高難易度ゲームの世界に転生してしまったので、生き残るために最初に出会ったNPCに全力で縋ります!

黒蜜きな粉

文字の大きさ
9 / 78
最初の街

第4話

しおりを挟む
 サクラはこのゲームの実績をすべて取得している。
 実績とは、コンピューターゲームにおけるミッションとして設定されている条件のことだ。その条件を達成することで、実績解除アンロックとなる。
 実績解除アンロックしているということは、通常のゲームクリアだけでなく、開発側が用意したやり込み要素をすべてプレイし終えた証なのだ。

 このゲームの実績には、全ての武器や装備品などの取得可能なアイテムを全種類入手すること、という項目が存在していた。
 アイテムをすべて入手すること、単純なことを言っているようで、なかなかに労力を要する厳しい条件である。

「……私が全部の実績解除アンロックをしていることは間違いがない。ゲーム画面の実績一覧で確実に見ているもの……」

 すべての実績解除アンロックをしているということは、サクラがゲーム内で取りこぼしているアイテムはないはずだ。
 そして、サクラは新しいアイテムを入手するたびにゲーム攻略の手をとめてフレーバーテキストに目を通していた。つまり、アイテムに関連する文章を残らずに読んでいることになるのである。

「……読解力に絶対の自信があるわけではないけどさ。単純な文字情報として運営側から提供されていない、はずだよね。そうなると……」

 クロビスと王都との関連について見落としの可能性が高いのは、ゲーム内にあらかじめ用意されているオブジェクトから関連を推察するというものだろう。
 サクラはマップ内のすみずみまで見て回ったつもりだったが、なにせこのゲームはオープンワールド作品となっている。

 オープンワールドゲームとは、ゲーム内の仮想世界において、プレイヤーが広大なフィールドを移動の制限なく自由に探索し、目的に到達できるように設計されているゲームのことだ。

「……ああ、やっぱり考察勢の動画とか見ておくんだったなあ……」

 最近のオープンワールドゲームは、自由に動き回れる範囲がとてつもなく広い。
 ゲームなのだからいくら広くても、空間は有限であるはずだ。だというのに、プレイしている身としては、探索できる範囲が無限にあるような気持ちになってくるほどだった。

「ゲーム内のオブジェクトの配置から彼と王都との繋がりを感じ取ってくれって軽く匂わせている程度だったら……。見逃している自信があるなあ」

 とくにサクラが好んでプレイしていたタイトルを作っていたゲーム会社は、ゲーム内で明確なストーリーが語られないことで有名だった。
 基本的なゲームのストーリーでさえ、アイテムのフレーバーテキストから想像することになる。
 ゲーム内に設置されているオブジェクト、例えば絵画に描かれている風景や人物、その絵画自体が飾られている場所などから、メインのストーリーにかかわる重要なヒントが読み取れることもあるほどだった。

「なるべく自力ですべての謎を解明したいって意地をはっていたからな。どこかのタイミングで攻略サイトを熟読しておけばよかったかも……」

 最近では、ゲーム開始直後から攻略サイトを見て、短時間で効率的にエンディングまで進める者も多いと聞く。だが、サクラはせめて一回でもクリアするまでは、他を頼らずにストーリーを進めたいと思うタイプだった。

 どれだけ時間がかかっても、自分ひとりの力でラスボスまで到達し、撃破したときの達成感はたまらない。
 とくにこのゲームは攻略の難しい死にゲーだったのだ。はじめてエンディングが流れるところを見たときなんて、嬉しさのあまりコントローラーをそっと机の上に置いて両手を合わせてしまったほどだ。

「……でも、攻略サイトを見たところでなあ。ストーリーのヒントになるオブジェクトがギミックで隠されている部屋の中にあります、とかだったら自力で見つけられなかったことが悔しくてモチベーションが下がるだけだし。いや、いまはそんなことよりも考えなきゃいけないことが……」

 サクラはどうにかして、クロビスまわりの情報をひとつでも多く思い出そうと頭をひねっていた。
 すると、先を歩いていたクロビスがサクラを振り返り、あきれた様子で声をかけてくる。

「先ほどからお一人でなにをぶつぶつ言っているのかわかりませんが、目的地に着きましたよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します

如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい 全くもって分からない 転生した私にはその美的感覚が分からないよ

ダラダラ異世界転生

ゆぃ♫
ファンタジー
平和な主婦異世界に行く。1からの人生人を頼ってのんびり暮らす。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...