2 / 2
⑵
しおりを挟む
グレイは考えた末に、カーリアスたちに同行することを決めた。もしかしたら自分の出自が分かるかもしれない、そう思ったからだ。
ライトは反対したが、絶対帰ってくると約束をしたら、小さな鈴の付いたチョーカーを、「ずっとこれを着けていてくれ」と渡された。
「これなに?」
「オレの想いをありったけ籠めた魔法を掛けてある。その鈴の音は俺にだけ聞こえるんだ」
「そっか。ありがとう」
グレイはチョーカーを首の後ろで結ぶと、そっとライトに口付けた。
「ライト、好きだよ。俺、ちゃんと帰ってくるからね」
ライトは、グレイの初めて告げた好きの言葉に、「当たり前だ。絶対帰ってこい。もし帰れなかったら、オレが連れ戻しに行ってやるから」と、ぎゅうぎゅうとグレイを抱き締めて、村長に引き剥がされるまでくっ付いていた。
カーリアス達と訪れたノーヴァン王国の王都は、広くて清潔で賑やかだった。観光に来たわけではないので、通り過ぎただけだが、グレイは馬車の中から飽きることなく都会の喧騒を眺めていた。
「なんで俺を連れて来たの?」
グレイが問うても、「王宮に行けば分かります」としか答えてもらえず、そして、馬車の中は一人きりだったので、話し相手もいなかった。
大きな門をくぐって、広いレンガ造りの道を馬車は進んだ。眼前の王宮は、グレイが今まで見たことがないほど、壮大な建物だった。
「お疲れでしょう。本日はお湯につかってゆっくりお休みください。明日、朝食後に陛下の御前にお連れ致します」
黒い服を着て、白髪交じりの黒髪をオールバックにしたモノクルを付けた男が、グレイを客間へと案内してくれた。客間は、グレイの家がまるまる入ってしまうくらい広く、調度品も、ひと目で高級だと分かる。
グレイは、自分が何故こんな風にもてなされるのか分からず、薄気味悪さを感じたが、カーリアス達からも、黒服の初老の男からも、敵意は感じなかった。
二人の女性がグレイの世話をすると、浴室についてこようとしたが、グレイは一人で出来ると断った。
着替えとタオルを受け取って、お湯につかると、両手のひらが熱い気がした。お湯を救いあげてみるとキラキラと光っている。びっくりしてお湯を捨てると、手の平をまじまじと見つめる。両手の平はやっぱり光っている。
「なんだ、これ?」
グレイは首を傾げた。淡く光る両手、そこに、今まで感じたことのない魔力があるのに気付く。
王族や貴族には魔力持ちはしばしば現れるらしいが、平民では稀だ。
ライトは魔力持ちだったが、使える魔法はごく僅かだ。リイアも、グレイも、魔力持ちではなかった。今までは。
「こんな急に魔力って沸いてでるもの? 王宮のお湯って、魔法でもかかっているのか?」
一人で呟くが、もちろん、答える者はいない。
「よく分かんないけど、めんどくさいことになりそうだ」
ライトは反対したが、絶対帰ってくると約束をしたら、小さな鈴の付いたチョーカーを、「ずっとこれを着けていてくれ」と渡された。
「これなに?」
「オレの想いをありったけ籠めた魔法を掛けてある。その鈴の音は俺にだけ聞こえるんだ」
「そっか。ありがとう」
グレイはチョーカーを首の後ろで結ぶと、そっとライトに口付けた。
「ライト、好きだよ。俺、ちゃんと帰ってくるからね」
ライトは、グレイの初めて告げた好きの言葉に、「当たり前だ。絶対帰ってこい。もし帰れなかったら、オレが連れ戻しに行ってやるから」と、ぎゅうぎゅうとグレイを抱き締めて、村長に引き剥がされるまでくっ付いていた。
カーリアス達と訪れたノーヴァン王国の王都は、広くて清潔で賑やかだった。観光に来たわけではないので、通り過ぎただけだが、グレイは馬車の中から飽きることなく都会の喧騒を眺めていた。
「なんで俺を連れて来たの?」
グレイが問うても、「王宮に行けば分かります」としか答えてもらえず、そして、馬車の中は一人きりだったので、話し相手もいなかった。
大きな門をくぐって、広いレンガ造りの道を馬車は進んだ。眼前の王宮は、グレイが今まで見たことがないほど、壮大な建物だった。
「お疲れでしょう。本日はお湯につかってゆっくりお休みください。明日、朝食後に陛下の御前にお連れ致します」
黒い服を着て、白髪交じりの黒髪をオールバックにしたモノクルを付けた男が、グレイを客間へと案内してくれた。客間は、グレイの家がまるまる入ってしまうくらい広く、調度品も、ひと目で高級だと分かる。
グレイは、自分が何故こんな風にもてなされるのか分からず、薄気味悪さを感じたが、カーリアス達からも、黒服の初老の男からも、敵意は感じなかった。
二人の女性がグレイの世話をすると、浴室についてこようとしたが、グレイは一人で出来ると断った。
着替えとタオルを受け取って、お湯につかると、両手のひらが熱い気がした。お湯を救いあげてみるとキラキラと光っている。びっくりしてお湯を捨てると、手の平をまじまじと見つめる。両手の平はやっぱり光っている。
「なんだ、これ?」
グレイは首を傾げた。淡く光る両手、そこに、今まで感じたことのない魔力があるのに気付く。
王族や貴族には魔力持ちはしばしば現れるらしいが、平民では稀だ。
ライトは魔力持ちだったが、使える魔法はごく僅かだ。リイアも、グレイも、魔力持ちではなかった。今までは。
「こんな急に魔力って沸いてでるもの? 王宮のお湯って、魔法でもかかっているのか?」
一人で呟くが、もちろん、答える者はいない。
「よく分かんないけど、めんどくさいことになりそうだ」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
月・木更新
第13回BL大賞エントリーしています。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました
天埜鳩愛
BL
魔法学校の卒業を控えたユーディアは、親友で姉の婚約者であるエドゥアルドとの関係がある日を境に疎遠になったことに悩んでいた。
そんな折、我儘な姉から、魔法を使ってそっけないエドゥアルドの心を読み、卒業の舞踏会に自分を誘うように仕向けろと命令される。
はじめは気が進まなかったユーディアだが、エドゥアルドの心を読めばなぜ距離をとられたのか理由がわかると思いなおして……。
優秀だけど不器用な、両片思いの二人と魔法が織りなすモダキュン物語。
「許されざる恋BLアンソロジー 」収録作品。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる