と呼ばれるのは、戦車などの近代兵器を使うからだ。
 シミアン王国の乗り物といえば馬であり、いくら魔導師が多かろうと、精鋭が少数しかいなければ中世レベルと近代レベルでは勝負にならない。

 そんなこの世界において、一人でリオン帝国だろうがシミアン王国だろうが制圧できるほどの強力な魔導師がいる。
 それがE3エラースリーだ。
 エラーとは規格外という意味で、エラーと称されるほどの強い魔導師が三人もいるのである。
 一人はリオン帝国の現皇帝、リーン・リッヒ。
 振動の発生型魔導師で、彼女の魔法は空気の魔法リンクを斬るほどの力を有していた。

 E3エラースリーの二人目は盲目のゲン。水の操作型魔導師の老人である。
 魔法の使い方としては俺と酷似している。彼は盲目だが水の魔法で空気中の水分を感知し、俺の空間把握モードと同様の技を常に使っているので人よりよっぽど周囲の景色が視えているだろう。

 三人目はダース・ホーク。四天魔のナンバーワンでもある、闇の概念種の魔導師だ。
 エアが空気の次に彼の魔法を多用しているほど、その魔法は使い勝手がいい。

 かつてはE3エラースリーが最強の三人の魔導師と言われ、その優劣をつけることを条約によって禁止するほどであったが、それはもう過去の話。
 最強の魔導師はこの俺、ゲス・エストだ。

 最強といえば、最強の魔術師と最強のイーターも決戦で力を貸してくれる。

 最強の魔術師は言わずもがな、俺の相棒エアだ。
 記憶再現の魔術により、記憶の中から魔法をひっぱりだして使うことができる。

 最強のイーターは、かつてはただの人間だったシータ・イユン、つまりドクター・シータだ。
 彼は取り込んだイーターの能力を得ることができ、体積を変えたり擬態したり変身したり分裂したり毒を吐いたりと、非常に多彩な攻撃方法を持っている上に、自身の命すら増やせる。

 魔導師と魔術師とイーターは三竦さんすくみの関係と言われているが、俺はドクター・シータにもエアにも勝利したため、真に最強の存在となった。
 ただし、この世界では、という条件がつく。
 この世界の外から紛れ込んだ存在、狂気の支配者の種たる紅い狂気。彼女はこの世界の戦力総出で挑んでも勝てるかどうか分からない。

 敵であるが、紅い狂気の情報もまとめよう。
 紅い狂気はいまシャイル・マーンに憑依ひょういしているが、本来の紅い狂気はシャイル以上に幼い少女に見える。
 光を通すような白い肌と、そこに光る紅の目を見れば、それが世界における圧倒的な異物であると、ひと目で分かるのだ。
 そんな彼女の能力は『動の支配』というらしい。厳密にはその劣化版のようだ。
 それは魔法でもなく、魔術でもない。世界のことわりから外れた規格外の能力で、ゲーム用語でいうところの完全なチートだ。

 動の支配は動の概念種の魔法と言い換えるのが近いかもしれない。
 人だろうが物だろうが何でも思うままに動かすことができる。
 心が動くという考え方がある以上、心も動の支配の対象となってしまい、考えていることを読み取ることもできるし、支配して思うがままに操ることすらできる。
 さらには時間は流れるものだと解釈できるので時間も支配の対象となる。時間を止めたり巻き戻したりすることすら可能なのだ。
 ただし、そういった能力は一つの能力を同時に一人の相手にしか使うことができないらしい。
 そうはいっても同時に複数の能力を使うことができるのだから、理不尽としか言いようがない。

 その能力は最強に凶悪なのだが、彼女の最も厄介なところは、その能力以上に性質、つまり性格だろう。
 彼女にかかれば人類を一人残らず抹殺することなどたやすいだろうが、彼女はそんなことはしない。
 むしろ死ねないようにしてから永遠の苦痛を与えつづけ、この世を本物の地獄に変えてしまう。
 紅い狂気というのはそういう恐ろしい存在なのだ。

 決戦は三日以内に始まる。

 俺は三つの試練をすべてクリアし、神器・藍玉、魔法の概念化、魔法の絶対化を得たし、神からネアを通して神器・ムニキス、神器・封魂の箱、神器・天使のミトンを授かった。
 そして、仲間の戦力は世界すべて。
 これらのすべては紅い狂気に勝つためだけに準備したこと。

 準備は整った。あとは決戦に備えて寝るだけだ。
 俺はベッドに潜り込み、夜に身を溶かすように眠りについた。

「…………」

 だんだんと意識が薄れていって思考回路が完全に閉じる瞬間に、意識の端の方で、集中しなければ聞こえないくらいの小さな声がささやきかけてきた。

「ふふふふ。おやすみなさい。そして、永遠におはよう」

 俺にはその言葉を拾うことはできなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...