ーAUTUMNー

中村翔

文字の大きさ
1 / 10

姉たる者

しおりを挟む
ーAUTUMN-

 ~春~

 入学式のベルが鳴り終わり、春の暖かな風が頬を伝う。
 この日に入学した生徒は36人。多くもなく少なくもない、いや、少なすぎるか。

 少し増やそう。
 そうこの日に入学したのは”127人”。多くもなく少なくもない、いや、中途半端か。

 少し調整しよう。
 ああ、この日に入学した生徒の数、およそ””100人””。

 都会にしてみれば少ない部類になる微妙な数字。
 この話の主人公となるのはこの学校の教師。名を『蟋蟀こおろぎ 霜音しもね』
 この教師を頼る生徒は多いだろう。なぜかは分からない。
 そういう人柄ということなのだろう。

 カツッカツッ・・・

 蟋蟀の足音が響く。ふとあるドアの前で足が止まった。

 コンコン

「はぁーい!」

 がらがら!

「誰かと思ったら霜音じゃん」

 ガラっ
 無言でドアを閉める蟋蟀。気にくわなかったのか厳しめに諭すように叱る。

「まあまあ。だって霜音はお姉ちゃんなんだから我慢しないと。」

 ばん!
 妹に睨みを利かせると威嚇も兼ねて机を叩いた。

「いやいや。だって霜音ってどう考えても男の子の名前じゃないよね。」

 ・・・授業の始まりを知らせる木琴の音が響き渡る。
 軽く舌打ちをぶつけ、妹のいる部屋から出る。

 ガラガラっ!

「・・・またどうぞ。」

 妹の皮肉じみたセリフに苛立ちを覚えながら部屋を後にした。
 カツっカツっ。

 蟋蟀が歩く後ろから口を塞ぐ形で物陰に抱き寄せた。
 口が塞がって混乱してる蟋蟀に囁くように言い聞かせた。

「お前の能力は〇〇〇〇だ。」

 そういわれるとグサリと嫌な音がして目が覚めた。
 これは蟋蟀が行方不明になる一週間前の話。
 そうこれが蟋蟀の行方不明になった経緯。

 ~春~

「んん~~~~~~~~!!これは大成功の予感!クロエにも食わせねば!」

 コンロの火を止めて階段の手すりをつかみ上を見上げた。

「クーロエ!おいしいおいしいとてもおいしいホットケーキが焼けましたよー!今なら蜂蜜バターです!」

 返事がない。ということはまだ不貞腐れてるのだろう。姉としては放っておくことはできない。

 ぎい・・・ぎい・・・

 気配を殺しつつ二階に歩を進めた。
 一番手前の部屋にころんっとかけてあるドアプレートにはこう書かれていた。

「kuroe'ZD」

 クロエのセンスによるとクロエと閉店の意であるクローズドをかけているらしい。
 こんこん!
 がしゃっ!どたどたっ
 クロエは姉が上ってきてるとは思わず、慌てふためいている。
 こんこん!

クロエ「いっ、いませーん!!」
「えっでもいま物音がしましたよ?クロエがいないのに物音がするのであればお姉ちゃんとして見過ごすわけにはいきません!さあ、開けてください!」

 姉としてはストーカーなどは許せない。
 もしストーカーさんがいるなら・・・とおもうとさっきまで握っていた包丁をそいつに刺さなければならない。

クロエ「わかった!わかったよ・・・もう、お姉ちゃんっていうよりはメンヘラじゃん!」
「お姉ちゃんはクロエの下着の柄が気になります!ついでにホットケーキを食べましょう。」

 今日の下着は確か上が模様がついてて下が無地の子供パンツだ。
 がちゃ

クロエ「もう、お姉ちゃんまたホットケーキ焼いたの?いい加減うちの卵の占有やめてよ。」
「ですがホットケーキは栄養科学の観点から見ても非常に発育に良いとされていて年頃の妹にはぜがひでも食べてもらいたく・・・」

 栄養学的にっていうのは定かではないが牛乳と卵を毎日とるのは確かに発育にはいいらしい。
 その証拠を示すように妹ちゃんは軒並み発育がいい。※ただし、食べた後は運動必須!

クロエ「はあ・・・ホットケーキってそんなに胸に良いんだっけ?むしろお姉ちゃんが食べなよ」
「それはお姉ちゃんのお胸がマゼラン海峡大絶壁ってことですか?」

 特に怒ることもない至って平然と答える姉。
 実際『小ささの中にも正義アリ』なので起こる理由などないということだった。

クロエ「もう、いいから一緒食べよう?持ってきたんでしょ?暖房が逃げてくからドア閉めて。」
「もちろん持ってきましたよ!こちらが今日の自信作になります!」

 ぎぃー・・・がちゃん。
 ドアが閉まる勢いでドアプレートが裏返った。


『HIMARI'zd』


 中では姉妹がわちゃわちゃしている。
 ぎい・・・ぎい・・・

 足音が階段を上がってくる。男の手にはひまりが料理に使ったバターナイフが握られていた。
 ぎい・・・ぎい・・・

 男はひまりたちのいる部屋を通り越して父母の寝室へと入っていった。
 ばたん!

