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第2章 サファ戦乱
西征−ファーム国
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サファ国の王都サーファリアの王宮にて。軽厚な黒鉄の甲冑を身に纏い、槍を背負った若き将軍が、凛とした足取りで玉座の前に進み出た。
「ライ・パンツァー・トール、サファ陸軍将軍にして、ケイ殿直属の戦術参謀に任ぜられました。本日より、神の御下にて戦を支えさせていただきます」
その言葉に、隣に立つやや小柄な若者が続く。黒い二振りの刀を背に背負い、鋭い眼光を放っている。
「アラン・クヴェレ・パトリク、前線特攻部隊指揮官。ケイ様、俺は……前衛として敵軍を崩す、それが俺の役目だと思ってますんで」
活気に満ちたライと、気迫に満ちたアラン。二人はサファ国でも名を知られた若き英傑であり、その器量と実績を買われて、干渉の神ケイの直属部隊に配属されたのだった。
玉座から降りてきた国王カイ・ガイスト・サファは、にこやかにケイへ歩み寄った。
「ケイ、君にはこのサファ国が誇る精鋭5万の陸軍を託そう。我が国の未来は君の手にある。頼んだよ」
その言葉に、ケイは深く一礼し、静かに答えた。
「必ずや、この世界に干渉し、安寧を取り戻してみせます。この戦争を終わらすために」
──2週間後。
地平線の彼方まで続く黒い鋼鉄の列。それは、サファ国が誇る軍隊5万の陸軍と、港から出撃する海軍3万の軍艦群だった。
ケイは黒と銀を基調とした戦闘衣に身を包み、サファ国軍の旗の下、海岸の司令本部に降り立っていた。
そこに現れたのは、西征海軍大将ゲル・サー・ライド。濃紺の軍服を着込み、白銀の髭を潮風に靡かせながら、悠然とケイの前に進み出た。
「お初にお目にかかります、ケイ殿。貴殿が干渉の神とやらなら、こちらは”制海の覇者”と呼ばれております。恐縮ではありますが、我が艦隊に祝福をお祈り致し願う」
その眼には軽さの奥に計算された知略があり、海戦の天才と名高いその名に恥じぬ風格を持っていた。
ケイは手に地図を持ち、ゲル、ライ、アランらとともに作戦会議に入った。
作戦室には大陸西部の全域が描かれた巨大な地図が広がっており、目指すファーム国の白き地帯が、サファ国の黒の矢印で覆われていく。
「まず、ゲル提督率いる海軍は、ファーム国の北西沿岸部──特に港湾都市『ヴァル・ハイム』に向けて砲撃を加えつつ、上陸作戦を展開していただきたい。ここは海軍力の要だ。制圧できれば、ファーム国の補給線を断てる」
ケイの指示にゲルは頷き、唇の端を上げて言った。
「ヴァル・ハイムか。いい海産物が獲れそうだ」
続いてケイはライに目を向ける。
「ライ将軍、あなたには主力5万の内3万の陸軍を率い、北部山岳地帯を抜けてファーム国の都市圏に侵入してもらう。地形が複雑だが、あなたの機動戦術なら可能なはず」
ライは拳を胸に当て、力強く答える。
「承知しました。サファ国の槍は、必ずや敵を貫いてみせます」
「アラン」
「はい」
「君には、先遣特攻部隊1万を率いて、敵の各防衛線に攪乱を仕掛けてほしい。奇襲と撹乱、君の本領を見せてもらう」
「任せてください。俺たちが先に血路を開いておきます」
作戦は決まった。陸と海、そして空に至るまで、神と人が織り成す総力戦の幕が、今、静かに上がろうとしていた。
ケイはふと、空を見上げる。
灰色の雲の向こうには、かつて自分が関わった多くの世界の記憶があった。
そして今、目の前に広がるのは、神であっても命を落とす過酷な世界──黒体人の地、ファントムが蠢く狂乱の戦場。
「干渉の神として、この世界にも俺の影を刻む。それが、俺の神務だからな」
