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番外編 Episode2(1)
side 春名咲都
(FLORALはるな・店主)
◇
快感が身体中をかけめぐって、何度も自分を見失って、夕べのことを思い出すと恥ずかしい。秋成さんのあちらのほうのタフさは相変わらずで、終わったあと毎回のようにわたしは深い眠りに落ちてしまう。
本当にどこにそんな体力が残っているのだろう。今週は国内外の出張が立て続けにあり、昨日の午前中にアメリカから帰国したばかりだというのに。時差ボケをもろともせず、昨夜の秋成さんはエネルギッシュだった。
只今の時刻は朝の六時。睡眠時間は短めだったけど、眠りが深かったせいか、今朝のわたしはすっきりとした目覚めだった。
「どこ行くの?」
ベッドから降りようとしたら手が伸びてきて、わたしはあっけなく引き戻された。
「顔を洗ってこようかと思ったんだけど」
「まだ六時だよ。もう少し寝てなよ」
「でも目が覚めちゃったし」
「だーめ。久しぶりなんだから、できるだけくっついていたい」
秋成さんはふたりきりになると途端に甘えん坊になる。野上さんやコタさんと一緒にいるときとは別人だ。
もちろんそんな秋成さんも大好きだし、求められるのもうれしい。わたしは秋成さんの言う通り、彼の腕のなかに素直に収まった。
「今日はどうしようか? どこか行きたいところはある?」
このまま二度寝するのかと思っていたら、そうではないらしい。寝転びながらスマホをいじり出し、ネット検索をはじめた。
「山がいい? それとも海? そういえば遊園地にはまだ行ったことないよね? 行ってみる?」
いつだってアクティブな秋成さんは遠出する気満々。でも秋成さんにとっては久々のお休みなので、できればゆっくりしてほしい。
「今日はおうちで、のんびり過ごさない?」
「なんで?」
「真冬のこの時季に山も海もきついよ。遊園地もきっとすごく寒いと思う」
「なら屋内でもいいよ。映画でも見にいく?」
「映画もいいけど、混んでそうだし……。わたし、午後からスーパーに行ってくるよ」
だけど秋成さんは「はあ?」という顔になり、ちょっとご機嫌を損ねた様子。わたしは慌てて補足した。
「前回のリベンジをしたいの。今日の晩ごはんはわたしに作らせて」
なぜリベンジかというと、前に泊まりにきたときに、はりきって大葉と大根おろしをのせた和風ハンバーグを作ったら見事に生焼け。急きょ、秋成さんがケチャップとウスターソース、それから赤ワインでおいしいソースを作ってくれて、煮込みハンバーグにしてくれたのだ。
なにげに料理がうまいんだよなあ。
普段はあまり料理をしないと言っているわりにやけに手際がいい。キッチンには調味料やスパイスがそろっているし、お鍋やフライパンなんかも海外の有名なキッチンメーカーのものだし、けっこう侮れない。
「そんなに気にすること? 失敗したのって、あのときぐらいだろう?」
「……違う。ほかにもいろいろ失敗してる。肉じゃがを作ったときはじゃがいもが煮崩れしてぐちゃぐちゃになっちゃったし、チャーハンを作ったときはごはんがベチャベチャになっちゃったし、豚の生姜焼きはめちゃめちゃしょっぱかった」
「あ……そうだっけ?」
「覚えてるくせに」
毎回失敗しているわけではないけど、失敗率は高い。食べられないほどではないけれど、おいしくもないわけで。非常に申し訳ない気持ちになる。
ましてや秋成さんは一流料理人のお料理を食べ慣れていて舌が肥えてもいるので、なおさら落ち込んでしまうのだ。
「わかった。そういうことならいいよ。スーパーは僕も一緒に行く」
「買い物ならわたしひとりで大丈夫だよ。スーパーも近いし」
「僕を部屋にひとりで残すつもり? そんなのさみしいじゃん」
秋成さんはスマホをサイドテーブルに戻すと、もう一度お布団にもぐり込む。わたしの背中に手をまわして抱き寄せると、なぜか「ありがと」とつぶやいた。
「でも咲都はもっと我儘になっていいんだよ」
ぎゅっと抱きしめられる。
「ちゃんと我儘言ってるよ。料理のリベンジも自己満足の立派な我儘だもん」
「咲都はやさしいね」
「やさしいのは秋成さんだよ。いつもわたしを最優先に考えてくれる。外で食事をするときはいつもわたしの希望のメニューがあるレストランに連れていってくれるし、ふたりで会う日はわたしの仕事の都合を考えて日を選んでくれる。ほかにもいろいろ。だからわたしもなにかしたいの」
「たくさんしてもらってるよ。今日だってレモンティーをいれてくれた」
「あんなの、たいしたことないよ」
「ううん、おかげでビタミン補給できた。あとレモンには疲労回復とリラックス効果もあるんだよね?」
「栄養のことまでは考えてなかったけど」
どちらともなくクスクスと笑い出す。
「こういう話はたぶんキリがなくなるね」
