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盆休み、僕の予定は真っ白だった。
実家に帰るつもりなんて最初からなかったし、彼以外の友達とは、最近は疎遠で、誘われることもない。
彼はどうしているだろう。
普段疎かにしている家事を片付けながら、僕が思うのは彼のことだった。
遊びに誘っても良かった。でも、僕はメッセージを打てなかった。
片想いの辛さなんてものを、今になって感じている。
全く望みがないとは思っていない。
でもなんだか、彼の弱みにつけこんでいるような罪悪感があって、押していけないのだ。
テーブルの上のスマホが振動した。
「——来い——」
それだけの短いメッセージ。彼らしい。場所すら書かれてないけど、僕は彼の下僕だ。逆らうことは出来なかった。
クーラーの効いた広い部屋で、彼はとても寒そうに見えた。
「なぁ、今から独り言言うから、あんたは耳を塞いでろ」
僕にそう言って、彼は話し始めた。
「——俺はさ、親が好きだったんだ。母親も父親も、厳しいけど俺を愛してくれてるって思ってた。でもさ、あの人達が大事なのは出来の良い息子でさ、体調不良で受験に失敗するような出来損ないは要らないんだってさ……。父親がさ、舐めろって言ったんだ。出来損ないは性欲処理の相手ぐらいしか出来ないだろって、笑ってさ……、たまたまその場を母親に見つかって、汚らわしいって……、それから、二人とも帰って来なくなった。爺ちゃん達が金とか出してくれるから生きてくのには困らないけど……。俺はさ、そんな人間なんだ。実の親にも見捨てられるような出来損ないなんだ……」
僕の頬を、熱い滴が伝う。
「耳を塞いでろって言っただろ。馬鹿なやつ……」
抱きしめたら、君はそんなことを言ったけど、両手は僕の背中に回された。
君は出来損ないなんかじゃない、親がクズだっただけだ。そう言いたいけど、胸が詰まって言えなくて、抱きしめた腕に力が籠った。
「……あんたに酷いことをした……。俺も、あいつと同じなんだ……」
君の懺悔に、僕は首を横に振る。
「相沢君、好きだ。君は何も酷いことなんてしてないよ」
君の頬に光る涙に、僕はそっと指を這わした。
実家に帰るつもりなんて最初からなかったし、彼以外の友達とは、最近は疎遠で、誘われることもない。
彼はどうしているだろう。
普段疎かにしている家事を片付けながら、僕が思うのは彼のことだった。
遊びに誘っても良かった。でも、僕はメッセージを打てなかった。
片想いの辛さなんてものを、今になって感じている。
全く望みがないとは思っていない。
でもなんだか、彼の弱みにつけこんでいるような罪悪感があって、押していけないのだ。
テーブルの上のスマホが振動した。
「——来い——」
それだけの短いメッセージ。彼らしい。場所すら書かれてないけど、僕は彼の下僕だ。逆らうことは出来なかった。
クーラーの効いた広い部屋で、彼はとても寒そうに見えた。
「なぁ、今から独り言言うから、あんたは耳を塞いでろ」
僕にそう言って、彼は話し始めた。
「——俺はさ、親が好きだったんだ。母親も父親も、厳しいけど俺を愛してくれてるって思ってた。でもさ、あの人達が大事なのは出来の良い息子でさ、体調不良で受験に失敗するような出来損ないは要らないんだってさ……。父親がさ、舐めろって言ったんだ。出来損ないは性欲処理の相手ぐらいしか出来ないだろって、笑ってさ……、たまたまその場を母親に見つかって、汚らわしいって……、それから、二人とも帰って来なくなった。爺ちゃん達が金とか出してくれるから生きてくのには困らないけど……。俺はさ、そんな人間なんだ。実の親にも見捨てられるような出来損ないなんだ……」
僕の頬を、熱い滴が伝う。
「耳を塞いでろって言っただろ。馬鹿なやつ……」
抱きしめたら、君はそんなことを言ったけど、両手は僕の背中に回された。
君は出来損ないなんかじゃない、親がクズだっただけだ。そう言いたいけど、胸が詰まって言えなくて、抱きしめた腕に力が籠った。
「……あんたに酷いことをした……。俺も、あいつと同じなんだ……」
君の懺悔に、僕は首を横に振る。
「相沢君、好きだ。君は何も酷いことなんてしてないよ」
君の頬に光る涙に、僕はそっと指を這わした。
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