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第二章 無情な世界のメランコリー
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「はっきり言えば? 僕のことを疑っているって」
伊央は冷笑し、四方堂を挑発する。さらに伊央は身体中から憎しみをあふれさせ、目の前の四方堂に挑戦的な目を向けた。
「僕を疑いたいならそれでもいいよ。質問があればなんだって答える。だけど先に言っておく。僕には動機がない。それに僕はあんな目立ちたがりやとは違う。本当に爆破させる気があるなら、とっくにどこかの建物を吹き飛ばして、素知らぬ顔をしてるよ」
「雫石くん、口を慎みなさい」
伊央の大人をなめきった態度を制したのは如月学園長だった。
「最初に僕を侮辱してきたのはこの刑事だよ」
「ああ、わかっている。四方堂刑事、今の言動は少し行きすぎではないかと思います。わたしが聞いていたのは当時の状況を聞くということでしたが、生徒への尋問が目的ならおやめいただきたい」
「誤解しないでほしいのですが。わたしは侮辱もしてなければ、尋問するつもりもありません。単に我々警察の考える犯人像を話しただけですよ」
まったくもって反省していない。相変わらず四方堂は無愛想に答えた。
いたたまれなくなった筧が嫌悪感をあらわにする。
「いい加減にしてください。この子たちはまだ十六にも満たない子どもです。いくら保護者の許可を取っているといっても、あなたの言動は見すごせません」
「筧先生でしたっけ? あなたも教師ならわかるでしょう? 子どもの世界も大人の世界と同じように残酷だってことを。人を殺める人間もいれば、罠におとしいれて苦しんでいる姿を見ては快感を得ようとする人間もいます。残酷さは大人も子どもも関係ないんですよ」
四方堂の切れ長の目は筧ではなく、はるか遠い世界を見ているかのようだった。これまでみにくい人間関係や、ゆがんでしまった精神状態の人間を数多く見てきた四方堂にとって、罪を暴くことのみが正義なのだ。
「まあまあ、四方堂刑事。まだわが校の生徒が犯人と決まったわけではないんですから。そう目くじらを立てないでくださいよ」
如月学園長はデスクの上で両手を組み合わせ、穏やかな笑みを四方堂に向けた。
しかし彼が気にしているのは学園の評判である。あくまでも被害者に徹したい。なんとしてでも学園の生徒や教師、関係者から犯罪者を出すわけにはいかないのだ。
その思惑を察した四方堂は「チッ」と舌打ちをした。すると浜口がこれはまずいと、「それでは別の質問を」と話を逸らす。めぐると伊央を交互に見て、「ふたりに聞きたいんだけど」と質問をはじめた。
「爆破予告があった日の朝、君たちはあの非常階段付近で誰か見なかった? もしくはその場所に行くまで誰とすれ違ったのかを教えてほしい」
「わたしは誰も見てません。すれ違った人については……覚えていません。北棟に行くまでに、南棟、中央棟と順番に見てまわったので、たくさんの人とすれ違いましたから」
「それでは北棟の近くですれ違った人は覚えてる?」
「たぶん、いなかったと思います。その時間は朝のショートホームルームがはじまっていたはずですから」
「そっか。じゃあ、雫石くんはどうかな? 誰か見かけなかった?」
しかし伊央は「さあ」と首を傾げるだけ。伊央の意図がわからない浜口は困ったように苦笑した。それでも浜口は辛抱強く、伊央に質問を繰り返す。
「あの非常階段にはよく行くみたいだけど。あの日の朝に限らず、なにか気になったことはない?」
すると伊央は目だけを動かす。その場にいる全員がその視線の動きに合わせ、如月学園長を見た。
「なんです? わたしを疑っているんですか? わたしは、朝七時四十五分に出勤し、職員室で毎朝八時十五分から行われる朝礼に出ています。普段も生徒の様子を見るために教室のある南棟には足を運びますが、今週は北棟には行ってません」
「いいや、違うよ。僕が見たのは如月学園長じゃなくて生徒会長のほうだよ」
「華耶子が!?」
驚いた如月学園長が高級チェアから立ちあがった。
