離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉

文字の大きさ
11 / 151
旅立ち・出会い

しおりを挟む
「しかし、アンタねえ。今さらプレートなんて持ち込まれちゃ困るよ。プレートからカードへの移行期間はとっくに終わっているんだ」

 心底迷惑そうに言われて、ライラは驚きつつも申し訳ない気持ちになる。

 冒険者として活動を止めたあとは、貴族としての新しい生活に慣れるのに精一杯だった。組合からの知らせなど気にも留めていなかった。いや、そもそも連絡が来ていたかすら覚えてはいない。

 ちゃんと確認をしておけばよかった。しかし、それを今さら後悔しても仕方ない。
 冒険者としての活動を再開し、生計を立てたいと考えている今は、ライラに落ちこんでいる時間はないのだ。
 
 ライラは頭を振って気持ちを切り替えると、男性職員に質問をした。

「それは申し訳ないわ。移行をしなければいけなかったなんて知らなかったの。できていない場合はどうなるのかしら?」

「――はあ? あんなに告知してあっただろう。期間内に移行してしなければ登録抹消だよ」
 
 男性職員の馬鹿にするように吐き捨てた言葉に、ライラは返す言葉に詰まる。

「まったく! 自分の不手際で登録抹消されたっていうのに、こうやってごねる奴が多くて困るよ。冒険者をしたいというなら、つねに最新の情報には注意をはらっていてもらわなきゃな」

 ライラが返事をしないでいると、男性職員は一方的に捲し立ててくる。

 ライラは五年もの期間を冒険者として活動していなかった。
 つまり、その間に何一つ冒険者組合に貢献していないということなのだから、登録が消されていても仕方がないとは思っていた。
 しかし、ここまで露骨に敬遠されるとは想定外だった。

「……本当にごめんなさいね。じゃあ、冒険者としてこれからまた活動したい場合は再登録ということになるのかしら?」

「はあ⁉ 再登録ってアンタが? 冗談だろう」

 気を取りなおして笑顔で尋ねたライラに、男性職員は馬鹿にするように鼻で笑った。
 その声が少しばかり大きかったので、何か揉め事かとライラのいる受付周辺が静かになった。
 男性職員とライラに挟まれた位置にいる受付嬢が、口元に手を当てて顔を青くしている。

「冗談じゃないのよ。移行に気が付かなかったのは私の落ち度だし、反省しているわ。本当に申し訳ないと思っているの。それで、再登録はできるのかしら?」

 ライラは満面の笑みを浮かべて男性職員にもう一度尋ねる。

「……まあ、再登録はできるけどな。そうすると、冒険者登録試験をまた受けることになるわけよ。アンタ歳はいくつだ?」

 男性職員はライラの姿をまじまじと見ると、呆れたように吐き捨てた。

「あら、冒険者登録は三十歳までだったと記憶しているのだけれど……。もしかして冒険者組合のシステムが変わったときに、年齢制限も変更になったのかしら?」

 ライラは顔を青くしている受付嬢に向かって爽やかに問いかけた。
 受付嬢は慌てて首を横に振る。
 それを確認してから、ライラはにっこりと微笑んで男性職員に視線を向けた。
 まさかこの私が三十歳を超えているように見えているわけじゃないよなと、無言で圧力をかける。

「……ま、まあ、年齢制限はぎりぎりで大丈夫だとしても、冒険者証の移行を見逃していて再試験ってのは試験官たちの心証がかなり悪いぞ。試験で相当優秀な成績を出さなければ無理だと思うがね」

「………………ご心配どうもありがとうございます。ですが、そこは気にして頂かなくて結構ですわ」

 さすがに腹立たしくなってきたライラは、顔を引きつらせながら微笑んだ。

 ライラの年齢は二十八歳である。
 たしかにすぐに二十九歳にはなるが、年齢制限ぎりぎりと言われることには反論したくなった。
 しかし、ここで言い返したところで余計に心証が悪くなるばかりだ。のどまで出かかった言葉を、ライラは飲み込んで耐えることにした。
しおりを挟む
感想 248

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...