39 / 151
冒険者登録試験
3
しおりを挟む
「次の方で最後ですね。十五番の方どうぞ!」
ようやく受付嬢に受験番号を呼ばれた。
試験三日前に申し込んだライラは、今回の受験者の中で一番最後だった。
ライラは受験者たちの群れから一歩前に出て弓を手に取る。
「お、次はあのおばさんか」
「恥をかく前にさっさと帰んな!」
「ぎゃははははははは!」
連中がわざとらしく大きな声で喚き出した。
ライラは深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、ゆっくりと弓を構える。
この二日で集中して鍛練したものの、それだけでは以前の状態まで戻せるわけがない。
結婚している間はまったく弓に触れていなかった。
以前に使用していた武器や防具は、結婚するときに人に譲ってしまった。
婚姻前の生活を支えていた物を手放すことで、ライラなりに侯爵家に嫁ぐための覚悟を示したつもりだった。
ミスリルの短剣だけを残していたのは、それが元夫からの贈り物だったからだ。
こんなことになるなら全て取っておけばよかったと、ライラが感傷に浸っている間にも野次が飛んでくる。
「――おいおいおい。そのほっそい腕で大丈夫なのか? ああ⁉」
「もっと的に近づいていいいんだぜえ!」
ライラは五つの的の内、一番大きな的に狙いを定めていた。
大きな的から小さな的に狙いを変えて攻撃をしていくのが順当だと思ったからだ。
ライラは弦から手を離す直前で狙いを変えた。
こんなところで騒いでいることしかできない連中が誰に向かって口を利いているのかと、ほんの少しだけ腹立たしくなってしまった。
ライラが最初に放った矢は、一番小さな的のど真ん中を貫いた。
すぐさま次の矢を番えて二番目に小さな的の真ん中に命中させる。
次に二本の矢を同時に持って構えると、三番目と四番目の的にそれぞれ的中させてみせる。
ライラは一瞬のうちに、四本の矢を的の中心に命中させた。
「――っだ、だから何だってんだよ!」
「動かない的に当てるくらい、誰でもできるぜ」
「……ま、まあ、おばさんだしな。これくらいは年の功ってことだろ」
ライラはこれで奴らが実力差に気が付いて大人しくなるかと思っていた。どうやらそれすら理解できない残念な連中だったらしい。
ライラは一番大きな的を残して動きを止める。
あんな連中の言うことを気にするなんて馬鹿らしいと、受験者たちに声をかけたばかりで行動を起こすことに一瞬だけためらう。
ライラはただでさえ再試験なのだから心証がよくない。ここで悪目立ちするのは得策ではないというのはわかっている。
「……だからって、格下認定されたままってのはいただけないわよねえ」
とつぜん動きを止めてしまったライラに、演習場にいる者たちの困惑した雰囲気が伝わってくる。
ライラは残された的に向かってゆっくりと近付いていく。
手にしていた弓を背負うと、的の目の前で立ち止まった。
ようやく受付嬢に受験番号を呼ばれた。
試験三日前に申し込んだライラは、今回の受験者の中で一番最後だった。
ライラは受験者たちの群れから一歩前に出て弓を手に取る。
「お、次はあのおばさんか」
「恥をかく前にさっさと帰んな!」
「ぎゃははははははは!」
連中がわざとらしく大きな声で喚き出した。
ライラは深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、ゆっくりと弓を構える。
この二日で集中して鍛練したものの、それだけでは以前の状態まで戻せるわけがない。
結婚している間はまったく弓に触れていなかった。
以前に使用していた武器や防具は、結婚するときに人に譲ってしまった。
婚姻前の生活を支えていた物を手放すことで、ライラなりに侯爵家に嫁ぐための覚悟を示したつもりだった。
ミスリルの短剣だけを残していたのは、それが元夫からの贈り物だったからだ。
こんなことになるなら全て取っておけばよかったと、ライラが感傷に浸っている間にも野次が飛んでくる。
「――おいおいおい。そのほっそい腕で大丈夫なのか? ああ⁉」
「もっと的に近づいていいいんだぜえ!」
ライラは五つの的の内、一番大きな的に狙いを定めていた。
大きな的から小さな的に狙いを変えて攻撃をしていくのが順当だと思ったからだ。
ライラは弦から手を離す直前で狙いを変えた。
こんなところで騒いでいることしかできない連中が誰に向かって口を利いているのかと、ほんの少しだけ腹立たしくなってしまった。
ライラが最初に放った矢は、一番小さな的のど真ん中を貫いた。
すぐさま次の矢を番えて二番目に小さな的の真ん中に命中させる。
次に二本の矢を同時に持って構えると、三番目と四番目の的にそれぞれ的中させてみせる。
ライラは一瞬のうちに、四本の矢を的の中心に命中させた。
「――っだ、だから何だってんだよ!」
「動かない的に当てるくらい、誰でもできるぜ」
「……ま、まあ、おばさんだしな。これくらいは年の功ってことだろ」
ライラはこれで奴らが実力差に気が付いて大人しくなるかと思っていた。どうやらそれすら理解できない残念な連中だったらしい。
ライラは一番大きな的を残して動きを止める。
あんな連中の言うことを気にするなんて馬鹿らしいと、受験者たちに声をかけたばかりで行動を起こすことに一瞬だけためらう。
ライラはただでさえ再試験なのだから心証がよくない。ここで悪目立ちするのは得策ではないというのはわかっている。
「……だからって、格下認定されたままってのはいただけないわよねえ」
とつぜん動きを止めてしまったライラに、演習場にいる者たちの困惑した雰囲気が伝わってくる。
ライラは残された的に向かってゆっくりと近付いていく。
手にしていた弓を背負うと、的の目の前で立ち止まった。
60
あなたにおすすめの小説
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
お言葉ですが今さらです
MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。
次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。
しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。
アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。
失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。
そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。
お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。
内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。
他社サイト様投稿済み。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの
山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。
玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。
エリーゼ=アルセリア。
目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。
「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」
「……なぜ、ですか……?」
声が震える。
彼女の問いに、王子は冷然と答えた。
「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」
「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」
「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」
広間にざわめきが広がる。
──すべて、仕組まれていたのだ。
「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」
必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。
「黙れ!」
シャルルの一喝が、広間に響き渡る。
「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」
広間は、再び深い静寂に沈んだ。
「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」
王子は、無慈悲に言葉を重ねた。
「国外追放を命じる」
その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。
「そ、そんな……!」
桃色の髪が広間に広がる。
必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。
「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」
シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。
重い扉が開かれる。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです
もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。
この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ
知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ
しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる