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激突
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タニヤの背後で、もぞもぞと何かが動く気配がした。
角を折られて動けなくなっているはずの一角狼だった。
一角狼は身体を起こすと、銀の冒険者たちの方へ向かって走り出した。
「――な、ちょっと待って! 今の状態じゃ危険だわ」
タニヤは一角狼のおもいがけない行動に、顔を覆っていた手をおろした。すぐに右手を伸ばしてエリアスたちに向かっていく一角狼を止めようとする。
しかし、一角狼は止まらなかった。手負いの状態だが、銀の冒険者二人の攻撃をたやすくかわして突き進んでいく。
「戻って! その状態で戦うなんて絶対に駄目‼」
タニヤは必死で叫ぶが、もう遅かった。
自分たちに向かって突撃してくる一角狼の姿を見て、エリアスの仲間の大柄な男が盾を構えて仲間たちの前に飛び出した。
大柄な男は一角狼の突撃を受け止める。
角を失っていた一角狼は、盾に頭から全力で突っ込みそのまま体勢を崩して倒れこんでしまう。
エリアスはその隙を逃さなかった。
剣を両手できつく握り、倒れたままの一角狼に向かっていった。
一角狼の身体は堅い外皮に覆われている。そのまま斬りかかってもびくともしないが、エリアスは的確に弱点である腹を狙って剣を突き刺した。
「……きゅー、きゅきゅいきゅいー……?」
タニヤはクヌートの鳴き声に我に返る。
クヌートはタニヤの顔を覗き込んで心配そうに鳴き声を上げている。タニヤは相棒を安心させるように力強く抱き着いた。
「ごめんねクヌート。痛いわよね? ちょっとだけ我慢して」
そう言ってタニヤはクヌートの身体から離れると、翼に刺さっている矢を引き抜いた。
タニヤを庇ったクヌートの翼に、小柄な男から放たれた矢が突き刺さっていたのだ。
クヌートの外皮に、魔術師の女の魔法攻撃は効かなかった。
高ランクのモンスターであるクヌートは、魔術に対する抵抗力が高い。あの女程度の魔法で傷つくわけがない。
しかし、矢の方は一度タニヤの盾に防がれたからだろう。特殊な魔法付与をした物に切り替えたらしい。
クヌートの翼に突き刺さっていた矢を握りしめてタニヤは舌打ちをした。いまさらになって銀の冒険者らしい対応力を発揮した小柄な男に対して苛立ちが隠せない。
「……小賢しい真似をしてくれるわね。まあ、毒がないようなのは幸いだけれど……」
タニヤは吐き捨てるように言いながら、指環の中から回復薬の瓶を取り出した。それをすぐにクヌートの傷口にかけようとする。
すると、瓶がパリンと音を立てて粉々に砕け飛んでしまった。小柄な男がタニヤの手にしていた回復薬の瓶を射抜いたのだ。
破片でタニヤの手が傷ついてしまい、地面に血が滴り落ちていく。
「ねえ、ちょっと待ってよ。モンスターを回復させるってどういうことなの?」
弓を構えたままの小柄な男が、戸惑いながらタニヤに問いかけてくる。
タニヤは視線を落として地面に吸い込まれていく自分の血と回復薬を見つめていた。
「どういうことって、アンタこそどういうつもりなのかしら……?」
タニヤはゆっくりと顔を上げて矢を放った男を見た。
そうしてまた、耳飾りの中の誰かの声が聞こえだす。
『笑えるな。仲間が傷ついたら回復させるのは当たり前だろう。どうしてそれを止められなくてはならない。銀の冒険者とは横暴な連中だな』
耳飾りの中の誰かは呆れたように言った。
表情は見えないのに、エリアスたちを軽蔑していることが伝わってくる。
「本当ね、あなたの言う通りよ。大切な相棒が傷つけられたのよ。回復させてあげるのは当然なはずよ。だって、クヌートは私を守って傷ついたのよ」
タニヤはクヌートを庇うように立ち上がった。そして、身体を剣で貫かれて倒れている一角狼を見つめながら声を震わせて言った。
「……しかも、契約の邪魔するだけじゃなくて、相手を殺してしまうなんて。どうしてそんな酷いことができるのかなあ……?」
タニヤが爆発しそうな怒りを堪えていると、それまで黙っていた盾を持った大柄な男が口を開いた。
「はあ⁉ モンスターが相棒だって言うのか。アンタは頭がおかしいんじゃないか?」
