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命の花
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「――それで、肇くんの服を買うのは決定として、それまでどうするかよねぇ」
朝食を済ませて、今はその後片付けの最中。
ユズさんはみんなに相談するように言葉を投げかけた。
「みなさんは何か予定があるんですか?」
「うーん、予定というより、仕事……かな? これから私たちはお花のお世話をしなくてはいけないの」
仕事でお花のお世話……というと、
「みなさんはもしかして生花店で働いて?」
「うーん。そうじゃなくてね、私たち妖精は命の花という大切な花を育てるために産まれてきたのよ。あ、命の花というのはその名前の通りで、その花には一人の人間の命が宿っているの」
「人間の命、ですか……」
ただのお花のお世話かと思っていたら、壮大な話になってきた。
「命の花が枯れたらその花と繋がっている人間の命も失われてしまう、と言われているわ」
「と言われているって……なんだか曖昧ですね」
「そうね。でも私たちも人間が亡くなったところなんて見たことないから」
「あぁ……」
言われてみればこの世界には人間がいないということを、これまでの反応からして伝わってくる。
……あれ? でもその話が本当なら。
「もしかして、僕の命と繋がっている花もここにあるってことですか?」
「君が生きている限りはどこかにあるわね。まぁ、私たちもどの花が、誰の命に繋がっているかなんてわからないから調べられないけど……」
「そう、なんですね」
「とにかく、私たちはそのお花のお手入れをするのが仕事なの」
つまり今こうして僕が生きていられるのは、本当にユズさんやサクラさん達のお陰ってことなのだろう。
「……ありがとうございます」
「ど、どうしたの、いきなりお礼なんて」
「いえ、僕がこうして生きているのもユズさんたちのお陰なんだなって思ったら自然と」
「そんなの気にしなくていいのよ。私たちはそのためにいるんだから」
「ユズさん……」
「で、ここからさっきの話に戻るんだけど、午後にはお世話も終わると思うんだ。でもそれまで君はすることがなくなっちゃうでしょ」
「……流石に一人で外、というのは」
「ジー…………」
「ダメ、ですもんね」
「当たり前。君はまだ病み上がりのような状態なんだから。それにみんな午前中はお世話をしているから君に何かあっても助けられないの」
「サクラちゃんのためにも無理はしちゃダメよ」
「すみません」
「わかればよろしい。……でも、ずっと待っているのも退屈だろうし」
ユズさんが「うーん」と頭を悩ませていると、僕たちの間からひょこっと小さな頭が飛びだす。
「だったら、わたし達のお仕事を見てもらうのはどうでしょう!」
「ちょっとサクラ。それ本気で言ってるの?」
サクラさんの提案に隠れて聞いていたのであろうアオイさんも飛び出してくる。
「もぅ、いるなら隠れてないで話に混ざっても良かったのに」
「いや、それは……。ううん、それよりも命の花の世話を人間に見せるなんて出来ないわよ!」
「良いアイデアだと思ったんですが……」
「命の花は大切な花なの。万が一あいつが悪戯でもして枯らしたりしたら、責任を取るのはサクラなのよ!」
「むぅ、アオイお姉ちゃん、肇さんはそんなことしませんよ! ですよね、肇さんっ!」
「それはもちろん。みんなの邪魔をしないようにはするつもりだけど……」
「だったら仕事を見られるだけで邪魔だから来ないで」
そ、そこまでなのか……。
僕のことを嫌っているのはわかるけど、昨日よりひどくなっていないか……。
「アオイちゃん、別に良いじゃないの」
「こればかりはユズの頼みでも嫌よ。……どうしてもって言うならあたしがいない時だけにして」
「アオイちゃん……」
「それじゃああたしはもう行くから」
そう言い残してアオイさんはそのままこの場を後にする。
「……もしかしてわたし、良くないこと言っちゃいましたか」
「ううん、気にしなくていいわ。君もね」
「は、はい」
なんて慰められはしたけれど、申し訳なさが勝ってしまう。
せめてアオイさんがどうして僕のことを嫌っているのかわかれば、解消する方法もあるかもしれないけど。
「(今はまさに取り付く島もない、って感じだからな)」
こればかりは時間が解決してくれることを祈るしかなさそうだ。
まぁ一番は早く記憶を取り戻して、元の世界に帰ることだけど……。
「とりあえずこれだけやってしまいましょう。アオイちゃんも、自分がいないと木なら良いって言ってくれたわけだし」
ユズさんは手を叩いて場の気を取り直す。本当にユズさんがいてくれて助かったと心の底から思った。
朝食を済ませて、今はその後片付けの最中。
ユズさんはみんなに相談するように言葉を投げかけた。
「みなさんは何か予定があるんですか?」
「うーん、予定というより、仕事……かな? これから私たちはお花のお世話をしなくてはいけないの」
仕事でお花のお世話……というと、
「みなさんはもしかして生花店で働いて?」
「うーん。そうじゃなくてね、私たち妖精は命の花という大切な花を育てるために産まれてきたのよ。あ、命の花というのはその名前の通りで、その花には一人の人間の命が宿っているの」
「人間の命、ですか……」
ただのお花のお世話かと思っていたら、壮大な話になってきた。
「命の花が枯れたらその花と繋がっている人間の命も失われてしまう、と言われているわ」
「と言われているって……なんだか曖昧ですね」
「そうね。でも私たちも人間が亡くなったところなんて見たことないから」
「あぁ……」
言われてみればこの世界には人間がいないということを、これまでの反応からして伝わってくる。
……あれ? でもその話が本当なら。
「もしかして、僕の命と繋がっている花もここにあるってことですか?」
「君が生きている限りはどこかにあるわね。まぁ、私たちもどの花が、誰の命に繋がっているかなんてわからないから調べられないけど……」
「そう、なんですね」
「とにかく、私たちはそのお花のお手入れをするのが仕事なの」
つまり今こうして僕が生きていられるのは、本当にユズさんやサクラさん達のお陰ってことなのだろう。
「……ありがとうございます」
「ど、どうしたの、いきなりお礼なんて」
「いえ、僕がこうして生きているのもユズさんたちのお陰なんだなって思ったら自然と」
「そんなの気にしなくていいのよ。私たちはそのためにいるんだから」
「ユズさん……」
「で、ここからさっきの話に戻るんだけど、午後にはお世話も終わると思うんだ。でもそれまで君はすることがなくなっちゃうでしょ」
「……流石に一人で外、というのは」
「ジー…………」
「ダメ、ですもんね」
「当たり前。君はまだ病み上がりのような状態なんだから。それにみんな午前中はお世話をしているから君に何かあっても助けられないの」
「サクラちゃんのためにも無理はしちゃダメよ」
「すみません」
「わかればよろしい。……でも、ずっと待っているのも退屈だろうし」
ユズさんが「うーん」と頭を悩ませていると、僕たちの間からひょこっと小さな頭が飛びだす。
「だったら、わたし達のお仕事を見てもらうのはどうでしょう!」
「ちょっとサクラ。それ本気で言ってるの?」
サクラさんの提案に隠れて聞いていたのであろうアオイさんも飛び出してくる。
「もぅ、いるなら隠れてないで話に混ざっても良かったのに」
「いや、それは……。ううん、それよりも命の花の世話を人間に見せるなんて出来ないわよ!」
「良いアイデアだと思ったんですが……」
「命の花は大切な花なの。万が一あいつが悪戯でもして枯らしたりしたら、責任を取るのはサクラなのよ!」
「むぅ、アオイお姉ちゃん、肇さんはそんなことしませんよ! ですよね、肇さんっ!」
「それはもちろん。みんなの邪魔をしないようにはするつもりだけど……」
「だったら仕事を見られるだけで邪魔だから来ないで」
そ、そこまでなのか……。
僕のことを嫌っているのはわかるけど、昨日よりひどくなっていないか……。
「アオイちゃん、別に良いじゃないの」
「こればかりはユズの頼みでも嫌よ。……どうしてもって言うならあたしがいない時だけにして」
「アオイちゃん……」
「それじゃああたしはもう行くから」
そう言い残してアオイさんはそのままこの場を後にする。
「……もしかしてわたし、良くないこと言っちゃいましたか」
「ううん、気にしなくていいわ。君もね」
「は、はい」
なんて慰められはしたけれど、申し訳なさが勝ってしまう。
せめてアオイさんがどうして僕のことを嫌っているのかわかれば、解消する方法もあるかもしれないけど。
「(今はまさに取り付く島もない、って感じだからな)」
こればかりは時間が解決してくれることを祈るしかなさそうだ。
まぁ一番は早く記憶を取り戻して、元の世界に帰ることだけど……。
「とりあえずこれだけやってしまいましょう。アオイちゃんも、自分がいないと木なら良いって言ってくれたわけだし」
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