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95.信長とダンジョン
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とりあえず1個作ってみようってことで、ダンジョン用地を探す。
しかしまあ大きなものを作って世の中の常識を変えることになるのだから、一応俺が神にチートを与えられた未来人だということを知っている信長には一言言っておこうと思う。
最初に作るのは尾張か美濃になると思うからそのへんも含めてね。
信長は今豊橋のあたりにいるはずだ。
たしか吉田城だったかな。
俺は巨大化したゆきまるの背中に乗り、一路豊橋を目指した。
「ワフワフ」
「そうだね、速くなったね」
ゆきまるはずっと小さくて可愛いままだけど、成長していないわけではないらしい。
少し走るのが速くなった気がする。
本気で走られると俺はしがみついているのが辛いので軽く走ったくらいだが、明らかに1歩で移動できる距離が伸びて踏み込みも力強くなっている。
これ以上速さが必要かということは置いておいて、俺はゆきまるを目いっぱい褒めた。
わしゃわしゃと身体を撫で、偉いとか凄いとか言いまくる。
ゆきまるは嬉しくなったのか、びゅんびゅん飛ばした。
ごめん、ちょっとスピードを落としてくれると助かります。
寒い、ガクガクブルブル。
かくして超速で三河の国上空を走りぬけた俺とゆきまる。
信長に面会を申し出ると、公式な返事は返ってこなかったが忍の人がこっそり手紙を持ってきた。
手紙の中には信長が茶室でこっそり会ってくれると書かれていた。
息子の陪臣程度の侍が信長に簡単に面会できた前例を残すと面倒なことになるから、こっそりねってことだね。
俺は甘い羊羹をお土産に、吉田城の茶室にお邪魔した。
「入れ」
「お邪魔します」
茶室には信長しかいなかった。
例のごとく壁の向こう側には気配があるものの、さすがに今度は切りかかられはしないだろう。
「これ、つまらないものですが」
「黒い菓子か。そなたは黒いものが好きだと勘九郎から聞いておる」
黒いものが好きなんじゃなくて、黒いものは大体美味いんだよ。
甘党な信長はお土産の羊羹を喜んで食べた。
場の空気も少し柔らかいものになった気がするので、本題に入る。
俺はダンジョンの計画を話し、ダンジョンの簡単な設計図を信長に見せた。
「ほう、これまた珍妙なことをやろうとしておるな。しかしこの高さ、正気か?紙に描かれておるとおりの縮尺なら、2町を越える高さということになる。到底人間に作れる建造物の高さとは思えん」
2町っていうのはこの時代の長さの単位で、1町110メートルくらいだから220メートルくらいだ。
俺が信長に見せたダンジョンの設計図に描かれてい1階層あたりの高さは20メートルほど。
それを10階層以上連ねているから、高さが200メートルを越える塔になるのではないかと信長は言っている。
実際にはダンジョンは内部の高さと外部の高さは関係ないのだけれど、俺は信長の言うとおり200メートルを越える高さの塔を建てようとしている。
やっぱインパクトが大事だからね。
東京スカイツリーの高さは600メートル以上あるのだから200メートルなんてそれほど高くないと思うかもしれないけれど、200メートルといえばこの時代の人たちにとっては天まで届くような高さだ。
インパクト的には十分だ。
「将来的には2町くらいの建物なら、人間の手でも作れるようになるんですよ。俺には無理ですけどね」
「そうか。人間が高い建物を建てられるようになるのは、何年後のことだ?」
「えぇ……」
そんな真面目に聞かれるとちょっと困っちゃうかな。
そんなに建築物に詳しいわけでもないんだよ。
俺はスマホで調べる。
世界最初の超高層建築というのはなんだろうか。
鉄骨を使ったビルという定義で言えば、アメリカのエンパイア・ステート・ビルディングだろう。
これの竣工が1884年。
300年以上後のことだな。
でも、フランスのノートルダム大聖堂は142メートルの建物でこの時代すでに建っている。
フランスは地震の非常に少ない国だから、耐震技術に拘る必要がないんだね。
同じく地震が少ないドイツにも高い塔は多い。
「地震にも負けない2町を越える建物を建てられるようになるのは、たぶん300年か400年以上後になると思います。でも、建てるだけなら今でも海の向こう側の地震が少ない土地にすでに1町を越える建物があるようですよ」
「なに?この時代にか。そうか……見てみたいものだな」
信長は少しだけその険しい顔をニヒルに歪ませる。
海外の珍しいものとかを収集している信長だ。
それほどまでに高い塔がすでにあると知って、好奇心が押さえられないのだろう。
このまま戦なんてやめて、海外に見たことのないものを見に行く旅に出るとか言ってくれたら俺は喜んで連れていくんだけど。
信長はすぐにいつもの険しい顔に戻った。
だよね。
この状況で海外になんか行けるはずもない。
「塔の建設は好きにするがよい。下がってよいぞ」
「ありがとうございます」
俺は立ち上がり、茶室を出ようとする。
ちょっとお茶残しちゃった。
抹茶って苦いんだよね。
「ちょっと待て」
「なんです?」
毎回毎回、立ち去ろうとする人の背中に話しかけるのが好きな人だな。
俺は振り返り、信長に向き直る。
頭が高いとか言われそうなので少し屈むか。
「最初にこの塔を建てるのは尾張か美濃にするという話だったが……」
「ええ、この塔に人がたくさん挑むようになればおそらく人々は富みますからね。敵を富ませることもないと思いまして」
「最初にその塔を築くのは、蟹江にせよ」
「蟹江に?」
「ああ」
なにか考えがあってのことなのだろうか。
