僕の想いが君に通じますように

木野葉ゆる

文字の大きさ
6 / 9

しおりを挟む
「泊まってけば。明日休みなんだろ」
 
 それはお誘い? なわけないよね。君はそんな人じゃない。例え好きでも男のなんか舐められないって言った。そんな君が、好きでもない僕を誘うはずなんかない。
 
「どうせ誰も帰ってこないんだ。あんたも帰ったって一人だろ。明日の朝飯も作れよ」
 
 ああ、君は寂しいんだ。
 近頃僕に懐いてきてくれるのは、寂しさを紛らわせるためか。
 僕が役に立てるのは嬉しい。
 でもね、僕は男なんだ。簡単に泊めるなんて言ってはダメだよ。

「今日は帰るよ。僕が寝込みを襲ったらどうするの? 相沢君、そんなこと、軽率に言ったらダメだよ」
 
 僕の言葉に、君は傷ついた表情をしてみせた。迷子の子供みたいな表情。前にも思ったけど、そんな無防備な表情を見せたら、狼に食べられてしまうよ。
 寂しさなんて、僕はもう慣れっこになってて、別段意識することもない。でも、君はまだ寂しさに慣れていないんだね。だから、僕なんかに縋ってしまう。
 君を甘やかしたいよ。ドロドロに甘やかして、僕なしにはいられないようにしてしまいたい。
 そして、そんな歪な感情を自分が持っていたことに、僕は驚く。
 君といると、僕はただの雄になる。
 
「じゃあ、またね」
 そう言って、僕は君の家を後にした。
 
 彼が、僕のことをどう思っているのかは分からない。
 でも、彼はたまにメッセージをくれるようになった。
 暇、とか、眠い、とか、そんな短いメッセージだったけど、仕事中に読み返してしまうくらい、僕は嬉しかった。
 
 意外に思われるかもしれないけど、僕は童貞じゃない。人並みに恋愛経験もしてきた。
 いじめにあったのは、いじめっ子達のやっかみもあったんだ。
 中学、高校と、僕には彼女がいた。女友達も多かった。見かけと違って男っぽくない性格が女の子達に安心感を与えたようだった。
 特に大人しい子達に好かれていた。
 そんなある日、クラスの派手なグループのメンバーに彼女がいじめを受けた。
 もちろん、僕は彼女を庇った。
 そしたら、奴らの標的は僕になった。
 教師は面倒くさいことから逃げるだけの役立たずで、親も仕事人間。
 彼女も女友達も、奴らを恐れて僕から離れていった。
 高校を辞めたのは、馬鹿らしくなったんだ。
 味方のいない場所で、暴力や陰湿ないじめに耐えて、そんなことになんの価値も感じなくなった。
 さっさと働いて、自立したかった。
 馬鹿でガキな奴らと、同じ土俵に立っていたくなかった。
 高校を中退してから、バイトを転々としてるうちに、今の事務所の社長に拾われた。
 学生時代と違って、出会いもなかったから、恋愛はご無沙汰だったけど、自分が男に惚れるなんて思ってなかった。
 
 そして君は、今まで付き合ってきた誰よりも、僕を雄にしてしまうんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

ラベンダーに想いを乗せて

光海 流星
BL
付き合っていた彼氏から突然の別れを告げられ ショックなうえにいじめられて精神的に追い詰められる 数年後まさかの再会をし、そしていじめられた真相を知った時

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...