ユークロニア 〜蒼い輝に包まれて〜

雨宮濛

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ザムキアの試練

緑神Varvara Uspenskaya

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「ユノさん、詳しくは後で話します。なので、どうかゼファさんが暴走する前に、食い止めて下さい。その間に僕がエルフィスを連れて逃げます。」

「はぁ!?そんなの急に言われても!訳わかんないわよ!」

「ああああ!もういいです!取り敢えずゼファ王子に気絶してもらいます!」

ネレルはゼファの額に手を当て、赤黒い魔法を掛けた。

「クッ......アッ......」

魔法により、ゼファは気絶し、角が生え、ゼファとは違う顔が出てきた。

「これは......!?」

「これは、さっき言った通り、サバトに乗っ取られ、悪魔の魂を埋め込まれたものです。確かこいつは、溺愛の悪魔 オティフォル。サバト第45番目の悪魔です。」

「まさか、私の家族までにもこんな事をするなんてね、なんでそんなに私を殺したいんだろうね。」

エルフィスは無理矢理に足を引きずりながらゼファに近づいた。

「ゼファお兄様、必ず助けますから、待っててください。」

「それで、悪魔......いや、ネレル。この悪魔はどうすればいい?」

「そうですね......僕が掛けた魔法は僕が解除しない限り、眠り続けるんですけど、悪魔にはどうなのか分からなくて......取り敢えず、檻の中にでも入れて置いてください。」

「......承知した。」

ユノは悪魔の手を縄で縛り、牢屋へ連れて行った。

エルフィスは平然としていた。
何事も無かったかの様に。

「お前、悔しくないのか?」

「こんなので悔しいなんか言ってたら、何も始まらないでしょ?」

ネレルが見た彼女のその微笑みは、1人の少女しか見えていなかった。

数時間後

エルフィスとネレル、そしてユノは国王に呼び出された。

「お父様、この様な事態を犯してしまい、申し訳ありません。」

「顔を上げろ、エルフィス。お前は悪くない。お前を殺そうとするサバトが悪いんだ。この件はエルフィスの安全を私が保証する。安心しろ。」

普段、国王は厳しく、傲慢な性格だが、エルフィスの前だと甘くなってしまう。愛する娘の為なのだろう。

「ネレルと言ったか、君はエルフィスとユノを助けてくれた恩人だ。悪魔だろうが、君はここでゆっくりするといい。」

「ありがとうございます。」



「ねぇ、ネレル、私は強くなりたい。」

エルフィスは、ベッドに横たわり、窓から星を見つめながらネレルに言った。

「そうだな。今のままじゃお前は絶対に勝ち目は無い。その精神もどうにかならないとな......」

ネレルはエルフィスに背けるように椅子に座った。

「何か、方法は無いの......?」

その問に、ネレルは頭を抱えた。

「一応、一つだけあるけど......命懸けだぞ......」

その方法はあまりにも危険だった。

ザムキアの森、そこはAランク以上の冒険者しか入れない。だが、それでも入った者で、森から出てこれた人間は指で数える程しかおらず、立ち入り禁止領域になっている。サバト派では、願いを叶えてくれる緑神と言われている。
ネレルの考えはこうだ。
緑神の力を利用し、エルフィスを回復させ、力を強くする。
その代償に数年、森から出られなくなる。
確実にこの作戦の成功率は低い。
だが、やるしかない。

「行くぞ、エルフィス。」

「うん。」

2人はまだ平和な夜を抜け出し、裸足で森へと走った。

彼女にとっては、正しい判断をしたのだろう。
この夜が続くまで、彼女は絶望を知らないのだろう。
この国が続くまで、彼女は支配を知らないのだろう。
この時が続くまで、エルフィスは永遠を知らないのだろう。

ザムキアの森

『汝が求める願いは何だ?』

風で木の葉が揺れ、その音と共に声が聴こえた。

「ヴァルヴァーラさん、僕です。バーベルタの息子、ネレルです。」

『えぇ、勿論知っているわ。それと、神の化身も。どうして此処へ?』

耳元で囁かれるような声がした。

「私達は、強くなる為この森へ来た。」

『成程ね。じゃぁ、そのままこの道の突き当たりを進んでみて、神殿があるから、私はそこに居るわ。来てちょうだい。』

「分かった。」

2人は、動物の気配すらしない森の道を進んだ。
この森は、孤独に包まれていた。
段々と進んで行くと、暗くてあまりよく見えないが、木や草が絡み付いた神殿があった。
そこには、人影があった。だが、それには腕が無かった。

「えっ......?」

エルフィスは、腕の無い人影を見て、青ざめていると、背中を指でつつかれたような感覚がした。
エルフィスは恐る恐るゆっくり振り向くと、手があった。

「きゃぁぁっ!?」

「大丈夫か?エルフィス。」

それに比べ、恐ろしい程ネレルは冷静だった。

「ふふっ、驚いた?」

エルフィスに人影が近付くと、はっきりと顔が見えた。

「私はヴァルヴァーラ・ウスペンスカヤ、この森の守護神よ。」

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