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40.握った拳の行方
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アジトを奥に進むと、時折盗賊たちにエンカウントするようになった。
それを僕たちは拳銃をぶっ放して排除していく。
できるだけ生かして捕らえてはいるものの、時折どうしても殺さなければならない状況というものはあるものだ。
脳漿をぶちまけて死んでいく盗賊たちを見ると吐きそうになるけれど、この世界で生きていくっていうことはこういうことなんだと自分に言い聞かせて進んだ。
「それにしても、ナリキンさんめちゃくちゃ銃が上手いね」
「当然だ。私は小さい頃から銃を徹底的に訓練してきているからな」
ナリキン氏は成金ではなかった。
圧倒的な純粋培養お金持ちであったのだ。
家が金持ち、ただそれだけで勝ち組になることが約束された無敵の幸運チートだ。
中途半端なスキルを授かるよりもよほどチートなのではないだろうか。
「右の通路、敵2」
「私に任せろ」
ザックスが敵を見つけ、ナリキン氏が倒すというフォーメーションが出来上がっている。
ナリキン氏は少し腰を落として銃を構えると、出会いがしらに手足を撃ち抜く。
盗賊を討伐するための騎士の半分が裏切ったりしているので、盗賊たちをすべて殺してしまうと話が迷宮入りしてしまう可能性がある。
権力者と盗賊が繋がっていて、うまくコントロールしているというのはよくある話だ。
今回もそのような話なのではないかと僕は考えている。
全容を解明するためには、証人は多い方がいい。
手足を撃ち抜かれた盗賊たちの怪我を止血だけして縄で縛る。
なんか僕の役割が雑用みたいになっているような気がする。
一番雑魚だから仕方がないのだけれどね。
「ちっ、やっぱり盗賊退治ってのは胸糞が悪いぜ」
ザックスは今まであまり盗賊退治の依頼を受けてこなかったようだ。
誰だって人を殺してお金をもらいたくなんてない。
しかし冒険者ランクを上げるには人の役に立つことも必要になってくる。
強さや信用、ギルドへの貢献度を総合してランクというものは付けられているのだ。
ザックスのように強さが突出していれば盗賊退治の依頼や護衛の依頼なんかはあまり受けなくても冒険者ランクを上げることが可能だけれど、普通は無理だ。
それに金銭の問題もある。
ゲームのようにモンスターは倒してもお金を落とすことがない。
素材を剥ぎ取って売り払ってようやくお金を手にすることができるのだ。
そのためモンスターを倒すのと盗賊を倒すのでは盗賊を倒したほうが必要な労力と収入のバランスが良い。
ザックスのように強ければダンジョンに潜って強いモンスターを倒し、宝箱を見つけたほうが稼ぎはいいけれど一般的には盗賊を倒したほうが稼ぎは良くなるのだ。
「これだから力に恵まれた奴は……」
「あんただって家柄に恵まれてるじゃねえか」
隣の芝生は青く見えるものなのか、2人にはお互いのことが羨ましく映っているようだ。
僕はどちらかというとナリキン氏の心情のほうに同意できるかな。
世の中を生きていくために必要な力という点で言えば腕力よりも財力のほうが優れているのかもしれないけれど、やはり腕っぷしが強いというのは憧れてしまう。
異世界で自分だけの力で無双することができたら、どれだけ気持ちがいいだろうか。
女の子に片っ端から好かれてハーレムすることができたらどれだけ気持ちいいことができるだろうか。
おっと、本音が出てしまった。
結局、強さなんていうものは手段でしかないのだ。
僕だったら女の子にモテてハーレムを築きたいという目的に至るための手段。
ザックスだったらダンジョンを攻略したいという目的のための手段。
ナリキン氏にはどんな目的があるのかな。
案外僕と同じだったりしてね。
だとしたら、現在はナリキン氏が持てる力のすべてを使って築き上げたハーレムがNTRの危機に瀕している状況ということになる。
早く助けてあげないとね。
僕はバッドエンドのまま終わるNTRモノは嫌いなんだ。
「シンディ!サレア!ヤスミン!アイシャ!ノーラ!デリラ!カトレア!サティ!キャサリン!」
多い、多いよ。
ナリキン氏のハーレムは多くても5人程度かと思っていたのだけれど、9人もいた。
その9人は盗賊たちに凌辱されたのか、酷い状態で見つかった。
生きてはいるようだけど、体力が限界で意識が朦朧としているという感じだ。
胸糞が悪い。
こういう光景を見ることにもなるから、ザックスは盗賊退治が嫌いなんだろうな。
ナリキン氏は女性の一人の肩を揺らして呼びかける。
「シンディ、ああ、なぜだ。なぜ私のものが……」
「ナリキン、様……」
「シンディ答えろ!やられたのかっ、盗賊に汚されたのか!」
「はい……。申し訳ありません」
「くそっ、くそくそくそくそっ!」
ナリキン氏は相当苛立っているようで壁を何度も蹴る。
僕と同じようにパワーレベリングで精霊力を上げているナリキン氏はとても力が強い。
蹴るたびに壁が陥没して天上からパラパラと埃が落ちてきた。
ちょっと冷静になって欲しい。
彼女たちにかける言葉がもっと他にあるだろう。
「汚らわしい盗賊共に、汚されたのか!!」
「すみません!すみません!」
苛立って女性当人に当たるようでは男としてどうかと思う。
僕は顔面パンチ説教を慣行することを決意する。
きっとラノベの主人公ならばこうするだろう。
ぐっと握り締めた拳を、思い切りナリキン氏の鼻ずらに叩き込んだ。
