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第四章 大型連休は遊園地デートです!?

42話 夏までおあずけです?

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 観覧車からおりると、天内あまないくんたち三人が先に待っていた。
 天内あまないくんと界李かいりくんが、逃げ出そうとしている柚瑠ゆずるくんを両側から捕まえている。

「なに逃げようとしてるのかな、柚瑠ゆずる?」

 ゆらりと、柚瑠ゆずるくんに近づいた魔央まおくん。
 そして後ろから抱きしめると、……こちょこちょと柚瑠ゆずるくんのわき腹をくすぐった。

「あははっ! ちょ、やめっ、やめてマオっ! ボク、そこ苦手なんだから!」
「知ってるよ。だからやってるの」
「マオのオニィィ!」
「俺は悪魔だけどね」

 なんとも微笑ましい? 光景に、安心していると、私のとなりに来た界李かいりくんがじーっと見つめてきた。

界李かいりくん? どうかしたの」
「……一華いちかちゃん。ほっとした?」
「え? ……う、うん。魔央まおくん不機嫌ふきげんそうだったから、もっと怒るのかなって……」
魔央まお怒鳴どなることは少ないよ。だから調子に乗って、柚瑠ゆずるがよくイタズラしちゃうけど」
界李かいりくんは、イタズラされたら怒る?」
「……ためしてみる?」

 キラリと青く光った瞳に、背中がぞわりとして、なんだか深く聞かない方が良い気がした。

「や、やめとこうかな?」
「そう。一華いちかちゃんなら……いつでもいいよ」

 私は、界李かいりくんにイタズラをするときは、よく内容を考えてしようと心に決めた。

「(……ん? 天内あまないくん、一人だけ大きな袋持ってる)」

 中身が気になって、さっきから静かな天内あまないくんに話しかければ、ビクリと大げさに肩をゆらした。

「っ! ど、どうした神城かみしろさん」
天内あまないくん、ずいぶん大きな袋をもってるね。なに買ったの?」
「これは……、別にたいした物じゃない」

 サッと袋を背中に隠す、天内あまないくん。
 なんだかこれ以上は、聞かない方が良さそうだ。
 視線を魔央まおくんたちに戻せば、柚瑠ゆずるくんは笑い疲れたのかヨロヨロとベンチに座った。

「これくらいで許してあげるよ、柚瑠ゆずる
「やりすぎっ、マオのばかぁ」
「俺がなんだって?」
「何も言ってない! ……てかさボク、もう疲れた。みんな帰ろー?」

 気づけば園内も人がまばらになっていた。
 私たちも、そろそろ帰った方が良さそうだ。

 みんなで遊園地を出ると、一気に現実に戻ったような気分になる。
 私は魔央まおくんに、家まで送ってもらうことになった。
 天内あまないくんたち三人とは、ここでお別れだ。

 魔央まおくんにお姫様抱っこされる前に、天内あまないくんたちへ挨拶をしておく。
 次に会えるのは連休が終わって、学校が始まってからだと思うから。

天内あまないくん、柚瑠ゆずるくん、界李かいりくん。またねっ!」

 私がそう言えば、三人は手を振ってくれた。

一華いちか、ちゃんとつかまってて」
「うん」

 ぱさりと翼を出した魔央まおくんは、飛んでいる姿を人に見られないように、高いところまでグングンと上がっていく。
 ──だんだんと、三人の姿も小さくなっていった。

◇◇◆◇◇

 家の前まで送ってもらい、私は魔央まおくんにお礼を言う。

「今日は……色々あったけど、すごく楽しかったよ! 誘ってくれてありがとう、魔央まおくん」
一華いちかが楽しめたのなら良かった」
魔央まおくんも楽しかった?」
「もちろん。可愛い一華いちかがたくさん見れたし、楽しかったよ」
魔央まおくんの方が可愛かったよ? あのカチューシャとか!」
「あぁー、あれね……。いいや、俺より一華いちかの方が似合ってたよ」

 魔央まおくんにはカチューシャのデザインが可愛すぎたのか、あまり好みではないようだ。

「でも今回は邪魔じゃまが入っちゃったから、またリベンジさせて? 今度は、夏に海でも行こう」
「海……!」

 友達と海に行く、は私がやってみたかったことの一つだ。

「水着の一華いちかもきっと可愛いね」
魔央まおくん!?」

 そんなことを言われると、私も水着の魔央まおくんを想像してしまった。
 水に濡れた髪をかき上げる魔央まおくん……。
 絶対にカッコいいに決まってる!
 けれどそんな想像をして、自分で恥ずかしくなってしまった。
 ふるふると頭をふって、煩悩ぼんのうをふり払う。

「(あれ? そういえば、さっきから魔央まおくんが静か……)」

 ──グイッ。
 突然、魔央まおくんに腕をひっばられて、その綺麗な顔が近づいてくる。

魔央まおく──……」

 ──ちゅ。

「へ……?」
「……ココは、夏までおあずけにしておこうかな」

 魔央まおくんはそう言うと、ふに、と私の唇に人差し指で触れた。
 訳がわからなくて、口をパクパクしている私を見て魔央まおくんは、ふっと笑う。

「バイバイ、また学校で。可愛い俺の一華いちか

 ひらりと手をふったあと、高く飛んで帰っていく魔央まおくん。

一華いちか? 帰ってきたのかい?』

 家の中まで話し声が聞こえていたのか、お父さんが玄関の方にやってきたようだ。
 ガチャッと玄関の扉が開きそうになったのを、外から必死に押してあかないようにする。

『あれっ、開かない?』
「す、すぐ入るから! ちょっと待ってお父さん!」
 
 もうちょっと外の風に当たらないと、お父さんの前に出られそうもない。

 ……だって、私いますごく顔が赤いから。

 魔央くんにキスされた場所は、……唇じゃなくて少し横にずれたところだった。
 でも……、

「(でもちょっと、くちびるはにに当たったような気がする……!)」

 いまのキスでも、信じられないくらい心臓がバクバクといっている。
 魔央まおくんと出会ってから、私の心臓はいつもフル稼働かどうだ。

 ──ホンモノのキスをしちゃったら私は、どうなっちゃうんだろう……?
 未知数みちすうすぎて、想像もできない。
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