チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

兎屋亀吉

文字の大きさ
127 / 131
チートをもらえるけど平安時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

12.円融天皇と藤原家の時代

しおりを挟む
 スキルオーブ(槍術・中)というものが前回のガチャで出た。
 使うだけでスキルという力を身に付けることができるアイテムであると俺は予想している。
 おそらく括弧の中の槍術・中というのがこのアイテムを使ったときに手に入るスキルなのだろう。
 槍を使うとゲームみたいに技が飛び出すようなスキルなのか、それとも槍の扱いに補正がかかるスキルなのか、それは使って見なければわからない。

「これ、どうやって使うんだろ」

 アイテム自体はピンポン玉くらいのガラスの玉のようなアイテムだ。
 玉の中にはぼんやり光る幾何学模様のようなものが封じ込められている。
 100円ショップでこんなインテリアが売ってたら買うかもな。
 どこにも飾らず引き出しの中に入れておくと思うけど。
 手のひらに乗せ、コロコロと手で弄ぶ。
 仙人の霊的感覚が、この玉の中にとんでもないエネルギーが宿っていることを教えてくれた。
 このエネルギーを開放することができたらスキルを覚えることができると思うのだが、どうやるのかはわからない。
 身体に纏っている霊力のような力を操ることができないとこのアイテムは使うことができないのではなかろうか。

「仙人専用アイテムってことか」

 それも俺のようなド素人仙人ではなく、修業を終えた玄人仙人用のものだ。
 これを使うためにも、仙人としての修業というものをしてみるか。
 大地から立ち上るエネルギーを仮に気と呼び、生き物の身体を覆うエネルギーを霊力と呼ぶとする。
 俺が考えるに仙人は気を身体に取り込み、自分の霊力に変換することのできる人間だ。
 霊力の量が多くなったことにより、俺の身体能力は上がり五感は鋭くなったのだろう。
 仙人は不老不死という伝説があるが、不老はともかく不死ではないのではと思っている。
 なぜなら普通に転んだりしたら痛いし、山を歩くと茨に引っかかって傷ができたりもするからだ。
 茨のトゲで傷ができるのだから刃物で刺されたら普通に死ぬだろう。
 だがなんとなく傷の治りは早いような気がしている。
 霊力というのが俺の身体にどのような効果をもたらすのか、色々と検証していこう。

「漫画とか小説だと、霊力とか魔力で自然治癒力を高めたり身体能力を強化したりするよな」

 それには力をコントロールしたり、一部分に集中させたりという修業をしていることが多い。
 二次元に習って俺もそんな感じの修業をしてみよう。
 まずは気を自分で取り込んでみよう。
 いつもは勝手に取り込まれる気を、自分で意図して取り込む。
 これができればガンガン気を取り込んで霊力に変換し、身体に纏う霊力の量を増やし密度を濃くすることが可能となるだろう。
 霊力が上がったことで身体能力や五感が良くなったのならば、更に上げれば超常的な力が得られるのではないだろうか。
 目を瞑り、気の流れを感じる。
 今もふわふわと大地から立ち上る気が俺の身体に入り込み、霊力となり続けている。
 その流れを強める。
 気を強く吸引する、サイクロン掃除機のように。

「お、きたぞ、きたきた!」

 身体が熱くなってきた。
 ぶわっと身体から全方位に熱気を放出しているかのような感覚。
 しかしこれでは霊力がどんどん身体から逃げていってしまっている。
 いつまでも経っても身体に内包する霊力は増えない。
 逃げていこうとする霊力を身体に留めなくては。
 少年誌のハンター漫画でも最初の修業はオーラを身体に留めることだった。
 俺の修業もまずそこからだ。
 大切なのはイマジネーション。
 身体の中、霊力が血液に溶け込み血管を巡るイメージ。
 細胞一つ一つにまで浸透し、定着する。
 あと腕が生えてくる。
 強くイメージを続けること10分ほど。
 そろそろ俺の集中力が切れ、飽きてきた頃ようやく霊力の放出が緩やかになってきた。
 同時に身体を包む霊力が密度を増した。

「よし、成功」

 集中力が切れた瞬間、霊力は元通りになった。
 気の取り込みも通常通りに逆戻りだ。
 意識しなくともできるようになるにはもっと継続した修業が必要になるのだろう。
 今はそういうことができるとわかっただけでも十分だ。
 腕も念じ続けたら生えてくるかもしれない。
 毎日念じてみるとしよう。






 俺が金太郎さんたちに拾われてからそろそろ20日が経過した。
 俺は3日くらい眠っていたそうだから、すでに平安時代にトリップしてから3週間以上が経っている計算になる。
 怪我も癒えたし、生活していくだけの物資も十分だ。
 そろそろ出ていこうかとも思ったのだが、2人に引き留められてなんとなくここで暮らしている。
 もしかしたらずっとここで暮らしていくかもしれない、そんな気すらしている。
 平安時代の生活を調べれば調べるほど、ここの暮らしが天国のように思えてくるんだよな。
 貴族も華やかなだけじゃないみたいだし、庶民は漏れなく生活苦。
 各地で土豪たちが独自の自衛戦力を整え始め、これから武士の時代が来る。
 食べ物や土地を奪い合い、権力を求めて武力を蓄え成り上がる、そんな時代だ。
 お腹いっぱい食べられて、みんなが笑って暮らすということがこの時代どれだけ難しいことか。
 
「といっても応仁の乱まではまだ500年くらいあるんだけどね」

 それまでは一応朝廷の機能というものが曲りなりにも機能していることだろう。
 今のところ権力の大きさでいったら藤原家が一番なわけだけど、一応組織のトップは天皇だからね。
 朝廷の下に貴族がおり、貴族の下に武士がいるという権力図がまだ成り立つ。
 俺はスマホを取り出し、よくわかる平安時代アプリで現在の天皇を検索する。
 今は推定西暦976年前後だから、64代円融天皇か。
 真に失礼ながら聞いたことのないお名前だ。
 関係者を見るとまず母親が藤原家だ。
 そして奥さんも藤原。
 お妾さんも藤原。
 めちゃめちゃ藤原尽くしだ。
 近親婚が心配になるレベルで藤原だらけ。
 改めてこの時代の藤原一族の権勢を思い知らされる。
 スマホの力を知られたらきっとすごい勢いで手に入れようとするんだろうな。
 絶対ばれないようにしないと。
 しかしまあ、ガチャを回さないという選択はないよな。
 俺は今日も日課のガチャをタップした。
 光は青。
 Cランク以下のアイテムしか出てないときの演出だ。

 Sランク
  なし

 Aランク
  なし

 Bランク
  なし

 Cランク
  ・米×10
  ・小麦粉×10
  ・水×10

 Dランク
  ・ひのきの棒
  ・ビー玉
  ・飴玉×10
  ・ビニール袋×10
  ・マグカップ
  ・虫網
  ・果物ナイフ

 なんともしょっぱい日もあったもんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...