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99.蟹江ダンジョン一般解放
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試練の塔、蟹江ダンジョンを視察に来た勘九郎君はそう名付けた。
戦乱の世を哀れまれた神仏が人間に与えた試練。
それを乗り越えれば、神仏からご褒美が貰える。
多くの侍たちの意見はそんな一向一揆のスローガンみたいな解釈に落ち着いたようだ。
いいのかな、こんな長島に近い場所でそんなこと言って。
一揆勢を刺激してしまうんじゃないかと心配になってくる。
信長はいったいどんな結末を思い描いているんだろうか。
まあそういった心配ごともあるけれど、なにはともあれダンジョンに人が入ってきてくれるようになった。
中に入って小鬼を倒せば米が手に入るとなれば、そりゃあみんな入るさ。
「うぅ、小鬼ってどんな奴なんだろうな」
「そりゃおめえ、地獄の獄卒みてえな意地の悪い顔したやつだろ」
「そんなやつ、オラに倒せるだろうか」
「中に入った滝川様の話では、そんなに強くなかったらしいけどな」
「やっぱ怖くなってきたからオラ帰ろうかな」
「バッカおめえ、オラを1人にするつもりかよ。2人以上で囲めば多分誰でも勝てるって滝川様も言ってたじゃねえか。米持って帰って、たまにはかかあとガキ共に美味いものでも食べさせてやろうぜ」
「そ、そだな。家族が米さ持って帰るのを待ってるものな」
滝川一益さんたちはメカゴブリンを1匹倒して帰ってしまったので、まだまだダンジョン内のゴブリンたちには戦闘経験が足りていない。
そんなに心配しなくても、今のゴブリンになら子供でも石を投げるとかすれば勝てるだろう。
ましてやこの2人は関所で借りたのか槍と刀を持っている。
よほどのへっぴり腰でもない限りはかすり傷一つ受けることなく倒せるだろう。
米を持って帰ってどんどん宣伝して欲しい。
「分かれ道だな」
「滝川様は右行って行き止まりに小鬼がいてその奥に米があったらしい」
「そんなら左行くか?」
「米が戻ってるかもしれねえから、確かめるだけしてから左行くのがいいんでねえか?」
「そだな」
いい判断だ。
米はすでに補充してあるし、メカゴブリンも直してある。
1回の戦闘で手に入る米はそれほど多くなく、せいぜいが1升くらいだ。
しかし設置された米は誰かが持って行ってもすぐに補充される。
メカゴブリンもだ。
さすがにメカゴブリンの死体を持っていく人はいないかもしれないけれど、持って行かれてもすぐに補充はできる。
最上階のプラントで雪斎が万単位で製造しているからね。
そんなにいらなくない?
『何事も、備えあれば憂い無しですぞ。ここは長島の目と鼻の先、自衛のための戦力はいくらあっても足りませぬ』
「そ、そうなんだ……。ほどほどにね」
『承知』
承知してない気がする。
これからダンジョンに入る人が増えれば、メカゴブリンが大量に必要になるのも確かだからいいんだけどね。
「あ、あれが小鬼か。なんて醜悪な面なんだ」
画面に視線を戻すと、先ほどの2人組が通路の突き当たりに到達していた。
リアリティ溢れるゴブリンの迫力に少し尻込みしてしまったようだ。
顔の迫力だけは満点だからね。
まだ戦闘能力はほぼ皆無なんだけどね。
「やるしかねえ、やるしかねえんだ」
「おっかあと子供たちのため」
「戦場で見た鬼柴田様の顔に比べたらなんてことねえ!」
「そうだ!」
2人は家族のために覚悟を決めたようで、槍を構えてゴブリンに突進した。
そしてそのまま槍はゴブリンを貫く。
ゴブリンはほとんど棒立ちのまま破壊された。
「あれ?死んだ?」
「なんだよ、滝川様の言っていたとおり顔に似合わず弱いな」
「まあどうでもいいや。これで米が手に入るんだな」
「ああ、この箱見てみろ。オラとおめえで分けても5合くらいはある」
「やったな」
2人は持参したずた袋に米を入れて意気揚々と来た道を戻って行った。
頑張ってたくさん米を持って帰ってくれ。
信長の名代として、勘九郎君が蟹江に視察に来た以上は俺もずっとダンジョンの最上階に篭っているわけにはいかない。
もちろん岐阜から蟹江への道中も俺はずっと勘九郎君の側にいたさ。
