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52.畑作
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「大将、何かやるならやるって事前に言付けくらいしてくださいよ。みんな慌てて避難所に逃げ込んだんですぜ」
「ごめん。こんなことになるとは思ってなくて……」
平蔵さんたちが怒るのも無理はない。
空から高速の槍が降り注いだ影響で、島には再び津波が到来していた。
前回の地震による津波よりも大きな20メートル級のやつがだ。
俺は本土やフィリピンを襲う津波を魔法で消し飛ばすのに忙しくて島は後回しにしてしまっていた。
島には俺の造った壁があるから、本土やフィリピンよりも津波の影響は小さいだろうと思ったのだ。
だが島に戻ってみれば壁は大破、みんなで植えたヤシの木が根こそぎ持っていかれてしまっていた。
平蔵さんたち島民の機転によって人死にこそ出なかったが、海岸線付近に人がいたら確実に海に流されてしまっていただろう。
本当に反省しなくては。
本土方面やフィリピン方面の津波を消し飛ばしてみて分かったが、南蛮船2隻を沈めるならプロミネンスブラストという魔法で十分だったのだ。
超高温の熱線を放つこの魔法は、津波を一瞬で蒸発させるほどの威力があった。
神槍などという危険な代物は、たった2隻の船に向かって放つものじゃあなかったね。
特に海の上での質量攻撃は非常に危険だ。
もう絶対に海の上では使わないようにしよう。
「それで大将、あの子供たちをどうするんです?」
「家に帰すよ。できるかぎりね」
「親に売られた子や、家が分からん子供はどうするんです」
「売られた子は島で面倒を見るしかないさ。家が分からない子供は地道に家を探すよ」
「大将ならそう言うと思ってましたよ。すでに子供たちから家のある場所について思い出せる限りの特徴を聞いてますぜ」
「ありがとう」
平蔵さんたちも最近は自分で考えて動くようになってきている。
頼もしい限りだ。
元侍だった平蔵さんと辰五郎さん、喜三郎さんは人の上に立つのに慣れている。
俺も安心して島を留守にできるというものだ。
まあ築城も終わって、今年は少し手が空いたので子供たちの家探しを頑張りますか。
「わかった!そりゃあ海じゃなくて琵琶湖だぜ!海だったら船で向こう側に渡ったりできねえからよう。近江かどっかじゃねえか?」
「おうみ、なんか聞いたことある気がする」
「本当か坊主。よし大将、近江近辺を探してみましょう」
「わかった」
子供たちの家探しは順調に進み、最後の子供の家の手がかりがつかめた。
何軒か子供を連れて行ったら売ったはずの子供が帰ってきたって困るって言われたところもあったが、ほとんどの子供は攫われていたので感謝された。
自分が売られたと知った子供は島で引き取ったよ。
しばらく泣いていて胸が痛かったが、同じく売られた子供が慰めて今では少し元気になった。
これからたくさん楽しいことを経験して心の傷を癒していってほしいと思う。
島民が増えるとDPも増えるので嬉しいのだが、こういう増え方は複雑だな。
できるなら、望んで島に来て欲しい。
今の時代、食えるとわかったらきっと島に移住する人は多いと思うんだ。
だけどそろそろ、俺の方が食わせきれなくなってきそうなんだよね。
今のところ島のみんなの食べ物は、俺のガチャから出る米や小麦粉なんかで賄っている。
そろそろ島で食べ物を生産できるようにしていかなければ、島民はこれ以上増やすことはできない。
まだ子供の10人や20人ならば問題はないだろうが、本格的に島への移住者を連れてくるのは食料の生産が安定してできることを確認してからだな。
無事に最後の子供を近江の小さな村落に戻した。
今度はちゃんと歓迎されてほっとしたよ。
やっぱり子供が自分の親に拒絶されるのを何度も見せられるのは精神的に堪える。
一番辛いのは子供なのだろうけど、泣いている子供というのは見ているこちらも辛いからね。
みんな笑顔が一番だ。
秀吉君、頑張って。