ボキリッという軽快な音がして、僕の手首が折れ曲がってはいけないほうに折れた。
それを僕たちは拳銃をぶっ放して排除していく。
できるだけ生かして捕らえてはいるものの、時折どうしても殺さなければならない状況というものはあるものだ。
脳漿をぶちまけて死んでいく盗賊たちを見ると吐きそうになるけれど、この世界で生きていくっていうことはこういうことなんだと自分に言い聞かせて進んだ。
「それにしても、ナリキンさんめちゃくちゃ銃が上手いね」
「当然だ。私は小さい頃から銃を徹底的に訓練してきているからな」
ナリキン氏は成金ではなかった。
圧倒的な純粋培養お金持ちであったのだ。
家が金持ち、ただそれだけで勝ち組になることが約束された無敵の幸運チートだ。
中途半端なスキルを授かるよりもよほどチートなのではないだろうか。
「右の通路、敵2」
「私に任せろ」
ザックスが敵を見つけ、ナリキン氏が倒すというフォーメーションが出来上がっている。
ナリキン氏は少し腰を落として銃を構えると、出会いがしらに手足を撃ち抜く。
盗賊を討伐するための騎士の半分が裏切ったりしているので、盗賊たちをすべて殺してしまうと話が迷宮入りしてしまう可能性がある。
権力者と盗賊が繋がっていて、うまくコントロールしているというのはよくある話だ。
今回もそのような話なのではないかと僕は考えている。
全容を解明するためには、証人は多い方がいい。
手足を撃ち抜かれた盗賊たちの怪我を止血だけして縄で縛る。
なんか僕の役割が雑用みたいになっているような気がする。
一番雑魚だから仕方がないのだけれどね。
「ちっ、やっぱり盗賊退治ってのは胸糞が悪いぜ」
ザックスは今まであまり盗賊退治の依頼を受けてこなかったようだ。
誰だって人を殺してお金をもらいたくなんてない。
しかし冒険者ランクを上げるには人の役に立つことも必要になってくる。
強さや信用、ギルドへの貢献度を総合してランクというものは付けられているのだ。
ザックスのように強さが突出していれば盗賊退治の依頼や護衛の依頼なんかはあまり受けなくても冒険者ランクを上げることが可能だけれど、普通は無理だ。
それに金銭の問題もある。
ゲームのようにモンスターは倒してもお金を落とすことがない。
素材を剥ぎ取って売り払ってようやくお金を手にすることができるのだ。
そのためモンスターを倒すのと盗賊を倒すのでは盗賊を倒したほうが必要な労力と収入のバランスが良い。
ザックスのように強ければダンジョンに潜って強いモンスターを倒し、宝箱を見つけたほうが稼ぎはいいけれど一般的には盗賊を倒したほうが稼ぎは良くなるのだ。
「これだから力に恵まれた奴は……」
「あんただって家柄に恵まれてるじゃねえか」
隣の芝生は青く見えるものなのか、2人にはお互いのことが羨ましく映っているようだ。
僕はどちらかというとナリキン氏の心情のほうに同意できるかな。
世の中を生きていくために必要な力という点で言えば腕力よりも財力のほうが優れているのかもしれないけれど、やはり腕っぷしが強いというのは憧れてしまう。
異世界で自分だけの力で無双することができたら、どれだけ気持ちがいいだろうか。
女の子に片っ端から好かれてハーレムすることができたらどれだけ気持ちいいことができるだろうか。
おっと、本音が出てしまった。
結局、強さなんていうものは手段でしかないのだ。
僕だったら女の子にモテてハーレムを築きたいという目的に至るための手段。
ザックスだったらダンジョンを攻略したいという目的のための手段。
ナリキン氏にはどんな目的があるのかな。
案外僕と同じだったりしてね。
だとしたら、現在はナリキン氏が持てる力のすべてを使って築き上げたハーレムがNTRの危機に瀕している状況ということになる。
早く助けてあげないとね。
僕はバッドエンドのまま終わるNTRモノは嫌いなんだ。
「シンディ!サレア!ヤスミン!アイシャ!ノーラ!デリラ!カトレア!サティ!キャサリン!」
多い、多いよ。
ナリキン氏のハーレムは多くても5人程度かと思っていたのだけれど、9人もいた。
その9人は盗賊たちに凌辱されたのか、酷い状態で見つかった。
生きてはいるようだけど、体力が限界で意識が朦朧としているという感じだ。
胸糞が悪い。
こういう光景を見ることにもなるから、ザックスは盗賊退治が嫌いなんだろうな。
ナリキン氏は女性の一人の肩を揺らして呼びかける。
「シンディ、ああ、なぜだ。なぜ私のものが……」
「ナリキン、様……」
「シンディ答えろ!やられたのかっ、盗賊に汚されたのか!」
「はい……。申し訳ありません」
「くそっ、くそくそくそくそっ!」
ナリキン氏は相当苛立っているようで壁を何度も蹴る。
僕と同じようにパワーレベリングで精霊力を上げているナリキン氏はとても力が強い。
蹴るたびに壁が陥没して天上からパラパラと埃が落ちてきた。
ちょっと冷静になって欲しい。
彼女たちにかける言葉がもっと他にあるだろう。
「汚らわしい盗賊共に、汚されたのか!!」
「すみません!すみません!」
苛立って女性当人に当たるようでは男としてどうかと思う。
僕は顔面パンチ説教を慣行することを決意する。
きっとラノベの主人公ならばこうするだろう。
ぐっと握り締めた拳を、思い切りナリキン氏の鼻ずらに叩き込んだ。
ボキリッという軽快な音がして、僕の手首が折れ曲がってはいけないほうに折れた。
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