すべての想いを鈴に託して

木野葉ゆる

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 グレイは考えた末に、カーリアスたちに同行することを決めた。もしかしたら自分の出自が分かるかもしれない、そう思ったからだ。
 ライトは反対したが、絶対帰ってくると約束をしたら、小さな鈴の付いたチョーカーを、「ずっとこれを着けていてくれ」と渡された。

「これなに?」

「オレの想いをありったけ籠めた魔法を掛けてある。その鈴の音は俺にだけ聞こえるんだ」

「そっか。ありがとう」

 グレイはチョーカーを首の後ろで結ぶと、そっとライトに口付けた。

「ライト、好きだよ。俺、ちゃんと帰ってくるからね」

 ライトは、グレイの初めて告げた好きの言葉に、「当たり前だ。絶対帰ってこい。もし帰れなかったら、オレが連れ戻しに行ってやるから」と、ぎゅうぎゅうとグレイを抱き締めて、村長に引き剥がされるまでくっ付いていた。

 


 カーリアス達と訪れたノーヴァン王国の王都は、広くて清潔で賑やかだった。観光に来たわけではないので、通り過ぎただけだが、グレイは馬車の中から飽きることなく都会の喧騒を眺めていた。

「なんで俺を連れて来たの?」

 グレイが問うても、「王宮に行けば分かります」としか答えてもらえず、そして、馬車の中は一人きりだったので、話し相手もいなかった。

 大きな門をくぐって、広いレンガ造りの道を馬車は進んだ。眼前の王宮は、グレイが今まで見たことがないほど、壮大な建物だった。

「お疲れでしょう。本日はお湯につかってゆっくりお休みください。明日、朝食後に陛下の御前にお連れ致します」

 黒い服を着て、白髪交じりの黒髪をオールバックにしたモノクルを付けた男が、グレイを客間へと案内してくれた。客間は、グレイの家がまるまる入ってしまうくらい広く、調度品も、ひと目で高級だと分かる。
 グレイは、自分が何故こんな風にもてなされるのか分からず、薄気味悪さを感じたが、カーリアス達からも、黒服の初老の男からも、敵意は感じなかった。

 二人の女性がグレイの世話をすると、浴室についてこようとしたが、グレイは一人で出来ると断った。
 着替えとタオルを受け取って、お湯につかると、両手のひらが熱い気がした。お湯を救いあげてみるとキラキラと光っている。びっくりしてお湯を捨てると、手の平をまじまじと見つめる。両手の平はやっぱり光っている。

「なんだ、これ?」

 グレイは首を傾げた。淡く光る両手、そこに、今まで感じたことのない魔力があるのに気付く。
 王族や貴族には魔力持ちはしばしば現れるらしいが、平民では稀だ。
 ライトは魔力持ちだったが、使える魔法はごく僅かだ。リイアも、グレイも、魔力持ちではなかった。今までは。

「こんな急に魔力って沸いてでるもの? 王宮のお湯って、魔法でもかかっているのか?」

 一人で呟くが、もちろん、答える者はいない。

「よく分かんないけど、めんどくさいことになりそうだ」
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