ユークロニア 〜ルリア・バーベルタの紅い瞳〜

雨宮濛

文字の大きさ
2 / 3

リサ・ダールマイアーの運命

しおりを挟む
 兄は言った。
「お前は、運が良かったな。俺らみたいな悪魔じゃなくて、だから、お前は人間として幸せになれ。」



 1945年 ドイツ ハンブルグ 

 私はドイツのハンブルグで生活している。ごく普通の女だ。名は、Lisa Dahlmeierリサ・ダールマイアー今年で24歳だ。
 戦後を迎えた。
 私には恋人が居た。彼は女性からの人気が高く、私はよく嫉妬していた。だけど、私だけを愛してくれた。私だけを、見つめていてくれた。そう思っていた。

 彼は、兵士として戦場に出た。彼は、私に言った。
「僕が帰って来たら、君に伝えたい事がある。だから、無事で居てくれ。」
 そうして戦場へと向かった。

 そして終戦後、彼は、無事に私の元へ帰って来た。だが、その時には、私の愛はとっくに冷めていた。
 それどころか、恨み、憎み、殺してしまいたいと思っていた。

 とある日の夜、私は彼に告げられた。
「君を愛している。だから、僕と結婚してくれないか?」

 私は何も言わず、ただ彼を見つめていた。
 その時、彼にナイフを突き刺した。

 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

 そう思うしかなかった。

 私は、戦時中に1人の女友達ができた。その人は家が破壊され住む場所を無くし、私と同じように避難してきた。彼女とは良く気が合った。
 彼女とは協力し、この苦痛を乗り越えた。彼女のお腹の中には新しい生命が宿っていた。私はなるべく彼女に負担をかけないように支え合った。彼女は自分の旦那の話をしていた。彼女の旦那の名はオスカーと言い、私の恋人と同じ名前だった。最初は同姓同名の人物だと思い、「私達なんだか似てるね。」と笑い合った。
 だが、とある日に彼女は旦那の写真を見せてきた。

「とてもかっこいい人なのよ。優しくて、一途なの。」

 彼女は微笑んだ。私は、唖然とした。
 何故ならば、その人は、私の恋人と全く同じ人だったのだ。

「どうしたの?リサ。」

「いや......なんでもない。とても素敵な人ね。あんたとお似合いよ。さぞ幸せだろうね。」

 私は無理矢理に口角を上げた。

 その日の夜、幸せそうな顔をして眠っている彼女の喉を刺し、出会った頃よりもだいぶ膨らんだ腹を何度も突き刺し、胎児を殺した。

 私は、戦争中でも苦しんでいるのに、なんで、裏切られないといけないの?なんで、あんたは幸せそうな顔できるの?
 暗闇の中、私は泣き叫んだ。



 1945年 ドイツ 裁判所

「判決を言い渡す。被告人を死刑に処す。」

 私は目を閉じ、静かに判決を聞いた。

 死刑執行日、私は目隠しをされ、抵抗出来ないように腕をロープで縛られていた。

 立っていた台が退けられた。
 首が締まり、息ができなくて苦しい。

 私はその時を迎えた。絶望に呑まれながら死んだ。

 リサは知った。この世の愛は腐りきっているのだと。

 重い空気が処刑室に広がっていた。

 誰も悔やまず、誰も悲しまず。
 リサの1度目の人生は孤独に終了した。

 愛とは、信じたくても、信じきれない感情である。

 Lisa Dahlmeierリサ・ダールマイアー 死亡 享年24歳
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真実の愛の祝福

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。 だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。 それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。 カクヨム、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。 この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...