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15.空に影
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午後になり、大分高くなってきた波に揉まれながらショートボードに寝そべりパドリングする。
この島で生活するようになって1年ほどになるが、どうやらこの島には季節というものが無いようだ。
常に気温は30度前後で推移している。
そんな常夏の楽園であるこの島だけれど、やはり天気というものが常に安定しているわけではない。
温められた海水が雲を成し、たまに夕立が来ることがあるのだ。
俺が主婦だったらあら洗濯物入れなくちゃと慌てるところだが、俺にとって夕立は結構楽しいイベントだったりする。
少し雨が降って雷が鳴る程度のやつはそうでもないのだが、沖で低気圧が発生しているときの夕立は結構楽しい。
なにせここは遠浅の穏やかなビーチだから、大波が来るようなことは普段ではあまり無い。
風が強くなり、波が高くなる低気圧性の夕立は絶好の波乗り日和なのだ。
以前は波の高くなる危険なタイミングで海に出かけるサーファーを馬鹿だと思っていたが、自分がサーフィンを始めてみてその気持ちが理解できるようになった。
やっぱり、サーフィンやっていたら高い波に挑戦してみたくなるものなのだ。
だけど家族がある人はやっぱりやめたほうがいいと思う。
「よし、きたきた。大波!」
すべてを飲み込んでしまいそうな自然の猛威に少し気が引けてきたが、大きな声を出すことで自分を鼓舞する。
ぐぐぐと水面がうねりボードと俺の身体が持ち上げられる。
この波に持ち上げられる瞬間がたまらない。
ボードが高い波の上から低い水面にすべり始めるのを確認し、俺は身体を起こして中腰になる。
ボードに着いていた手をそっと放し、前足に重心を置いたまま立ち上がる。
凄い速さで陸に向かう波に乗り、ボードがスピードを上げて俺の身体が風を切る。
「うぉぉぉぉっ」
このスピード感がたまらない。
ジュージューと鉄板の上で焼ける焼きそば。
家庭用の袋麺を普通に焼いただけのなんの工夫も無い焼きそばだが、海の家の前で鉄板で焼いて食べるとなかなかに乙なものだ。
軒下やきそばだな。
海の家にはポリカ波板の屋根が着いた広いウッドデッキがある。
今焼きそばを焼いているのはその片隅だ。
カセットコンロでは雰囲気が出ないからプロパンガスと高火力鋳物コンロの上にプロの使うような大きな鉄板を乗せている。
俺はソースが少し焦げるまで焼き、火を止めた。
「おお、美味そう。いただきます」
誰にともなくそう呟き、熱々の焼きそばを啜る。
「アツアツッウマウマ」
馬よりヤギのほうが好きだけどな。
俺は空腹に任せて焼きそばを貪り食らった。
焼きそばの残りも少なくなってくる頃、空がピカッと光り数秒遅れて根源的恐怖を感じるような轟音が響き渡る。
「強くなってきたな」
外は土砂降りの雨だ。
雷まで鳴り始めた。
さっきまで荒れ始めた海にワイワイ騒いでいた俺だが、ちょっとシャレにならないくらい海が荒れてきたので避難してきたのだった。
このへんの引き際を見誤ると海の藻屑になるからな。
「ん?なんだ?」
真っ暗になってきた空に、雷の光で一瞬影が見えたような気がした。
この島で生活するようになって1年ほどになるが、どうやらこの島には季節というものが無いようだ。
常に気温は30度前後で推移している。
そんな常夏の楽園であるこの島だけれど、やはり天気というものが常に安定しているわけではない。
温められた海水が雲を成し、たまに夕立が来ることがあるのだ。
俺が主婦だったらあら洗濯物入れなくちゃと慌てるところだが、俺にとって夕立は結構楽しいイベントだったりする。
少し雨が降って雷が鳴る程度のやつはそうでもないのだが、沖で低気圧が発生しているときの夕立は結構楽しい。
なにせここは遠浅の穏やかなビーチだから、大波が来るようなことは普段ではあまり無い。
風が強くなり、波が高くなる低気圧性の夕立は絶好の波乗り日和なのだ。
以前は波の高くなる危険なタイミングで海に出かけるサーファーを馬鹿だと思っていたが、自分がサーフィンを始めてみてその気持ちが理解できるようになった。
やっぱり、サーフィンやっていたら高い波に挑戦してみたくなるものなのだ。
だけど家族がある人はやっぱりやめたほうがいいと思う。
「よし、きたきた。大波!」
すべてを飲み込んでしまいそうな自然の猛威に少し気が引けてきたが、大きな声を出すことで自分を鼓舞する。
ぐぐぐと水面がうねりボードと俺の身体が持ち上げられる。
この波に持ち上げられる瞬間がたまらない。
ボードが高い波の上から低い水面にすべり始めるのを確認し、俺は身体を起こして中腰になる。
ボードに着いていた手をそっと放し、前足に重心を置いたまま立ち上がる。
凄い速さで陸に向かう波に乗り、ボードがスピードを上げて俺の身体が風を切る。
「うぉぉぉぉっ」
このスピード感がたまらない。
ジュージューと鉄板の上で焼ける焼きそば。
家庭用の袋麺を普通に焼いただけのなんの工夫も無い焼きそばだが、海の家の前で鉄板で焼いて食べるとなかなかに乙なものだ。
軒下やきそばだな。
海の家にはポリカ波板の屋根が着いた広いウッドデッキがある。
今焼きそばを焼いているのはその片隅だ。
カセットコンロでは雰囲気が出ないからプロパンガスと高火力鋳物コンロの上にプロの使うような大きな鉄板を乗せている。
俺はソースが少し焦げるまで焼き、火を止めた。
「おお、美味そう。いただきます」
誰にともなくそう呟き、熱々の焼きそばを啜る。
「アツアツッウマウマ」
馬よりヤギのほうが好きだけどな。
俺は空腹に任せて焼きそばを貪り食らった。
焼きそばの残りも少なくなってくる頃、空がピカッと光り数秒遅れて根源的恐怖を感じるような轟音が響き渡る。
「強くなってきたな」
外は土砂降りの雨だ。
雷まで鳴り始めた。
さっきまで荒れ始めた海にワイワイ騒いでいた俺だが、ちょっとシャレにならないくらい海が荒れてきたので避難してきたのだった。
このへんの引き際を見誤ると海の藻屑になるからな。
「ん?なんだ?」
真っ暗になってきた空に、雷の光で一瞬影が見えたような気がした。
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