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商会
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タニヤは街中をぐるぐると歩き続けていた。
どうしようかと思い悩んで覚悟を決めると、とある店の前に足を運んだ。
店の外観を見て、タニヤは自分が騙されているのではないかと思った。
手にしている紹介状の地図には、たしかに目の前の店の場所が書かれている。
だというのに、店は見るからに荒れて朽ち果てているのだ。
ちょっと風が吹いても飛ばされてしまうのではないかと思うほどだった。
「これ、本当に人がいるのかしら。まったく手入れがされているようには見えないのだけど……?」
タニヤは腕を組んで首を傾げる。
店の中に入るべきかどうか迷っていると、タニヤの腹が大きく鳴った。
ここ最近はろくに食べ物を口にできていない。
「……うう、どうあがいてもごはんを買うお金すらないのだもの。入るしかないわよね」
いつまでもここに突っ立っていてもしかたがない。
タニヤは店の扉をゆっくりと押して中に入った。
中に入ると、店内は埃だらけで蜘蛛が巣を張っていた。
歩くと床がきしむ。底が抜けてしまうのではないかと思いながら、恐る恐る前へ進んだ。
本当にこの店は営業しているのかと、タニヤはだんだんと不安になってくる。
しかし、店の中ほどまでやってくると、奥に人がいることに気がついた。
店内奥のぼろぼろのカウンターの中に、老婆の姿がある。
「こ、こんにちは」
たしかにこの店は営業していると、タニヤは安堵した。
しかし、老婆は今にも倒れてしまうのではないかといった雰囲気で椅子に腰掛けている。
「あの、この店ではどんなものでも買い取ってくれると聞いてやってきたのですけれど、少しお時間よろしいでしょうか?」
客が来たことにも気がついていない様子の老婆を驚かせないようにと、タニヤはそっと話しかける。
だが、老婆はタニヤが話しかけても黙ったまま動かない。
「こんにちは! 買い取ってほしい物があってきたのですけれど、お時間よろしいでしょうか?」
もしかしたら老婆は耳が遠いのではないかと思い、タニヤは少しだけ声を大きくして話しかける。
それでも、老婆はぴくりとも動かない。
もうタニヤが諦めて帰ろうかと考えていたとき、老婆がちらりと視線だけをこちらに向けて口を開いた。
「冒険者はお断りだよ。とっとと帰ってくんな」
老婆は吐き捨てるようにそれだけ言うと、新聞を広げて読みはじめた。
タニヤは老婆の言葉に驚いて固まってしまう。
今のタニヤは冒険者プレートをつけていない。ここ数日、プレートはバッグの中にしまったままだ。
しかも、今の服装はぼろぼろの旅装で、とても冒険者には見えない格好だ。
そんなタニヤの姿を見て、老婆はたやすく冒険者であると見抜いたのだ。
タニヤは微笑みを浮かべ、心の中でこの店を紹介してくれた者に礼を言った。
この老婆の目は確かだろうと、持ってきたアイテムをぱらぱらとカウンターの上に置いた。
「虹色鳥の羽、それからゴーレムの心臓に、千年貝の真珠。とりあえずはこの三つのアイテムを買い取って欲しいのです」
老婆はタニヤのことなどまるで存在していないかのように振る舞っている。そんな老婆に、タニヤはきっぱりと告げた。
「ちなみに今は冒険者ですけれど、どうせすぐに冒険者をクビになりますから!」
どうしようかと思い悩んで覚悟を決めると、とある店の前に足を運んだ。
店の外観を見て、タニヤは自分が騙されているのではないかと思った。
手にしている紹介状の地図には、たしかに目の前の店の場所が書かれている。
だというのに、店は見るからに荒れて朽ち果てているのだ。
ちょっと風が吹いても飛ばされてしまうのではないかと思うほどだった。
「これ、本当に人がいるのかしら。まったく手入れがされているようには見えないのだけど……?」
タニヤは腕を組んで首を傾げる。
店の中に入るべきかどうか迷っていると、タニヤの腹が大きく鳴った。
ここ最近はろくに食べ物を口にできていない。
「……うう、どうあがいてもごはんを買うお金すらないのだもの。入るしかないわよね」
いつまでもここに突っ立っていてもしかたがない。
タニヤは店の扉をゆっくりと押して中に入った。
中に入ると、店内は埃だらけで蜘蛛が巣を張っていた。
歩くと床がきしむ。底が抜けてしまうのではないかと思いながら、恐る恐る前へ進んだ。
本当にこの店は営業しているのかと、タニヤはだんだんと不安になってくる。
しかし、店の中ほどまでやってくると、奥に人がいることに気がついた。
店内奥のぼろぼろのカウンターの中に、老婆の姿がある。
「こ、こんにちは」
たしかにこの店は営業していると、タニヤは安堵した。
しかし、老婆は今にも倒れてしまうのではないかといった雰囲気で椅子に腰掛けている。
「あの、この店ではどんなものでも買い取ってくれると聞いてやってきたのですけれど、少しお時間よろしいでしょうか?」
客が来たことにも気がついていない様子の老婆を驚かせないようにと、タニヤはそっと話しかける。
だが、老婆はタニヤが話しかけても黙ったまま動かない。
「こんにちは! 買い取ってほしい物があってきたのですけれど、お時間よろしいでしょうか?」
もしかしたら老婆は耳が遠いのではないかと思い、タニヤは少しだけ声を大きくして話しかける。
それでも、老婆はぴくりとも動かない。
もうタニヤが諦めて帰ろうかと考えていたとき、老婆がちらりと視線だけをこちらに向けて口を開いた。
「冒険者はお断りだよ。とっとと帰ってくんな」
老婆は吐き捨てるようにそれだけ言うと、新聞を広げて読みはじめた。
タニヤは老婆の言葉に驚いて固まってしまう。
今のタニヤは冒険者プレートをつけていない。ここ数日、プレートはバッグの中にしまったままだ。
しかも、今の服装はぼろぼろの旅装で、とても冒険者には見えない格好だ。
そんなタニヤの姿を見て、老婆はたやすく冒険者であると見抜いたのだ。
タニヤは微笑みを浮かべ、心の中でこの店を紹介してくれた者に礼を言った。
この老婆の目は確かだろうと、持ってきたアイテムをぱらぱらとカウンターの上に置いた。
「虹色鳥の羽、それからゴーレムの心臓に、千年貝の真珠。とりあえずはこの三つのアイテムを買い取って欲しいのです」
老婆はタニヤのことなどまるで存在していないかのように振る舞っている。そんな老婆に、タニヤはきっぱりと告げた。
「ちなみに今は冒険者ですけれど、どうせすぐに冒険者をクビになりますから!」
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