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10.トカゲの巣
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「奴ら、俺たちを穴ぼこに落として満足して行ったみたいだな」
落ちてきた崖の上を見ても誰もいなくなっていた。
盗賊たちにとっては本当にいつもの餌やりのつもりだったのかもしれない。
だけど今はそれがありがたい。
ここから脱出するには時間がかかりそうだからね。
「悪かったな、スキルをもったいぶって。こんなことなら武器を取り上げられる前にスキルを使って暴れてやればよかったかもしれねえ」
「いや、スキルをもったいぶっていたのは僕も同じだよ。もう薄々感づいているとは思うけど、僕のスキルはアイテムコピー。物を複製するスキルだ。このスキルを使えばお金は稼ぎ放題、盗賊に明かせば命だけは助かったかもしれない」
「アイテムコピーか。そりゃあ護衛が必要になるわけだ。盗賊には明かさなくて正解だったぜ。奴らに知られたら死ぬまで汚い仕事をやらせられるに決まってる」
贋作贋金なんでもござれだ。
何の偽物を作っても本物と寸分違わないのだからそれはもはや本物。
盗賊たちは大喜びでコピーさせるだろうな。
まあ僕も同じことをしてお金を稼いでいるんだけど。
でも僕と違って盗賊はお金を持てば何をするかわからない。
傭兵を大量に雇って国盗りでも始めるかもしれない。
そうなれば多くの人の命が奪われるだろう。
そんなことには加担したくない。
「お互いスキルも話したところでよ、ここから出る相談をしないか?」
「そうだね。どうしたらここから出られるか考えよう」
僕たちが落とされたのはお椀型の窪地だ。
広さは東京ドームくらいだろうか。
そこに2、30匹くらいのトカゲが放し飼いにされている。
窪地の境の崖はほぼ垂直に切り立っており、登るのは難しい。
トカゲが上に登ってこないように壁面を少し加工しているのかもしれない。
手をかけて登れそうな窪みや出っ張りがほとんどなく、ツルツルとしている。
「ザックスの影魔法では登れないの?落ちるときにその力で引き寄せられたような気がするんだけど、その応用でなんとかならないの?」
「無理だな。俺の影魔法はレベル2だ。効果範囲は10メートルほどで、力も弱い。30メートルの高さまで大人の男を引っ張り上げることはとてもできそうにない」
それもそうか。
崖の上に人を引っ張り上げられるんだったら僕が落ちそうになったときに引っ張り上げているだろう。
ここまで僕たちを連れてきた盗賊たちは3人くらいだったし、逃げるならあのときが一番のチャンスだった。
それができなかったということはザックスのスキルにそこまでの力はないということだ。
10分ほど戦ったら魔力が切れてしまっていたし、本当にいざというときの奥の手として使ってきたのだろう。
スキルレベルというものがあるのだし僕はスキルは常に使う派だけど、まあそういう考え方の人もいるよね。
効率厨のくせにそういうところに妙なこだわりをもったネットゲーマーとかよくいるし。
「俺たちが縛られていたロープを使えばなんとかこの崖を登れないか?坊ちゃんのスキルはあと何回使える?」
ザックスは地面に落ちていたロープを拾ってきて伸ばす。
いつの間にか切断されていたロープだ。
これを切断したのはたぶんザックスの影魔法だろう。
色々なことができそうないいスキルだ。
ロープの長さは全部で5、6メートルくらいだろうか。
5回か6回コピーして繋げれば崖を登ることができるかもしれない。
だけど無理だな。
「僕のスキルはもう今日は使えない。それを崖の上まで届く長さまでコピーしようと思ったらあと2日はかかる。その方法は無理だよ」
「そうか。まあロープは一応回収しておくぜ」
僕たち持ち物皆無だからね。
拾えるものはなんでも拾っておいたほうがいい。
「しかしそうなると、どうやって脱出するかな」
「ここってさ、なんの施設なんだろうか」
「あん?そんなのトカゲの養殖だろ。トカゲ使いが使役するための」
「でもここからどうやってトカゲを上に連れていくんだろう」
ここはとても人が登れそうにない窪地で、壁面がツルツルに削られてトカゲでも壁を登れそうにない。
大きな梯子でもかければいけるかもしれないけれど、そんなものはどこにも見当たらない。
30メートルを超えるような梯子があるなら窪地の中から見えるくらいの場所に置いてありそうなものなのだけど。
「そうか、ここからトカゲを出すための道がどこかにあるってことか」
「その可能性もあるよね」
この窪地のどこかに、トカゲ搬入出用の通路がある可能性はある。
開閉式になっていて、こちらからは開かないかもしれないけれど探してみる価値はある。
僕はコピーした大岩を見る。
窪地の壁とは違ってゴツゴツしており、登るのは難しくなさそうだ。
高さは5メートルくらいかな。
この高さなら窪地の全容が見渡せるかもしれない。
僕とザックスは無言でうなずき合い、大岩の窪みに足をかけて登り始める。
ザックスは片腕なのに僕より登るのが早い。
腕を使って身体を引っ張りあげるというのは思った以上に筋力が必要みたいだ。
ザックスに遅れること数分、僕も岩の上に到着する。
「坊ちゃん、当たりみたいだぜ」
「あれか。でも鉄格子が嵌っている」
ザックスが指さす先には、トカゲが1匹通れるくらいの洞窟のようなものが口を開けていた。
しかし人が通れないくらいの幅の頑丈な鉄格子が嵌っており、やはりこちら側からは入れそうにない。
どうしたものか。
落ちてきた崖の上を見ても誰もいなくなっていた。
盗賊たちにとっては本当にいつもの餌やりのつもりだったのかもしれない。
だけど今はそれがありがたい。
ここから脱出するには時間がかかりそうだからね。
「悪かったな、スキルをもったいぶって。こんなことなら武器を取り上げられる前にスキルを使って暴れてやればよかったかもしれねえ」
「いや、スキルをもったいぶっていたのは僕も同じだよ。もう薄々感づいているとは思うけど、僕のスキルはアイテムコピー。物を複製するスキルだ。このスキルを使えばお金は稼ぎ放題、盗賊に明かせば命だけは助かったかもしれない」
「アイテムコピーか。そりゃあ護衛が必要になるわけだ。盗賊には明かさなくて正解だったぜ。奴らに知られたら死ぬまで汚い仕事をやらせられるに決まってる」
贋作贋金なんでもござれだ。
何の偽物を作っても本物と寸分違わないのだからそれはもはや本物。
盗賊たちは大喜びでコピーさせるだろうな。
まあ僕も同じことをしてお金を稼いでいるんだけど。
でも僕と違って盗賊はお金を持てば何をするかわからない。
傭兵を大量に雇って国盗りでも始めるかもしれない。
そうなれば多くの人の命が奪われるだろう。
そんなことには加担したくない。
「お互いスキルも話したところでよ、ここから出る相談をしないか?」
「そうだね。どうしたらここから出られるか考えよう」
僕たちが落とされたのはお椀型の窪地だ。
広さは東京ドームくらいだろうか。
そこに2、30匹くらいのトカゲが放し飼いにされている。
窪地の境の崖はほぼ垂直に切り立っており、登るのは難しい。
トカゲが上に登ってこないように壁面を少し加工しているのかもしれない。
手をかけて登れそうな窪みや出っ張りがほとんどなく、ツルツルとしている。
「ザックスの影魔法では登れないの?落ちるときにその力で引き寄せられたような気がするんだけど、その応用でなんとかならないの?」
「無理だな。俺の影魔法はレベル2だ。効果範囲は10メートルほどで、力も弱い。30メートルの高さまで大人の男を引っ張り上げることはとてもできそうにない」
それもそうか。
崖の上に人を引っ張り上げられるんだったら僕が落ちそうになったときに引っ張り上げているだろう。
ここまで僕たちを連れてきた盗賊たちは3人くらいだったし、逃げるならあのときが一番のチャンスだった。
それができなかったということはザックスのスキルにそこまでの力はないということだ。
10分ほど戦ったら魔力が切れてしまっていたし、本当にいざというときの奥の手として使ってきたのだろう。
スキルレベルというものがあるのだし僕はスキルは常に使う派だけど、まあそういう考え方の人もいるよね。
効率厨のくせにそういうところに妙なこだわりをもったネットゲーマーとかよくいるし。
「俺たちが縛られていたロープを使えばなんとかこの崖を登れないか?坊ちゃんのスキルはあと何回使える?」
ザックスは地面に落ちていたロープを拾ってきて伸ばす。
いつの間にか切断されていたロープだ。
これを切断したのはたぶんザックスの影魔法だろう。
色々なことができそうないいスキルだ。
ロープの長さは全部で5、6メートルくらいだろうか。
5回か6回コピーして繋げれば崖を登ることができるかもしれない。
だけど無理だな。
「僕のスキルはもう今日は使えない。それを崖の上まで届く長さまでコピーしようと思ったらあと2日はかかる。その方法は無理だよ」
「そうか。まあロープは一応回収しておくぜ」
僕たち持ち物皆無だからね。
拾えるものはなんでも拾っておいたほうがいい。
「しかしそうなると、どうやって脱出するかな」
「ここってさ、なんの施設なんだろうか」
「あん?そんなのトカゲの養殖だろ。トカゲ使いが使役するための」
「でもここからどうやってトカゲを上に連れていくんだろう」
ここはとても人が登れそうにない窪地で、壁面がツルツルに削られてトカゲでも壁を登れそうにない。
大きな梯子でもかければいけるかもしれないけれど、そんなものはどこにも見当たらない。
30メートルを超えるような梯子があるなら窪地の中から見えるくらいの場所に置いてありそうなものなのだけど。
「そうか、ここからトカゲを出すための道がどこかにあるってことか」
「その可能性もあるよね」
この窪地のどこかに、トカゲ搬入出用の通路がある可能性はある。
開閉式になっていて、こちらからは開かないかもしれないけれど探してみる価値はある。
僕はコピーした大岩を見る。
窪地の壁とは違ってゴツゴツしており、登るのは難しくなさそうだ。
高さは5メートルくらいかな。
この高さなら窪地の全容が見渡せるかもしれない。
僕とザックスは無言でうなずき合い、大岩の窪みに足をかけて登り始める。
ザックスは片腕なのに僕より登るのが早い。
腕を使って身体を引っ張りあげるというのは思った以上に筋力が必要みたいだ。
ザックスに遅れること数分、僕も岩の上に到着する。
「坊ちゃん、当たりみたいだぜ」
「あれか。でも鉄格子が嵌っている」
ザックスが指さす先には、トカゲが1匹通れるくらいの洞窟のようなものが口を開けていた。
しかし人が通れないくらいの幅の頑丈な鉄格子が嵌っており、やはりこちら側からは入れそうにない。
どうしたものか。
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