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おっさんずイフ
3.翻訳アイテム
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視界が変わり、暗い石造りの倉庫のような場所。
灯りは壁に灯されたろうそくだけ。
ずいぶんと辛気臭い場所だ。
室内には召喚者たちはすでに居ないようで、数人のローブ姿の人間がいるだけだ。
暗い色のローブを着た老人が近づいてくる。
「#$%&’#$%&」
老人が話しかけてくるが、何を言っているのかさっぱり分からない。
異世界なのだから当然の話か。
しかしどうすればいいのだろうか。
召喚されて言葉が通じませんでした、はいさよならっていうわけにもいかないだろう。
老人はなにやらネックレスのようなものを取り出し、身振り手振りで付けるように促す。
付けても大丈夫なのかな。
俺はいい年こいてWEB小説をよく読むのだが、召喚した異世界人に言うことを聞かせるために隷属アイテムを付けさせるのは良くある設定だ。
できるならば拒否したい。
しかしながら、拒否した場合力ずくで付けさせられるかもしれない。
自慢じゃないが俺は腕っ節には自信が無いし、貰った神器も戦闘向きではない。
全ての初級魔法が使えるようになる木の実は持っているけれど、初級と付いているからにはこの世界で魔法を使える人間にとっては初歩の魔法ということになる。
向こうはどう見ても魔法職だ、勝てるわけも無い。
よってこのアイテムの装着を拒否するのは不可能だ。
痛い思いをするのも嫌なので、しょうがなく素直にネックレスを首にかける。
「私の言葉が理解できていますでしょうか」
「あ、はい」
「それはよかった」
あれ、意外と腰が低い。
俺はネックレスを一度外してみる。
ネックレスは簡単に外れた。
解除不能の隷属アイテムではなかったみたいだ。
「そちらは翻訳アイテムになっております。皆様にお渡ししておりますのでどうぞそのままお持ちください」
「ありがとうございます」
日本人の癖で、反射的にお礼を言ってしまう。
向こうが勝手に召喚したのだから、言葉が通じるようにするのは当然のことなのにだ。
でもやっぱり、なんか凄そうなアイテムを貰うのはうれしい。
これを向こうの世界に持っていくことができたら、すごい値段で売れそうだ。
「あなた様は最後のひとりでいらっしゃいますね?」
「ええ、そうです」
「私、エドガー・ラプトルと申します。しがない魔法使いでございます。失礼ですが、あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「これはご丁寧にどうも。私は木崎繁信と申します。木崎が家名で繁信が名前です」
老人の脇に控える20代くらいの若者が紙に何かを書き綴っていく。
召喚者のリストでも作っているのだろう。
まさか名前を書かれたら隷属するアイテムとかじゃあるまい。
ないよね?
「これはただのリストでございます」
「ですよね。すいませんなんか気になっちゃって」
「いえ、先ほどもご同郷の方々が隷属のアイテムではないかとご質問をなさっていらっしゃいましたので皆様にそうではないことを伝えております。私どもにあなた方を隷属させようなどという魂胆が無いということをどうか信じていただきたい」
「そ、そうなんですね」
本当なのかなぁ。
腰は低いけれど、腹に一物抱えていないとは言い切れないしな。
まああちらが低姿勢で来るのならば、こちらも低姿勢で一線引かせてもらうだけだ。
「勝手な話ではあるのですが、我々は今窮地に立たされておりまして。どうか助けていただけないでしょうか」
「助けるといっても私などには何の力もありませんよ」
「いえいえそんな、皆さまはとても強いお力をお持ちではないですか」
神器のことかな。
でも俺の持っている神器には本当に3つともそれほどの力はない。
戦争かなにかに使われるのだとしても、後方の片隅で娯楽を提供する係とかにしてくれないかな。
「神器の力を期待して、我々を召喚したのですか?」
「申し訳ありません。我々にはもはやそれしか取れる手段がなかったのです。しかしそれは我々の事情で、あなた方には何の関係もないという意見もごもっともでございます。ですから我々はあなた方の自由を侵害することは絶対にいたしません」
自由、と言われてもな。
見ず知らずの世界で自由だからどこへでも行ってくれと言われて何ができるか。
そしてなによりもこの翻訳アイテムだ。
これがなければ俺たちはこちらの世界の言葉が全くわからないのだ。
もし何かの間違いでこのアイテムが壊れたり使えなくなったりしてしまったら、結局はこの人たちを頼る他ない。
言葉を覚えればいいのかもしれないけれど、言語一つ覚えるのがどれほど大変なことか。
仕事で中国語を覚えさせられた俺はその大変さがよくわかる。
「おっしゃりたいことはわかります。私共が勝手に召喚しておきながら、自由も何もないだろうということを先に来られたご同郷の方々も口々におっしゃっておりました。そのお言葉を真摯に受け止め、私共にできることであればどんなことでも致します。たとえご協力いただけなくとも、この世界で生きていくための最低限の支援はさせていただきます。どうかお考えいただけないでしょうか」
「は、はあ……」
要約すれば何でもするから神器の力を貸してくれってことか。
別に協力しなくても生きていける最低限の支援はするよって感じ。
俺はどうしようかな。
結局もう少し話を聞いてみないとわからない。