秋成さんの言葉にわたしも「うん」と賛同した。
(FLORALはるな・店主)
◇
快感が身体中をかけめぐって、何度も自分を見失って、夕べのことを思い出すと恥ずかしい。秋成さんのあちらのほうのタフさは相変わらずで、終わったあと毎回のようにわたしは深い眠りに落ちてしまう。
本当にどこにそんな体力が残っているのだろう。今週は国内外の出張が立て続けにあり、昨日の午前中にアメリカから帰国したばかりだというのに。時差ボケをもろともせず、昨夜の秋成さんはエネルギッシュだった。
只今の時刻は朝の六時。睡眠時間は短めだったけど、眠りが深かったせいか、今朝のわたしはすっきりとした目覚めだった。
「どこ行くの?」
ベッドから降りようとしたら手が伸びてきて、わたしはあっけなく引き戻された。
「顔を洗ってこようかと思ったんだけど」
「まだ六時だよ。もう少し寝てなよ」
「でも目が覚めちゃったし」
「だーめ。久しぶりなんだから、できるだけくっついていたい」
秋成さんはふたりきりになると途端に甘えん坊になる。野上さんやコタさんと一緒にいるときとは別人だ。
もちろんそんな秋成さんも大好きだし、求められるのもうれしい。わたしは秋成さんの言う通り、彼の腕のなかに素直に収まった。
「今日はどうしようか? どこか行きたいところはある?」
このまま二度寝するのかと思っていたら、そうではないらしい。寝転びながらスマホをいじり出し、ネット検索をはじめた。
「山がいい? それとも海? そういえば遊園地にはまだ行ったことないよね? 行ってみる?」
いつだってアクティブな秋成さんは遠出する気満々。でも秋成さんにとっては久々のお休みなので、できればゆっくりしてほしい。
「今日はおうちで、のんびり過ごさない?」
「なんで?」
「真冬のこの時季に山も海もきついよ。遊園地もきっとすごく寒いと思う」
「なら屋内でもいいよ。映画でも見にいく?」
「映画もいいけど、混んでそうだし……。わたし、午後からスーパーに行ってくるよ」
だけど秋成さんは「はあ?」という顔になり、ちょっとご機嫌を損ねた様子。わたしは慌てて補足した。
「前回のリベンジをしたいの。今日の晩ごはんはわたしに作らせて」
なぜリベンジかというと、前に泊まりにきたときに、はりきって大葉と大根おろしをのせた和風ハンバーグを作ったら見事に生焼け。急きょ、秋成さんがケチャップとウスターソース、それから赤ワインでおいしいソースを作ってくれて、煮込みハンバーグにしてくれたのだ。
なにげに料理がうまいんだよなあ。
普段はあまり料理をしないと言っているわりにやけに手際がいい。キッチンには調味料やスパイスがそろっているし、お鍋やフライパンなんかも海外の有名なキッチンメーカーのものだし、けっこう侮れない。
「そんなに気にすること? 失敗したのって、あのときぐらいだろう?」
「……違う。ほかにもいろいろ失敗してる。肉じゃがを作ったときはじゃがいもが煮崩れしてぐちゃぐちゃになっちゃったし、チャーハンを作ったときはごはんがベチャベチャになっちゃったし、豚の生姜焼きはめちゃめちゃしょっぱかった」
「あ……そうだっけ?」
「覚えてるくせに」
毎回失敗しているわけではないけど、失敗率は高い。食べられないほどではないけれど、おいしくもないわけで。非常に申し訳ない気持ちになる。
ましてや秋成さんは一流料理人のお料理を食べ慣れていて舌が肥えてもいるので、なおさら落ち込んでしまうのだ。
「わかった。そういうことならいいよ。スーパーは僕も一緒に行く」
「買い物ならわたしひとりで大丈夫だよ。スーパーも近いし」
「僕を部屋にひとりで残すつもり? そんなのさみしいじゃん」
秋成さんはスマホをサイドテーブルに戻すと、もう一度お布団にもぐり込む。わたしの背中に手をまわして抱き寄せると、なぜか「ありがと」とつぶやいた。
「でも咲都はもっと我儘になっていいんだよ」
ぎゅっと抱きしめられる。
「ちゃんと我儘言ってるよ。料理のリベンジも自己満足の立派な我儘だもん」
「咲都はやさしいね」
「やさしいのは秋成さんだよ。いつもわたしを最優先に考えてくれる。外で食事をするときはいつもわたしの希望のメニューがあるレストランに連れていってくれるし、ふたりで会う日はわたしの仕事の都合を考えて日を選んでくれる。ほかにもいろいろ。だからわたしもなにかしたいの」
「たくさんしてもらってるよ。今日だってレモンティーをいれてくれた」
「あんなの、たいしたことないよ」
「ううん、おかげでビタミン補給できた。あとレモンには疲労回復とリラックス効果もあるんだよね?」
「栄養のことまでは考えてなかったけど」
どちらともなくクスクスと笑い出す。
「こういう話はたぶんキリがなくなるね」
秋成さんの言葉にわたしも「うん」と賛同した。
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