おっぱいポイント

兎屋亀吉

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7.たまには主人公らしく説教などしてみる

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 久しぶりの人里。
 俺は早く昼飯を食べに行きたいのだけれど、なかなかそういうわけにもいかない。
 先ほど小銭を稼いで列の順番を変わってもらった代償に、俺は門の中に待ち構えていた人たちに浄化魔法をせがまれていた。
 しょうがないのでかけてあげるが、ちゃんとお金はもらう。
 物納は認められません。
 物納しようとした人たちは肩を落として去っていった。
 残ったのは5人ほどだったのでさっさと済ませてしまおう。
 まいどあり。
 もう来ないでね。
 まあ予想外の臨時収入としてありがたく受け取っておこう。
 お腹がもう限界なのでさっさとお昼にしよう。
 ケルビムさんのなじみの屋台に行きたいところだが、気付かれる可能性もあるので避けよう。
 いくら劇的ダイエットを経た後とはいえ、骨格は変わっていないし若返りもまだまだ40代。
 危ない橋は渡らない。
 王都は広い。
 ケルビムさんの行動範囲だったのは二番街西地区の一部だけ。
 行動範囲の広い仕事にでも就いていないかぎりは個人の行動範囲なんてこんなものだ。
 そこらへんに近づかないようにしておけば問題ないだろう。
 ただひとつ問題があるとすれば、冒険者ギルドだ。
 ケルビムさんはフォレストウルフ討伐の依頼を失敗している。
 普通なら違約金を払う必要があるだろう。
 さらに、万年Eランクとはいえ長年あのギルドで仕事を請け負ってきたため顔見知りも少なくない。
 これらの理由から俺は王都の冒険者ギルドにも近づかないことに決めた。
 フォレストウルフ討伐の依頼人とケルビムさんの尻拭いをしてくれたであろう冒険者には悪いが、ケルビムという冒険者はフォレストウルフとの戦いで死んだんだ。
 俺はニューケルビムとして辺境で新しく冒険者登録をさせてもらう。
 俺は冒険者ギルドのあるほうに一礼して二番街東地区の方向へ歩き始めた。
 



 この王都は2重の外壁により一番街と二番街に分かれていて、一番街には富裕層が、二番街にはそれ以外が住んでいる。
 さらに二番街は大通りによって東西南北に分かれている。
 俺が目指している二番街東地区はスラム街がある地区で、貧民層が多く住んでいる。
 俺の泊まろうとしている最低ランクの宿もこの地区にはたくさんあるため、都合がいい。
 浄化魔法で多少の小銭を稼ぎはしたが、まだまだ俺の全財産は底辺職のケルビムさんにも劣る。
 贅沢する余裕なんて無いのだ。
 しばらくうろうろして宿を探すが、なかなかぴんと来る宿がない。
 ケルビムさんの知識でこの世界の宿がどんなものか知ってはいたが、俺自身は異世界の初宿だ。
 納得いくまで吟味したい。
 うろうろと宿を探していたのだが、ふいに強い力で襟首を引っぱられた。
 そのまま細い横道に引き込まれてしまう。
 ぐっと一瞬息がつまるが、苦しむ前に俺の首元に冷たい金属が押し付けられた。

「おいおっさん、その腕輪を置いていってもらおうか」

 強盗だと気付くまでに数秒を要した。
 逃げようとするが、強い力で両脇から掴まれていて逃げられない。
 周囲を見れば、俺は汚い格好をした男達に囲まれてしまっていた。
 浄化の腕輪を要求するということは門の中で浄化魔法を使ったところを見られたのだろうか。
 良く考えてみれば俺はけっこう目だっていたように思える。
 このような輩に目を付けられてしまうのも無理は無い。
 それも自分から治安の悪い東地区に入り込んで来るなんてこの男たちから見たら俺はいいカモだ。
 だがこの浄化の腕輪は俺も気に入っているんだ、こいつらに渡してやるわけにはいかない。
 俺はパイロキネシスを発動する。
 別にこいつらを焼き殺すわけではない。
 金がないからって悪いことをしていいとは思わないが、こいつらはまだ俺を殺して浄化の腕輪を奪おうとしないあたりまだ更生の余地がある。
 俺は煙草の火くらいの小さな火を両手の人差し指に出現させ、俺の脇から身体を掴んでいる男の太ももに押し付ける。

「あぢっ、あぢぃ!」

 見事俺の両脇の男が飛び上がり俺の拘束が緩む。
 俺はさらに首筋に突きつけられている刃物を持つ手に火を押し付ける。

「あぢぃぃ!」

 これで完全に拘束が解けた。
 これを機に俺は包囲網から飛び出し、広い通りに逃げる。
 
「ま、待て!」

 男達は追いかけてきた。
 頭に血が上っているのかもしれない。
 こんな広い通りで人を襲えば目立ってしまうだろうに。
 だがいい機会かもしれない。
 俺が浄化の腕輪を持っているということをすでにこの手の輩に知られているならば、この東地区にいるうちは狙われるかもしれない。
 だが金がない俺には東地区の宿屋以外だとすぐに金が尽きてしまう。
 1週間くらいは休んでいきたい俺には東地区でずっと狙われるのは困る。
 これは俺を狙っている奴らに力を誇示するチャンスだ。
 俺は追いかけてきた男達に向き直り、空に向かって人差し指をかざす。
 チラッと上に障害物がないか確認し、最大出力でパイロキネシスを放つ。
 ごぉぉぉという不吉な音を立てて炎が噴出す。
 遊園地の演出みたいだ。

「なっ、こいつ魔法使いか!?」

 パイロキネシストだ。
 魔法使いの皆さんに悪いだろうが。
 
「悪いな、お前達。これは俺のお気に入りでな。くれてやることはできないんだ」

 俺はさも大物商人みたいな態度で浄化の腕輪をなでる。

「だがサービスだ。お前達にも浄化魔法をかけてやろう」

 俺が男達に手をかざすと男達はさっきの火が出ると思ったのか一瞬ひっと怯えたが、俺が浄化魔法をかけると唖然とした顔になった。

「な、なんで…」

 男達は相当汚れていたのか、いつもよりしゅわしゅわが長い。
 
「なんで俺達なんかに、浄化魔法をかけてくれるんだ」

「ただの気まぐれだよ。俺はゴブリンを狩るだけで他はろくに働きもしないくせになんとか生きてた冒険者を知っている。そいつとおまえたちに、俺はそこまでの違いを感じない。俺の勝手な考えかもしれないが、あいつがなんとか生きてたのにお前達がこんなことをしないと生きていけないのか俺には少し疑問なんだよ」

「はっ、これを機にやり直せとでも言うのかよ!」

「それはお前達が決めることで別に俺はとやかく言うつもりはないさ。じゃあな、俺は宿をもう少し見るのでな」

 俺はそう言って宿探しに戻った。
 美人女将がいる宿っていうのもなかなか見つからないものだ。

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