たまにダンジョンの様子を見に最上階にテレポートするために長いトイレに行くこともあったけどね。
おかげで少し腹の調子を心配されている。
「本当に大丈夫なのか善次郎。1刻半も厠に篭るなど尋常の沙汰ではないぞ」
「い、いえ、全然大丈夫です。ちょっと卵に当たっただけなんで……」
「だから鶏の卵など食うなとあれほど言ったのだ。いいか、古来から鶏の卵を食するは悪しきことが起こるとされておるのだ」
卵が縁起の悪い食べ物だというのはこの時代では結構言われていることだ。
未来ではみんなバクバク食べているからそれが迷信であるということは確かなんだけどね。
確かに有精卵と無精卵の違いなんてこの時代の人には分からないし、鶏の子供を食べるなんて祟られると思っても仕方はないとも思う。
そして勘九郎君は意外に迷信を信じるタイプだ。
卵は栄養があるから食べたほうがいいと言っても全然食べないのだ。
いっそのこと卵もダンジョンから出してみるか。
あれは神仏が人間に与えた試練ということになっているので、卵が出れば神が食べることを推奨した食べ物ということにならないかな。
そうなれば卵が縁起の悪い食べ物だという印象が変えられると思うのだけど。
「だいいち鶏が頑張って産んだ卵を食べてしまうなど、可哀想ではないか!」
やけにヒートアップしているな。
さては昔鶏に名前でも付けて可愛がっていたな。
「勘九郎様。お言葉ですが、鶏が産む卵には2種類あるのを御存知ですか?」
「なんだと!?」
俺は鶏の生態や有精卵と無精卵について説明した。
俺も詳しくは知らないから孵る卵と絶対に孵らない卵っていうふんわりとした説明になってしまったけど。
人間の子供ができる仕組みなんかも少し交えて話したから少しショッキングな話になってしまった。
この時代性教育とかどうなっているのかな。
「だからまあ俺が何を言いたいのかといえば、卵食べましょう」
「はい」
勘九郎君は生命の神秘を垣間見て少しの間放心した。
戦乱の世を哀れまれた神仏が人間に与えた試練。
それを乗り越えれば、神仏からご褒美が貰える。
多くの侍たちの意見はそんな一向一揆のスローガンみたいな解釈に落ち着いたようだ。
いいのかな、こんな長島に近い場所でそんなこと言って。
一揆勢を刺激してしまうんじゃないかと心配になってくる。
信長はいったいどんな結末を思い描いているんだろうか。
まあそういった心配ごともあるけれど、なにはともあれダンジョンに人が入ってきてくれるようになった。
中に入って小鬼を倒せば米が手に入るとなれば、そりゃあみんな入るさ。
「うぅ、小鬼ってどんな奴なんだろうな」
「そりゃおめえ、地獄の獄卒みてえな意地の悪い顔したやつだろ」
「そんなやつ、オラに倒せるだろうか」
「中に入った滝川様の話では、そんなに強くなかったらしいけどな」
「やっぱ怖くなってきたからオラ帰ろうかな」
「バッカおめえ、オラを1人にするつもりかよ。2人以上で囲めば多分誰でも勝てるって滝川様も言ってたじゃねえか。米持って帰って、たまにはかかあとガキ共に美味いものでも食べさせてやろうぜ」
「そ、そだな。家族が米さ持って帰るのを待ってるものな」
滝川一益さんたちはメカゴブリンを1匹倒して帰ってしまったので、まだまだダンジョン内のゴブリンたちには戦闘経験が足りていない。
そんなに心配しなくても、今のゴブリンになら子供でも石を投げるとかすれば勝てるだろう。
ましてやこの2人は関所で借りたのか槍と刀を持っている。
よほどのへっぴり腰でもない限りはかすり傷一つ受けることなく倒せるだろう。
米を持って帰ってどんどん宣伝して欲しい。
「分かれ道だな」
「滝川様は右行って行き止まりに小鬼がいてその奥に米があったらしい」
「そんなら左行くか?」
「米が戻ってるかもしれねえから、確かめるだけしてから左行くのがいいんでねえか?」
「そだな」
いい判断だ。
米はすでに補充してあるし、メカゴブリンも直してある。
1回の戦闘で手に入る米はそれほど多くなく、せいぜいが1升くらいだ。
しかし設置された米は誰かが持って行ってもすぐに補充される。
メカゴブリンもだ。
さすがにメカゴブリンの死体を持っていく人はいないかもしれないけれど、持って行かれてもすぐに補充はできる。
最上階のプラントで雪斎が万単位で製造しているからね。
そんなにいらなくない?
