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第一章 隣のキミは悪魔と天使
2話 もうすぐ入学式ですが……?
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教室に入ると、みんなは自分の席に座って近くの子とお喋りしていた。
黒板に貼ってある紙に、席が書いてあるようだ。
はり紙の横にはチョークで、
『校長先生みずから、あみだくじで席を決めました☆』
と書いてある。
普通、出席番号とかで席が決まると思ってたんだけど……すごく愉快な校長先生らしい。
とりあえず私も、黒板に書いてある席に向かう。一番後ろの、窓側から二番目。
これは中々、いい席かも?
両隣の席にはまだ誰も来ていない。
誰だろうと思い、もう一度黒板を見てみる。
すると私の左隣には、『黒羽魔央』と書いていた。
ん?
黒羽ってどこかで聞いたような……?
結局思い出せずに、ぼーっと黒板をながめていれば知っている名前を見つけた。
天内帝……、天内くんも同じクラスだったんだ!
席は教室前方の入り口側で、最前列だ。
私の席からはちょっと遠い。
「でも、同じクラスなのは嬉しい……」
「──ふふ、なにが嬉しいの? 一華」
「天内くんが同じクラスで──って、え?」
気づけば、左隣の席に人が座っていた。
黒髪に、ぱちりと二重の瞳……。
「あ……さっきの!」
「『さっきの』って、酷いなぁ。俺の名前は黒羽魔央だよ」
そこまで聞いて私は、はっと思い出した。
黒羽って、この子のことだ!
さっき廊下で、私を押してきた女の子が言っていた名前。
「気軽に魔央って呼んで? 一華」
「一華って……、私の名前っ、なんで知ってるの!?」
「さっき廊下で言ってたじゃない。天内に」
「あ……たしかに!」
「だから、一華って呼んでもいい?」
「え、う、うん……?」
「ふふ、ありがとう」
恥ずかしいけど嬉しいような。
今まで、私を一華って呼ぶのは、お父さんだけだったから。
「一華、ほらはやく」
「……へ?」
「魔央って、呼んで?」
いっ、いきなり下の名前は心の準備がっ……!
そんな私にお構いなしで、黒羽魔央くんは「ん?」と色気たっぷりな笑顔で見つめてくる。
「マッ……魔央、くん……」
「よくできました。ははっ、名前ひとつで顔が真っ赤だよ。一華は可愛いね」
声が裏返っちゃったし、黒羽く……、魔央くんは私を見て笑うし!
どんな女の子でも、魔央くんにそんなふうに見つめられたら、顔くらい赤くもなる。
私だけじゃないよね、きっと!?
というか、いきなり下の名前って……!
やっぱりイケメンは、距離の縮め方が違う。魔央くんは、ニコニコと私を見続けてきた。
色々な意味で見ていられなくて、私は反対側を向く。
すると、いつのまにか右隣にも人が来ていた。
腕を枕にして机で寝ている。顔はこっちに向いていて、長いまつ毛がよく見えた。
さっき廊下で魔央くんの隣にいた、少し長めの髪をゆるく一つに結んでいた子だ。
え、ぐっすり寝てる……?
起こした方がいいのかな? と思っていたら急にパチリと目を開けた。
「ひゃっ!」
び、びっくりした!
焦点が定まらない目を何度かパチパチとして、私と目が合うと、変なことを聞いてきた。
「……もう入学式、終わった?」
「え? にゅ、入学式?」
終わったもなにも、まだ始まってすらいない。
新入生は登校したら一度、自分の教室にいき、先生の説明を聞いたあと体育館に移動する。
そして、入学式が始まる……っていう流れなんだけど。
まだ教室に先生は来ていない。
「まだ終わってないよ」
「そっか。じゃあ、終わったら……起こし……て」
「ええっ、今からまた寝るの? もうすぐ先生来ちゃうよ!」
「ん……、だいじょ……ぶ」
「全然大丈夫じゃないと思う!」
「──ねぇ。カイリのことは、ほっといてくれない? 人間さん」
寝ている男の子の隣から、声がした。
私の席から数えて、右に二個隣の席。
ふわふわとした、はちみつ色の髪に左側をヘアピンでとめている男の子。
この子もさっき廊下にいた子だ!
「……人間って、私のこと?」
私たちって、みんな人間じゃないの?
まさか、宇宙人とかいう選択肢もあるとか……?
私の思考回路が変な方向へ行きはじめた時、魔央くんが「はぁ」とため息をついたのが聞こえた。
「柚瑠、『人間』だなんて言っちゃダメだろう」
魔央くんに注意された『ゆずる』くんという子は、ふてくされたように唇をとがらせる。
「だって、ホントのことだもーん。ボク、間違ってないし~」
「まったく……。一華、ごめんね? 柚瑠が言ったことは気にしないで」
「う、うん! 大丈夫、私は気にしてないよ」
謝るついでにと魔央くんは、先生が教室に来るまでの間、二人を紹介してくれた。
はちみつ色の髪で、可愛い顔をしているのが、柊柚瑠くん。
髪を一つに結んで寝ている子は、瀬尾界李くんらしい。
席も隣だし、三人と仲良くなれるといいな。
話が一区切りつくと、扉のあく音がして先生が入ってきた。
私は正面を向いたのに、なぜか左側からはまだ視線が……。
も、もしかして魔央くんまだこっちを見てる?
