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47.Sランク冒険者たち
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大会議室にはすでに多くの冒険者たちが集まっていた。
その中でも注目を集めるのはやはりSランク冒険者とそのクランだ。
ナリキン氏以外のSランクは全員が到着していた。
右から、黒骨のカラン率いるクラン【黒の墓守】、烈風のシド率いるクラン【空船】、千刃のハザン率いるクラン【名無し】、そして我らが万金のナリキン率いるクラン【黄金の剣】。
色々突っ込みたいことはある。
みんな中二的二つ名があるのかとか、なんだ万金のナリキンって馬鹿にしてるだろ、とか。
くそ、黒骨のカランがちょっと中二を卒業しかけの心を引きずり下ろすじゃないか。
烈風のシドは中二になりたてのまだまだ子供が思いつく二つ名だ。
千刃は中級編。
黒骨こそ玄人の考えた二つ名だ。
どんな能力を持っているのか気になります。
僕は少しわくわくしながら大会議室に入室する。
「ナリキン、遅いぞ。なにしてやがった」
「悪い、少し推薦したい奴らがいてな。こいつらも入れてやってくれ。Dランククラン【他力本願】だ」
「ひでえ名前のクランもあったもんだ。ああ、ザックスのところか」
僕のクランの名前は【他力本願】だ。
他力本願は他人の力に依存している奴という悪い意味で使われがちだけれど、本来は仏教用語である。
阿弥陀如来という仏様の持つ本願力という力によって本当の意味で幸せになろうという意味だ。
一般的に、浄土真宗などの仏教の宗派の考え方を差す。
自分でお釈迦様と同じ修業をして救われようというのが自力本願、南無阿弥陀仏と唱えて阿弥陀如来様に救ってもらおうというのが他力本願だ。
僕はクラン名にそれとなく仏教用語を使って隠れ中二ネームとしたが、この世界には仏教はなく他力本願の本来の意味は通じない。
おそらくクラン名を聞いた全員が、他人に頼って精霊力や冒険者ランクを上げようというド腐れ野郎を表わしていると思っている。
こんなことならもっとド直球に中二全開のかっこいい名前を付けておけばよかった。
「まあいい。クラン【他力本願】も入れ。あらかた揃ったことだし、それじゃあ会議を始めるぞ」
あまりクラン名をみんなの前で言わないでほしいと願いながら僕たちも会議室に入り、適当な椅子に座った。
会議室の中にはSランククランの他にも、たくさんの冒険者がいて少し萎縮してしまうな。
男も女もゴリマッチョ率が高いから。
この世界では後衛と前衛でパラメータの成長率が違ったりしないものだから、たとえ魔法職であっても近接戦闘ができたほうがいいのだ。
タンクやアタッカー、前衛や後衛などの役割は分かれているけれど、仲間と連携しないと弱いようでは高ランクに上がることなどはできない。
高ランクの冒険者になると後衛であっても低ランクの前衛よりも近接戦闘が強かったりするものなのだ。
なのでみんな鍛えてムキムキだ。
腹筋が6つに割れている女性はセクシーで嫌いじゃないけれど、ザックスよりも肩幅が広い女性はちょっと怖い。
チョークスリーパーで首をへし折られそうだ。
「議事進行を勤めさせてもらう、冒険者ギルド副ギルド長のギドだ。知らねえやつはいねえと思うがな」
僕は知らない。
誰だあのおじさんは。
見るからに傷だらけで元冒険者といった風貌の男が議事進行を勤めている。
先ほど僕たちのクランネームを酷い名前と言った男だ。
彼がこのギルドの副ギルド長らしい。
「概要は皆知っていると思うが、77階層のボス部屋にドラゴンが出た。発見したチームは命からがら逃げ伸びたものの、尻尾の一振りで蹴散らされたためにその力の一端も見ることができなかったようだ」