他力本願だけど本来の歴史と違うことをするとどうなるのか予想ができないから、今は日本が無事本来の歴史の流れに乗るようにすることしかできない。
戦乱の世はあと数十年で終わる予定なんだ、余計なことはしないほうがいいと思う。
俺は沖ノ鳥島をもっと開拓して、不慮の事態に備えるとする。
沖ノ鳥島は本土から1400キロ以上離れた島だから今の航海技術では来られないだろうし、死なせたくない人を匿うには最適だ。
ダンジョンコアの様々な機能も、力技で不都合な歴史を修正するのには向いている。
かの有名な秀吉の墨俣一夜城も、ダンジョンの力だったら簡単に建ってしまう。
未来では名城と名高い姫路城のような城が一夜で建つ。
墨俣一夜城は城といっても俺達が虎御前山に築いたような砦だ。
さすがの秀吉も本格的な居城を一夜で建てることはできないだろう。
俺なら破壊不能オプションをつけることだってできる。
殿がどうしても死にそうになってしまったときなどは、遠慮なく使わせていただこうと思っている。
そんなわけで、ダンジョンポイントを今から溜めておく必要があるわけだ。
そのためには島民を増やすのが一番近道で、島民を増やすには食料の生産が急務だ。
今日はある程度ダンジョンポイントが溜まったのでダンジョンに部屋を一つ追加し、そこに畑を作りたいと思う。
作る部屋は草原フィールド。
草原フィールドは部屋の広さに制限があって、100ヘクタール1キロ四方以上の部屋にしか設定できない。
だから俺は今日まで1キロ四方という巨大な部屋を作れるだけのダンジョンポイントを溜めていたのだ。
やっと溜まったのでぱぁっと使って部屋を作り、草原フィールドを設定する。
真ん中のあたりに小川と池を作っておく。
これで水も問題ないな。
「よしみんな、耕そう」
「「「おぉぉぉっ!!」」」
耕すのは非常に重労働なので島民総出で行う。
100ヘクタールという人力で耕すのはちょっと尻込みしてしまうような広さの土地だけれど、60人以上の人間で耕せば意外と早く畑になるかもな。
俺も鍬を握り、清さんにどやされながら覚えた鍬捌きで草原を耕していった。
明日はまた筋肉痛になりそうだ。
「ごめん。こんなことになるとは思ってなくて……」
平蔵さんたちが怒るのも無理はない。
空から高速の槍が降り注いだ影響で、島には再び津波が到来していた。
前回の地震による津波よりも大きな20メートル級のやつがだ。
俺は本土やフィリピンを襲う津波を魔法で消し飛ばすのに忙しくて島は後回しにしてしまっていた。
島には俺の造った壁があるから、本土やフィリピンよりも津波の影響は小さいだろうと思ったのだ。
だが島に戻ってみれば壁は大破、みんなで植えたヤシの木が根こそぎ持っていかれてしまっていた。
平蔵さんたち島民の機転によって人死にこそ出なかったが、海岸線付近に人がいたら確実に海に流されてしまっていただろう。
本当に反省しなくては。
本土方面やフィリピン方面の津波を消し飛ばしてみて分かったが、南蛮船2隻を沈めるならプロミネンスブラストという魔法で十分だったのだ。
超高温の熱線を放つこの魔法は、津波を一瞬で蒸発させるほどの威力があった。
神槍などという危険な代物は、たった2隻の船に向かって放つものじゃあなかったね。
特に海の上での質量攻撃は非常に危険だ。
もう絶対に海の上では使わないようにしよう。
「それで大将、あの子供たちをどうするんです?」
「家に帰すよ。できるかぎりね」
「親に売られた子や、家が分からん子供はどうするんです」
「売られた子は島で面倒を見るしかないさ。家が分からない子供は地道に家を探すよ」
「大将ならそう言うと思ってましたよ。すでに子供たちから家のある場所について思い出せる限りの特徴を聞いてますぜ」
「ありがとう」
平蔵さんたちも最近は自分で考えて動くようになってきている。
頼もしい限りだ。
元侍だった平蔵さんと辰五郎さん、喜三郎さんは人の上に立つのに慣れている。
俺も安心して島を留守にできるというものだ。
まあ築城も終わって、今年は少し手が空いたので子供たちの家探しを頑張りますか。
