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旅立ち・出会い
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ライラは受付で冒険者登録試験の受験手続きを済ませた。
隔月に一回の試験が、ちょうど三日後に行われるらしい。
それを聞いたライラは、受験に必要な書類を慌てて書き上げて提出をした。
「なあ、アンタ本当に試験を受けるのか?」
ライラが冒険者組合のロビーの椅子に腰かけていると、目の前から声をかけられた。
受付で渡された試験概要の書かれた用紙を眺めていたライラは、顔を上げて声をかけてきた人物を確認する。
「そのつもりですけれど……。あなたはどちら様かしら?」
ライラの目の前には戸惑った顔をした冒険者が立っていた。
まだ幼さの残る顔立ちをした若い男女の二人組だ。
「ああ、すまねえな。俺はイルシア」
背に大きな槍を背負った少年が、困惑した様子のままライラに向かって自己紹介をする。
紺色の髪と緋色の目をした、意思の強そうな少年だ。
「んで、こっちが俺の仲間のファルだ」
イルシアと名乗った槍の少年の隣には、杖を両手で持った小柄な少女がいる。
少女は彼の言葉と同時に、ライラに向かってゆっくりと頭を下げた。
「……は、はじめまして。ファルと申します」
金色のボブカットの髪がふわふわと揺れる。透き通った緑の目をした可愛らしい少女だ。
「これはご丁寧にどうもありがとう。はじめまして、私はライラよ」
ライラは椅子から立ちあがり、二人に向かって丁寧にお辞儀をした。
すると、イルシアとファルは顔をしかめながら互いの身体を向き合わせた。二人は視線を合わせて微妙な顔をしながら無言で立ち尽くしている。
二人はライラに何か話があるようなのだが、どう切り出したものか困っているように見えた。
「……えっと、イルシアさんにファルさんね。お二人はなにか私に用事があって声をかけてくれたのよね?」
このまま無言なのは非常に気まずいので、年長者としてライラの方から二人に声をかけることにした。
「……あ、ああ、えっとー。俺たちは今回の冒険者登録試験の受験者の世話を任されているんだけど……」
ライラの問いかけに、イルシアが気おくれした様子でぼそぼそと話し出した。
ようやく話が進みそうなのだが、残念ながらライラにはイルシアの話している内容が理解できなかった。
「受験者の世話を任されているっていうのはどういうことなのかしら。あなた達は組合からそう頼まれているの?」
ライラのその問いかけに、組合のロビーがざわついた。
これは何かまずいことを言ってしまったとすぐに気がついたが、発した言葉はもうなかったことにはできない。
ロビーにいる冒険者の何人かが、あからさまにライラを馬鹿にするように笑いだす。
「ぎゃはははは! なんだあのおばさん。何も知らねえで試験を受けるつもりなのかよ」
「のんきな奥さまなら調べる時間はいくらでもあっただろうによ」
「あはは、無駄に年ばかりとった典型だな!」
受付での男性職員とのやり取りから、周囲にいる冒険者たちがライラの動向をうかがっているのはわかっていた。
絡まれては厄介なので、隙を与えないように気を張っていたつもりだったが失敗してしまった。ライラがイルシアに対して行った質問は、相当に間抜けなものだったらしい。
「――ったく、どうせひやかしだろ。んな上等な格好してなんのつもりなんだか」
「まったくだぜ。遊びならよそへ行けってんだ」
「そうだぜえ。せっかくパパに買ってもらった大切なお洋服が汚れちまうぜえ」
冒険者たちは、わざとライラに聞かせるように騒ぎはじめた。
ライラは周囲の冒険者たちの様子に吐き気がし、気分が悪くなった。
こんな馬鹿な連中に付け入る隙を与えてしまった自分に腹立たしくなってため息をつく。
「……っはあ、まったく。しょうもない連中ね」
「――っえ⁉ あの、えっと……。ご、ごめんなさい!」
ライラがため息をついたと同時に、ファルがびくりと大きく身体を震わせて怯えた顔をする。どうやら彼女は、ライラのため息と悪態が自分に向けられたものだと思ってしまったらしい。
隔月に一回の試験が、ちょうど三日後に行われるらしい。
それを聞いたライラは、受験に必要な書類を慌てて書き上げて提出をした。
「なあ、アンタ本当に試験を受けるのか?」
ライラが冒険者組合のロビーの椅子に腰かけていると、目の前から声をかけられた。
受付で渡された試験概要の書かれた用紙を眺めていたライラは、顔を上げて声をかけてきた人物を確認する。
「そのつもりですけれど……。あなたはどちら様かしら?」
ライラの目の前には戸惑った顔をした冒険者が立っていた。
まだ幼さの残る顔立ちをした若い男女の二人組だ。
「ああ、すまねえな。俺はイルシア」
背に大きな槍を背負った少年が、困惑した様子のままライラに向かって自己紹介をする。
紺色の髪と緋色の目をした、意思の強そうな少年だ。
「んで、こっちが俺の仲間のファルだ」
イルシアと名乗った槍の少年の隣には、杖を両手で持った小柄な少女がいる。
少女は彼の言葉と同時に、ライラに向かってゆっくりと頭を下げた。
「……は、はじめまして。ファルと申します」
金色のボブカットの髪がふわふわと揺れる。透き通った緑の目をした可愛らしい少女だ。
「これはご丁寧にどうもありがとう。はじめまして、私はライラよ」
ライラは椅子から立ちあがり、二人に向かって丁寧にお辞儀をした。
すると、イルシアとファルは顔をしかめながら互いの身体を向き合わせた。二人は視線を合わせて微妙な顔をしながら無言で立ち尽くしている。
二人はライラに何か話があるようなのだが、どう切り出したものか困っているように見えた。
「……えっと、イルシアさんにファルさんね。お二人はなにか私に用事があって声をかけてくれたのよね?」
このまま無言なのは非常に気まずいので、年長者としてライラの方から二人に声をかけることにした。
「……あ、ああ、えっとー。俺たちは今回の冒険者登録試験の受験者の世話を任されているんだけど……」
ライラの問いかけに、イルシアが気おくれした様子でぼそぼそと話し出した。
ようやく話が進みそうなのだが、残念ながらライラにはイルシアの話している内容が理解できなかった。
「受験者の世話を任されているっていうのはどういうことなのかしら。あなた達は組合からそう頼まれているの?」
ライラのその問いかけに、組合のロビーがざわついた。
これは何かまずいことを言ってしまったとすぐに気がついたが、発した言葉はもうなかったことにはできない。
ロビーにいる冒険者の何人かが、あからさまにライラを馬鹿にするように笑いだす。
「ぎゃはははは! なんだあのおばさん。何も知らねえで試験を受けるつもりなのかよ」
「のんきな奥さまなら調べる時間はいくらでもあっただろうによ」
「あはは、無駄に年ばかりとった典型だな!」
受付での男性職員とのやり取りから、周囲にいる冒険者たちがライラの動向をうかがっているのはわかっていた。
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「まったくだぜ。遊びならよそへ行けってんだ」
「そうだぜえ。せっかくパパに買ってもらった大切なお洋服が汚れちまうぜえ」
冒険者たちは、わざとライラに聞かせるように騒ぎはじめた。
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こんな馬鹿な連中に付け入る隙を与えてしまった自分に腹立たしくなってため息をつく。
「……っはあ、まったく。しょうもない連中ね」
「――っえ⁉ あの、えっと……。ご、ごめんなさい!」
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