ドラゴンの尻尾っていうだけでただの尻尾攻撃とは違う感じがしてくるよね。
僕は以前ノーマルトカゲの尻尾攻撃を受けて悶絶した覚えがある。
サラマンダーですらないノーマルなトカゲの攻撃でさえ僕にはかなり効いたのだ。
ドラゴンの尻尾攻撃などを受けたら木っ端微塵にされてしまうことだろう。
「鱗の色は茶色だったとの証言から、おそらくアースドラゴンではないかと思う。ドラゴンの中ではそれほど強い方ではないが、それでも推定討伐ランクはSだ。十分に注意して挑んでほしい」
「質問がある」
みんなが静かに人の話を聞いているときというのは、声を出したら小さな声でも案外目立つものだ。
学校の全校集会でやったら悪目立ちして後にいじめに発展してしまいそうなことを、平然とやってのけた男がいた。
Sランク冒険者の一人、烈風のシドだ。
シドの恰好は一言で言えばキャプテンだ。
鎧などを一切身に付けない身軽な恰好に海賊船のキャプテンが身に付けているような黒いコートを羽織り、キャプテンが被っているような帽子を被っている。
目には当然アイパッチ、しかし残念ながら左手はフックではない。
それがいかつい益荒男であれば僕の中での彼のあだ名は完全にキャプテンになるところだったのだが、彼は若い男だ。
それも線の細い少女漫画に出てくるようなイケメン。
壁ドンが似合いそうな手を頭の後ろで組み、細くて長い足を机の上に乗せて必死にアウトローを気取っているが完全に少女漫画の世界でクラスに一人いるイケメンの不良状態だ。
きっと主人公は委員長気質の女の子で、何度追い払ってもしつこく付きまとった末にお互い好きになって最後キスして終わるに決まっている。
シドはよく通る声を響かせ、副ギルド長に問いかける。
「たかがトカゲの1匹に、Sランクが4人もいるのかね。俺たちだけで十分だから他の奴らは帰ってくれて構わねえぜ」
おまっ、それっ、フラグ!
少女漫画に帰れ!
その中でも注目を集めるのはやはりSランク冒険者とそのクランだ。
ナリキン氏以外のSランクは全員が到着していた。
右から、黒骨のカラン率いるクラン【黒の墓守】、烈風のシド率いるクラン【空船】、千刃のハザン率いるクラン【名無し】、そして我らが万金のナリキン率いるクラン【黄金の剣】。
色々突っ込みたいことはある。
みんな中二的二つ名があるのかとか、なんだ万金のナリキンって馬鹿にしてるだろ、とか。
くそ、黒骨のカランがちょっと中二を卒業しかけの心を引きずり下ろすじゃないか。
烈風のシドは中二になりたてのまだまだ子供が思いつく二つ名だ。
千刃は中級編。
黒骨こそ玄人の考えた二つ名だ。
どんな能力を持っているのか気になります。
僕は少しわくわくしながら大会議室に入室する。
「ナリキン、遅いぞ。なにしてやがった」
「悪い、少し推薦したい奴らがいてな。こいつらも入れてやってくれ。Dランククラン【他力本願】だ」
「ひでえ名前のクランもあったもんだ。ああ、ザックスのところか」
僕のクランの名前は【他力本願】だ。
他力本願は他人の力に依存している奴という悪い意味で使われがちだけれど、本来は仏教用語である。
阿弥陀如来という仏様の持つ本願力という力によって本当の意味で幸せになろうという意味だ。
一般的に、浄土真宗などの仏教の宗派の考え方を差す。
自分でお釈迦様と同じ修業をして救われようというのが自力本願、南無阿弥陀仏と唱えて阿弥陀如来様に救ってもらおうというのが他力本願だ。
僕はクラン名にそれとなく仏教用語を使って隠れ中二ネームとしたが、この世界には仏教はなく他力本願の本来の意味は通じない。
おそらくクラン名を聞いた全員が、他人に頼って精霊力や冒険者ランクを上げようというド腐れ野郎を表わしていると思っている。
