僕の想いが君に通じますように

木野葉ゆる

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 僕は彼の下僕のまま、相変わらず同級生をしている。
 変わったのは、あれ以来、彼は僕をパシリに使わない。荷物持ちもさせない。そして、奉仕もさせてくれない。
 ただ、休み時間になると隣にやって来るし、ご飯は一緒に食べてくれるようになった。
 他の同級生から話しかけられたら、一度僕を見てから、その同級生に向き合ったりする。
 なんと言うか、なかなか懐かない猫がちょっとずつ歩み寄ってきたみたいな、そんな感じがして、僕はとても嬉しかった。
 
「明日、あんた休みなんだろ? 十一時に図書館。試験勉強……」
「え、教えてくれるの? ありがとう! 」
 相沢君がデレた! 僕の顔は知らず緩んで、彼に舌打ちされた。
 初めてのデート、なんて、そんなつもりは全くないかもしれないけど、僕は浮かれてしまった。

 翌日、よく晴れて暑いくらいの気温で、僕は汗を拭きながら待ち合わせ場所に急いだ。
 図書館は大きな建物で、中には自習室もある。学生が多く利用しているので、多少の会話は大目に見てもらえる。
 ガラスの大きな扉の前に、彼はいた。
 白いTシャツにジーンズ、ラフな格好が彼に良く似合っていた。
「ごめんね、待たせて。暑かったよね? 」
 彼の額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
「別に……、今来たとこだし……」
 彼はふいっと横を向いてしまったけれど、僕は嬉しくなる。
 本当はもっと早く着く予定だった。でも、出掛けに面倒な電話がかかってきて、遅れてしまったのだ。
 メッセージは送ったけど、彼からの返事はなくて、既読もつかなかった。
 もしかしてすっぽかされるかな、と、一瞬でも考えた自分を殴りつけたい。彼はそんな人ではないのに。
 彼の手には重そうな手提げ鞄。教科書や参考書を持って来てくれたのだろうか。僕はそれを彼から奪って、先に立って歩いた。
 この図書館は仕事でも利用するから、何処に何があるかは把握している。自習室は四階だ。エレベーターのボタンを押した。
 
 自習室で勉強していると、彼はなかなかのスパルタだと分かった。でも教え方は分かりやすくて、今まで疑問のまま放って置いた問題も、解けるようになった。
 一週間後の試験でもなんとかなりそうだと思うまで、彼は付き合って教えてくれた。
 
「相沢君、今日はありがとう。お礼に晩御飯、ご馳走させて」
 僕は彼の返事も待たずに歩き出す。彼の鞄を持ったままで。
 彼の困った顔は見たくない。出来れば、笑って欲しい。
 今はまだ、下僕と言う名の友達としか思われてないとしても、いつか、僕の腕の中で幸せそうに笑って欲しい。
 こんな欲張りになったのはいつからなのか。僕は彼のことになると、自分でも知らない自分が出てくる。
 そんな自分が嫌いじゃなかった。
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