チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

兎屋亀吉

文字の大きさ
52 / 131

52.畑作

しおりを挟む
「大将、何かやるならやるって事前に言付けくらいしてくださいよ。みんな慌てて避難所に逃げ込んだんですぜ」

「ごめん。こんなことになるとは思ってなくて……」

 平蔵さんたちが怒るのも無理はない。
 空から高速の槍が降り注いだ影響で、島には再び津波が到来していた。
 前回の地震による津波よりも大きな20メートル級のやつがだ。
 俺は本土やフィリピンを襲う津波を魔法で消し飛ばすのに忙しくて島は後回しにしてしまっていた。
 島には俺の造った壁があるから、本土やフィリピンよりも津波の影響は小さいだろうと思ったのだ。
 だが島に戻ってみれば壁は大破、みんなで植えたヤシの木が根こそぎ持っていかれてしまっていた。
 平蔵さんたち島民の機転によって人死にこそ出なかったが、海岸線付近に人がいたら確実に海に流されてしまっていただろう。
 本当に反省しなくては。
 本土方面やフィリピン方面の津波を消し飛ばしてみて分かったが、南蛮船2隻を沈めるならプロミネンスブラストという魔法で十分だったのだ。
 超高温の熱線を放つこの魔法は、津波を一瞬で蒸発させるほどの威力があった。
 神槍などという危険な代物は、たった2隻の船に向かって放つものじゃあなかったね。
 特に海の上での質量攻撃は非常に危険だ。
 もう絶対に海の上では使わないようにしよう。

「それで大将、あの子供たちをどうするんです?」

「家に帰すよ。できるかぎりね」

「親に売られた子や、家が分からん子供はどうするんです」

「売られた子は島で面倒を見るしかないさ。家が分からない子供は地道に家を探すよ」

「大将ならそう言うと思ってましたよ。すでに子供たちから家のある場所について思い出せる限りの特徴を聞いてますぜ」

「ありがとう」

 平蔵さんたちも最近は自分で考えて動くようになってきている。
 頼もしい限りだ。
 元侍だった平蔵さんと辰五郎さん、喜三郎さんは人の上に立つのに慣れている。
 俺も安心して島を留守にできるというものだ。
 まあ築城も終わって、今年は少し手が空いたので子供たちの家探しを頑張りますか。






「わかった!そりゃあ海じゃなくて琵琶湖だぜ!海だったら船で向こう側に渡ったりできねえからよう。近江かどっかじゃねえか?」

「おうみ、なんか聞いたことある気がする」

「本当か坊主。よし大将、近江近辺を探してみましょう」

「わかった」

 子供たちの家探しは順調に進み、最後の子供の家の手がかりがつかめた。
 何軒か子供を連れて行ったら売ったはずの子供が帰ってきたって困るって言われたところもあったが、ほとんどの子供は攫われていたので感謝された。
 自分が売られたと知った子供は島で引き取ったよ。
 しばらく泣いていて胸が痛かったが、同じく売られた子供が慰めて今では少し元気になった。
 これからたくさん楽しいことを経験して心の傷を癒していってほしいと思う。
 島民が増えるとDPも増えるので嬉しいのだが、こういう増え方は複雑だな。
 できるなら、望んで島に来て欲しい。
 今の時代、食えるとわかったらきっと島に移住する人は多いと思うんだ。
 だけどそろそろ、俺の方が食わせきれなくなってきそうなんだよね。
 今のところ島のみんなの食べ物は、俺のガチャから出る米や小麦粉なんかで賄っている。
 そろそろ島で食べ物を生産できるようにしていかなければ、島民はこれ以上増やすことはできない。
 まだ子供の10人や20人ならば問題はないだろうが、本格的に島への移住者を連れてくるのは食料の生産が安定してできることを確認してからだな。
 




 無事に最後の子供を近江の小さな村落に戻した。
 今度はちゃんと歓迎されてほっとしたよ。
 やっぱり子供が自分の親に拒絶されるのを何度も見せられるのは精神的に堪える。
 一番辛いのは子供なのだろうけど、泣いている子供というのは見ているこちらも辛いからね。
 みんな笑顔が一番だ。
 秀吉君、頑張って。
 他力本願だけど本来の歴史と違うことをするとどうなるのか予想ができないから、今は日本が無事本来の歴史の流れに乗るようにすることしかできない。
 戦乱の世はあと数十年で終わる予定なんだ、余計なことはしないほうがいいと思う。
 俺は沖ノ鳥島をもっと開拓して、不慮の事態に備えるとする。
 沖ノ鳥島は本土から1400キロ以上離れた島だから今の航海技術では来られないだろうし、死なせたくない人を匿うには最適だ。
 ダンジョンコアの様々な機能も、力技で不都合な歴史を修正するのには向いている。
 かの有名な秀吉の墨俣一夜城も、ダンジョンの力だったら簡単に建ってしまう。
 未来では名城と名高い姫路城のような城が一夜で建つ。
 墨俣一夜城は城といっても俺達が虎御前山に築いたような砦だ。
 さすがの秀吉も本格的な居城を一夜で建てることはできないだろう。
 俺なら破壊不能オプションをつけることだってできる。
 殿がどうしても死にそうになってしまったときなどは、遠慮なく使わせていただこうと思っている。
 そんなわけで、ダンジョンポイントを今から溜めておく必要があるわけだ。
 そのためには島民を増やすのが一番近道で、島民を増やすには食料の生産が急務だ。
 今日はある程度ダンジョンポイントが溜まったのでダンジョンに部屋を一つ追加し、そこに畑を作りたいと思う。
 作る部屋は草原フィールド。
 草原フィールドは部屋の広さに制限があって、100ヘクタール1キロ四方以上の部屋にしか設定できない。
 だから俺は今日まで1キロ四方という巨大な部屋を作れるだけのダンジョンポイントを溜めていたのだ。
 やっと溜まったのでぱぁっと使って部屋を作り、草原フィールドを設定する。
 真ん中のあたりに小川と池を作っておく。
 これで水も問題ないな。

「よしみんな、耕そう」

「「「おぉぉぉっ!!」」」

 耕すのは非常に重労働なので島民総出で行う。
 100ヘクタールという人力で耕すのはちょっと尻込みしてしまうような広さの土地だけれど、60人以上の人間で耕せば意外と早く畑になるかもな。
 俺も鍬を握り、清さんにどやされながら覚えた鍬捌きで草原を耕していった。
 明日はまた筋肉痛になりそうだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...