ひまり「むぐっ!?お父さん帰ってきたのかな・・・?」
クロエ「やっぱりお父さんの前でその恰好見られちゃまずいのかな??」

 姉の着ている服はメイド服。つまり敬語を使っていたのはメイドシチュということだ。

クロエ「ちょっと見てくるよ。お姉ちゃんは制服にでも着替えてて。」

 がちゃり。ばたん。
 姉は近くにあった自分の制服をするすると着込んでいった。

(ん、これクロエのだ。やっちゃった。わざとじゃないわざとじゃない。)

 脱ぐのは億劫だと、妹の制服を着たまま部屋を出て父母の部屋へ向かった。

ひまり「お父さん?クロエ?どったの?会社早退した・・・むぐっ!?」

 後ろから誰かに口を塞がれた。

「お前の能力は”姉たる者”だ。」

 ぐさりという感触に違和感を覚えた。
 二回刺された。一呼吸おいてぐさりと。
 ざざー・・・『お前の能力は”大雀蜂は三度刺す”だ。』
 砂嵐のような目眩とともに能力を諭され目が覚めた。
 目の前に転がる一つの異物に気がついた。

ひまり「クロエ!大丈夫!?」
クロエ「ん~・・・生きてる・・・?」

 クロエの背中に注視した。
 傷は・・・ない。襲われたのは夢だった・・・?

クロエ「お姉ちゃん、ぷっくくっ。目が充血してるよ。片目だけ。ぷくくっ。」
ひまり「えっ、なんともないですが・・・転んだ時ですかね?」

 クロエに手鏡を渡される。・・・確かに赤かった。充血というよりオッドアイの如く。

ひまり「顔洗ってきますね。クロエは戸締りしててください!さっきの不審者がまだ出るかもしれません。」

 一階へと歩を進める。ギィ…ギィ…。
 ピンポー---ン!

ひまり「私が出ますー!」

 がちゃっ

ひまり「あっ、おとうさん。おかえり。」
「なんだ。ひまりか。クロエかと思った。どうしてクロエの制服なんて着てるんだ?」
ひまり「ん~?いや、ちょっとね・・・どうよ!似合ってるっしょ!私もまだまだ若いのです。」エッヘン!
「似合ってるかどうかよりよく妹の服入るな~と感心してるよ。クロエは?」
ひまり「ん?クロエ―。」

 クロエが下りてきた。

クロエ「ひまねえ。その人だれ?」

 は?おとうさんじゃん・・・ふとクロエの見てる景色が気になった。

ひまり「!!???おとうさんじゃない!?!?」

 かがみのように反射して見えていた光景にはお父さんではない”だれか”が。

「ちっ!もうバレたか!!おれっちはただ・・・能力の説明書を持ってきただけだからな!!これ!」

 クロエと私の手には紙が握られていた。

『能力代理人より』

 後ろを振り向くのを忘れていた。
 ばっ!

ひまり「いない・・・。」
クロエ「ひまねえ・・・?だれいまの?」

 わからない。というかいま鏡が反射するみたいに景色が反射して・・・。
 クロエと顔を見合わせる。

クロエ「とりあえず、封筒の中見てみようか?」


 ――――二階


クロエ「えーっと?『大雀蜂は3度刺す?は、三回殺意を持てば相手を殺せる。そして自分は三回まで生き返ることができるぅ??』なにそれ?」
ひまり「私は『姉たる者は妹の視覚、痛覚、聴覚の3つのうちからどれかを肩代わりできる。』だって。」
 少なくとも日常で役に立つことはないだろう。

クロエ「ねえねえ。学校で使ってみようか?」

 学校で使う・・・?

ひまり「あっそうか。頭いいねクロエ。」
クロエ「それだけじゃなくてね?まあお楽しみにっていうことで。」

 ?。なんだろう。

 ――――土曜日

 キーンコンカーンコン。

女教師「では土曜日ということで小テストを行います。」


『『ええー----!?』』


(ktkr!クロエ様大明神様お願いしますね・・・。)

 クロエの視界をハイジャックする。
 広げられてるのは、国語の教科書。

ひまり「えっと、卑怯者、って私のことそれ。問1.例えばを使って短文を作りなさい。。。」
クロエ「ひまねえ声に出してもわからないんだって・・・。」

 東棟の校舎の上から西棟の3階、3年生の教室を見下ろしながら3年生の『簡単な国語!萌え辞書  短文作成も楽々。』を眺めていた。

 学校では授業が行われていた。

クロエ「聴覚も借りればこっちの声は聞こえんのに・・・。ん~!いい天気だなー。」

 目の前には夕焼けが広がっていた。
 季節は AUTUMN 秋だ。

クロエ「日が暮れるの早い。流石あk・・・。」
 ぐさっ!
 クロエの胸の位置に鍵が刺さっていた。

「よくも先生を・・・これが俺の能力 折れてる剣カリバーンだ。」

 ひまりを椅子に座らせて、萌え本バイブルを見させる形で座らせた。
 夕風でぺらぺらなびくページ。しかしひまりは微動だにしない。

「クロエー!テスト上手くいったよ~!」

 !!!。

 屋上ではクロエが死んでいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...