アーサー王と100本の剣伝説

中村翔

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9本目

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恋人を作る日
憧れを射止める日
一年で最も重要な日
だとて自宅で過ごす日
空が1番冷える日
素晴らしいかな"クリスマス"

ジングルベールジングルベール。
ベルが鳴るのはクリスマス。

「なあ。パーシー。俺たちにだって自由はあると思うんだ。」
「そうですね。」
「なのになんだって聖夜に仕事せにゃならんのだ?」
「そうですね。」

クリスマスに舞い降りて
クリスマスを楽しみたるや

「アーサーは剣を抜くのが聖夜の正しい過ごし方だと思ってるんだろうか。」
「そうですね。」
「俺の勘だが、アーサーはサンタクロースをしんじてるんじゃないか?」
「そうですね。」

聖夜はすぎる駆けてはすぎる
ああやはり素敵な聖夜の晩に

「てぇーっい‼︎‼︎さっきからうるさい‼︎‼︎ 歌うな!悲壮感が増し増しで降り掛かってくる‼︎男だけで、アーサーすら居ないこの場所でわざわざ歌うってのはなんの嫌がらせだ!」
「私とアームドが親子にみえたのでは。」
「だとしたら全然関係ないおっさんだ!他の親子に聴かせてやれ!」
「さて。ここは教会の真ん前なわけですが。」

ヒソヒソあの人達騎士様のコスプレ?
ヒソヒソ違うって多分悪魔のつもりよ

「でだ。アーサーは剣をどこまで抜きに行ったんだ。」
「はぁ。アーサーなら広場ですよ。」
「広場?あそこの人だかりか?一体なんで。」
「この町の剣は目立つ所すなわち広場にある大木にささってるんです。」
「それでか。怪しい事この上ないが?」
「アーサーは生まれてこのかた城から出てませんでした。初めて出たのが今年の春。つまり」
「初めてのクリスマスってことか。」
パーシバルは頷き寒さで震えていた。

「さてさて‼︎ここにあられるは彼の名剣!ここに集まった猛者達で今年こそは抜ける日が訪れるのかー!見事抜ければ豪華賞品すなわちこれだー!」
賞品:ビール一年分
『おぉーーー!』
「では列の順に引き抜いて貰います!」

「パーシー。ビール一年分だとさ。」
「私は飲まないのでわかりかねます。」
「一年分って人によって量違うと思うんだが」
「私は飲まないのでわかりかねます。」

「おーーっとぉ!抜けない!ビールはまた主催者の胃袋に収まるのかー!?」
「ぬぐぐぐ。はぁ。抜けん。」
「これで今年も50人目!お次は、おーっと!これは可愛いお嬢さんだ!お嬢さんお名前は?」
「もぐもぐ(アーサーです)」
「これはもぐもぐちゃんが次の挑戦者だー!」
「もぐもぐ!もぐ!もぐも!(テメェの名はターキーです!)」
すっ。
「・・・・・」
『おおーーーー!!!』
「ぬ、抜いたぁーーー!前代未聞!抱腹絶倒のこの事実ぅーー!賞品はこのもぐもぐちゃんのものだー!」

トコトコ。ズザァー。
「見ましたか?私の勇姿を。」
「パーシーは見てなかったぞ。お酒の絡んだ行事は苦手だそうだ。」
「え?じゃあこのビール一年分は誰が飲むのですか?」
「責任を持って俺が飲もう。」
アームドパルトの年齢は今年15。
この国に酒を飲んではいけない年齢はないが、常識のあるものは15で飲んだりはしない。
そして案の定
「うぁー。世界が俺を中心に回りやがるぜ。」
「変な酔い方をします。やはりお酒はダメですね。」
「あぁー。俺は先に宿に戻ってるー。」
そうですか。と別れて数刻。
(風が冷たいですね)
アーサーの居るところは広場から少し東。
街路樹のならぶ大通り。
すれ違う人々は皆一様に連れ人がいる。
(やはり人が恋しくなる季節)
おや?貴女は1人なのですね。
振り向くと1人の女性が立っていた。
「こんな夜更けに1人で?」
「ええ。連れはお酒でダウンしてしまって。」
「まあ。こんな少女を1人にはできません。」
そういうと女性は手を握ってきた。
「どこにいくのですか?この先は何もありませんよ。」
「えぇと。適当にぶらぶらしてました。」
自分も実は酔っているのかもしれない。
普段とは言葉と仕草が違うのがわかる。
「では少し歩きませんか?暇つぶしに。」
「そうですね。」
アーサーはたまに道の横にある雪解けを踏み鳴らしていった。
それを見てどう思ったか女性は、ふふっ。と笑う。
ゴーン。ゴーン。ゴーン。
「おや。鐘の音ですか?」
「これは聖堂の鐘ですね。深夜になるのを知らせています。丁度日付けが変わる頃ですね。」
日付が変わる。もうそんな時間。
しかし今日はまだそんな時間。
今から夜明けまで5時間以上ある。
だからまだ。
「おねぇさん。お酒はいけますか?」
「いけなくはないですね。」
よかった。ならば。
「賞品を貰いましたので飲んでください。」
「まぁ!こんな少女にお酒を持たせたのですか?非常識極まりないですね。」
これなんですが。とビールをひと瓶。
「?。かわった入れ物ですね。瓶ということはワインかなにかですか?」
「いえ、私もよく知らないのですがビールというお酒だそうです。」
「びーるというとあの金色でしゅわしゅわしているあの?」
はい。というと、なるほど。と。
少し歩いた所で気づいた。
この女...髪がおそろしくながい。
暗闇で見えづらいがシルバーの髪。
その髪が月明かりに照らされて輝いてみえる。
そして風ではためき、地面につく。
そう。女性の髪は身長よりも長いのだ。
それを感じさせないくらい手入れされている。
「なるほど。」
「???。なにか?」
いえ。と、思わず目を逸らしてしまう。
だが、それができない。
釘づけになるとはこういうことなのだろう。
「ねぇ。どうかした?」
ふと視線の先に聖堂が見えた。
おかげで視線も逸れてしまった。
「聖堂が見えますね。」
「えぇ。すぐ近くですね。みていきますか?」
はい。と答える間近。前から人が走ってきた。
ドン!
男が女性にぶつかり去っていく。
と、その拍子に転びそうになるのを支える。
「だいじょ・・・」
アーサーは手を見た。
その手は血で塗れ
真っ赤に染まり
暖かいまるで
心の臓を握っているように
「う、ぁぁぁぁぁ!!」

ガバっ!
気がつくと宿のベッドに横たわって眠ってしまっていた。
腰に刺さっているはずの2本の剣は
まるで最初から一本だけしかなかったかのように聖剣だけが佇んでいた。

9本目の剣読了。
Thi・10本目の剣を始めますよろしいですか?



















魔眼名:人殺しの魔眼(無意識)
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