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真実
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勢いよくあふれ出た力のせいで、周囲の地面がえぐれて土埃が舞う。
ライラは渾身の力を解き放ってクロードを襲ったつもりだったが、彼はその場から微動だにしなかった。しかも、彼はまったくの無傷だったのだ。
まさか傷一つ負わせることができないとは思わなかった。ライラは、土埃に紛れてクロードから慌てて距離を取る。彼はライラの動きに気がついたが、視界不良の中では無理に追いかけてこなかった。
「――何なのよ! いったいどういうつもりなの⁉」
渾身の力を解き放った。だから絶対に手傷を負わせたと思って油断していた。
「今の私は隙だらけだったじゃない! どうして殺さないの⁉」
「君はそんなに死にたいのか?」
「死にたいわけないじゃない。私だってまだ死ねないわよ!」
ライラは叫びながら瘴気で複数の刃を作りだすと、全方位からクロードの身体を貫こうとする。
しかし、直感の優れている彼は、土埃の中から現れる刃を見事にかわしていく。
そこで、ライラはもう一度力を解き放った。それと同時に、彼との距離を一気に縮める。彼の懐に飛び込んで力を込めた拳で殴りかかった。
そのライラの拳を、クロードは片手であっさりと受け止めた。しかも、彼は剣を投げ捨ててしまった。どうやら拳でやり合うつもりらしい。
「あら驚いた。お坊ちゃま育ちのあなたが素手で戦うのかしら。騎士なのでしょう? こんなのは流儀に反するのではなくって」
「正気を失っている君の相手なら剣がなくてもできるさ」
クロードはライラの拳を受け止めた手に力を入れた。
「いくらあなたが強くても、こういうなりふり構わない戦い方は育ちの悪い私の方が得意だと思うけど?」
「そうか? 今のところ、私は二回ほど君を殺しているぞ」
「――っうるさい! 殺す気がないならこの手を離せ」
ライラは掴まれていないほうの手でクロードに殴りかかった。その手もあっさりと止められてしまう。
「あなたは何がしたいのよ! こんな風に私をからかって楽しい?」
「からかってなどいない。どうやったら君が落ち着くのかを考えている」
ライラはクロードから離れようとするが、両手の拳が握られていてそれができない。
ならばと、ライラは瘴気で作った影を操る。彼の背後で、影を棘のような形状に変化させた。これで身体を貫かれそうになれば、たまらず手を離すに違いないと思った。
瘴気で出来た鋭い複数の棘が、一気にクロードの身体に迫る。
しかし、彼はライラの攻撃を避けることなく、そのまま立ち尽くしていた。
「……っあんた馬鹿じゃないの」
クロードの身体を無数の黒い棘が貫いている。だが、彼は声をあげることもなく、落ち着いた様子でライラの拳を掴んでいた。
「まだ死ねないって言っていたのに、どうして避けなかったのよ?」
「これで少しは気が済んだか?」
クロードの身体から血がぽたぽたと滴り落ちて、地面が赤く染まっていく。
「――っ違う、違うの! 私はこんなことがしたかったわけじゃないの」
ライラは首を横に振ってその場から後ずさろうとするが、拳が握られたままで動けない。
「わかっている。君は私と話がしたかったのだろう? 私がずっと君を避けていたから」
「わかったような口を利かないで! 私はあなたを殺したいの。あなたがいなくなればっ……」
ライラはそう叫びながら自分の言動に違和感を覚えた。どうして彼を殺そうと思ったのか、理由がわからない。
「やっと自分がおかしいことに気がついたか?」
ライラが混乱していると、ようやくクロードが手を離した。
「あんな奴らの思い通りになるな。頼むから少し頭を冷やせ」
ライラは渾身の力を解き放ってクロードを襲ったつもりだったが、彼はその場から微動だにしなかった。しかも、彼はまったくの無傷だったのだ。
まさか傷一つ負わせることができないとは思わなかった。ライラは、土埃に紛れてクロードから慌てて距離を取る。彼はライラの動きに気がついたが、視界不良の中では無理に追いかけてこなかった。
「――何なのよ! いったいどういうつもりなの⁉」
渾身の力を解き放った。だから絶対に手傷を負わせたと思って油断していた。
「今の私は隙だらけだったじゃない! どうして殺さないの⁉」
「君はそんなに死にたいのか?」
「死にたいわけないじゃない。私だってまだ死ねないわよ!」
ライラは叫びながら瘴気で複数の刃を作りだすと、全方位からクロードの身体を貫こうとする。
しかし、直感の優れている彼は、土埃の中から現れる刃を見事にかわしていく。
そこで、ライラはもう一度力を解き放った。それと同時に、彼との距離を一気に縮める。彼の懐に飛び込んで力を込めた拳で殴りかかった。
そのライラの拳を、クロードは片手であっさりと受け止めた。しかも、彼は剣を投げ捨ててしまった。どうやら拳でやり合うつもりらしい。
「あら驚いた。お坊ちゃま育ちのあなたが素手で戦うのかしら。騎士なのでしょう? こんなのは流儀に反するのではなくって」
「正気を失っている君の相手なら剣がなくてもできるさ」
クロードはライラの拳を受け止めた手に力を入れた。
「いくらあなたが強くても、こういうなりふり構わない戦い方は育ちの悪い私の方が得意だと思うけど?」
「そうか? 今のところ、私は二回ほど君を殺しているぞ」
「――っうるさい! 殺す気がないならこの手を離せ」
ライラは掴まれていないほうの手でクロードに殴りかかった。その手もあっさりと止められてしまう。
「あなたは何がしたいのよ! こんな風に私をからかって楽しい?」
「からかってなどいない。どうやったら君が落ち着くのかを考えている」
ライラはクロードから離れようとするが、両手の拳が握られていてそれができない。
ならばと、ライラは瘴気で作った影を操る。彼の背後で、影を棘のような形状に変化させた。これで身体を貫かれそうになれば、たまらず手を離すに違いないと思った。
瘴気で出来た鋭い複数の棘が、一気にクロードの身体に迫る。
しかし、彼はライラの攻撃を避けることなく、そのまま立ち尽くしていた。
「……っあんた馬鹿じゃないの」
クロードの身体を無数の黒い棘が貫いている。だが、彼は声をあげることもなく、落ち着いた様子でライラの拳を掴んでいた。
「まだ死ねないって言っていたのに、どうして避けなかったのよ?」
「これで少しは気が済んだか?」
クロードの身体から血がぽたぽたと滴り落ちて、地面が赤く染まっていく。
「――っ違う、違うの! 私はこんなことがしたかったわけじゃないの」
ライラは首を横に振ってその場から後ずさろうとするが、拳が握られたままで動けない。
「わかっている。君は私と話がしたかったのだろう? 私がずっと君を避けていたから」
「わかったような口を利かないで! 私はあなたを殺したいの。あなたがいなくなればっ……」
ライラはそう叫びながら自分の言動に違和感を覚えた。どうして彼を殺そうと思ったのか、理由がわからない。
「やっと自分がおかしいことに気がついたか?」
ライラが混乱していると、ようやくクロードが手を離した。
「あんな奴らの思い通りになるな。頼むから少し頭を冷やせ」
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