おっぱいポイント

兎屋亀吉

文字の大きさ
25 / 25

25.アルバーン最後の夜

しおりを挟む
「なんだてめぇ!!」

 おっさんを殴ろうとした拳を俺に掴まれた若い冒険者が、鋭い眼光で睨みつけてくる。

「おいおっさん、またあんたか……」

 人だかりの中からガチムチ兄やんが現れた。

「今度は逃げられねぇぞ。剣を抜かなきゃギルド長は何も言わねぇ」

 兄やんは拳を握り、ファイティングポーズをとる。
 どうやらおじさんと遊びたいらしい。
 少し揉んでやるとしよう。
 揉むなら女のおっぱいがいいんだけどな。


~10分後~


「て、てめぇ、いったい何者なんだ……」

 おじさんの足元には倒れふす冒険者の山。
 当然の結果だ。
 チート持ちのおじさんにこの程度の冒険者が何人集まろうと勝てるわけが無い。
 俺も譲歩して、武器の使用を許可し、兄やんに組するもの全員でかかってくることも許可したが、それでも足りない。
 その程度ではおじさんに変身スキルを使用させることもできない。
 俺は身体強化レベル15+1しか使っていないよ。
 ガチムチ兄やんはAランク冒険者らしい。
 Sランク冒険者というのは大きな功績を上げたAランク冒険者に送られる称号のようなものらしいから、実質的にはAランク冒険者が冒険者の頂点ということになる。
 なんだか幻滅してしまった。
 萎えてしまった。
 冒険者というのは、もっと夢のある職業でなくてはいけない。
 俺は当初の目的を果たすべく、受付に向かう。

「オークの集落の調査は終わっているのか?」

「い、いえ、まだです」

「なんでそんなに時間がかかるんだ」

「い、いえ、それは……」

 俺がギルド職員と話していると、空気を読まないギルド長が話しかけてくる。

「おい!!無視するんじゃねぇ!!お前はいったい何者なんだ!?」

 何者といわれてもチート持ちとしか答えようが無い。
 だがそれではギルド長には通じないだろう。
 ここは普通に肩書きを名乗っておくか。

「Cランク冒険者だ……」

「Cランク冒険者がAランク冒険者より強ぇわけがねぇだろ!!そこで倒れてる中に6人もAランク冒険者がいやがるんだぞ!!」

「そうか。もっと鍛えたほうがいいと起きたら伝えておいてくれ」

「ふざけるな!!」

「ふざけているのはそっちだろ。なんでオークの集落を確認してくるだけのことがまだできてないんだよ」

「話にならん」

「話にならんのもそっちだ。もういい、結果が分かったらカーティスに知らせてくれ」

 そう言って俺はすたこらとギルドを去った。
 ギルドの調査とかもうどうでもよくなっちゃったな。
 ランサーの冒険者デビューに水をさされてしまった。
 カーティスで改めて冒険者デビューを飾ろう。
 ギルド長がなおもうるさく話しかけてくる中、俺はランサーの宿に戻った。





「遅かったな、ギルドの調査はまだ終わってなかったのか?」

「ああ、でもカーティスに知らせてもらうように言ってきたから」

「そうか、じゃあ明日の朝出発しよう。乗り合い馬車を貸し切ってある」

 やったぜ、馬車。
 テンションの上がった俺達は、まだ昼間だというのに酒場に直行した。
 これが冒険者だよ。
 昨日話に上がったパワードスーツの改良案を紙に書き出したものを肴に酒を呑む。

「このみさいるという兵器は現実的じゃないんじゃないか?」

「昨日お前絶対つけようって言ってたけど」

「全く覚えてないな」

「なんで現実的じゃないんだ?」

「私は火魔法を使えないから付与するとしたらお前のスキルということになる。それを使い捨てるのはコスト的に現実的じゃない」

「確かに。1個作るのにおっぱいポイントどれだけかかるんだか。無限におっぱい揉ませてくれる女の子がいたらいいんだけどな」

「誰かと結婚すればいいんじゃないか?」

「いやぁ、こんなおっさんと結婚してくれる女の人がいるかな」

「そもそもケルビムはおっさんなのか?たまに子供になったりする気がするんだが……」

「あくまでも俺の本体はおっさんなんだよ。それよりランサーこそ今まで結婚の話とかなかったのか?」

「いや、私も若い頃はさる貴族の令嬢と……」

 いつの間にか恋バナになっていた。
 しかし酒の入ったおっさん2人組だ、そこから猥談になるのにそれほど時間はかからなかった。

「その店の娼婦がなかなかレベルの高い娘ばかりでな……」

「ほうほう、そんで?」

「私は言ってやった、おまかせで、とな」

「あっはっは、もうオチ読めた」

「そうなんだよ、出てきたのがめちゃくちゃブスで……」

 王国最北の街アルバーン最後の夜はめちゃくちゃ盛り上がった。





「ああ、頭痛いな」

「何も思い出せん。昨日どうなった?」

 例のごとく顔色の悪いおっさんが2人。
 今日は朝カーティスへ出発するため、昼まで寝ているわけにはいかない。
 睡眠不足と二日酔いで気分は最悪。
 
「昨日は猥談で盛り上がった後、2人で娼館にいったんだよ。あははー、見事に病気もらってるー」

 俺は乾いた笑いを浮かべ、下級万能薬を飲み干した。
 ランサーは運よく病気はもらってなかったが、二日酔いが辛そうなので下級万能薬を渡す。
 ランサーは少し迷って結局飲んだ。

「お前、これが王都で1本いくらすると思ってるんだ……」

「そういや下級万能薬っていくらするんだ?」

「1本金貨10枚はする」

 けっこうするな。
 だが、驚くほどではない。
 
「それは人間が決めた価格だろ?神の価値観ではこれは50おっぱいポイントだ」

「注意しておくが、教会の近くではあまり神という言葉を口にしないほうがいい」

 教会、この国にはあまり関わりがないが、西の帝国や、南の法国ではかなりの権勢を誇る一大宗教勢力だ。
 一神教で、名前は忘れたがなんだかという神を崇めているらしい。
 俺の中では田舎の土地神信仰や、精霊信仰などを邪教認定して度々問題を起こしたりしているイメージしかないな。

「神を軽んじていると怒られるのか?」

「教会という組織の気質はとにかく陰湿だ。目を付けられないに越したことはない」

「なるほどな」

 たしかに、狂信者はどこの世界でも怖いからな。
 宗教は距離感が難しいよまったく。


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...