124 / 151
真実
3
「………………私は、ここで何をしていたの? あんな奴らって誰のことなのよ」
ライラは自分に向かって問いかけた。
心の中にあった激情が、徐々に消えていく。すると、頭の中が妙にすっきりとしてきた。
つい先ほどまで、自分が落ち着いて物事を判断することができなくなっていたのだと、ようやく自覚した。
――私は、ここにアヤちゃんを助けに来たのよね。それで……、それでどうしたんだっけ? アヤちゃんは無事? なんで思い出せないの?
「……何だろうな。私にもさっぱりわからないよ」
ライラが心の中で自問自答していると、クロードが声をかけてきた。
「……あなたには聞いてないわ。というか、なんであなたがここにいるのよ?」
そう言った瞬間、ライラの身体に激痛が走る。
「――っ痛あ! な、何なの? 身体がすっごく痛いんだけど!」
あまりの激痛に立っていられなくなる。身体が崩れ落ちそうになったとき、誰かが胸の中に飛び込んできた。
「…………っうぐ⁉ ちょっと、誰なのよ」
勢いよく飛びつかれて、ライラは尻もちをついた。そのまま飛び込んできた者に地面へ押し倒される。いったい誰だと頭を上げて覗き込むと、イルシアがライラの胸に顔を埋めていた。
「ど、どうしてイルシア君がここにいるの?」
ライラは首を傾げてイルシアに尋ねた。彼はライラの背中にしっかりと手を回して抱き着いている。
「ねえイル君? ちょっと重たいかなあ。離れてくれると嬉しいかも……」
「――っ心配させたお前が悪い!」
イルシアが嗚咽まじりに叫んだ。彼はそのままライラの胸に頬を擦りつけながら、小さな子供のように泣きじゃくりはじめてしまった。
「……うう、重いってば……。何で私が悪いのよ?」
「……っ急に、おがしくなるから。……し、死んだらどうしようってえ……うぐ、うう……」
イルシアはしくしくと泣き続けている。いつも強がっているイルシアの珍しい姿に、ライラは困惑してしまう。
「……これは何事? 誰か説明してくれるかしら」
ライラは寝転がったまま周囲を見渡した。イルシアがいるならどこかにファルがいるはずだ。
案の定、ライラたちから少し離れた場所にファルはいた。彼女は戸惑いつつも、ライラと視線が合うとこちらへ駆け寄ってきた。
「ライラさん……、もう大丈夫なのですか?」
「うーん、大丈夫なのかな? ごめんね、私にはよくわからないの。ファルちゃんのわかる範囲のことで何が起きたか教えて欲しいな」
「私にも何がなんだか。ライラさんが変だったことしかわかりません」
ファルと会話をしていると、呆れた顔をしたマスターがやってきた。
「エリクが気を失っておりましてね。ここで起きたことを説明できそうなのは、あとはイルシア君なのですが。……これじゃお話はできそうにありませんね」
マスターは泣きじゃくっているイルシアを見下ろしてため息をついた。
すると、ファルがイルシアの隣にやってきてしゃがみこむ。
「イルが泣いているのはですね。たぶんお母さんのことを思い出してしまったからだと思います。申し訳ないですけど、落ち着くまでこのままでいさせてあげてください」
どうしてここでイルシアの母の話題が出てくるのかとライラが質問する前に、マスターが説明をしてくれた。
「イルシア君のお母さまが亡くなられたとき、丁度いまのライラさんくらいの年齢でしたからね。いろいろと思いだしてしまったのだと思いますよ」
「……そうだったの。それはなんだか申し訳ない気がするけれど、私にはこんな大きな子供はいないわよ」
ライラがそう言ってマスターを睨むと、彼は鼻で笑った。
「いいじゃないですか。イルシア君だってまだ子供なのですから、存分に甘やかしてあげてください」
ライラは自分に向かって問いかけた。
心の中にあった激情が、徐々に消えていく。すると、頭の中が妙にすっきりとしてきた。
つい先ほどまで、自分が落ち着いて物事を判断することができなくなっていたのだと、ようやく自覚した。
――私は、ここにアヤちゃんを助けに来たのよね。それで……、それでどうしたんだっけ? アヤちゃんは無事? なんで思い出せないの?
