チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

兎屋亀吉

文字の大きさ
128 / 131
チートをもらえるけど平安時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

13.スキルオーブ

しおりを挟む
 金太郎さんたちの暮らしは基本的に狩猟と採取だ。
 山で得物を狩り、薬草や山菜を採取して暮らしている。
 人ならざる者の血を引く2人はこの山で隠れ住んでいる状態であり、広い土地を開墾して田畑を耕すのは目立ちすぎるからだ。
 幸いなことに八重さんには豊富な知識があり、様々な薬を作ることができた。
 それゆえ足りない物資は薬の対価としてふもとの村からもらうことができる。
 何日かに1回肉を得るために狩りをして、薬の材料や山菜を採取すれば生活には困らない。
 これが本当のスローライフか。
 縁側に寝転がって居眠りをしているとそう感じる。
 というか居候の俺までこんな感じでいいのかな。
 
「暇だし、仙人の修業でもしようかな……」

 大量の気を取り込んで密度の濃い霊力を保持する修業はそろそろものになり始めている。
 その日のコンディションにもよるが、大体2、3秒くらいで霊力の密度を高めることができるようになった。
 この調子で頑張っていけば瞬きをするような時間でできるようになることだろう。
 身体を覆う霊力の密度が濃い状態は、普通にしているのとは比べ物にならないほどに身体能力が高まる。
 軽くジャンプしただけで10メートルくらい跳びあがってしまったときは酷く驚いたものだ。
 室内で試さなくてよかったよ。
 普段はそこまで身体能力を高める必要はないので、この霊力高密度状態は何か危険が迫っていて戦わなければならないときにしか使わないほうがよさそうだ。
 そんなわけで今日は次の段階に移行しようと思う。
 霊力の集中だ。
 二次元作品だと魔力とかオーラとかそういうエネルギーは大体身体の一部分に集中することによってその効力を増大させるものだ。
 これ以上身体能力を上げる必要はないけれど、まだ腕が生えてきてないからね。
 俺は諦めていないのだ。
 自然治癒力を極限まで高め、必ずや腕を再生してやる。
 俺は失った右腕の断面に霊力が集まるように必死にイメージを膨らませる。
 しかしなかなか霊力は思った通りに動いてくれない。
 身体に纏う霊力が右腕近くに集まれば集まるほど、霊力の圧力が強くなって身体から放出されていってしまうのだ。
 やはりこの修業は一筋縄ではいかないか。
 ハンター漫画でも苦労していたから予想はしていた。
 まあ気長にやろう。





 
 平安時代に飛ばされて、そろそろ2か月になる。
 秋口の残暑はすっかりなりを潜め、季節は冬に移りつつある。
 食料が豊富な時代に生まれた俺には冬というのはこたつでみかんというイメージなのだが、この時代では冬というのは厳しい試練の季節なようだ。
 なにせ建物の断熱性が低い。
 竈の火が完全に落ちた朝などは家の中でも外と気温がさほど変わらない。
 防寒具や分厚い毛皮の毛布無しに眠れば翌朝元気に目覚められるかどうかもわからない。
 そしてなにより、食べ物があまり手に入らなくなる。
 野菜や穀物が育たず山にも食料となるものがなくなる冬は、新たに食べ物を手に入れることが難しくなる。
 かといって人間は動物たちのように冬眠することはできない。
 それゆえに冬を越すためには食料がまだ手に入るうちに備蓄しておかなければならない。
 今日は朝から金太郎さんと八重さんはふもとの村に下りていった。
 今朝大きな猪が罠にかかったので、おすそ分けに向かったのだ。
 これもふもとの村の人たちと良好な関係を続けていくためには必要なことらしい。
 八重さんたちがこの山にやってきたのは10年くらい前のこと。
 そろそろ全く歳をとった様子のない八重さんが怪しまれている頃だ。
 2人のことを恐れる人や羨む人が出てくる。
 薬を作れる八重さんたちは生活も豊かだ。
 嫉妬から妙なことを言い出す人もいる。
 だからこそ、村人たちにも利益を供与する必要があるのだ。
 自分たちに得があるうちは2人のことを排除しようとする人の意見は抑えられる。
 2人をこの山から追い払ってしまったら、今までのように薬を買うことはできなくなるし肉のおすそ分けも無くなる。
 村の人たちはそんな打算から、未だ2人との関係を良好に保っている。
 それを知っているからこそ、金太郎さんは八重さんが村に行くときはいつもついていくのだろう。
 もしものときに八重さんを守れるように。

「この村の人たちはみんな良い人、って言ってたよな八重さん……」

 いったいどんな気持ちで口にしていたのか。
 なんだか切ない気持ちになってしまった。
 2人には助けられてばかりだから何か恩返しがしたいのだが、俺にできることは今のところ何もない。

「もしものときにわずかばかりの力添えだけでもできるようにしておくか」

 俺は今までガチャで手に入れたスキルオーブを全て取り出す。
 すべて習得して戦力を増強するのだ。

Aランク
・スキルオーブ(槍術・中)
・スキルオーブ(防御力上昇・小)
・スキルオーブ(鉄拳)

Sランク
・スキルオーブ(火遁)
・スキルオーブ(超再生)

 ここ2か月でずいぶんとたくさんのスキルオーブが出た。
 中でもSランクの2つは覚えるのが非常に楽しみだ。
 腕を再生することを諦めていない俺にとって、この超再生というスキルは喉から手が出るほど欲しかったものだ。
 こいつが今日の朝出たときはちょっと漏れそうになったもんな、大きいほうが。
 1カ月くらい前に出た火遁というスキルも面白そうだ。
 少年漫画の忍ばない忍者が口から火を噴いているのに密かに憧れていたのだ。
 スタイリッシュでかっこいい印の結び方を練習しておかなくてはな。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...