こうして、ケイ率いる西征軍は、世界を統一へと導く第一歩を踏み出した。
血煙と鉄火の匂いが、戦場の風に乗って吹き抜けていく。
「ライ・パンツァー・トール、サファ陸軍将軍にして、ケイ殿直属の戦術参謀に任ぜられました。本日より、神の御下にて戦を支えさせていただきます」
その言葉に、隣に立つやや小柄な若者が続く。黒い二振りの刀を背に背負い、鋭い眼光を放っている。
「アラン・クヴェレ・パトリク、前線特攻部隊指揮官。ケイ様、俺は……前衛として敵軍を崩す、それが俺の役目だと思ってますんで」
活気に満ちたライと、気迫に満ちたアラン。二人はサファ国でも名を知られた若き英傑であり、その器量と実績を買われて、干渉の神ケイの直属部隊に配属されたのだった。
玉座から降りてきた国王カイ・ガイスト・サファは、にこやかにケイへ歩み寄った。
「ケイ、君にはこのサファ国が誇る精鋭5万の陸軍を託そう。我が国の未来は君の手にある。頼んだよ」
その言葉に、ケイは深く一礼し、静かに答えた。
「必ずや、この世界に干渉し、安寧を取り戻してみせます。この戦争を終わらすために」
──2週間後。
地平線の彼方まで続く黒い鋼鉄の列。それは、サファ国が誇る軍隊5万の陸軍と、港から出撃する海軍3万の軍艦群だった。
ケイは黒と銀を基調とした戦闘衣に身を包み、サファ国軍の旗の下、海岸の司令本部に降り立っていた。
そこに現れたのは、西征海軍大将ゲル・サー・ライド。濃紺の軍服を着込み、白銀の髭を潮風に靡かせながら、悠然とケイの前に進み出た。
「お初にお目にかかります、ケイ殿。貴殿が干渉の神とやらなら、こちらは”制海の覇者”と呼ばれております。恐縮ではありますが、我が艦隊に祝福をお祈り致し願う」
その眼には軽さの奥に計算された知略があり、海戦の天才と名高いその名に恥じぬ風格を持っていた。
ケイは手に地図を持ち、ゲル、ライ、アランらとともに作戦会議に入った。
作戦室には大陸西部の全域が描かれた巨大な地図が広がっており、目指すファーム国の白き地帯が、サファ国の黒の矢印で覆われていく。
「まず、ゲル提督率いる海軍は、ファーム国の北西沿岸部──特に港湾都市『ヴァル・ハイム』に向けて砲撃を加えつつ、上陸作戦を展開していただきたい。ここは海軍力の要だ。制圧できれば、ファーム国の補給線を断てる」
ケイの指示にゲルは頷き、唇の端を上げて言った。
「ヴァル・ハイムか。いい海産物が獲れそうだ」
続いてケイはライに目を向ける。
「ライ将軍、あなたには主力5万の内3万の陸軍を率い、北部山岳地帯を抜けてファーム国の都市圏に侵入してもらう。地形が複雑だが、あなたの機動戦術なら可能なはず」
ライは拳を胸に当て、力強く答える。
「承知しました。サファ国の槍は、必ずや敵を貫いてみせます」
「アラン」
「はい」
「君には、先遣特攻部隊1万を率いて、敵の各防衛線に攪乱を仕掛けてほしい。奇襲と撹乱、君の本領を見せてもらう」
「任せてください。俺たちが先に血路を開いておきます」
作戦は決まった。陸と海、そして空に至るまで、神と人が織り成す総力戦の幕が、今、静かに上がろうとしていた。
ケイはふと、空を見上げる。
灰色の雲の向こうには、かつて自分が関わった多くの世界の記憶があった。
そして今、目の前に広がるのは、神であっても命を落とす過酷な世界──黒体人の地、ファントムが蠢く狂乱の戦場。
「干渉の神として、この世界にも俺の影を刻む。それが、俺の神務だからな」
こうして、ケイ率いる西征軍は、世界を統一へと導く第一歩を踏み出した。
血煙と鉄火の匂いが、戦場の風に乗って吹き抜けていく。
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