「見かけたのは爆破予告の前日だけど」
「華耶子さんというのは?」
浜口が質問する。
伊央は冷笑し、四方堂を挑発する。さらに伊央は身体中から憎しみをあふれさせ、目の前の四方堂に挑戦的な目を向けた。
「僕を疑いたいならそれでもいいよ。質問があればなんだって答える。だけど先に言っておく。僕には動機がない。それに僕はあんな目立ちたがりやとは違う。本当に爆破させる気があるなら、とっくにどこかの建物を吹き飛ばして、素知らぬ顔をしてるよ」
「雫石くん、口を慎みなさい」
伊央の大人をなめきった態度を制したのは如月学園長だった。
「最初に僕を侮辱してきたのはこの刑事だよ」
「ああ、わかっている。四方堂刑事、今の言動は少し行きすぎではないかと思います。わたしが聞いていたのは当時の状況を聞くということでしたが、生徒への尋問が目的ならおやめいただきたい」
「誤解しないでほしいのですが。わたしは侮辱もしてなければ、尋問するつもりもありません。単に我々警察の考える犯人像を話しただけですよ」
まったくもって反省していない。相変わらず四方堂は無愛想に答えた。
いたたまれなくなった筧が嫌悪感をあらわにする。
「いい加減にしてください。この子たちはまだ十六にも満たない子どもです。いくら保護者の許可を取っているといっても、あなたの言動は見すごせません」
「筧先生でしたっけ? あなたも教師ならわかるでしょう? 子どもの世界も大人の世界と同じように残酷だってことを。人を殺める人間もいれば、罠におとしいれて苦しんでいる姿を見ては快感を得ようとする人間もいます。残酷さは大人も子どもも関係ないんですよ」
四方堂の切れ長の目は筧ではなく、はるか遠い世界を見ているかのようだった。これまでみにくい人間関係や、ゆがんでしまった精神状態の人間を数多く見てきた四方堂にとって、罪を暴くことのみが正義なのだ。
「まあまあ、四方堂刑事。まだわが校の生徒が犯人と決まったわけではないんですから。そう目くじらを立てないでくださいよ」
如月学園長はデスクの上で両手を組み合わせ、穏やかな笑みを四方堂に向けた。
しかし彼が気にしているのは学園の評判である。あくまでも被害者に徹したい。なんとしてでも学園の生徒や教師、関係者から犯罪者を出すわけにはいかないのだ。
その思惑を察した四方堂は「チッ」と舌打ちをした。すると浜口がこれはまずいと、「それでは別の質問を」と話を逸らす。めぐると伊央を交互に見て、「ふたりに聞きたいんだけど」と質問をはじめた。
「爆破予告があった日の朝、君たちはあの非常階段付近で誰か見なかった? もしくはその場所に行くまで誰とすれ違ったのかを教えてほしい」
「わたしは誰も見てません。すれ違った人については……覚えていません。北棟に行くまでに、南棟、中央棟と順番に見てまわったので、たくさんの人とすれ違いましたから」
「それでは北棟の近くですれ違った人は覚えてる?」
「たぶん、いなかったと思います。その時間は朝のショートホームルームがはじまっていたはずですから」
「そっか。じゃあ、雫石くんはどうかな? 誰か見かけなかった?」
しかし伊央は「さあ」と首を傾げるだけ。伊央の意図がわからない浜口は困ったように苦笑した。それでも浜口は辛抱強く、伊央に質問を繰り返す。
「あの非常階段にはよく行くみたいだけど。あの日の朝に限らず、なにか気になったことはない?」
すると伊央は目だけを動かす。その場にいる全員がその視線の動きに合わせ、如月学園長を見た。
「なんです? わたしを疑っているんですか? わたしは、朝七時四十五分に出勤し、職員室で毎朝八時十五分から行われる朝礼に出ています。普段も生徒の様子を見るために教室のある南棟には足を運びますが、今週は北棟には行ってません」
「いいや、違うよ。僕が見たのは如月学園長じゃなくて生徒会長のほうだよ」
「華耶子が!?」
驚いた如月学園長が高級チェアから立ちあがった。
「見かけたのは爆破予告の前日だけど」
「華耶子さんというのは?」
浜口が質問する。
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