軽蔑するような眼差しで大柄な男が言った。小柄な男もそれに同意するように頷いている。
角を折られて動けなくなっているはずの一角狼だった。
一角狼は身体を起こすと、銀の冒険者たちの方へ向かって走り出した。
「――な、ちょっと待って! 今の状態じゃ危険だわ」
タニヤは一角狼のおもいがけない行動に、顔を覆っていた手をおろした。すぐに右手を伸ばしてエリアスたちに向かっていく一角狼を止めようとする。
しかし、一角狼は止まらなかった。手負いの状態だが、銀の冒険者二人の攻撃をたやすくかわして突き進んでいく。
「戻って! その状態で戦うなんて絶対に駄目‼」
タニヤは必死で叫ぶが、もう遅かった。
自分たちに向かって突撃してくる一角狼の姿を見て、エリアスの仲間の大柄な男が盾を構えて仲間たちの前に飛び出した。
大柄な男は一角狼の突撃を受け止める。
角を失っていた一角狼は、盾に頭から全力で突っ込みそのまま体勢を崩して倒れこんでしまう。
エリアスはその隙を逃さなかった。
剣を両手できつく握り、倒れたままの一角狼に向かっていった。
一角狼の身体は堅い外皮に覆われている。そのまま斬りかかってもびくともしないが、エリアスは的確に弱点である腹を狙って剣を突き刺した。
「……きゅー、きゅきゅいきゅいー……?」
タニヤはクヌートの鳴き声に我に返る。
クヌートはタニヤの顔を覗き込んで心配そうに鳴き声を上げている。タニヤは相棒を安心させるように力強く抱き着いた。
「ごめんねクヌート。痛いわよね? ちょっとだけ我慢して」
そう言ってタニヤはクヌートの身体から離れると、翼に刺さっている矢を引き抜いた。
タニヤを庇ったクヌートの翼に、小柄な男から放たれた矢が突き刺さっていたのだ。
クヌートの外皮に、魔術師の女の魔法攻撃は効かなかった。
高ランクのモンスターであるクヌートは、魔術に対する抵抗力が高い。あの女程度の魔法で傷つくわけがない。
しかし、矢の方は一度タニヤの盾に防がれたからだろう。特殊な魔法付与をした物に切り替えたらしい。
クヌートの翼に突き刺さっていた矢を握りしめてタニヤは舌打ちをした。いまさらになって銀の冒険者らしい対応力を発揮した小柄な男に対して苛立ちが隠せない。
「……小賢しい真似をしてくれるわね。まあ、毒がないようなのは幸いだけれど……」
タニヤは吐き捨てるように言いながら、指環の中から回復薬の瓶を取り出した。それをすぐにクヌートの傷口にかけようとする。
すると、瓶がパリンと音を立てて粉々に砕け飛んでしまった。小柄な男がタニヤの手にしていた回復薬の瓶を射抜いたのだ。
破片でタニヤの手が傷ついてしまい、地面に血が滴り落ちていく。
「ねえ、ちょっと待ってよ。モンスターを回復させるってどういうことなの?」
弓を構えたままの小柄な男が、戸惑いながらタニヤに問いかけてくる。
タニヤは視線を落として地面に吸い込まれていく自分の血と回復薬を見つめていた。
「どういうことって、アンタこそどういうつもりなのかしら……?」
タニヤはゆっくりと顔を上げて矢を放った男を見た。
そうしてまた、耳飾りの中の誰かの声が聞こえだす。
『笑えるな。仲間が傷ついたら回復させるのは当たり前だろう。どうしてそれを止められなくてはならない。銀の冒険者とは横暴な連中だな』
耳飾りの中の誰かは呆れたように言った。
表情は見えないのに、エリアスたちを軽蔑していることが伝わってくる。
「本当ね、あなたの言う通りよ。大切な相棒が傷つけられたのよ。回復させてあげるのは当然なはずよ。だって、クヌートは私を守って傷ついたのよ」
タニヤはクヌートを庇うように立ち上がった。そして、身体を剣で貫かれて倒れている一角狼を見つめながら声を震わせて言った。
「……しかも、契約の邪魔するだけじゃなくて、相手を殺してしまうなんて。どうしてそんな酷いことができるのかなあ……?」
タニヤが爆発しそうな怒りを堪えていると、それまで黙っていた盾を持った大柄な男が口を開いた。
「はあ⁉ モンスターが相棒だって言うのか。アンタは頭がおかしいんじゃないか?」
軽蔑するような眼差しで大柄な男が言った。小柄な男もそれに同意するように頷いている。
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