「一応話だけ聞いてもいいですか?」
「ええ、ありがとうございます。お話いたします。ことの起こりは半年前……」
灯りは壁に灯されたろうそくだけ。
ずいぶんと辛気臭い場所だ。
室内には召喚者たちはすでに居ないようで、数人のローブ姿の人間がいるだけだ。
暗い色のローブを着た老人が近づいてくる。
「#$%&’#$%&」
老人が話しかけてくるが、何を言っているのかさっぱり分からない。
異世界なのだから当然の話か。
しかしどうすればいいのだろうか。
召喚されて言葉が通じませんでした、はいさよならっていうわけにもいかないだろう。
老人はなにやらネックレスのようなものを取り出し、身振り手振りで付けるように促す。
付けても大丈夫なのかな。
俺はいい年こいてWEB小説をよく読むのだが、召喚した異世界人に言うことを聞かせるために隷属アイテムを付けさせるのは良くある設定だ。
できるならば拒否したい。
しかしながら、拒否した場合力ずくで付けさせられるかもしれない。
自慢じゃないが俺は腕っ節には自信が無いし、貰った神器も戦闘向きではない。
全ての初級魔法が使えるようになる木の実は持っているけれど、初級と付いているからにはこの世界で魔法を使える人間にとっては初歩の魔法ということになる。
向こうはどう見ても魔法職だ、勝てるわけも無い。
よってこのアイテムの装着を拒否するのは不可能だ。
痛い思いをするのも嫌なので、しょうがなく素直にネックレスを首にかける。
「私の言葉が理解できていますでしょうか」
「あ、はい」
「それはよかった」
あれ、意外と腰が低い。
俺はネックレスを一度外してみる。
ネックレスは簡単に外れた。
解除不能の隷属アイテムではなかったみたいだ。
「そちらは翻訳アイテムになっております。皆様にお渡ししておりますのでどうぞそのままお持ちください」
「ありがとうございます」
日本人の癖で、反射的にお礼を言ってしまう。
向こうが勝手に召喚したのだから、言葉が通じるようにするのは当然のことなのにだ。
でもやっぱり、なんか凄そうなアイテムを貰うのはうれしい。
これを向こうの世界に持っていくことができたら、すごい値段で売れそうだ。
「あなた様は最後のひとりでいらっしゃいますね?」
「ええ、そうです」
「私、エドガー・ラプトルと申します。しがない魔法使いでございます。失礼ですが、あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「これはご丁寧にどうも。私は木崎繁信と申します。木崎が家名で繁信が名前です」
老人の脇に控える20代くらいの若者が紙に何かを書き綴っていく。
召喚者のリストでも作っているのだろう。
まさか名前を書かれたら隷属するアイテムとかじゃあるまい。
ないよね?
「これはただのリストでございます」
「ですよね。すいませんなんか気になっちゃって」
「いえ、先ほどもご同郷の方々が隷属のアイテムではないかとご質問をなさっていらっしゃいましたので皆様にそうではないことを伝えております。私どもにあなた方を隷属させようなどという魂胆が無いということをどうか信じていただきたい」
「そ、そうなんですね」
本当なのかなぁ。
腰は低いけれど、腹に一物抱えていないとは言い切れないしな。
まああちらが低姿勢で来るのならば、こちらも低姿勢で一線引かせてもらうだけだ。
「勝手な話ではあるのですが、我々は今窮地に立たされておりまして。どうか助けていただけないでしょうか」
「助けるといっても私などには何の力もありませんよ」
「いえいえそんな、皆さまはとても強いお力をお持ちではないですか」
神器のことかな。
でも俺の持っている神器には本当に3つともそれほどの力はない。
戦争かなにかに使われるのだとしても、後方の片隅で娯楽を提供する係とかにしてくれないかな。
「神器の力を期待して、我々を召喚したのですか?」
「申し訳ありません。我々にはもはやそれしか取れる手段がなかったのです。しかしそれは我々の事情で、あなた方には何の関係もないという意見もごもっともでございます。ですから我々はあなた方の自由を侵害することは絶対にいたしません」
自由、と言われてもな。
見ず知らずの世界で自由だからどこへでも行ってくれと言われて何ができるか。
そしてなによりもこの翻訳アイテムだ。
これがなければ俺たちはこちらの世界の言葉が全くわからないのだ。
もし何かの間違いでこのアイテムが壊れたり使えなくなったりしてしまったら、結局はこの人たちを頼る他ない。
言葉を覚えればいいのかもしれないけれど、言語一つ覚えるのがどれほど大変なことか。
仕事で中国語を覚えさせられた俺はその大変さがよくわかる。
「おっしゃりたいことはわかります。私共が勝手に召喚しておきながら、自由も何もないだろうということを先に来られたご同郷の方々も口々におっしゃっておりました。そのお言葉を真摯に受け止め、私共にできることであればどんなことでも致します。たとえご協力いただけなくとも、この世界で生きていくための最低限の支援はさせていただきます。どうかお考えいただけないでしょうか」
「は、はあ……」
要約すれば何でもするから神器の力を貸してくれってことか。
別に協力しなくても生きていける最低限の支援はするよって感じ。
俺はどうしようかな。
結局もう少し話を聞いてみないとわからない。
「一応話だけ聞いてもいいですか?」
「ええ、ありがとうございます。お話いたします。ことの起こりは半年前……」
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