……なんでっ!?
これじゃ、先生の話に集中できない!
隣からふふっ、と笑い声が。
そのあと魔央くんからの視線が無くなったかと思えば、ボソリと聞こえた言葉。
「──やっと見つけた。俺のお姫様」
「(お姫様?)」
私はその言葉が気になって、仕方がなかった。
◇◇◆◇◇
入学式が行われる体育館へ、クラスごとに入場して行く。
保護者席で知っている顔を見つけた。
──お父さんだ。
まだまだ二十代前半に見えるお父さんは、他の保護者の中にまぎれていても、ずば抜けてカッコいい。
娘の私から見ても、本当にお父さんはイケメンだ。
私のお母さんは、私が産まれた時に亡くなったらしい。でも、お父さんはお母さんの分も私に愛情をたっぷり注いでくれた。
お父さんに向かって小さく手を振ると、嬉しそうに手を振りかえしてくれた。
並べられた椅子に座り、ついに入学式がはじまった。司会の人が少し喋ると、誰かが壇上に上がった。
黒髪ロングヘアーの、スタイル抜群な女性だ。何歳くらいなのか、まったく予想がつかないくらい、若々しい。そして美人!
自己紹介を聞いていれば、破魔麗子さんと言うらしい。
なんと、この学校の校長先生だと言う。
「──あなたたちの入学を、心より歓迎します」
校長先生のお話は、退屈せずに最後まで聞くことができた。
所々笑える話もあって、おちゃめな校長先生は、ふと表情を和らげる。
「とまぁ、真面目な話はこれくらいにして……」
設置されていたマイクを手にとって、前に出てきた校長先生に体育館がざわつく。
「キラキラと輝く青春を送りなさい、少年少女たち!」
水を打ったように静まり返った体育館。
校長先生はそう言うと「じゃあね~」と、壇上をはけて行く。少しして、みんなが立ち上がり体育館は熱気に包まれた。
──ワァァァァ!
生徒も先生達も、パチパチと拍手の嵐だ。
私もつられて、立ち上がり拍手をする。
校長先生がいい人そうでよかった。
輝く青春の一歩として、一人でもいいから友達を作れるように、私も頑張らなくちゃ!
黒板に貼ってある紙に、席が書いてあるようだ。
はり紙の横にはチョークで、
『校長先生みずから、あみだくじで席を決めました☆』
と書いてある。
普通、出席番号とかで席が決まると思ってたんだけど……すごく愉快な校長先生らしい。
とりあえず私も、黒板に書いてある席に向かう。一番後ろの、窓側から二番目。
これは中々、いい席かも?
両隣の席にはまだ誰も来ていない。
誰だろうと思い、もう一度黒板を見てみる。
すると私の左隣には、『黒羽魔央』と書いていた。
ん?
黒羽ってどこかで聞いたような……?
結局思い出せずに、ぼーっと黒板をながめていれば知っている名前を見つけた。
天内帝……、天内くんも同じクラスだったんだ!
席は教室前方の入り口側で、最前列だ。
私の席からはちょっと遠い。
「でも、同じクラスなのは嬉しい……」
「──ふふ、なにが嬉しいの? 一華」
「天内くんが同じクラスで──って、え?」
気づけば、左隣の席に人が座っていた。
黒髪に、ぱちりと二重の瞳……。
「あ……さっきの!」
「『さっきの』って、酷いなぁ。俺の名前は黒羽魔央だよ」
そこまで聞いて私は、はっと思い出した。
黒羽って、この子のことだ!
さっき廊下で、私を押してきた女の子が言っていた名前。
「気軽に魔央って呼んで? 一華」
「一華って……、私の名前っ、なんで知ってるの!?」
「さっき廊下で言ってたじゃない。天内に」
「あ……たしかに!」
「だから、一華って呼んでもいい?」
「え、う、うん……?」
「ふふ、ありがとう」
恥ずかしいけど嬉しいような。
今まで、私を一華って呼ぶのは、お父さんだけだったから。
「一華、ほらはやく」
「……へ?」
「魔央って、呼んで?」
いっ、いきなり下の名前は心の準備がっ……!
そんな私にお構いなしで、黒羽魔央くんは「ん?」と色気たっぷりな笑顔で見つめてくる。
「マッ……魔央、くん……」
「よくできました。ははっ、名前ひとつで顔が真っ赤だよ。一華は可愛いね」
声が裏返っちゃったし、黒羽く……、魔央くんは私を見て笑うし!
どんな女の子でも、魔央くんにそんなふうに見つめられたら、顔くらい赤くもなる。
私だけじゃないよね、きっと!?
