僕の想いが君に通じますように

木野葉ゆる

文字の大きさ
3 / 9

しおりを挟む
「飯森、なんであんたはそこまでするんだ……」
 
 その日、思わず彼の精をゴクリと飲み込んだ僕に、彼は泣きそうな表情でそう言った。
「好きだから、平気だよ。相沢君、君はなんで、僕に奉仕させるの? 僕が嫌がると思った? 君を嫌悪して、離れて行くと思った? 」
 僕は、ずっと疑問だった。
 彼が快楽の為にこの行為を強いている訳ではないことに、直ぐに気付いたから。
 彼はあの時、叶わぬ恋に涙を流していたのだろうか?
「俺は、俺なら、例え好きでも、男のなんか舐められねー。あんたは変態だ! 」
 吐き捨てるように言うのに、どうしてそんなに悲しそうなの?
「変態でいいよ。ねぇ、相沢君、僕に何が出来る? どうしたら、君はそんな表情をしなくなるの? 」
「うるせーよ。あんたなんか大嫌いだ! もう、俺に近づくな! 」
 
 僕の胸ぐらを掴んで、怒鳴り声をあげる彼の唇に、僕は引き寄せられた。
「………………」
 唇をゴシゴシと擦りながら、信じられないという目で睨みつけてくるけど、僕だって驚いたんだ。
「おまえ、何してんだよ! なんでキスなんかするんだ! そんなことしていいなんて言ってねー。変態! あんたなんか死んじまえ! 」
 耳を赤く染めて怒ってる君が可愛くて、抱きしめたくなった。もっと怒られそうだからしなかったけどね。
「相沢君、好きだよ」
「あんた、頭おかしい……。日本語通じてないんじゃない? 俺なんか好きになるの、変だよ……」
 語尾が掠れてる。
 僕は君に、笑って欲しい。僕だけに笑って欲しい。君に何があったのか知らないけれど、君は本当は優しい人だと思うんだ。怒っても、言葉を荒げても、キツいことを言っても、絶対暴力を振るったりしなかった。
 僕をいじめてた奴らとは違う。
 君は僕を人間として扱ってくれた。
 だから……。
 
「ごめんね。僕は此処を辞めるよ。通信に切り替える。君を困らせてごめんなさい」
 君から離れるのは辛いけど、君を傷つけるよりは、その方がいい。
 俯いた彼が、どんな表情をしていたのかは分からない。
 でも、いつもより低い声が聞こえた。
「ふざけるな! あんたも俺から逃げるのかよ……」
 ポタリと、床に雫が落ちた。
 ポタリ、ポタリと床に広がる染みに、僕は慌ててポケットを探って、ハンカチを彼に押し付けた。
 
「俺の側にいろよ。あんたは俺の下僕だろ……」
 ハンカチを掴んだまま、流れる涙もそのままに、彼は命じる。
 僕は、やっぱり、頷くことしか出来ないのだ。
 惚れた方が負けだと言うのなら、僕はずっとこの先も、彼に負け続けるのだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

ラベンダーに想いを乗せて

光海 流星
BL
付き合っていた彼氏から突然の別れを告げられ ショックなうえにいじめられて精神的に追い詰められる 数年後まさかの再会をし、そしていじめられた真相を知った時

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...