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第5章 いつも以上に気まずいです
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「では、わたしはこれで」
「宮原さん」
「はい?」
「いつも助かってる。ありがとう」
深見課長にお礼なんて初めて言われた。それにその表情が心なしかやわらかくなったような気がする。
超絶なイケメンなのに「笑わない男」で有名な彼は、陰では冷淡で仕事の鬼とも言われていて実は苦手だと思っていた。
深見課長とは正反対の一希も最初は苦手だった。気安く話しかけてきたり、別におもしろくもないのにヘラヘラ笑っていたりするのがチャラくて仲よくなれそうにないと思っていた。
でも実際はまじめで精神的にも体力的にもタフで、仕事も器用にこなす。気にして見ているとそんなギャップに気づき、興味を持つようになったわけだけれど。深見課長も本当はやさしい人なのかなあと、ふと思った。
「お礼を言われるほど、たいしたことはしていませんから。それに同じ会社なんですから、お互いに助け合うのは当然ですよ」
「そう言ってくれるなんてありがたいな」
「店舗開発課にも早く誰か配属されるといいですね。前のひとが寿退職して、もうかなり経ちますもんね」
「できればうちの部署にも宮原さんみたいなひとに来てもらいたいんだが」
深見課長でもお世辞を言うのか。意外だな。
「わたしなんてまだまだ未熟です。わたし以上に優秀な人は社内にたくさんいますから、きっとすぐに見つかりますよ」
店舗開発課にはかれこれ半年、いやそれ以上の期間、アシスタントスタッフがいない。そのためごくたまにだけれど、わたしが今日みたいに内線に対応したり、書類を預かったりする程度の来客対応をしていた。
店舗開発課はたった4名しかいない部署だが、こなす仕事量も動かす金額も大きいので、本来なら内勤のアシスタントスタッフがいて当たり前なのだが、なかなかスタッフが配属されない。
アシスタントスタッフがいたほうが店舗開発課のひとたちの負担は減るだろうし、請求関係のチェック体制も二重になって、万が一ミスがあっても気づきやすい。一希もそのことを常々口にしていたくらいだから店舗開発課にとって切実な問題のはずだ。
そんなことを考えているうちに一希が戻ってきてしまった。早足でこちらに向かってくる。
「すみません、深見課長!」
一希がわたしにチラリと視線を向けるが、声をかけることなく通りすぎた。それから自分のデスクの引き出しからブルーの薄いファイルを1冊取り出す。
「なんだ、そこにあったのか」
深見課長がぼそりとつぶやいた。
「図面だけ別に保管していたのを忘れてまして……」
「いつも言ってるだろう。書類は誰が見てもわかるように整理整頓しておけって」
「すみません!」
謝りながらも一希はファイルの中身が間違いないかをチェックしていた。
「そろそろ行けるか?」
深見課長は一希の準備が整った頃合いを見計らって声をかけた。
「同席してもらえるんですか?」
「せっかく戻ってきたんだ。それに新規の業者だからな。顔合わせしておきたいと思っていたんだ」
「先方も深見課長に是非挨拶したいとおっしゃっていたので喜ぶと思います」
ふたりはわたしの存在を完全に無視して言葉を交わす。
これ以上わたしがここにいてもしょうがない。そう思い、わたしは黙ってこの場を離れた。
しかし自分のデスクに戻り、仕事の続きをしようとマウスに手を置いたとき、なぜか一希が近寄ってきた。
「つぐみ」
お客様がいらっしゃっているのに大丈夫なのだろうか。
気になって深見課長に視線を移す。しかし深見課長は特に表情を変えず、「先に行ってるぞ」と言い残し、フロアを出ていった。
「宮原さん」
「はい?」
「いつも助かってる。ありがとう」
深見課長にお礼なんて初めて言われた。それにその表情が心なしかやわらかくなったような気がする。
超絶なイケメンなのに「笑わない男」で有名な彼は、陰では冷淡で仕事の鬼とも言われていて実は苦手だと思っていた。
深見課長とは正反対の一希も最初は苦手だった。気安く話しかけてきたり、別におもしろくもないのにヘラヘラ笑っていたりするのがチャラくて仲よくなれそうにないと思っていた。
でも実際はまじめで精神的にも体力的にもタフで、仕事も器用にこなす。気にして見ているとそんなギャップに気づき、興味を持つようになったわけだけれど。深見課長も本当はやさしい人なのかなあと、ふと思った。
「お礼を言われるほど、たいしたことはしていませんから。それに同じ会社なんですから、お互いに助け合うのは当然ですよ」
「そう言ってくれるなんてありがたいな」
「店舗開発課にも早く誰か配属されるといいですね。前のひとが寿退職して、もうかなり経ちますもんね」
「できればうちの部署にも宮原さんみたいなひとに来てもらいたいんだが」
深見課長でもお世辞を言うのか。意外だな。
「わたしなんてまだまだ未熟です。わたし以上に優秀な人は社内にたくさんいますから、きっとすぐに見つかりますよ」
店舗開発課にはかれこれ半年、いやそれ以上の期間、アシスタントスタッフがいない。そのためごくたまにだけれど、わたしが今日みたいに内線に対応したり、書類を預かったりする程度の来客対応をしていた。
店舗開発課はたった4名しかいない部署だが、こなす仕事量も動かす金額も大きいので、本来なら内勤のアシスタントスタッフがいて当たり前なのだが、なかなかスタッフが配属されない。
アシスタントスタッフがいたほうが店舗開発課のひとたちの負担は減るだろうし、請求関係のチェック体制も二重になって、万が一ミスがあっても気づきやすい。一希もそのことを常々口にしていたくらいだから店舗開発課にとって切実な問題のはずだ。
そんなことを考えているうちに一希が戻ってきてしまった。早足でこちらに向かってくる。
「すみません、深見課長!」
一希がわたしにチラリと視線を向けるが、声をかけることなく通りすぎた。それから自分のデスクの引き出しからブルーの薄いファイルを1冊取り出す。
「なんだ、そこにあったのか」
深見課長がぼそりとつぶやいた。
「図面だけ別に保管していたのを忘れてまして……」
「いつも言ってるだろう。書類は誰が見てもわかるように整理整頓しておけって」
「すみません!」
謝りながらも一希はファイルの中身が間違いないかをチェックしていた。
「そろそろ行けるか?」
深見課長は一希の準備が整った頃合いを見計らって声をかけた。
「同席してもらえるんですか?」
「せっかく戻ってきたんだ。それに新規の業者だからな。顔合わせしておきたいと思っていたんだ」
「先方も深見課長に是非挨拶したいとおっしゃっていたので喜ぶと思います」
ふたりはわたしの存在を完全に無視して言葉を交わす。
これ以上わたしがここにいてもしょうがない。そう思い、わたしは黙ってこの場を離れた。
しかし自分のデスクに戻り、仕事の続きをしようとマウスに手を置いたとき、なぜか一希が近寄ってきた。
「つぐみ」
お客様がいらっしゃっているのに大丈夫なのだろうか。
気になって深見課長に視線を移す。しかし深見課長は特に表情を変えず、「先に行ってるぞ」と言い残し、フロアを出ていった。
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