「わかった!そりゃあ海じゃなくて琵琶湖だぜ!海だったら船で向こう側に渡ったりできねえからよう。近江かどっかじゃねえか?」
「おうみ、なんか聞いたことある気がする」
「本当か坊主。よし大将、近江近辺を探してみましょう」
「わかった」
子供たちの家探しは順調に進み、最後の子供の家の手がかりがつかめた。
何軒か子供を連れて行ったら売ったはずの子供が帰ってきたって困るって言われたところもあったが、ほとんどの子供は攫われていたので感謝された。
自分が売られたと知った子供は島で引き取ったよ。
しばらく泣いていて胸が痛かったが、同じく売られた子供が慰めて今では少し元気になった。
これからたくさん楽しいことを経験して心の傷を癒していってほしいと思う。
島民が増えるとDPも増えるので嬉しいのだが、こういう増え方は複雑だな。
できるなら、望んで島に来て欲しい。
今の時代、食えるとわかったらきっと島に移住する人は多いと思うんだ。
だけどそろそろ、俺の方が食わせきれなくなってきそうなんだよね。
今のところ島のみんなの食べ物は、俺のガチャから出る米や小麦粉なんかで賄っている。
そろそろ島で食べ物を生産できるようにしていかなければ、島民はこれ以上増やすことはできない。
まだ子供の10人や20人ならば問題はないだろうが、本格的に島への移住者を連れてくるのは食料の生産が安定してできることを確認してからだな。
無事に最後の子供を近江の小さな村落に戻した。
今度はちゃんと歓迎されてほっとしたよ。
やっぱり子供が自分の親に拒絶されるのを何度も見せられるのは精神的に堪える。
一番辛いのは子供なのだろうけど、泣いている子供というのは見ているこちらも辛いからね。
みんな笑顔が一番だ。
秀吉君、頑張って。
他力本願だけど本来の歴史と違うことをするとどうなるのか予想ができないから、今は日本が無事本来の歴史の流れに乗るようにすることしかできない。
戦乱の世はあと数十年で終わる予定なんだ、余計なことはしないほうがいいと思う。
俺は沖ノ鳥島をもっと開拓して、不慮の事態に備えるとする。
沖ノ鳥島は本土から1400キロ以上離れた島だから今の航海技術では来られないだろうし、死なせたくない人を匿うには最適だ。
ダンジョンコアの様々な機能も、力技で不都合な歴史を修正するのには向いている。
かの有名な秀吉の墨俣一夜城も、ダンジョンの力だったら簡単に建ってしまう。
未来では名城と名高い姫路城のような城が一夜で建つ。
墨俣一夜城は城といっても俺達が虎御前山に築いたような砦だ。
さすがの秀吉も本格的な居城を一夜で建てることはできないだろう。
俺なら破壊不能オプションをつけることだってできる。
殿がどうしても死にそうになってしまったときなどは、遠慮なく使わせていただこうと思っている。
そんなわけで、ダンジョンポイントを今から溜めておく必要があるわけだ。
そのためには島民を増やすのが一番近道で、島民を増やすには食料の生産が急務だ。
今日はある程度ダンジョンポイントが溜まったのでダンジョンに部屋を一つ追加し、そこに畑を作りたいと思う。
作る部屋は草原フィールド。
草原フィールドは部屋の広さに制限があって、100ヘクタール1キロ四方以上の部屋にしか設定できない。
だから俺は今日まで1キロ四方という巨大な部屋を作れるだけのダンジョンポイントを溜めていたのだ。
やっと溜まったのでぱぁっと使って部屋を作り、草原フィールドを設定する。
真ん中のあたりに小川と池を作っておく。
これで水も問題ないな。
「よしみんな、耕そう」
「「「おぉぉぉっ!!」」」
耕すのは非常に重労働なので島民総出で行う。
100ヘクタールという人力で耕すのはちょっと尻込みしてしまうような広さの土地だけれど、60人以上の人間で耕せば意外と早く畑になるかもな。
俺も鍬を握り、清さんにどやされながら覚えた鍬捌きで草原を耕していった。
明日はまた筋肉痛になりそうだ。
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