おっぱいポイント

兎屋亀吉

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8.美人母娘の営む宿、いい匂いしそう

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 王都二番街東地区の片隅、スラム街に程近い場所にその宿屋はあった。
 飛ぶ鳥落とす亭。
 ちょっとユニークなネーミングだが、周辺の聞き込み調査によってこの宿を営んでいるのは美人親子だと判明している。
 女将の旦那はすでに亡くなっており、母一人娘一人と従業員のおばちゃんが一人で細々と宿屋を営んでいるらしい。
 まさに俺の捜し求めていたピンと来る宿だ。
 俺はさっそくその宿に向かう。
 スラム街に近いだけあってガラの悪そうな輩もたまに見かけるが、すでに俺の情報が回っているのかちょっかいをかけてくるものはいない。
 これなら安心して休めそうだ。
 俺は高鳴る胸を押さえ、飛ぶ鳥落とす亭に入る。
 中は質素な建物ながらも、掃除だけは行き届いており清潔感がある。
 俺はカウンターに設置された錆びたベルを鳴らし、美人女将を呼んだ。
 わくわくするな。
 娘の方は15、6だという話だからおじさんと遊ぶには少し早い年齢だ。
 現代日本ではそのくらいの年齢からおじさんと遊んでお金を貰う子もいるらしいが、大変遺憾な話である。
 世の中にはどれだけの処女信者がいると思っているんだ。
 ベルを鳴らして少しすると、奥の方から少女が走って出てきた。
 娘のほうかと俺は少しがっかりする。

「すみません、お待たせしました」

 さすが美人親子だと近所で噂されているだけあって綺麗な娘だ。
 俺と同じような亜麻色の髪のポニーテール。
 整った顔。
 破れた部分を目立たないように繕ってあるエプロン。
 胸は、小さいな。
 小さい胸には用は無い?
 バカ言ってんじゃないよ。
 おっぱいを小さいというだけで差別するその心が小さい。
 おっぱいとは、大きな心で楽しむものだ。
 小さいとか大きいとか、垂れてるとか、そんなスケールの小さいものさしで測っていいものじゃないんだよ。
 
「あの、そんなに、胸を見られると…」

 完璧な恥らい方だ。
 頬を少し赤くし、目を泳がせてもじもじする。
 おじさんのドストライクをぶち抜く反応だ。
 15、6くらいの少女にこんなにドキドキさせられるとはな。
 まだまだあどけなさを残した少女に40代の身体が反応するわけはないとタカをくくっていたが、良く考えればこの身体は40代の童貞の身体だ。
 JKくらいの年齢の少女に反応しないわけはないんだ。
 
「わ、私胸小さいから、そんなに見ても楽しくない、ですよ……」

 この小動物のような存在感。
 素晴らしい逸材だな。
 さすがにこの子とどうこうなるのはおじさんの矜持が少し抵抗するが、この子の母親にはすごく期待できる。
 母親の年齢は30代前半あたりらしい。
 こちらは40代のおじさんだが、そのくらいの歳の差だったら子持ち未亡人属性の母親には包容力として映る可能性もある。
 可能性はゼロではない。
 
「あの、私の胸、なんかおかしいでしょうか」

 しまった。
 娘のおっぱいを凝視しながら長考してしまったようだ。
 これだと少し変態っぽい。
 なんとか誠実そうな雰囲気を取り繕わなくては。

「いや、故郷のお菓子を思い出してな」

「お菓子…ですか?」

 おっぱいプリンのことなんだけど。
 
「ああ、とても甘くて美味しいお菓子だった」

「なるほど…」

 なんとか乗り切れただろうか。
 いや、乗り切れてはないな。
 きっと意味不明なおじさんだと思われただろう。
 JKくらいの女の子に変なおじさんだと思われた。
 死にたい。

「あの、お泊りですか?」

「あ、ああ。一泊いくらかね?」

「大部屋は食事あり銅貨30枚、食事なし銅貨15枚。個室は食事つき銅貨40枚で、食事なし銅貨25枚です」

 安いな。
 個室食事なし1週間で銀貨1枚と銅貨75枚か。
 浄化の腕輪で稼いだ金でギリギリ泊まれるな。
 食事は絶対おっぱいポイントで出したほうが美味しいから無くても構わない。
 
「個室食事なしを1週間頼む」

 そう言って俺は銀貨1枚と銅貨75枚を差し出す。
 100枚で繰り上がる硬貨は使いづらいな。
 小銀貨とか造るべきだと思うんだけど。

「はい、ありがとうございます!」

 娘は代金を受け取ると、笑顔を浮べて数え始める。
 営業スマイルだとしても、おじさんはその笑顔に骨抜きだよ。

「確認しました。こちらお部屋の鍵です。2階の左手一番奥、205号室です」

「ああ、ありがとう」

 鍵を受け取りそのまま階段を上がろうと思ったのだが、ふと気になったことをこの娘に聞いてみることにした。

「そういえば、女将はどうしたんだ?この宿は美人親子が営んでいると聞いていたのだけれど…」

 すると娘は少し顔をゆがめ、陰鬱そうな表情になってしまう。
 なんだ?美人女将になにかあったのか?

「母は…その、今寝込んでいるんですよ。多分風邪かなにかだと思いますから、すぐによくなると思いますけど…」

 少女のその言葉は、まるで自分に言い聞かせているようだった。
 本当に女将は風邪なんだろうか。
 なにか重い病かなにかにかかっているんじゃないか?
 だから俺にどうこうできるというわけではないがな。
 もしかしたらおっぱいポイントを使えばどうにかできるかもしれないが、それをどう伝える?
 おじさんに任せておきなさいとでも言って善人面して助けてあげるとでもいうのか?
 おっぱいポイントは完全なチート能力だ。
 やろうと思えばこの世界でできないことはほとんどないだろう。

「そうか…」

 俺は結局そう言って階段を上がった。
 左手一番奥の部屋に205と書かれているのを確認し、鍵を差し込む。
 鍵は原始的だが一応金属でできている。
 鍵穴も大きいし、ピッキングとか簡単そうだな。
 鍵をガチャリと回し、部屋に入る。
 ベッドとサイドテーブル、椅子が1脚。
 それだけ置いたらもういっぱいになってしまったというくらいの広さの部屋だ。
 ビジネスホテルのシングル部屋みたいでこれはこれで落ち着く。
 ベッドはさすがにダニとかいそうなので浄化魔法をかける。
 継ぎ接ぎだらけでしつこい汚れがこびりついていたシーツが綺麗になった。
 さすがに継ぎ接ぎはどうにもならないが、汚れはマイクロバブルに勝てずに退散したようだ。
 これで今夜は快眠できるだろう。
 眠ってなにもかも忘れたい気分だ。

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