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「飯森、なんであんたはそこまでするんだ……」
その日、思わず彼の精をゴクリと飲み込んだ僕に、彼は泣きそうな表情でそう言った。
「好きだから、平気だよ。相沢君、君はなんで、僕に奉仕させるの? 僕が嫌がると思った? 君を嫌悪して、離れて行くと思った? 」
僕は、ずっと疑問だった。
彼が快楽の為にこの行為を強いている訳ではないことに、直ぐに気付いたから。
彼はあの時、叶わぬ恋に涙を流していたのだろうか?
「俺は、俺なら、例え好きでも、男のなんか舐められねー。あんたは変態だ! 」
吐き捨てるように言うのに、どうしてそんなに悲しそうなの?
「変態でいいよ。ねぇ、相沢君、僕に何が出来る? どうしたら、君はそんな表情をしなくなるの? 」
「うるせーよ。あんたなんか大嫌いだ! もう、俺に近づくな! 」
僕の胸ぐらを掴んで、怒鳴り声をあげる彼の唇に、僕は引き寄せられた。
「………………」
唇をゴシゴシと擦りながら、信じられないという目で睨みつけてくるけど、僕だって驚いたんだ。
「おまえ、何してんだよ! なんでキスなんかするんだ! そんなことしていいなんて言ってねー。変態! あんたなんか死んじまえ! 」
耳を赤く染めて怒ってる君が可愛くて、抱きしめたくなった。もっと怒られそうだからしなかったけどね。
「相沢君、好きだよ」
「あんた、頭おかしい……。日本語通じてないんじゃない? 俺なんか好きになるの、変だよ……」
語尾が掠れてる。
僕は君に、笑って欲しい。僕だけに笑って欲しい。君に何があったのか知らないけれど、君は本当は優しい人だと思うんだ。怒っても、言葉を荒げても、キツいことを言っても、絶対暴力を振るったりしなかった。
僕をいじめてた奴らとは違う。
君は僕を人間として扱ってくれた。
だから……。
「ごめんね。僕は此処を辞めるよ。通信に切り替える。君を困らせてごめんなさい」
君から離れるのは辛いけど、君を傷つけるよりは、その方がいい。
俯いた彼が、どんな表情をしていたのかは分からない。
でも、いつもより低い声が聞こえた。
「ふざけるな! あんたも俺から逃げるのかよ……」
ポタリと、床に雫が落ちた。
ポタリ、ポタリと床に広がる染みに、僕は慌ててポケットを探って、ハンカチを彼に押し付けた。
「俺の側にいろよ。あんたは俺の下僕だろ……」
ハンカチを掴んだまま、流れる涙もそのままに、彼は命じる。
僕は、やっぱり、頷くことしか出来ないのだ。
惚れた方が負けだと言うのなら、僕はずっとこの先も、彼に負け続けるのだろう。
その日、思わず彼の精をゴクリと飲み込んだ僕に、彼は泣きそうな表情でそう言った。
「好きだから、平気だよ。相沢君、君はなんで、僕に奉仕させるの? 僕が嫌がると思った? 君を嫌悪して、離れて行くと思った? 」
僕は、ずっと疑問だった。
彼が快楽の為にこの行為を強いている訳ではないことに、直ぐに気付いたから。
彼はあの時、叶わぬ恋に涙を流していたのだろうか?
「俺は、俺なら、例え好きでも、男のなんか舐められねー。あんたは変態だ! 」
吐き捨てるように言うのに、どうしてそんなに悲しそうなの?
「変態でいいよ。ねぇ、相沢君、僕に何が出来る? どうしたら、君はそんな表情をしなくなるの? 」
「うるせーよ。あんたなんか大嫌いだ! もう、俺に近づくな! 」
僕の胸ぐらを掴んで、怒鳴り声をあげる彼の唇に、僕は引き寄せられた。
「………………」
唇をゴシゴシと擦りながら、信じられないという目で睨みつけてくるけど、僕だって驚いたんだ。
「おまえ、何してんだよ! なんでキスなんかするんだ! そんなことしていいなんて言ってねー。変態! あんたなんか死んじまえ! 」
耳を赤く染めて怒ってる君が可愛くて、抱きしめたくなった。もっと怒られそうだからしなかったけどね。
「相沢君、好きだよ」
「あんた、頭おかしい……。日本語通じてないんじゃない? 俺なんか好きになるの、変だよ……」
語尾が掠れてる。
僕は君に、笑って欲しい。僕だけに笑って欲しい。君に何があったのか知らないけれど、君は本当は優しい人だと思うんだ。怒っても、言葉を荒げても、キツいことを言っても、絶対暴力を振るったりしなかった。
僕をいじめてた奴らとは違う。
君は僕を人間として扱ってくれた。
だから……。
「ごめんね。僕は此処を辞めるよ。通信に切り替える。君を困らせてごめんなさい」
君から離れるのは辛いけど、君を傷つけるよりは、その方がいい。
俯いた彼が、どんな表情をしていたのかは分からない。
でも、いつもより低い声が聞こえた。
「ふざけるな! あんたも俺から逃げるのかよ……」
ポタリと、床に雫が落ちた。
ポタリ、ポタリと床に広がる染みに、僕は慌ててポケットを探って、ハンカチを彼に押し付けた。
「俺の側にいろよ。あんたは俺の下僕だろ……」
ハンカチを掴んだまま、流れる涙もそのままに、彼は命じる。
僕は、やっぱり、頷くことしか出来ないのだ。
惚れた方が負けだと言うのなら、僕はずっとこの先も、彼に負け続けるのだろう。
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