「……何だろうな。私にもさっぱりわからないよ」
ライラが心の中で自問自答していると、クロードが声をかけてきた。
「……あなたには聞いてないわ。というか、なんであなたがここにいるのよ?」
そう言った瞬間、ライラの身体に激痛が走る。
「――っ痛あ! な、何なの? 身体がすっごく痛いんだけど!」
あまりの激痛に立っていられなくなる。身体が崩れ落ちそうになったとき、誰かが胸の中に飛び込んできた。
「…………っうぐ⁉ ちょっと、誰なのよ」
勢いよく飛びつかれて、ライラは尻もちをついた。そのまま飛び込んできた者に地面へ押し倒される。いったい誰だと頭を上げて覗き込むと、イルシアがライラの胸に顔を埋めていた。
「ど、どうしてイルシア君がここにいるの?」
ライラは首を傾げてイルシアに尋ねた。彼はライラの背中にしっかりと手を回して抱き着いている。
「ねえイル君? ちょっと重たいかなあ。離れてくれると嬉しいかも……」
「――っ心配させたお前が悪い!」
イルシアが嗚咽まじりに叫んだ。彼はそのままライラの胸に頬を擦りつけながら、小さな子供のように泣きじゃくりはじめてしまった。
「……うう、重いってば……。何で私が悪いのよ?」
「……っ急に、おがしくなるから。……し、死んだらどうしようってえ……うぐ、うう……」
イルシアはしくしくと泣き続けている。いつも強がっているイルシアの珍しい姿に、ライラは困惑してしまう。
「……これは何事? 誰か説明してくれるかしら」
ライラは寝転がったまま周囲を見渡した。イルシアがいるならどこかにファルがいるはずだ。
案の定、ライラたちから少し離れた場所にファルはいた。彼女は戸惑いつつも、ライラと視線が合うとこちらへ駆け寄ってきた。
「ライラさん……、もう大丈夫なのですか?」
「うーん、大丈夫なのかな? ごめんね、私にはよくわからないの。ファルちゃんのわかる範囲のことで何が起きたか教えて欲しいな」
「私にも何がなんだか。ライラさんが変だったことしかわかりません」
ファルと会話をしていると、呆れた顔をしたマスターがやってきた。
「エリクが気を失っておりましてね。ここで起きたことを説明できそうなのは、あとはイルシア君なのですが。……これじゃお話はできそうにありませんね」
マスターは泣きじゃくっているイルシアを見下ろしてため息をついた。
すると、ファルがイルシアの隣にやってきてしゃがみこむ。
「イルが泣いているのはですね。たぶんお母さんのことを思い出してしまったからだと思います。申し訳ないですけど、落ち着くまでこのままでいさせてあげてください」
どうしてここでイルシアの母の話題が出てくるのかとライラが質問する前に、マスターが説明をしてくれた。
「イルシア君のお母さまが亡くなられたとき、丁度いまのライラさんくらいの年齢でしたからね。いろいろと思いだしてしまったのだと思いますよ」
「……そうだったの。それはなんだか申し訳ない気がするけれど、私にはこんな大きな子供はいないわよ」
ライラがそう言ってマスターを睨むと、彼は鼻で笑った。
「いいじゃないですか。イルシア君だってまだ子供なのですから、存分に甘やかしてあげてください」
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
夏灯みかん
ファンタジー
生まれながらに強い魔力を持つ少女レイラは、聖女として大神殿の小部屋で、祈るだけの生活を送ってきた。
けれど王太子に「身元不明の孤児だから」と婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」
追放の道中で出会った冒険者のステファンと狼男ライガに拾われ、レイラは初めて外の世界で暮らし始める。
冒険者としての仕事、初めてのカフェでのお茶会。
隣国での生活の中で、レイラは少しずつ自分の居場所を作っていく。
一方、レイラが去った王国では魔物が発生し、大神殿の大司教は彼女を取り戻そうと動き出していた。
――私はなんなの? どこから来たの?
これは、救う存在として利用されてきた少女が、「自分のこれから」を選び直していく物語。
※スピンオフ外伝
【完結】悪食エルフと風の魔法使いは、辺境遺跡で相棒になりました。
肉も魔物も食べる“悪食エルフ”エドラヒルと、
老魔法使いオリヴァーの若き日の出会いと冒険を描いた物語です。
▼外伝はこちら
https://www.alphapolis.co.jp/novel/417802211/393035061
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。