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10.身分違いの恋だとしても
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目を開けると、冴島さんはまだすやすやと眠っていた。
ふたりで迎えた初めての朝は陽だまりのなかにいるような、やさしいあたたかさに包まれていた。
本当はもう少しこのままでいたいけれど……。
冴島さんを起こさないようにベッドから降りて服を着る。それから洗面所で身だしなみを整えた。
しかし首もとが赤くなっていることに気がつき、なんだろうと思い、鏡に身体を近づけさせた。
「これ……」
それは紛れもない昨夜の痕跡。
髪を結んだら見えてしまうかもしれない。だけど困ったなと思いながらも顔がほころぶ。
リビングに行くと、冴島さんが寝ぼけ眼《まなこ》でソファに座っていた。
「おはよ。起きたらベッドにいないから焦った」
「洗面所をお借りしてました。さすがに黙っては帰りませんよ」
「そっか、そうだよな。咲都はもう僕のものだった……なんて言ったら、コタや野上に笑われるかな」
冴島さんは自虐的に言うと、照れながら「顔洗ってくる」と洗面所に入っていった。
寝起きだからかな。いつもより隙があるように思う。心を許してくれているのだと思ったら、喜びがあふれてくる。
わたしも変に緊張しなくなった。
こんなふうに少しずつ変化していくのかもしれない。お互いに見せ合って打ち解けていって、かけがえのない安らぎの場所になっていく。
「そういえば……」
リビングに戻ってきた冴島さんがわたしの髪をかきわけ、首もとを覗き込んできた。
「これ、まずいよな」
「自覚あったんですか?」
「ちょっと強かったかなって思った瞬間があったから。咲都は覚えてないの?」
「……はい」
夕べは完全にわたしの負けだった。
意識が混沌としてしまうほど追い込まれ、わたしだけ余裕をなくして、大変なんてもんじゃなかった。冴島さんに圧倒され続け、いったい過去にどれだけ経験してきたのかと、もはや感心するレベル。
だけどもう少し手加減してほしかった。いくら言っても聞く耳を持ってくれなくて、されるがまま。あんな感覚はそれまで味わったことがないものだった。
あのときのわたし、大丈夫だったのだろうか。いろいろと。
「次からは気をつけるよ」
「……お願いします」
「もしかして、痕つけたことを怒ってるの?」
「いいえ、キスマークは別にいいんですけど……」
「ああ、なるほど。あのことならぜんぜん気にする必要はないよ。夕べはすごく可愛かったから」
「ちょっ!!」
考えを読まれた。
悔しくて軽く睨むフリをする。
すると、すっと腕が伸びてきて、驚いて固まっていると、目尻を指で下げられた。
「そういう顔は似合わないよ。咲都は、花屋で仕事をしているときのはつらつとした顔もいいけど、僕を見つめてふんわり笑っている顔はもっと好き」
「冴島さん……」
わたしも冴島さんのそのやさしい笑顔が大好きだから。
「はい」
素直に頷いてしまう。
知らなかった。わたしは冴島さんといるとき、そんな顔をしていたんだ。
なら、わたしも思っていいのかな。冴島さんのその笑顔はわたしだけが見ることのできるものだと。
コタさんや野上さん、紅葉さんといるときとは違う顔。そう思ってうぬぼれてもいいですよね。
目を開けると、冴島さんはまだすやすやと眠っていた。
ふたりで迎えた初めての朝は陽だまりのなかにいるような、やさしいあたたかさに包まれていた。
本当はもう少しこのままでいたいけれど……。
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しかし首もとが赤くなっていることに気がつき、なんだろうと思い、鏡に身体を近づけさせた。
「これ……」
それは紛れもない昨夜の痕跡。
髪を結んだら見えてしまうかもしれない。だけど困ったなと思いながらも顔がほころぶ。
リビングに行くと、冴島さんが寝ぼけ眼《まなこ》でソファに座っていた。
「おはよ。起きたらベッドにいないから焦った」
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冴島さんは自虐的に言うと、照れながら「顔洗ってくる」と洗面所に入っていった。
寝起きだからかな。いつもより隙があるように思う。心を許してくれているのだと思ったら、喜びがあふれてくる。
わたしも変に緊張しなくなった。
こんなふうに少しずつ変化していくのかもしれない。お互いに見せ合って打ち解けていって、かけがえのない安らぎの場所になっていく。
「そういえば……」
リビングに戻ってきた冴島さんがわたしの髪をかきわけ、首もとを覗き込んできた。
「これ、まずいよな」
「自覚あったんですか?」
「ちょっと強かったかなって思った瞬間があったから。咲都は覚えてないの?」
「……はい」
夕べは完全にわたしの負けだった。
意識が混沌としてしまうほど追い込まれ、わたしだけ余裕をなくして、大変なんてもんじゃなかった。冴島さんに圧倒され続け、いったい過去にどれだけ経験してきたのかと、もはや感心するレベル。
だけどもう少し手加減してほしかった。いくら言っても聞く耳を持ってくれなくて、されるがまま。あんな感覚はそれまで味わったことがないものだった。
あのときのわたし、大丈夫だったのだろうか。いろいろと。
「次からは気をつけるよ」
「……お願いします」
「もしかして、痕つけたことを怒ってるの?」
「いいえ、キスマークは別にいいんですけど……」
「ああ、なるほど。あのことならぜんぜん気にする必要はないよ。夕べはすごく可愛かったから」
「ちょっ!!」
考えを読まれた。
悔しくて軽く睨むフリをする。
すると、すっと腕が伸びてきて、驚いて固まっていると、目尻を指で下げられた。
「そういう顔は似合わないよ。咲都は、花屋で仕事をしているときのはつらつとした顔もいいけど、僕を見つめてふんわり笑っている顔はもっと好き」
「冴島さん……」
わたしも冴島さんのそのやさしい笑顔が大好きだから。
「はい」
素直に頷いてしまう。
知らなかった。わたしは冴島さんといるとき、そんな顔をしていたんだ。
なら、わたしも思っていいのかな。冴島さんのその笑顔はわたしだけが見ることのできるものだと。
コタさんや野上さん、紅葉さんといるときとは違う顔。そう思ってうぬぼれてもいいですよね。
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