まあ蟹江といえば一向宗の勢いの強い長島の近くだし、何か考えがあるのかもしれないな。
しかしまあ大きなものを作って世の中の常識を変えることになるのだから、一応俺が神にチートを与えられた未来人だということを知っている信長には一言言っておこうと思う。
最初に作るのは尾張か美濃になると思うからそのへんも含めてね。
信長は今豊橋のあたりにいるはずだ。
たしか吉田城だったかな。
俺は巨大化したゆきまるの背中に乗り、一路豊橋を目指した。
「ワフワフ」
「そうだね、速くなったね」
ゆきまるはずっと小さくて可愛いままだけど、成長していないわけではないらしい。
少し走るのが速くなった気がする。
本気で走られると俺はしがみついているのが辛いので軽く走ったくらいだが、明らかに1歩で移動できる距離が伸びて踏み込みも力強くなっている。
これ以上速さが必要かということは置いておいて、俺はゆきまるを目いっぱい褒めた。
わしゃわしゃと身体を撫で、偉いとか凄いとか言いまくる。
ゆきまるは嬉しくなったのか、びゅんびゅん飛ばした。
ごめん、ちょっとスピードを落としてくれると助かります。
寒い、ガクガクブルブル。
かくして超速で三河の国上空を走りぬけた俺とゆきまる。
信長に面会を申し出ると、公式な返事は返ってこなかったが忍の人がこっそり手紙を持ってきた。
手紙の中には信長が茶室でこっそり会ってくれると書かれていた。
息子の陪臣程度の侍が信長に簡単に面会できた前例を残すと面倒なことになるから、こっそりねってことだね。
俺は甘い羊羹をお土産に、吉田城の茶室にお邪魔した。
「入れ」
「お邪魔します」
茶室には信長しかいなかった。
例のごとく壁の向こう側には気配があるものの、さすがに今度は切りかかられはしないだろう。
「これ、つまらないものですが」
「黒い菓子か。そなたは黒いものが好きだと勘九郎から聞いておる」
黒いものが好きなんじゃなくて、黒いものは大体美味いんだよ。
甘党な信長はお土産の羊羹を喜んで食べた。
場の空気も少し柔らかいものになった気がするので、本題に入る。
俺はダンジョンの計画を話し、ダンジョンの簡単な設計図を信長に見せた。
「ほう、これまた珍妙なことをやろうとしておるな。しかしこの高さ、正気か?紙に描かれておるとおりの縮尺なら、2町を越える高さということになる。到底人間に作れる建造物の高さとは思えん」
2町っていうのはこの時代の長さの単位で、1町110メートルくらいだから220メートルくらいだ。
俺が信長に見せたダンジョンの設計図に描かれてい1階層あたりの高さは20メートルほど。
それを10階層以上連ねているから、高さが200メートルを越える塔になるのではないかと信長は言っている。
実際にはダンジョンは内部の高さと外部の高さは関係ないのだけれど、俺は信長の言うとおり200メートルを越える高さの塔を建てようとしている。
やっぱインパクトが大事だからね。
東京スカイツリーの高さは600メートル以上あるのだから200メートルなんてそれほど高くないと思うかもしれないけれど、200メートルといえばこの時代の人たちにとっては天まで届くような高さだ。
インパクト的には十分だ。
「将来的には2町くらいの建物なら、人間の手でも作れるようになるんですよ。俺には無理ですけどね」
「そうか。人間が高い建物を建てられるようになるのは、何年後のことだ?」
「えぇ……」
そんな真面目に聞かれるとちょっと困っちゃうかな。
そんなに建築物に詳しいわけでもないんだよ。
俺はスマホで調べる。
世界最初の超高層建築というのはなんだろうか。
鉄骨を使ったビルという定義で言えば、アメリカのエンパイア・ステート・ビルディングだろう。
これの竣工が1884年。
300年以上後のことだな。
でも、フランスのノートルダム大聖堂は142メートルの建物でこの時代すでに建っている。
フランスは地震の非常に少ない国だから、耐震技術に拘る必要がないんだね。
同じく地震が少ないドイツにも高い塔は多い。
「地震にも負けない2町を越える建物を建てられるようになるのは、たぶん300年か400年以上後になると思います。でも、建てるだけなら今でも海の向こう側の地震が少ない土地にすでに1町を越える建物があるようですよ」
「なに?この時代にか。そうか……見てみたいものだな」
信長は少しだけその険しい顔をニヒルに歪ませる。
海外の珍しいものとかを収集している信長だ。
それほどまでに高い塔がすでにあると知って、好奇心が押さえられないのだろう。
このまま戦なんてやめて、海外に見たことのないものを見に行く旅に出るとか言ってくれたら俺は喜んで連れていくんだけど。
信長はすぐにいつもの険しい顔に戻った。
だよね。
この状況で海外になんか行けるはずもない。
「塔の建設は好きにするがよい。下がってよいぞ」
「ありがとうございます」
俺は立ち上がり、茶室を出ようとする。
ちょっとお茶残しちゃった。
抹茶って苦いんだよね。
「ちょっと待て」
「なんです?」
毎回毎回、立ち去ろうとする人の背中に話しかけるのが好きな人だな。
俺は振り返り、信長に向き直る。
頭が高いとか言われそうなので少し屈むか。
「最初にこの塔を建てるのは尾張か美濃にするという話だったが……」
「ええ、この塔に人がたくさん挑むようになればおそらく人々は富みますからね。敵を富ませることもないと思いまして」
「最初にその塔を築くのは、蟹江にせよ」
「蟹江に?」
「ああ」
なにか考えがあってのことなのだろうか。
まあ蟹江といえば一向宗の勢いの強い長島の近くだし、何か考えがあるのかもしれないな。
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