『何事も、備えあれば憂い無しですぞ。ここは長島の目と鼻の先、自衛のための戦力はいくらあっても足りませぬ』
「そ、そうなんだ……。ほどほどにね」
『承知』
承知してない気がする。
これからダンジョンに入る人が増えれば、メカゴブリンが大量に必要になるのも確かだからいいんだけどね。
「あ、あれが小鬼か。なんて醜悪な面なんだ」
画面に視線を戻すと、先ほどの2人組が通路の突き当たりに到達していた。
リアリティ溢れるゴブリンの迫力に少し尻込みしてしまったようだ。
顔の迫力だけは満点だからね。
まだ戦闘能力はほぼ皆無なんだけどね。
「やるしかねえ、やるしかねえんだ」
「おっかあと子供たちのため」
「戦場で見た鬼柴田様の顔に比べたらなんてことねえ!」
「そうだ!」
2人は家族のために覚悟を決めたようで、槍を構えてゴブリンに突進した。
そしてそのまま槍はゴブリンを貫く。
ゴブリンはほとんど棒立ちのまま破壊された。
「あれ?死んだ?」
「なんだよ、滝川様の言っていたとおり顔に似合わず弱いな」
「まあどうでもいいや。これで米が手に入るんだな」
「ああ、この箱見てみろ。オラとおめえで分けても5合くらいはある」
「やったな」
2人は持参したずた袋に米を入れて意気揚々と来た道を戻って行った。
頑張ってたくさん米を持って帰ってくれ。
信長の名代として、勘九郎君が蟹江に視察に来た以上は俺もずっとダンジョンの最上階に篭っているわけにはいかない。
もちろん岐阜から蟹江への道中も俺はずっと勘九郎君の側にいたさ。
たまにダンジョンの様子を見に最上階にテレポートするために長いトイレに行くこともあったけどね。
おかげで少し腹の調子を心配されている。
「本当に大丈夫なのか善次郎。1刻半も厠に篭るなど尋常の沙汰ではないぞ」
「い、いえ、全然大丈夫です。ちょっと卵に当たっただけなんで……」
「だから鶏の卵など食うなとあれほど言ったのだ。いいか、古来から鶏の卵を食するは悪しきことが起こるとされておるのだ」
卵が縁起の悪い食べ物だというのはこの時代では結構言われていることだ。
未来ではみんなバクバク食べているからそれが迷信であるということは確かなんだけどね。
確かに有精卵と無精卵の違いなんてこの時代の人には分からないし、鶏の子供を食べるなんて祟られると思っても仕方はないとも思う。
そして勘九郎君は意外に迷信を信じるタイプだ。
卵は栄養があるから食べたほうがいいと言っても全然食べないのだ。
いっそのこと卵もダンジョンから出してみるか。
あれは神仏が人間に与えた試練ということになっているので、卵が出れば神が食べることを推奨した食べ物ということにならないかな。
そうなれば卵が縁起の悪い食べ物だという印象が変えられると思うのだけど。
「だいいち鶏が頑張って産んだ卵を食べてしまうなど、可哀想ではないか!」
やけにヒートアップしているな。
さては昔鶏に名前でも付けて可愛がっていたな。
「勘九郎様。お言葉ですが、鶏が産む卵には2種類あるのを御存知ですか?」
「なんだと!?」
俺は鶏の生態や有精卵と無精卵について説明した。
俺も詳しくは知らないから孵る卵と絶対に孵らない卵っていうふんわりとした説明になってしまったけど。
人間の子供ができる仕組みなんかも少し交えて話したから少しショッキングな話になってしまった。
この時代性教育とかどうなっているのかな。
「だからまあ俺が何を言いたいのかといえば、卵食べましょう」
「はい」
勘九郎君は生命の神秘を垣間見て少しの間放心した。
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