こんなことならもっとド直球に中二全開のかっこいい名前を付けておけばよかった。
「まあいい。クラン【他力本願】も入れ。あらかた揃ったことだし、それじゃあ会議を始めるぞ」
あまりクラン名をみんなの前で言わないでほしいと願いながら僕たちも会議室に入り、適当な椅子に座った。
会議室の中にはSランククランの他にも、たくさんの冒険者がいて少し萎縮してしまうな。
男も女もゴリマッチョ率が高いから。
この世界では後衛と前衛でパラメータの成長率が違ったりしないものだから、たとえ魔法職であっても近接戦闘ができたほうがいいのだ。
タンクやアタッカー、前衛や後衛などの役割は分かれているけれど、仲間と連携しないと弱いようでは高ランクに上がることなどはできない。
高ランクの冒険者になると後衛であっても低ランクの前衛よりも近接戦闘が強かったりするものなのだ。
なのでみんな鍛えてムキムキだ。
腹筋が6つに割れている女性はセクシーで嫌いじゃないけれど、ザックスよりも肩幅が広い女性はちょっと怖い。
チョークスリーパーで首をへし折られそうだ。
「議事進行を勤めさせてもらう、冒険者ギルド副ギルド長のギドだ。知らねえやつはいねえと思うがな」
僕は知らない。
誰だあのおじさんは。
見るからに傷だらけで元冒険者といった風貌の男が議事進行を勤めている。
先ほど僕たちのクランネームを酷い名前と言った男だ。
彼がこのギルドの副ギルド長らしい。
「概要は皆知っていると思うが、77階層のボス部屋にドラゴンが出た。発見したチームは命からがら逃げ伸びたものの、尻尾の一振りで蹴散らされたためにその力の一端も見ることができなかったようだ」
ドラゴンの尻尾っていうだけでただの尻尾攻撃とは違う感じがしてくるよね。
僕は以前ノーマルトカゲの尻尾攻撃を受けて悶絶した覚えがある。
サラマンダーですらないノーマルなトカゲの攻撃でさえ僕にはかなり効いたのだ。
ドラゴンの尻尾攻撃などを受けたら木っ端微塵にされてしまうことだろう。
「鱗の色は茶色だったとの証言から、おそらくアースドラゴンではないかと思う。ドラゴンの中ではそれほど強い方ではないが、それでも推定討伐ランクはSだ。十分に注意して挑んでほしい」
「質問がある」
みんなが静かに人の話を聞いているときというのは、声を出したら小さな声でも案外目立つものだ。
学校の全校集会でやったら悪目立ちして後にいじめに発展してしまいそうなことを、平然とやってのけた男がいた。
Sランク冒険者の一人、烈風のシドだ。
シドの恰好は一言で言えばキャプテンだ。
鎧などを一切身に付けない身軽な恰好に海賊船のキャプテンが身に付けているような黒いコートを羽織り、キャプテンが被っているような帽子を被っている。
目には当然アイパッチ、しかし残念ながら左手はフックではない。
それがいかつい益荒男であれば僕の中での彼のあだ名は完全にキャプテンになるところだったのだが、彼は若い男だ。
それも線の細い少女漫画に出てくるようなイケメン。
壁ドンが似合いそうな手を頭の後ろで組み、細くて長い足を机の上に乗せて必死にアウトローを気取っているが完全に少女漫画の世界でクラスに一人いるイケメンの不良状態だ。
きっと主人公は委員長気質の女の子で、何度追い払ってもしつこく付きまとった末にお互い好きになって最後キスして終わるに決まっている。
シドはよく通る声を響かせ、副ギルド長に問いかける。
「たかがトカゲの1匹に、Sランクが4人もいるのかね。俺たちだけで十分だから他の奴らは帰ってくれて構わねえぜ」
おまっ、それっ、フラグ!
少女漫画に帰れ!
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