というか、いきなり下の名前って……!
やっぱりイケメンは、距離の縮め方が違う。魔央くんは、ニコニコと私を見続けてきた。
色々な意味で見ていられなくて、私は反対側を向く。
すると、いつのまにか右隣にも人が来ていた。
腕を枕にして机で寝ている。顔はこっちに向いていて、長いまつ毛がよく見えた。
さっき廊下で魔央くんの隣にいた、少し長めの髪をゆるく一つに結んでいた子だ。
え、ぐっすり寝てる……?
起こした方がいいのかな? と思っていたら急にパチリと目を開けた。
「ひゃっ!」
び、びっくりした!
焦点が定まらない目を何度かパチパチとして、私と目が合うと、変なことを聞いてきた。
「……もう入学式、終わった?」
「え? にゅ、入学式?」
終わったもなにも、まだ始まってすらいない。
新入生は登校したら一度、自分の教室にいき、先生の説明を聞いたあと体育館に移動する。
そして、入学式が始まる……っていう流れなんだけど。
まだ教室に先生は来ていない。
「まだ終わってないよ」
「そっか。じゃあ、終わったら……起こし……て」
「ええっ、今からまた寝るの? もうすぐ先生来ちゃうよ!」
「ん……、だいじょ……ぶ」
「全然大丈夫じゃないと思う!」
「──ねぇ。カイリのことは、ほっといてくれない? 人間さん」
寝ている男の子の隣から、声がした。
私の席から数えて、右に二個隣の席。
ふわふわとした、はちみつ色の髪に左側をヘアピンでとめている男の子。
この子もさっき廊下にいた子だ!
「……人間って、私のこと?」
私たちって、みんな人間じゃないの?
まさか、宇宙人とかいう選択肢もあるとか……?
私の思考回路が変な方向へ行きはじめた時、魔央くんが「はぁ」とため息をついたのが聞こえた。
「柚瑠、『人間』だなんて言っちゃダメだろう」
魔央くんに注意された『ゆずる』くんという子は、ふてくされたように唇をとがらせる。
「だって、ホントのことだもーん。ボク、間違ってないし~」
「まったく……。一華、ごめんね? 柚瑠が言ったことは気にしないで」
「う、うん! 大丈夫、私は気にしてないよ」
謝るついでにと魔央くんは、先生が教室に来るまでの間、二人を紹介してくれた。
はちみつ色の髪で、可愛い顔をしているのが、柊柚瑠くん。
髪を一つに結んで寝ている子は、瀬尾界李くんらしい。
席も隣だし、三人と仲良くなれるといいな。
話が一区切りつくと、扉のあく音がして先生が入ってきた。
私は正面を向いたのに、なぜか左側からはまだ視線が……。
も、もしかして魔央くんまだこっちを見てる?
……なんでっ!?
これじゃ、先生の話に集中できない!
隣からふふっ、と笑い声が。
そのあと魔央くんからの視線が無くなったかと思えば、ボソリと聞こえた言葉。
「──やっと見つけた。俺のお姫様」
「(お姫様?)」
私はその言葉が気になって、仕方がなかった。
◇◇◆◇◇
入学式が行われる体育館へ、クラスごとに入場して行く。
保護者席で知っている顔を見つけた。
──お父さんだ。
まだまだ二十代前半に見えるお父さんは、他の保護者の中にまぎれていても、ずば抜けてカッコいい。
娘の私から見ても、本当にお父さんはイケメンだ。
私のお母さんは、私が産まれた時に亡くなったらしい。でも、お父さんはお母さんの分も私に愛情をたっぷり注いでくれた。
お父さんに向かって小さく手を振ると、嬉しそうに手を振りかえしてくれた。
並べられた椅子に座り、ついに入学式がはじまった。司会の人が少し喋ると、誰かが壇上に上がった。
黒髪ロングヘアーの、スタイル抜群な女性だ。何歳くらいなのか、まったく予想がつかないくらい、若々しい。そして美人!
自己紹介を聞いていれば、破魔麗子さんと言うらしい。
なんと、この学校の校長先生だと言う。
「──あなたたちの入学を、心より歓迎します」
校長先生のお話は、退屈せずに最後まで聞くことができた。
所々笑える話もあって、おちゃめな校長先生は、ふと表情を和らげる。
「とまぁ、真面目な話はこれくらいにして……」
設置されていたマイクを手にとって、前に出てきた校長先生に体育館がざわつく。
「キラキラと輝く青春を送りなさい、少年少女たち!」
水を打ったように静まり返った体育館。
校長先生はそう言うと「じゃあね~」と、壇上をはけて行く。少しして、みんなが立ち上がり体育館は熱気に包まれた。
──ワァァァァ!
生徒も先生達も、パチパチと拍手の嵐だ。
私もつられて、立ち上がり拍手をする。
校長先生がいい人そうでよかった。
輝く青春の一歩として、一人でもいいから友達を作れるように、私も頑張らなくちゃ!
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